翔太郎達五人は、広々としたリビングでテーブルを囲んでいた。各々の目の前に置かれた皿にはカレーが盛り付けられて、食欲をそそるスパイシーな香りが漂っていた。
「小春チャンは料理できそうなイメージあったけど、翔太郎クンも料理できるんだねぇ」
今回料理を担当したのは翔太郎と小春。他の三人が普段全く料理をしないので必然的な人選だった。
「お兄ちゃんは家でも時々ご飯作ってくれますよ」
「親がいない時、たまに作る程度ですけどね」
翔太郎は謙遜するが、ヒデは感心して頷きながら口を開く。
「せっかくの手料理ですからな、冷める前にいただきましょうぞ」
「そだねー。それじゃあ、いただきまーす」
それぞれ手を合わせると、スプーンを手にカレーを口に運んだ。
「ん! おいしい!」
「うむ、これは美味ですな」
目を輝かせる高さん、味わうように食べるヒデ、満足そうな顔で口をもぐもぐと動かしている優衣、見る限りは好評のようで翔太郎と小春は揃って安堵した。
小春が一緒に作ったおかげもあるのだろうが、翔太郎も一口食べてその出来栄えに満足する。
「うん、美味しくできて良かった。まぁカレーなんて火の通りと水加減ぐらいしか失敗する要素無いんだけどね」
「でも本当に翔ちゃん手際良かったよ。作り慣れてる感じしたもん」
「本当? 小春にそう言ってもらえると嬉しいね」
料理上手の小春に褒められると嬉しくて、翔太郎は照れて頭を掻いた。
そんな翔太郎と小春のやり取りを見た高さんが優衣を肘でつついて言う。
「そういえば小春チャンと二人で仲良さそうに作ってたけどぉ、妹チャンはいいのぉー?」
「私は食べるの専門ですから、どちらかというと二人が美味しいご飯作ってくれてありがたいですよ」
平然と言う優衣の言葉は強がりではなく、本当に昔から兄の作る料理を食べるのが好きだった。だから今更自分が作ろうなどとは思わないし、むしろ小春も料理を作ってくれるというのは素直に嬉しかった。
「なるほどねぇ……お兄ちゃんの手料理大好きーって言う妹も萌え!」
熱くなって声を上げる高さんだが、優衣は涼しい顔をして完全スルー。早くも高さんの扱い方を理解したようだ。
手分けして洗い物を終え、再びアニメを見始めて少しした頃。
「お風呂だけどさぁ、五人いるし一人ずつ入ったら時間かかるでしょぉ? だから……妹チャンと小春チャン一緒に入らなーい?」
高さんが急にそんなことを言い出した。
「……なんか身の危険を感じるんですけど」
「そんな警戒しなくても、取って食ったりしないよぉ」
身構える優衣に、高さんはへらへらとして掴みどころのない様子。
今日初めて会った優衣はともかく、翔太郎には高さんがいくら変人でも人の嫌がることはしないというのは信頼できた。……信頼できるはず、たぶん。
「小春ちゃんだったら別にいいんだけど……」
優衣が小春の方へ視線を送ると、小春は苦笑いを浮かべて言う。
「確かに高さんはちょっと変わってるけど、心配しなくても大丈夫だと思うよ」
「小春ちゃんがそう言うなら……」
「はい! じゃあ、けってーい! 善は急げだよぉ」
優衣が高さんに背中を押される形で、三人は部屋を出て行ってしまった。
その様子を見送った翔太郎が呟く。
「案外高さんみたいにグイグイ来てくれる人の方が優衣は相性いいのかもなぁ」
「妹君を案じておられるので?」
「今は友達が全くいないってわけでもなさそうなんだけど、それでも交友関係は広くないみたいだからさ」
少々過保護にも思える翔太郎の憂慮に、ヒデは微笑んで言う。
「翔太郎殿もしっかりお兄さんなのですなぁ」
「まぁね」
ヒデの眼差しにむず痒さを感じたが、兄としてはむしろ胸を張っていいことなので素直に受け取っておいた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一方、ちょっとした大浴場のような風呂場では、高さんが羞恥の欠片も感じさせずに全裸で堂々と立っていた。
「やっぱり妹チャンスタイルいいよねぇ」
舐め回すようないやらしい視線に、優衣は手で局部を隠して眉をひそめた。
「部長さん、視線が下品です。なんならお兄ちゃんよりキモいかも」
「あはぁー、ツンツン系美少女に罵倒されると気持ちいいねぇ~」
だめだ、この人には何を言っても餌を与えるだけだ。優衣はそう諦めて深いため息をついた。
そして高さんの視線は優衣の隣の小春に移って、
「小春チャンも妹チャンとは一味違う、こう、品の良い可愛らしさがあって愛でていたいと思わせるよねぇ」
「そ、そうですか? 私なんか優衣ちゃんと比べたら全然……」
自信無げに目を伏せる小春に、高さんが諭すように語る。
「良いかい小春チャン、『貧乳はステータスだ! 希少価値だ!』という昔からの格言があってだねぇ……」
「どんな格言ですか……」
「まぁつまり、私含めどんな女の子でもちゃんと魅力があるってことさぁ。そもそも私に比べたら小春チャンも全然良いスタイルしてるんだし自信持ちなよぉ」
そう言いながら無い胸を張る高さんを見たら、なんとなく自信を持っていい気がしてくるので不思議である。
「さぁ、じゃあ順番に体洗おうねぇ。なんなら背中流してあげよっかぁ?」
「遠慮します」
優衣が食い気味に即答して拒むので、高さんはあえなく肩を落とした。
三人で広い浴槽に並んで浸かっていると、高さんがおもむろに口を開いた。
「ところでさぁ、二人は翔太郎クンのことが好きなわけでしょ?」
「まぁ、はい」
優衣が照れ隠しに釈然としない様子で首肯して、小春も紅潮させた顔で頷く。
「小春チャンは学校での様子見てたらなんとなくわかるんだけど、妹チャンはなんで好きなのぉ?」
「なんでって……兄とはいえ、ずっと近くにいて異性として意識はするじゃないですか」
「でも意識するだけじゃなくて好きになったってことは何かあるんでしょぉ?」
「……なんか恥ずかしいんですけど、話さないとだめですか?」
珍しく羞恥を滲ませた優衣の表情はまさしく恋する乙女で、その様子からは優衣がいかに本気であるかが窺い知れた。これには俄然興味が湧いてくるというものだ。
「是非とも聞きたいところだねぇ」
「私も前から気になってたから聞いてみたいかも」
二人に迫られた優衣は観念してため息をついた。
「……だって、冷静に考えたらお兄ちゃんカッコよくないですか? 人当たりも良いし、勉強もできるし、顔だってそんなに悪くない。何をやっても上手くこなしちゃうし、すごいんですよ。そりゃ尊敬もするじゃないですか」
優衣は語り始めてしまえば誇らしげな口調で兄への愛があふれて、高さんと小春はその勢いに驚きながらも、小春は当然として、高さんもその内容について概ね納得していた。
「確かに翔太郎クンって派手さはないけど、地味にハイスペックなところあるよねぇ」
高さんが同意するので、優衣は嬉しそうに続ける。
「しかも、それでいて優しいんですよ。私みたいな愛想悪くて不出来な妹を大切にしてくれるんです」
小春はそれを聞いて思い当たることがあったのか、「あー」と声を上げた。
「翔ちゃんは昔から過保護なぐらい優衣ちゃんのこと気にしてるところあるよね。学校でもわざわざ優衣ちゃんの様子見に行ったりとか」
「うん。私はお兄ちゃんが私のことを特別に思ってくれてるのが嬉しいし、私もそんなお兄ちゃんが特別で……だから私はお兄ちゃんがいないとダメなんです。お兄ちゃんじゃなきゃダメなんです」
膝を抱えてそう吐露した優衣に、小春も共感して語り始める。
「私も分かるよ。私も翔ちゃんが優しくしてくれて、そのおかげでちょっとずつ暗かった自分を変えられたから。いつも一人で泣きそうになってると笑顔で迎えに来てくれる、その……王子様、みたいな……。だから私も翔ちゃんじゃないとだめなんだもん」
照れ混じりで言い切ると、二人の恋する乙女は分かり合ったように顔を緩めて見合う。その様子を見た高さんは深く息を吐いた。
「かぁ~翔太郎クンも罪な男だよねぇ~」
「お兄ちゃんにはこの話しないでくださいよ。調子乗ったキモい顔見せれられるの嫌なんで」
「妹チャン、好き好き言うわりに辛辣だねぇ……」
「いやだって、実際お兄ちゃんキモいところも多いじゃないですか。エロいし」
「翔太郎クン……」
高さんはこの場にいないのに罵倒される翔太郎を哀れんで、小春が慌ててフォローを入れる。
「で、でもそれが親しみやすさでもあって、そこ含めて好きみたいな……ね?」
小春が優衣にも同意を求めると、それにはすんなりと頷いた。
「そうそう、小春ちゃん分かってる。変態なのはもう理解してて、その上で好きなんだよね」
「変態というのを誰も否定しないところがなんともねぇ……」
心の内を打ち明けた優衣と小春はまたお互いの理解を深めたようで、高さんは素直な自分をさらけ出す二人を羨ましく思いながら、自嘲混じりの愛想笑いを浮かべていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
深夜まで続いた上映会は、最初に小春が脱落した。
小春は眠気が限界に達したようでうとうとと船を漕ぎ始め、見かねた優衣が声をかけた。
「小春ちゃんもう寝る?」
「ぅん……」
意識が朦朧としている様子の小春に、優衣が手を添えて立ち上がる。ちなみに寝室は男女別に部屋が用意されている。
「それじゃ私達は先に寝るね」
「うん、おやすみ」
「おやすみ~」
「おやすみなさいですぞ」
「おやすみなさぃ……」
優衣と小春が抜けたことで、部屋に残ったのは情報処理部のいつもの面子となった。
「やっぱり普段から夜更かししてる我々と違って健康的だねぇ」
「深夜アニメをリアルタイムで見るオタクには、夜更かしは避けられないものですからね」
しみじみと言う高さんと翔太郎に、しかしヒデだけは違うようで、
「小生はアニメよりもゲームがメインですので、さほど遅くはなりませぬな」
「ああ、そういえばヒデはアニメそんな見ないんだったね」
「本当に気になる作品だけですな。だいたい毎クール1から3本程度ですかな」
「私がアニメ寄りでぇ、ヒデクンがゲーム寄り、翔太郎クンはわりと何でもってカンジだよねぇ」
一口にオタクと言っても三者三様。そんな三人がなんだかんだと反りが合って、情報処理部という居心地の良い空間を共有しているのは悪くない気分だった。翔太郎にとっても優衣や小春とはまた違って、気兼ねなく接することのできる仲間は大切な存在だ。
「でもそれなら、ヒデくんもそろそろ眠気がきてるんじゃなぁい?」
「実は少々眠くはありますな。もしかすると先に休ませていただくかも知れませぬ」
そんなことを言ってから一時間もしない内にヒデは睡魔に屈した。
「……申し訳ありませぬ、先に休ませていただきますぞ」
「あらぁ、おやすみ~」
「おやすみ。俺達ももう少し切りの良いところまで見たら寝るよ」
「うむ、それでは失礼しますぞ」
ヒデが部屋から出ていくと、翔太郎と高さんだけになった部屋は賑やかだった空気が鳴りを潜めて、うっすらと寂寥感が漂った。
「二人だけになるとさすがに寂しいねぇ」
「いつもは三人なのに今日は五人でしたからね。優衣も案外楽しそうにしてて、連れてきて良かったですよ」
優衣の話が出ると、高さんはニヤッと笑ってからかうように言う。
「にしても、翔太郎クンはあんな可愛い子を二人も侍らせて両手に花だよねぇ」
「よしてくださいよ」
「でも実際さぁ、二人にめっちゃ愛されてるみたいだねぇ」
入浴中に優衣と小春から話を聞いた高さんの言葉には実感が込もっていて、翔太郎はそれを否定しない。
「まぁ、俺も二人のことは本気で好きなんで、こんな俺を好きでいてくれてありがたいとは思ってますよ」
「ふーん、そっかぁー」
高さんは自分から話を振っておいてそれきり、つまらなそうに黙ってしまった。
なんとなくその沈黙に気持ちの悪さを感じていたが、少しすると高さんはのんきにあくびをした。
「……ふわぁ~……さて、じゃあ私も寝るとしようかねぇ」
高さんは何事もなかったように気楽に言って、ゆっくりと立ち上がった。
「おやすみなさい。俺はもう少しだけ見てから寝ます」
「そう? じゃあ最後は消してねぇ。おやすみ~」
高さんを見送って、嫌な雰囲気は気のせいで高さんは眠くてぼーっとしていただけだったのかと少し考える。答えは出ないが、そんな後味の悪さを忘れたくてスクリーンに映るアニメに集中した。
ついに一人きりになってしまって会話をする相手がいなくなると、先程までは会話をしていたせいで眠気を感じていなかったことに今更気づいた。
眠気で体は重く、またアニメは切りが悪いところで、もう少しだけ見ようとうつらうつらとしながら柔らかいソファに体を預けていると、意識は自然とブラックアウトしてしまった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
どれくらい寝ていただろうか。翔太郎は下半身の辺りでもぞもぞと何かが動く気配がして目を覚ました。
昨日はアニメを見たまま寝落ちしたことをなんとなく思い出して、今自分がいるのが高さん宅のシアタールームであることに思い至る。
そして、視線を下へ動かすと――――優衣が朝勃ちしたペニスを握っていた。
「うおっ」
「あ、お兄ちゃんおはよう」
優衣の滑らかな手が大きくなったペニスの竿を握って、上下にゆっくりシコシコと扱いている。
翔太郎はいきなりのことに驚いて、ペニスをビクビクと震わせながら困惑の声を上げた。
「ちょ、えっ?! なに!?」
「しーっ! 大きい声出すとみんなに気づかれちゃうから」
言われて他の三人のことを思い出すと、焦って小声で尋ねる。
「……みんなは?」
「部長さんはぐっすり寝てて、ヒデさんも多分まだ寝てるんじゃないかな。小春ちゃんは一応目は覚ましたけど朝弱いみたいでまだ布団に入ってる」
説明を受けてひとまず胸を撫で下ろすが、優衣がペニスを扱いている現状への困惑は拭えない。
「で、なんでこうなった……?」
「こっちきたらお兄ちゃんが寝てて、なんかおちんちんが大きくなってたから抜いてあげようかなって」
「……あの、ここ一応高さんの家だからね?」
軽いノリに翔太郎は呆れたような表情を浮かべるが、優衣は悪びれる様子もない。
「その部長さんの家でおちんちんおっきくしてたお兄ちゃんが悪い」
「いや、朝勃ちは生理現象でだな……」
「とか言っても気持ち良いんでしょ? ほらっ」
優衣は扱く手の動きを激しくした。
「うぁ……」
優衣の躊躇のない手つきは容赦なく射精を促し、翔太郎はペニスが精液を吐き出そうとする感覚の高まりを感じた。
「やばい、出ちゃうって……!」
「我慢しないで。みんなが起きてくる前に出してスッキリしないとでしょ?」
「で、でもこのまま出したら……」
さすがに他所の家のソファに精液を撒き散らす訳にはいかない。
「ああ、それならこうするから平気」
優衣はそう言って口を開くと、亀頭をパクリと咥えてしまう。口の中ではしゃぶるように舌が亀頭に絡みついた。
優衣の口の温度と舌の刺激、そして竿を扱く手も緩められることはない。
「じゅる……ん……じゅっ……」
「あっ、そんなにしたら……」
「ん、んっ……じゅるる……」
「もう……出るっ!」
膨らんだペニスは、溜め込んだ精液を妹の口内に勢いよくぶちまけた。
「んんっ……! ……ん、ふ……ちゅーっ……」
優衣は白濁液を口で受けて止めても亀頭を咥えたまま、残りの精液まで吸い出してから口を離した。
「ん……ゴクッ……。うん、これで収まったね」
精液を飲み込んだ優衣は、萎んでいくペニスを見て満足げに頷いた。
「スッキリした……けど、ビックリした……」
「こんな冷房かけた部屋でなんにも掛けずに寝てると風邪引くから、寝るならちゃんと布団で寝なよ」
優衣は涼しい顔をしてそれだけ言い残すと部屋を出ていてしまった。
「いや、こんなことされたら目が覚めてもう寝れないでしょ……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
高さんが最後に起きて、五人揃ったのはお昼前。全員で昼食を食べて談笑の後、解散する運びとなった。
「いやぁ、楽しかったねぇ」
「毎度場所貸してもらってすみません」
「気にしないでいいよぉ、代わりにお菓子とか飲み物買ってきてもらってるしぃ」
翔太郎の恐縮を、高さんは軽く笑い飛ばす。
「今回は情報処理部の集まりなのに参加させてもらって、ありがとうございました」
「私も、ありがとうございました」
小春と優衣がべコリと軽く頭を下げると、高さんは頭を掻きながら眉尻を下げて言う。
「むしろこちらこそ、付き合ってもらっちゃってごめんねぇ」
「いえ、ほんとに楽しかったです」
小春が言うのに同意して優衣も首を縦に振っている。実際、翔太郎から見てもお世辞でなく楽しんでいたように思える。
「またこの五人で何かできたらいいですなぁ」
ヒデがしみじみ言うと、高さんはニヤッと口元を緩めた。
「それならぁ……遊びに行っちゃおうか、この五人で!」