雲ひとつ無い空。降り注ぐ強烈な日差し。独特の塩素臭。見渡す限りの人混み。――今、翔太郎達はプールに来ていた。
浮き輪を手にした高さんは、いつになく高揚した様子で、
「諸君、準備はいいかい? ……いざ、しゅつじーん!」
声を上げてそのまま走り出した。
はしゃぐ高さんを見た周囲の人々は可愛いなどと言って笑っているが、翔太郎達は恥ずかしがって高さんのノリには付き合わない。
「あんまりはしゃいで転ばないでくださいねー」
「みんなも早くおいでよぉー」
楽しそうなのは良いことなのだが、翔太郎は高さんの水着を見て目が据わる。高さんが着ているそれは、紺のスクール水着。高さんの体型なのでそこまで違和感は無いように見えるが、問題は胸に縫い付けられたゼッケンだった。『たかだ』と丸文字で大きく書かれたゼッケンは異彩を放って、間違いなく注目される一因になっていた。
しかも、恐らくあのスク水は今回のためにわざわざ用意されたものだ。そういう悪ふざけが好きなのは分かっていたが、高さんの周りを気にしない大胆さには恐れ入る。
しかし、そんな注目を浴びる高さんが文字通り見えていないヒデはぼやくようにこぼした。
「参りましたぞ。考えてみればメガネをかけたまま入れないのは当然のこと……視界がぼやけてしまって良く見えませぬなぁ」
「ヒデくん大丈夫?」
「度入りのゴーグルとかあるらしいから、そういうのを持ってたら良かったんだろうけど……」
「友人とプールに来るなど今までは縁のない話で、すっかり失念しておりましたぞ。次回があれば何か対策を考えておく必要がありますな……。全く見えないというわけでもないので、今日のところはこのまま強行ですな」
心配して声をかける小春と翔太郎にヒデは言いながら、眉間に皺を寄せて注意深く周りを見て歩いていた。
その様子を見た優衣が興味本位で尋ねる。
「ヒデさんって視力どのくらいなんですか?」
「確か最後に測った時でも0.1は切っていたはずですぞ」
「うわ、じゃあガチで見えないやつですね」
「うむ。ド近眼ですぞ、ハハハ」
「いやほんとに、助けが必要だったら言ってね」
「翔太郎殿はいつもお優しいですなぁ。何かあれば遠慮無く頼らせてもらいますぞ」
ゆっくり歩いて高さんに追いつくと、高さんは既に準備運動を終えてプールに入ろうとしていた。
「まずは流れるプールだよねぇ。先に入っちゃうよー」
言って先に入る高さんに続いて、翔太郎達もプールに浸かる。
「おぉー、気持ち良い!」
「涼しいですなぁ!」
翔太郎とヒデは一気に全身を沈めたのに対し、優衣と小春はプールサイドに腰を下ろして足からゆっくりと入っていた。
「ひんやりするねぇ」
「うん。やっぱりプール来ると夏って感じするよね」
各々が夏の暑さを吹き飛ばすプールの爽快感を味わっていると、少し離れた所から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「おーい、翔太郎クンー、ヒデクンー」
声のする方へ目を向ければ、浮き輪に座ってプカプカと浮きながらプールの流れに流されている高さんがいた。
「高さんー」
手を振って高さんの方へ近寄る。たどり着いて高さんの浮き輪に掴まると、高さんは先程売店で購入していた防水のスマホケースに入れたスマホでセルフィー。
「いえーい」
そこに目を細めたヒデが遅れて来ると、
「ヒデクンも入って入ってー。はい、チーズ…………」
――――パシャ。
高さんは撮った写真を見て笑い声を上げる。
「あははぁ、ヒデクン変な顔ー!」
「ハハハッ、こうも目が悪いと思わず目を細めてしまいますな」
流れに任せていると、周回遅れの優衣と小春に追いつく。
「小春チャンと妹チャンも一緒に写真撮ろうよー」
「いいですね」
乗り気の優衣と小春は、翔太郎、ヒデと入れ替わって写真を撮った。
高さんは女子三人で撮った写真を見て満足げに言う。
「やっぱり二人がいると華があるねぇ」
今日の優衣は緩く三つ編みにした髪をサイドへ流していて、高さんは「私も何かすれば良かったかなぁ」といつも通り簡単にまとめただけのサイドテールを撫でている。
「あとで写真送ってくださいね」
高さんは優衣の催促に「ほいほーい」と答えながら、視線を優衣の顔から下へと移す。
「しかし、二人の水着はもうちょっと冒険しても良かったんじゃないかなぁと思うけどねぇ」
優衣の着ている水着はセパレートタイプだが、胸元が隠れ、スカートがついているので露出は少ない。小春もワンピースタイプの落ち着いたデザインで、可愛いよりも綺麗という感想が出てきそうな水着だ。
高さんの残念がる呟き聞いた優衣は少しだけ嬉しそうに笑って言う。
「これはお兄ちゃんが、あんまり露出多いのは他の男に見せたくないって選んだんですよ」
「ほほぉ、翔太郎クンも可愛いところがあるじゃないのさぁ」
ニヤニヤといやらしい笑みを口角に含める高さんに、翔太郎はげんなりして言い返す。
「いやだってこういう場所ですから、女漁りに来るような輩も絶対いますからね。変な目で見られたら嫌じゃないですか」
「うんうん、二人とも可愛いもんねぇ。まぁ私はそういう心配不要だから気楽でいいよぉ」
「それにしても、その水着はどうかと思いますよ……」
のんきな顔を見た翔太郎が苦言を呈しても、高さんは何故かむしろ得意げに言う。
「ふふーん、似合ってるでしょー。これ結構気に入ってるんだー」
この周囲の空気を読もうとしない姿勢には困らされることもあるが、ここまでくるといっそ清々しくて、翔太郎は結局いつも笑って許してしまうのだった。
いくつか種類のあったプールとスライダーを回り、体を動かして疲れた一同は一旦休憩して軽食を取ろうと売店を訪れた。しかしながら案の定混雑しており、席を探すだけも苦労しそうな様子だった。
役割分担をしようということで、翔太郎と優衣は売店の列に並び、他の三人には席を確保しておいてもらうことになった。
「とりあえずポテト、唐揚げ、かき氷は食べたいって言ってたよね。俺も結構お腹減ってるんだよなぁ……。優衣は?」
「私もかき氷食べたいし、あとチュロスも」
「おっけー、じゃあチュロスもね」
メニュー表に目を向けると、思ったよりも種類が豊富で充実しているようだった。選択肢が少ないよりもかえって迷ってしまう。
「へー、フルーツが乗ってるかき氷とかもあるんだ。……っていうか飲み物も何にするか聞いてなかったな……。ちょっと聞いてくるから並んでてくれる?」
「うん、分かった」
頷く優衣を残して、翔太郎は急ぎ足で列を離れた。
そうして翔太郎が離れて少しすると――――不意に優衣の後ろから軽薄な声がかかった。
「ねえキミ、一人?」
優衣が振り返ったすぐそこには、大学生と思わしき二人組の青年がいた。声をかけてきた理由は言うまでもないだろう。
二人も列に並んでいるようなので、売店で買い物を済ますまでは隣り合わせになるのが厄介だ。しかしながら、一度列を離れて並び直すのも面倒で、優衣は思いっきりしかめっ面をする。
「可愛いじゃん。この辺の学校の子?」
「……ナンパなら他をあたってください」
優衣はバッサリと言い捨てるが、彼らもそう安々とは諦めなかった。
「並んでる間だけでもいいからさ、少し話しない?」
「だから…………」
優衣が少しずつ苛立ちを募らせてきた頃、翔太郎が戻ってきて、
「ただいま、優衣…………って、あー」
翔太郎はすぐに事態を察した。
「すいません、この子俺の連れなんですよ」
翔太郎が優衣の肩を軽く抱き寄せてそう言う。優衣は少し驚いて翔太郎を見るが、翔太郎にはそれに気づく余裕はなかった。
すると二人は白けた顔をして不満げな声を上げた。
「んだ、彼氏いんのかよ」
翔太郎は少し緊張しながらも、不機嫌そうな二人に思い切って声をかけてみた。
「あの、お二人とも大学生なんですか?」
「ん? ああ、ほらすぐそこの盟大」
「あー、すごいですね! かなり頭良いところじゃないですか」
「まぁな」
翔太郎が持ち上げると、二人は気を良くしたようで明るい声になって答える。
「今日は彼女探しに来てる感じですか?」
「夏休み前に作るつもりがレポートとかテスト勉強とか忙しくて遅れちまってさぁ」
「でも、盟大の学生さんだったらモテるんじゃないですか?」
「いやぁーそれがなぁ…………」
などと意外にも良い雰囲気で談笑している間に待機列の先頭までやってきた。注文した物を受け取ると、翔太郎は最後にまた一声かける。
「それじゃ、行きますね」
「おう。お前真面目そうなのにノリ良いから、大学は入ったらモテるぞ。彼女さんもちゃんと手綱握ってた方が良いぞ」
「いやいや、冗談はよしてくださいよ。お二人とも可愛い子見つけてくだいねー」
「じゃあなー」
面倒なイベントを乗り切って、翔太郎はほっと一息吐いた。三人の座る席まで歩く道中、優衣は感心したように漏らす。
「……お兄ちゃんってやっぱりすごいね」
「まぁ、ああいうのはノリを合わせれば案外なんとかなるもんだよ。チャラく見えても話してみると気の良い人が多いしね」
「なんていうか、懐に入り込むのが上手いっていうか……私には真似できない」
「無理に真似しなくても、優衣には優衣の良いところがあるからさ」
「うん。……でも、ほんとにお兄ちゃんが来てくれて安心したし、嬉しかった。ありがと」
頬を赤くした優衣のしおらしい表情に、翔太郎は鼓動が早まるのを感じる。
「お、おう。……惚れ直した?」
翔太郎としては照れ隠しに冗談のつもりで尋ねたのだが、優衣は率直に答えて、
「うん。カッコよかった」
余計に顔を緩める結果になった。
それから優衣は露骨に積極的な行動を取るようになって――――かき氷を食べさせようとしてきたり、
「はいお兄ちゃん、あーん」
腕を組んできたり、
「お兄ちゃん待って、一緒に行こ」
翔太郎としては悪い気はしないので、苦笑いしながらも頭を撫でてあげると、優衣はされるがままに微笑んで満足そうにする。
その様子を目にした小春が無言で羨ましそうな視線を送ってくるので、優衣の頭から手を離して今度は小春を撫でた。
「えへへ……」
小春は照れ笑って嬉しそうにするが、人目を気にして程々のところで手を引っ込める。小春は少し残念そうだ。
一歩引いて見ていた高さんが、甘ったるい空気を生み出した張本人である優衣に尋ねる。
「なんか……妹チャン急に好き好きオーラめっちゃ出てない?」
「うーん、ちょっと色々あって今は甘えたい気分、みたいな?」
優衣のはっきりしない言い回しに、ますます訝しげな顔になるので、翔太郎は先程の出来事を隠さず打ち明けた。
「実はさっき売店で並んでる時に、優衣がナンパされて俺が助けに入った、みたいな感じのことがあって」
「えっ、大丈夫だったの?」
小春は聞いてすぐに心配そうな顔をするが、優衣は頷いて「大丈夫」と答えると、誇らしげな顔をして続ける。
「しかも、それで変な感じにならないように、懐柔して穏便に済ませてくれたんだよね」
「懐柔って言い方…………まぁ、列に並んでる間はどちらにせよ隣りだったから、不機嫌なままで変にちょっかい出されても嫌だなと思って、少し話して仲良くしただけだよ」
「さすがは翔太郎殿ですな」
「なるほどねぇ……それでデレデレモード入っちゃったのかぁ……」
高さんとヒデは納得してくれたようだが、優衣はまだしばらくこの調子のままでいそうだ。
プールに入っても優衣は相変わらずで、
「ちょっと、動きづらいんだけど……」
「えー、だってお兄ちゃんに掴まってないと流されちゃうよ?」
優衣は首に腕を回して抱きついてくる。水着越しとはいえ。胸が思いっきり当たっている。
更には小春が対抗心を燃やして、優衣と反対側の腕にしがみついていた。
「わ、私も足つかないし……」
確かにこの辺りは少し深くなっているが、そもそも小春は泳げるはずだ。しかし、翔太郎ももうそこにはツッコまない。
「二人とも……胸、当たってるって……」
「不可抗力だね」
優衣はいたずらっぽく笑って胸を押し当ててくる。――――フニフニ。柔らかい。絶対わざとだ。
優衣がこんな調子なので、ドギマギする翔太郎に小春も一生懸命アピールしてくる。優衣ほどの大きさはないが、それでも胸の柔らかさは伝わる。
「むぅ……翔ちゃん……」
羞恥に若干顔を赤くしながらも、頑張って優衣に対抗しようとしているのが可愛い。
「ちょ、マジで勃っちゃうから……」
「それはお兄ちゃんがエッチだからでしょ?」
左右から二人に密着されて、いよいよ我慢の限界が訪れた。ペニスが勃起して、翔太郎は思わず前かがみになる。
こんな公衆の面前で股間を膨らませていたら絶対にヤバい。公然猥褻とかになるんじゃないだろうか……。
「ん? あーあ、お兄ちゃんほんとにこんなところでもおっきくしちゃうんだ。しょうがないなぁ……じゃあこっち」
優衣に手を引かれる。
幸い高さんとヒデは少し離れたところにいるので、目を盗んでプールから出た。そのまま優衣は人気のない倉庫のような小さい建物の陰へと翔太郎を連れてきて、小春もそれについてきた。
「ここなら誰も見てないよ」
確かにここなら誰かが来る心配は要らなそうだが、プールで遊んでいる楽しそうな声が聞こえてくる距離で落ち着かない。
しかし、優衣はそんなことも気にせずに水着のトップスをたくし上げて、先程まで翔太郎に押し当てていた柔らかい胸をピンッと勃った魅惑的な乳首まで青空の下に晒してしまう。
「ゆ、優衣こんなところで……」
「でも見たかったでしょ? ほら、触って」
そう言って掴んだ翔太郎の手を自らの胸に押し当てると、優衣はそのまま翔太郎を倉庫の壁際まで追いやって唇を重ねる。
「ん……ちゅ……」
優衣の方から求めるように舌を伸ばしてきて、優衣の舌が翔太郎の口の中で踊る。
その様子を目の前にした小春が不満げな声を上げて、
「もう、優衣ちゃんばっかり……」
優衣は一旦唇を離すと、紅潮した顔で小さく笑って小春を手招きする。
「ごめんごめん、小春ちゃんもおいで」
優衣は歩み寄ってきた小春の肩を引き寄せて言う。
「三人でキスしよ」
「三人で……?」
「そう、ほら顔寄せて。お兄ちゃんも」
言われるままに三人は頬と頬が当たる程に顔を寄せ合って、なるべく唇が触るようにする。そのまま伸ばした舌を三人で絡めた。
「ふ、ちゅるっ……んぅ……」
「あっ……ちゅ……ちゅっ……」
優衣と小春の顔が同時に触れ合う距離にあって二人の良い匂いがする。しかも優衣と小春の唾液が混ざり合って、それが翔太郎の口にも運ばれる。いつもと違う、三人で行うキスはそれだけで十分に刺激的だった。
そして、優衣はおもむろに翔太郎の股間に手を這わせると、吐息混じりに言う。
「はぁ……お兄ちゃん、そろそろ限界なんじゃない?」
近くには大勢の人がいる屋外で、その声も聞こえてくる。躊躇う気持ちもあったが、今更我慢はできなかった。
「うん……して欲しい……」
「ん、素直でよろしい。じゃあ脱がすね」
優衣は翔太郎の股間を
倉庫が遮る以外は何も無い空の下で、全裸で勃起したペニスを晒す翔太郎を見た小春がゴクリと唾を飲んだ。
「ね、小春ちゃんも一緒にしよ……ちゅっ……」
優衣は言ってしゃがむと、翔太郎のペニスを舐め始めて小春にも視線で促した。小春もそれに応えて翔太郎のペニスに顔を近づける。
「う、うん……。ちゅる、れろ……」
二人の舌がペニスを左右から舐め回した。その光景に翔太郎は思わず心の声が漏れる。
「うわ……エロすぎるっ……」
優衣はそれを聞いてニヤッと口角を上げると、ペニスの竿を握って扱き始めた。その間も亀頭を舐め続けて、小春もそれに倣って優衣と一緒に亀頭を舐める。
二人の唾液が混ざり合ってペニスを伝う。
「ん……じゅる……ちゅぷ……」
「ちゅっ……はぁ……じゅるる……」
二つの舌が、それぞれ違う動きで亀頭を責め立て、竿を扱く手が容赦なく射精を促してくる。
「く……もう、出そう……」
翔太郎がそう漏らすと、優衣と小春はもうすぐペニスから吐き出されるであろう精液を取り合うかのように、亀頭の先端を争ってより激しく亀頭にしゃぶりつく。
「ん、ん……ちゅっ……は……」
「ふ、はっ……ん、じゅぷっ……」
二人がペニスを取り合っている光景は、翔太郎を更なる興奮に誘って――――
「あっ、いく……いくッ……!」
――――吐き出された白濁液は、取り合いをしていたことでどちらの口の中にも収まらず、二人の顔を汚すように飛んだ。
「んっ……!」
「あっ! 顔に、いっぱい……」
「ぁふぅ…………あー、二人ともごめん、大丈夫?」
優衣は精液がかかっていない側の目を開いて小春を見ると、小さく笑って言う。
「小春ちゃん、顔に白いのいっぱいかかってる。えっちだね」
「優衣ちゃんも……って、ひゃ……!」
小春が悲鳴を上げたのは、優衣が突然小春の顔にかかった精液を舌でぺろりと舐めたからだ。
「じっとしてて、今綺麗にしてあげるからね……ん、れろっ……」
優衣は小春の顔を舐め回して精液を全て舐め取ると、最後に指で唾液を拭った。
「はい、これで綺麗になった」
「あ、ありがとう……」
小春は顔を赤くしてお礼を言うが、優衣は小春に顔を突き出して、
「ん、次は小春ちゃんがして?」
「え、あ……う、うん」
小春は遠慮がちに優衣の顔に手を添えると、顔についた精液を伸ばした舌でゆっくりと舐め取る。
「ふふ、これ結構くすぐったいね」
女の子同士で顔を舐め合って、しかもそれが自分の精液を舐め取るためという状況に、翔太郎は心臓を高鳴らせながら目が離せなかった。
小春も最後に指で唾液を拭うと、優衣の顔から手を離した。
「は、はい。これで綺麗になったかな……?」
「ん、ありがと」
優衣はニッコリと満足そうに笑う。
翔太郎と優衣が水着を着直して、お互いにおかしなところは無いか確認すると、再び優衣に手を引かれた。
「それじゃ、あんまり離れてると部長さんとヒデさんに怪しまれちゃうし戻ろっか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
帰りの電車内で優衣と小春に挟まれて座った翔太郎は、遊び疲れですぐに眠ってしまった。その翔太郎の両肩には、同じように眠ってしまった二人の頭が乗っていた。
身を寄せ合うように眠る三人はそれだけで微笑ましい光景だったが、その正面の席に座る高さんは眠る翔太郎をじっと見て難しい顔をしていた。
「…………」
その高さんの隣に座っているヒデが声をかける。
「嘘をつく必要は無いのではないですかな」
聞いた高さんは、翔太郎の両の手が二人の少女に握られているのを見てため息をついた。
「簡単に言ってくれるねぇ……。もう両手は埋まってるし、どうせ脈ないよ?」
「……それでも、自分に嘘をついて無かったことにしても後悔が残りませぬか?」
「友達のままでいるって選択肢もあると思うんだけど……まぁ、確かにキツイんだよねぇ……」
「翔太郎殿のことですからな、返事はどうであれ気持ちは真正面から受け取ってくださると、小生はそう思いますぞ。だからこそ部長殿も翔太郎殿のことを想っているのではないですかな?」
ヒデの翔太郎を見つめる視線には信頼が含まれていた。
高さんは内心「この人たらしめ」と恨めしく思って、再びため息を吐いたきり口は開かなかった。