第17話 「誕生日」
夏が終わり、秋の文化祭を経て、高さんは情報処理部を引退した。
花火大会の告白以降多少のぎこちなさはあったが、それでもオタク仲間であることに変わりはなかった。
変わったことといえば、今まであまり勉強をしていなかった高さんが、スイッチが入ったように急に受験勉強を始めたのだ。そのせいで文化祭の準備にはあまり参加していなかったが、翔太郎もヒデも何も言わなかった。
そして優衣と小春との関係は相変わらず、情を交わす一幕もありながら、しかし穏やかな日常のまま時間は過ぎて、季節は秋から冬になろうとしていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夕食後のリビング、翔太郎と優衣はテレビを見てくつろいでいた。
夜ともなるとすっかり冬らしい気温で、翔太郎は肌寒さを感じて口を開いた。
「……寒くない?」
「エアコン温度上げる? もう12月だし冬って感じになってきたよね」
「うん、ありがとう。……そういえば、12月といえば優衣の誕生日ももうすぐだね」
「そうだね。プレゼント楽しみにしてるから」
「え?」
翔太郎が優衣の方へ振り向いてきょとんとすると、優衣はたちまち不機嫌になって低い声を出した。
「いや……まさか何もくれないつもりだったの?」
「……だって、今まで誕生日プレゼントなんてあげてなかったじゃん……」
誕生日プレゼントといえば親に買ってもらうことはあっても、翔太郎と優衣がお互いに何かを贈ることは今までなかった。
しかし、そんな翔太郎の言い訳を優衣はバッサリと切り捨てた。
「今年は今までとは違うでしょ」
言われてみればそうだ。まだ正式に恋人という訳ではないが、関係は進展して妹以上恋人未満といったところだ。誕生日にプレゼントぐらい用意するのが当たり前かもしれない。
「それもそうか……ちなみに何か欲しい物とかある?」
「えー、聞いちゃったら面白くないじゃん。お兄ちゃんが選んでよ」
「うーん、難しい……けどまぁ、考えてみるよ」
「うん。あ、でも食べ物とかはやめてね。多分何買ってきてもお兄ちゃんの手料理の方が良いって思っちゃうから」
「お、おう。了解」
言われて思案顔になる翔太郎に、優衣はまさかと思って尋ねる。
「もしかして、その調子だと小春ちゃんのも用意してない?」
「え? 小春の誕生日って……」
翔太郎が再び目を丸くするので、優衣は深くため息をついた。
「お兄ちゃんさぁ…………」
翔太郎は優衣に言われたことで薄っすらと昔の会話を思い出した。
「あぁ……そういえば優衣と誕生日近いんだっけ……?」
「そうだよ。むしろ小春ちゃんの方が早いから、ほんとにもうすぐじゃない?」
「マジ?」
「確か、12月10日とかじゃなかった?」
「12月10日って……」
翔太郎は思わずカレンダーを見て顔を青くした。
「もう3日しかないじゃん!?」
「っていうか、今まで小春ちゃんの誕生日に何もしてなかったの?」
優衣が呆れて聞くと、肩を落とした翔太郎がしょぼくれて答える。
「……はい……してませんでした……。だって、小学生じゃ誕生日に何かプレゼントしようとは思わないし、それでそのまま今まで来ちゃったから……」
翔太郎の言い訳は今の状況ではもう通用しない。小春は何も言わないが、今年ばかりは密かに期待しているに間違いないだろう。
「まぁ、小春ちゃんも急に自分から何かするような度胸は無いし、そうなるか……」
優衣も納得しながら、次の瞬間には何かを思いついたようで提案してくれる。
「……ねえ、じゃあさ、私と小春ちゃんの誕生日パーティー一緒にしたらいいんじゃない?」
「一緒に?」
「そしたら私の誕生日が17日だから、10日との間の土日……例えば14日とかにすれば少し猶予ができるでしょ?」
「なるほど……確かにそれなら一週間あるからなんとかなるか……」
翔太郎は思案を巡らせて頷くと、勢い良く立ち上がった。
「小春に聞いてみるから、優衣も14日空けといて!」
そう言い残して逸る足取りで自室へ引っ込んだ。
先程まで感じていた寒さはいつの間にかさっぱり忘れていた。
翔太郎は早速プレゼントを何にするか考えるが、ピンとくるものがないのでひとまずネットを頼ることにした。検索するワードは『誕生日プレゼント 高校生 彼女』。まだ彼女ではないが、こうして文字にして二人を彼女扱いすると少しむず痒い。
「なになに……アクセサリー、コスメ、小物…………」
当然高価なものは選べないので、身の丈に合うものを選ばなければならない。二人分用意しないといけないので尚更だ。
となると、アクセサリーは少し予算オーバー。コスメはよく分からないのでやめておいたほうが良さそうだ。残った候補は――――
「小物かぁ……」
小物というくくりだと範囲が広くてこれまた悩ましい。様々な小物が紹介されているページを眺めていると、
「あっ、これ……」
ある物が偶然目に留まった。翔太郎はそこから一つの着想を得たことで、一転明るい顔になって計画を練りだす。
優衣と小春の喜ぶ顔を思い浮かべれば、それだけでやる気はいくらでも湧いてきた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
誕生会の当日。全ての準備を整えた状態で小春を家に迎えた。
まずは昼食だ。今日は二人の誕生日を祝う席なので、翔太郎が用意をする。
時間がかかるものを作って待たせるのも良くないと考えてパスタを選択。メニューはカルボナーラにした。
もちろん作ったことのある料理な上、先日作って味は確認済みだった。おかげで二人に満足してもらえたようだ。
そして、食後にはいよいよケーキの出番だ。翔太郎が冷蔵庫から取り出してテーブルへ運ぶそれは、雲のように軽そうな純白の生クリームを生地に纏い、真っ赤な苺が鮮明に飾る、王道のショートケーキ。
「わ、美味しそう!」
「ホールのケーキってこういう時でもないと食べないからテンション上がるよね」
優衣はまだ今年で16歳だが、大は小を兼ねるということで、蝋燭は小春に合わせて大きいものが1本、小さいものが7本。
蝋燭に火をつける前に翔太郎が声を上げる。
「ちょっと待ってね。写真撮る準備するから」
三脚が無かったので、代わりにスマホスタンドにスマホを置いた。ケーキが中央に映るように位置を調整した後、蝋燭に火をつけて、
「いくよー」
「はーい」
タイマーをかけたカメラのシャッターボタンを押すと、座っている二人の背後に急いで移動する。
「ほらもっと寄って寄って」
「ぁ……」
翔太郎の計画ではこの写真が誕生日プレゼントの肝になるので、なんとしても良い写真を撮りたいという一心で他意無く二人の肩を抱き寄せたのだが…………
――――パシャッ
「よし、どうかな」
「不意打ちはズルいでしょ……」
「あはは……」
優衣の小声の呟きと小春の照れ笑いは、写真を確認するために二人の元を離れた翔太郎には届かなかった。
肝心の写真はというと…………
「ん? んー……」
屈託のない笑顔の翔太郎、平静を装おうとして逆に固くなっている優衣、顔を赤くしながら眉尻を下げる小春、という思っていたのとは少し違う一枚になっていた。
しかしながら、しっかり画角に収まっているので翔太郎は一応のところ満足して頷いた。
「まぁこういうのもアリか……はい、じゃあ二人で蝋燭消してね」
「うん。じゃあ小春ちゃん、せーの……」
優衣と小春は見合ってタイミングを合わせると、
「「ふー」」
二人分の息は、8本の蝋燭の火を容易く消して、蝋燭の匂いがふわりと漂った。
「おめでとうー!」
「えへへ……翔ちゃんありがとう」
翔太郎が拍手をして二人を祝うと、小春は素直に嬉しそうな表情を見せたのだが、対して優衣は食い気の方が勝ったようだった。
「早く食べよう? お兄ちゃん、包丁包丁」
「はいはい」
早くもケーキから蝋燭を抜いている優衣に、翔太郎は苦笑いを浮かべながら、言われるままにキッチンから包丁を持ってきて切り分けようとする。両親の分も取っておくので5等分だ。
「6等分ならまだ簡単だけど、5等分って難しいんだよな」
「適当でいいよ。私が大きいのもらうから」
なんとなくキッチリ等分しないといけない気がして無駄に緊張していたのだが、優衣にそう言われると少しは気楽だ。思い切って、しかしケーキが潰れないように丁寧に包丁を入れて切り分ける。
やはり多少大きさがばらけてしまったが、優衣の要求通り一番大きく見えるものを差し出して、その次に大きいものは小春に。
「ん、ありがと」
「ありがとう」
翔太郎は自分の分も取って、残りは冷蔵庫へ戻す。包丁も流しに置いてようやく席につくが、ふとそこで皿に乗った長方形のそれが目に留まった。
「あっ、これも半分にしないといけなかったか……」
それはケーキを切り分けるために一旦除けた、『happy birthday』と書かれたチョコレートのプレートだった。
包丁をもう一回取ってくるのも手間だなと思っていると…………
「じゃあ、こうしよ…………」
優衣はおもむろにプレートをつまみ上げて端を口に咥えると、それをすぐ横に座っている小春の方へ突き出した。
「あ、えっと……」
「
「う、うん……」
小春は戸惑ってあたふたしていたが、すぐに優衣の催促に屈してプレートの端を咥えた。優衣と小春の唇の間にチョコレートの橋が架かった。
優衣は躊躇うことなくポリポリと食べ始めたのだが、顔を赤くした小春はなかなか進まない。
「
そう言われたことで、小春も思い切ってプレートをかじり始めた。二人の唇の距離は徐々に詰まっていき、遂に二人の桜色の唇が触れ合った、というところで――――パキッ
唇が触れた感覚があって力んだか、チョコレートの橋は折れてしまった。
「ん、美味しいね」
「そ、そうだね……」
唇についたチョコレートをペロッと舐めながら言う優衣に、小春は顔を赤くして目を逸らした。
「ん、んんっ……それじゃケーキ食べようか」
なんとなく変な空気になりつつあった場を引き戻すように、翔太郎はわざとらしく咳払いをして言うと、小春もそれに続いてフォークを手に持った。
「そ、そうだね! いただきます」
しかし、優衣はじっとケーキを眺めるばかりで、翔太郎は不思議に思って声をかける。
「優衣?」
「お兄ちゃん食べさせてよ。ほら、あーん」
優衣はそう言って、口を開けてこちらへ向けてきた。
「え?」
「私は今日の主役なんだから、それぐらいサービスしてくれてもいいでしょ?」
「……しょうがないなぁ」
甘えてくる優衣に翔太郎は満更でもなく、フォークを持つ手を伸ばして優衣のケーキを一口サイズに切り分けて、刺したそれを優衣の口へ運んだ。
「はい」
「ん、あーむっ…………」
満足げに口を動かす優衣を見れば、それだけで翔太郎も自然と顔がほころぶ。
そんな翔太郎と優衣の様子を見た小春も、すかさず声を上げた。
「しょ、翔ちゃん! 私も!」
口を開ける小春には、親鳥に必死にアピールする小鳥のような可愛らしさがあって、翔太郎は思わずくすっと笑った。
「はいはい、小春もね」
同じようにしてケーキを小春の口に運んであげると、
「あむっ…………」
口を動かす小春は優衣と違って照れているのが見て取れたが、それでも嬉しそうなのは二人とも同じだった。
翔太郎もようやく自分のケーキを食べ始めるが、その途中でまたしても優衣がお願いをしてくる。
「ねえ、確かお兄ちゃんは苺あんまり好きじゃなかったよね? ちょうだい?」
優衣の言う通り、果物全般があまり好きでないのは事実なのだが、その実嫌いという程でもなくて返答に迷う。しかし、最終的には誕生日だからと許してしまうのだった。
「……じゃあ、今日だけね。はい」
翔太郎がフォークで苺を刺して優衣に向けると、優衣は首を横に振った。
「違う違う。お兄ちゃん咥えて」
「ん?」
翔太郎は意図が分からずに首を傾げるのだが、優衣が重ねて言ってくる。
「その苺、お兄ちゃんが咥えて? いいから」
「? ……ん」
言われた通りに苺を咥えてみせると、優衣はこちらに身を乗り出してきて――――
「んっ……」
苺を咥えた翔太郎の唇に、その柔らかい唇を重ねてきた。
「……!」
翔太郎は驚きに目を丸くして思わず苺を放してしまうが、それは落ちることなく優衣の口に収まった。
「……ん、ごちそうさま」
呆然とする翔太郎の目の前で優衣は苺を咀嚼して、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
しかし、翔太郎と同じように驚きを露わにした小春が、すぐに不満げな顔になって優衣を恨めしそうに睨んだ。
「むぅ……優衣ちゃん……!」
「ごめんごめん。じゃあお詫びに私のあげるから、お兄ちゃんが小春ちゃんに渡してあげて?」
優衣はそう言うと、フォークですくった苺を咥えて翔太郎に向ける。
今度は優衣の意図するところがすぐに理解できた。口移しで優衣から受け取って、それをまた口移しで小春にあげる、そういう意味だ。
翔太郎は動揺こそすれ、拒否することはない。むしろ魅力的な提案と言える。ゴクリと喉を鳴らして、震える唇を苺を咥えた妹の唇へと近づけた。
苺の優衣の口から飛び出した部分を唇と前歯で捉えられるように、落とさないようにするためだと言い訳をして、唇と唇を必要以上に押し付けた。先程よりもしっかりと妹の唇の感触を味わって、しかし目的である苺の受け渡しも忘れずに行ってから唇を離した。
「ん……」
今優衣から受け取った苺を咥えて、今度は小春の方を向く。
「翔ちゃん…………」
小春は恥ずかしそうにしながらも身を乗り出してきて、桜色の薄い唇が翔太郎の唇に控えめに触れた。
翔太郎は恥じらいを含んだ口づけをもどかしく思って、苺を小春の口へ送り出しながら唇を奪った。
「んっ……」
苺が小春の口の中へ渡っても小春を逃さずプレッシャーキスをした。
唇が触れていた時間は十数秒だったか、ようやく翔太郎と顔が離れた小春は思わず手で口を隠して咀嚼すると、眉尻を下げて口を開いた。
「味分かんなかったよぉ……」
「ごちそうさまでした」
翔太郎は苺をあげた側なのに手を合わせてそう言うのが可笑しくて、小春は思わず小さく吹き出して笑った。
「もう、翔ちゃんってば……」
翔太郎が二人との口移しを思い返してしばし惚けていると、不意に股間を何かが触れて――
「やっぱり、お兄ちゃんおっきくしてるでしょ?」
――その正体は優衣の足。テーブルの下で伸ばした足が翔太郎の股間を
「お、おい……」
翔太郎が咎めると、優衣はすぐに足を引っ込めた。引っ込められるとそれはそれで名残惜しい。
しかし、優衣がすんなりと引いたのはむしろ積極的だからだった。
「早くケーキ食べちゃって、そしたらしよっか?」
股間の膨らみはかえって大きくなった。
せわしなくケーキを食べ切った三人は、早々に翔太郎の部屋へ移動した。
暖房を入れたばかりの部屋はまだ肌寒くて、三人とも服を着たままで身を寄せ合ってキスをした。
「んっ……ちゅっ……」
翔太郎はもう遠慮無く優衣と舌を絡め合う。甘い。ケーキの味が残っているのかもしれないが、決してそれだけではないはずだ。
立て続けに小春とも深く口付けを交わす。翔太郎の舌が、先程小春に口移しした苺を探すかのように、小春の口内で動き回る。そうすればするほど、翔太郎の唾液が小春の口に流れ込んで、しかし小春はそれを抵抗することなく受け入れた。
「ん、ぁっ……じゅるっ……」
生き物のように小春の口内を這い回った舌は、満足すると小春の口から出ていき、その時にツーっと唾液の糸を宙に引いた。
とろんと蕩けた表情の小春はぼーっと立ったままで、翔太郎は肩に触れて言う。
「脱がすね」
「……うん」
ボタンを一つずつ外していき、はだけた胸元からは白の下着が覗いた。
その間に小春の背後に回った優衣が言う。
「じゃあ私は下を脱がしてあげるね」
優衣が返事も聞かずにスカート脱がせると、小春の下半身は黒いタイツに白のパンツが透けて、下着だけよりもかえって扇情的な姿が翔太郎を誘った。
「あとはお兄ちゃんに譲ってあげる」
生唾を飲み込む翔太郎を見た優衣はそう言って一歩引く。
翔太郎は優衣の気遣いに従って、小春のお腹とタイツの間に指を滑り込ませる。程よくついた贅肉の柔らかさに興奮を覚えるがそれには言及しない。翔太郎としては魅力的なのだが、小春は絶対気にするタイプだ。仮にぷにぷにしているなどと言おうものなら、ダイエットすると言い出しかねない。絶対に今の状態を維持して欲しい。
タイツを下まで下ろして、今となっては慣れた手つきで下着も脱がせると、
「小春、ベッドに座ってて」
裸になった小春にそう言って、翔太郎は机の引き出しに手をかけた。優衣は翔太郎が手に取った物を見てまさかと口を開いた。
「お兄ちゃんそれって……」
「アイマスク、これ前から使ってみたいと思ってたんだよね」
目隠しプレイというとSM感のあるプレイになるが、小春は若干Mっ気があるのでハマるだろうというのが翔太郎の読みだった。
「どうかな小春、使ってみない?」
「……翔ちゃんがしてみたいなら、いいよ……?」
少し悩む素振りはあったが、それでも小春は熱っぽい表情で小首を傾げてそう言った。その仕草と、翔太郎のために尽くそうとするいじらしさに、翔太郎の胸には昂りが募った。
「じゃあ……はい、つけてみて」
「うん……」
小春は手渡されたアイマスクをして、その間に翔太郎は優衣を手招きした。
「優衣、手伝って欲しいことがあるんだけど…………」
不思議そうに近寄ってきた優衣の耳元に手を当て、小春に聞こえないように小声であるお願いをした。
「…………してくれる?」
「なるほど。了解」
アイマスクをした小春は裸のまま視界を奪われたことで、内股になって握りこぶしを作り不安げにしている。翔太郎はまずリラックスさせようと声をかけた。
「小春、手握るよ」
「うん」
翔太郎の手が小春の拳を包むように触れる。すると、小春は縋るように翔太郎の手を握ってくる。何も見えない状態で、唯一そこにあることが分かる翔太郎の手に安心を求めていた。
「小春、大丈夫。ここにいるよ」
翔太郎はもう片方の腕で小春を抱きしめて、少しの間そのままで落ち着かせると、ベッドへ押し倒す。目の見えない小春が壁にぶつかってしまわないように気をつけて寝かせた。
仰向けになった小春の閉じた脚の間に手を入れて、ゆっくりと股を開かせた。
翔太郎は開いた脚の間に移動して、恥ずかしそうにする小春の股間に顔を近づける。きっと小春は翔太郎がどこにいるのか体温や息遣いでなんとなく感じ取っているはずだ。
「小春、俺の顔が今どこにあるかわかる?」
「えっと……私の……お、お股……?」
「正解。小春のおまんこの目の前。ほら……ふーっ」
「っ……!」
翔太郎が小春の秘部に軽く息を吹きかけると、それだけで小春の体がビクッと跳ねる。
翔太郎は更に口を近づけるが、決して小春のヴァギナには触れない。
「もう、本当に触れる寸前だよ」
翔太郎が喋るたび、小春の秘部には息がかかる。
小春は視覚で捉えることはできないが、それ以外の感覚が翔太郎が大事なところに迫っていることを知らせていた。
くすぐったい。もう触って欲しい。そう思っても翔太郎はなかなか触ってくれない。もう自分から下品に腰を押し付けてしまいそうだった。
「触って欲しい?」
翔太郎が楽しそうな声音で聞く。
「……しょ、翔ちゃん……いじわるぅ……」
泣き出しそうな声で求める小春は、思わず脚に力が入って小刻みに震えていて、それを見た翔太郎が遂に動いた。
翔太郎は少し顔を上げて優衣に合図を送る。すると、ニヤリと笑みを浮かべた優衣が小春の胸へ手を伸ばして――――
「ひうっ!」
優衣の指が小春の乳首を摘んだことで、下半身に意識が集中していた小春は不意打ちを受けて、ビクッと全身を震わせて大きな声を上げた。
翔太郎が先程したお願いとは『合図をしたら小春の乳首を責めて欲しい』であり、その目論見は見事に成功を収めた。
優衣は乳首をいじりながら、目隠しをしている小春の耳元で囁いた。
「小春ちゃん、気持ちいい?」
視界が遮られていることで鋭敏になった触覚と聴覚が、刺激を何倍にも増幅して小春を襲う。
「うぅ……っ! ……ゆいちゃん……!」
小春がその刺激を受け入れ始めて、翔太郎がどこにいるのか忘れそうになった頃、翔太郎はその絶好のタイミングを逃さない。
翔太郎は舌を伸ばして、陰唇がいやらしくヒクつく秘部を舐った。
「ひゃっ!」
再び小春の体が跳ねた。
もう濡れた小春の膣からは蜜がこぼれそうになって、翔太郎の舌がそれを掬う。
「ぁぅ……こ、これ……いつもより、気持ち良くて……だめぇ……」
暗闇の中で二人に同時に責められて、小春はシーツをギュッと握ってよがっていた。
翔太郎はしばしそうやって小春を愛撫すると、
「それじゃあ、そろそろ……」
そう言って服を脱ぎ、ペニスにコンドームを着けて準備を整えた。
息が上がっている小春の脚の間に入って言う。
「小春、いくよ」
目隠しをしている小春にも、翔太郎の滾ったペニスの先端が膣口に当たっていることが分かった。ペニスの熱がいつもより鮮明に感じられていた。
「……うん」
少し緊張しながら頷くと、太いそれが鋭敏になった膣にゆっくりと入ってきた。
「あ、ぁっ…………」
いつもより大きい、そう感じるのは視界を塞がれて敏感になっているからか、それとも膣がいつもよりキツく締め付けてしまっているからか。
翔太郎はペニスを奥まで挿入するとゆっくり動き始める。
「んっ……んっ……あっ……」
翔太郎の目には目隠しをしている小春が映って、その彼女に挿入しているというだけで興奮した。
その興奮は当然腰の動きにも影響する。次第に早くなる抽送に、小春の嬌声も激しさを増していく。
「んんん……ああっ、んっ……!」
小春は視界を奪われ何も見えない状態で性交をしている。相手が翔太郎だと分かっていても、見えないというだけで否応なしに不安が生じる。でも、それがどうしようもなく気持ち良かった。
「あっ、んんん! あっあっ……あぁっ!」
本能的に翔太郎を感じようとして、小春は手を伸ばして探そうとする。
「翔ちゃ、ぁん……っ! 手、にぎって……!」
安心を求めて
「小春、ここだよ……」
「あっ……翔ちゃん……はなさないでぇ……」
「うん、離さない」
指を絡ませて恋人繋ぎのまま腰を打ちつける。
「ああ、うっ……ん、んっ……!」
それでも小春は更に翔太郎の存在を求める。
「あ、んっ……翔ちゃん……! もっとぉ、ちかく……っ!」
小春に求められて、翔太郎は前に倒れるように体を小春に密着させた。
繋いでいた手はお互い背中に回して抱き合う。その体勢のまま、翔太郎は腰を押し込むようにピストン運動をしながら、小春の耳元で吐息混じりに絞り出すような小さな声で言う。
「小春……気持ちいいっ……」
「ああぁっ……しょーちゃんっ……! ん、んんっ……うぅっ……!」
キュッと膣が締まって、翔太郎はペニスに一層快感が集まってきていた。
「小春っ……イき、そう……!」
「ぅあっ……んんっ! き、きてぇっ……!」
小春が脚を腰に回してきて翔太郎はホールドされてしまう。
それでも翔太郎は必死に腰を振って、限界の訪れたその瞬間に腰を思いっきり押し付けて、小春の脚のホールドも相まって深くまで届き――――
「う、あっ……イっク……!」
「ん、あぁ、ああぁっ!」
――――全身が触れ合って一つになったまま、果てた。
小春の中でペニスが脈打って、それが収まるまで小春の脚は翔太郎の腰を押さえつけて離さなかった。
「はっ、はぁはぁ………で、出てる……」
「はぁ……はっ、ふぅ……」
お互い荒くなった息が耳元にかかった。
行為が終わって役目を果たしたアイマスクを外すと、小春は翔太郎が視界に映ったことに安堵して頬を緩めた。
「翔ちゃん……」
小春は確かめるように翔太郎の顔に手を伸ばして頬を撫でると、唇を重ねた。
落ち着いてからペニスを引き抜くと、大人しくしていた優衣が急にアイマスクを手に取って――――
「じゃあ、次はお兄ちゃんが目隠しね」
「うおっ」
突然、翔太郎の視界は真っ暗になってしまう。背後から肩に手が置かれて、
「今日はお兄ちゃんは寝てればいいから」
耳元で優衣が囁いた。楽しそうにする優衣に後ろへ引き倒されて、翔太郎は仰向けに寝転がった。
全裸で目隠しをして横になっている姿を優衣と小春に見られていると思うと、恥ずかしいような興奮するような心地で、無意識に体がこわばってしまう。一度射精して小さくなっていたペニスも徐々に大きくなっていく。
「お兄ちゃん……」
吐息のかかる距離、優衣が耳元で囁いて、ビクッと身体が震えてしまう。
「触ってもいないのに、おちんちんまた大きくしちゃうんだ。……目隠しして、裸を見られるのがそんなに気持ちいいの?」
「うっ……」
妹に情けない痴態を見られて言葉に詰まる。しかし、優衣は遠慮無しに言葉を重ねて、
「やっぱりお兄ちゃんは……へ・ん・た・い、だね」
その一言で翔太郎の亀頭を剥き出しにしたペニスがピンッと勃っていた。
頭の横にいた優衣が移動する気配がして、下半身の方から声が聞こえた。
「ねえお兄ちゃん、このおちんちんどうして欲しい? 触って欲しい?」
触れていなくても分かる。エアコンの風が不自然に遮られ、生温かい温度が伝わる。優衣の手がペニスに触れる寸前のところにあるのだ。
しかし、その感覚が急に消えると今度は――
「それとも……口でして欲しい?」
――優衣が言葉を発するのに合わせて、吐息がペニスにかかった。
その僅かな刺激で、重力に負けて体側に傾いでいたペニスがビクッと跳ねて何かに当たる。それは多分、今言葉を発していた妹の柔らかい唇に違いなくて……。
「あっ……もう、そういうことするんだったら容赦しないから……」
次の瞬間、ペニスの先端のあたりをふわっと熱が包む。その熱は一定の間隔で引いて、またやってくる。
分かる。これは優衣の息だ。大きく開けた口がペニスを咥えようとして、しかし触れないように口を閉じずにいるのだ。
数センチか数ミリか、見ることのできない翔太郎には分からないが、優衣の温かい口腔がペニスに迫っていることを実感しながら、あの舌と唾液が絡みついて温かく包み込む感覚をおあずけされている。腰がヒクヒクと動いてしまいそうだった。
「ゆ、優衣……もう……」
「
無慈悲にも翔太郎のおねだりは却下される。
「小春ちゃんも、さっきの仕返ししてあげなよ」
「え、えっと……じゃあ……」
優衣に言われた小春がすぐ横に移動してくる気配がして、期待とともに何をされるのか待っていると、スーッと胸を何かが撫でて翔太郎はビクッと震える。
小春は隣に寝転がったようで、胸やお腹をフェザータッチで撫でながら体を寄せてきて、小さく震える声で、
「翔ちゃん……私すごく恥ずかしかったんだから……。でも、すごく気持ちよかったから……翔ちゃんも気持ちよくしてあげるね……」
そう言うと、小春は耳を唇で挟んで甘噛みしてきた。
「小春……っ」
こんな芸当もできるようになったのかと若干の感動を覚えながら、視界を塞がれた翔太郎はいつも以上に敏感になった感覚で小春の愛撫を味わった。
「じゃあそろそろ私も……」
優衣がそう言うと、亀頭に何かがちょこんと触れた。ちょんちょんとつつくように触られて、それと同時に熱い吐息もかかる。翔太郎は何が当たっているのか理解した。優衣の舌だ。
優衣の舌がペニスに触れていると頭が理解した瞬間に、ペニスがビクッと跳ねた。しかし、もったいぶるような刺激が続いて、翔太郎は苦悶の声を上げた。
「あぁ……ゆ、優衣……もう、咥えて欲しい……」
「えー、どうしよっかなー」
優衣はからかうように言って、ぺろりとペニスを一舐め。妹にいいように弄ばれているという恥辱の気持ちよさに翔太郎が震えた。
その姿を見た優衣は満足げに笑みを浮かべて、遂にペニスを口に含んだ。
「うおっ……」
焦らしに焦らされてようやく訪れた快感でペニスが蕩けそうだった。唾液でトロトロの口内で舌が絡みつく感覚が頭にまで響いてクラクラする。
優衣はそれにとどまらず、頭を振って更に強烈な刺激で責め立てる。
「あっ、やばいっ……!」
急激に駆け上がってくる射精感に焦りの声を上げると、優衣の口はあっさりとペニスを手放してしまった。
「まだ出しちゃだめ」
射精をおあずけされた翔太郎は深く息を吐いた。
優衣が服を乱暴に脱ぎ捨てる音がして、翔太郎に抱きつくように横になっていた小春は、これからする行為の邪魔にならないようにそこから一歩引く。
「出すのはこっちでね」
優衣は言いながらペニスにコンドームを着けて、翔太郎に跨った。
優衣の手がペニスに触れて、ペニスの先端がどこかに当たっている感覚がした。
「ねえ、今お兄ちゃんのおちんちん、当たってるよ」
当たっているのがどこなのかは言われなくても分かり切っていた。ゴクリ、翔太郎は唾を飲み込む。
「私が腰を下ろしたら入っちゃうね。ほら」
先っぽだけ、優衣の膣口を押し広げるようにして、ぬぷりと飲み込まれる。しかし、優衣はすぐに腰を上げて、また下ろして、ペニスの先だけを出し入れする。
翔太郎は下から突き上げてペニスを膣へねじ込みたい衝動をじっと我慢する。
「――っ………」
翔太郎の顔が苦悶に歪むと、
「私も限界だから……いくよ――」
優衣はそう言うと腰を一気に下ろして、優衣の重さを感じるとともに、ペニスが膣肉の温かな快楽に包まれた。
「んあっ……!」
優衣からも声が上がり、そのまま数秒固まる。
ふーっと息を吐きながら動き出した優衣は、翔太郎のお腹の辺りに手をついてきて腰をゆっくりと前後に振り始める。ペニスが奥に当たり、膣壁に擦り付けられる。じわりじわりと高まっていく感覚があった。
「ん……んんぅ……」
翔太郎は視界を奪われた状態で何もできず、自分の上で妹が腰を振っている状況に興奮して、思わず脚や手に力が入る。
やがて優衣の腰を振る動きは前後から上下に変わった。抜き差しによってペニスが扱かれ、膣奥にペニスの先がコンコンと当たる。
「あっ……あっ……んぅっ……!」
優衣は艶めかしい声を上げながら、一定のリズムで腰を振り続ける。
ふとピストンが止まったと思ったら、優衣が前傾して体を密着させてきたようで、心地いい重さがのしかかってきた。
「はぁ……おにいちゃん……気持ちいいね」
優衣が息を乱したまま耳元で言った。
それが引き金になって我慢の限界が訪れた翔太郎は、腰を揺さぶって下から優衣を突き上げ始めた。
「あっあっ……んんんっ……!」
「優衣っ……」
優衣が肩に掴まってきて、翔太郎も優衣の背中に手を回して抱きつく。翔太郎はその状態で腰を動かし続ける。
「ああんっ……ううぅっ……!」
鋭敏になっている聴覚が優衣の喘ぎ声をより鮮明に感じ取って興奮を催す。
「もうっ……出そうっ……!」
散々焦らされた挙げ句、ここに来て射精を我慢するのは不可能だった。優衣もそれを汲み取って、
「うんっ……は、ぁっ……! いっぱい、我慢したもんねっ……! あっ、んっ……出してっ、いいよ……!」
「優衣っ……!」
翔太郎は今度こそ込み上げる射精感に従って腰を突き上げ、一番気持ちよくなったところで最後の一突き。
――――ビクンッ、ビクンッ……
妹の膣奥に密着させたペニスが脈打って白濁液を吐き出した。
「んぅ、んんんんっ!」
膣がキュッと締まって、抱きしめた腕の中で優衣が小さく身震いしていた。
それが落ち着いてアイアマスクを外すと、火照った優衣の顔が目の前にあった。ようやく目が合ったことで優衣は笑みを浮かべると、密着した体勢のまま力の抜けた様子で唇を押し付けてきた。
そうしてイチャついていると小春も寄ってきて、三人で身を寄せ合って温まった。
冬のベッドの上は日だまりみたいに温かかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
後戯も楽しんだ後、三人とも服を着て部屋でくつろいでいると、優衣が突然思い出したように尋ねてきた。
「そういえば、誕生日プレゼントはまだくれないの?」
写真を撮った後はケーキを食べて情事にふけってと、準備をするタイミングが無かったのだが、優衣に言われて翔太郎は立ち上がった。
「じゃあそろそろ用意してこようかな。二人はここで待ってて」
翔太郎は机の下に隠していたプレゼントらしき物を持って部屋を出て行った。
渡す前に準備が必要な物とは何なのか、優衣と小春はあれこれ予想を言い合っていると、翔太郎は十分ぐらいで戻ってきた。
手にはシンプルな巾着型のギフトバッグを持っていて、それを二人に手渡した。
「はい、これ誕生日プレゼント。開けてみて」
言われた二人は待ちきれない様子で、返事もせずにギフトバッグを開けると中からは白い箱が出てくる。二人が同時にその箱を開けると――――
「あっ、これもしかして今日の……」
二人が手にしていたのはアクリル製のフォトフレーム。その中には今日撮った三人の写真が入っていた。フレームの下側には年と月が入っているが、これは翔太郎がシールを買ってきて自分で入れたものだ。
「前に小春の家に行った時、飾ってあった写真が小学生の頃のだったなって思い出して。実は俺達の飾るような写真ってまだ少ないし、三人の写真が飾れたら良いなぁと思ったからさ」
小春は驚きと喜びが半々といった顔で、口を開けたまま手に持った写真を眺め、優衣はニヤッと笑って付属の脚を取り付けると、机の上に立てて満足そうにする。
「ちょっと私が変な顔してるのは不服だけど……お兄ちゃんにしては洒落たこと考えるじゃん」
「翔ちゃんこれ素敵だよ! ありがとう! 飾るね!」
好評なようで翔太郎は胸を撫で下ろしていると、優衣が上機嫌に口を開いて、
「クリスマスプレゼントの方も楽しみにしてるからね」
「……それ考えてたんだけど、やっぱりこれが誕生日プレゼントとクリスマスプレゼント一緒ってことにならない? 正直もうあんまり思いつかなくて……」
「だめ。誕生日とクリスマスは別でしょ。こんな気合い入れなくても、本当に簡単なものでもいいから」
「……分かった、じゃあ何か用意しておくよ」
翔太郎が頷くと、小春は期待のこもった視線を向けてくる。
「私も楽しみにしてるね。翔ちゃんへのプレゼントも用意しておくから!」
そう言われて、クリスマスは誕生日と違ってあげるだけでなく貰えることを思い出す。そう考えるとプレゼント交換が楽しみで、優衣が欲しがる気持ちがなんとなく理解できた。
「そういえば、二人はプレゼント交換しないの?」
「今日はしないけど、クリスマスはするよ。翔ちゃんから二個貰うから、私達は一個でいいよねって話になって」
翔太郎の知らないところで話がついていたらしく、二人は確認するように視線を交わした。
「俺だけ二個なのか……」
翔太郎がそう漏らすと、
「そりゃ、好きな人からのプレゼントは特別だし」
優衣は当然という顔で言って、同意見らしい小春がはにかむ。
『好きな人』『特別』、そう言われるのは悪い気がしなくて、
「まあ確かに、そういうもんだよね」
翔太郎が口元をニヤけさせて言うので、二人はくすくすと笑った。
翔太郎は二人のその笑顔がなんだかとても愛おしくて、二人が今ここにいることに、そして生まれてきてくれたことに自然と感謝の念が湧いてきた。
今までは大した意味を感じたことがなかった誕生日も、改めて好きな人を祝ってみれば意外なほどに喜ばしくて、誕生日は祝われるよりも祝う方が嬉しいのだと初めて知った。
三人で共有したこの時間と感情は、きっと写真を見る度に思い出すだろう。
いつまでもこの幸せが続きますようにと、密かに祈った。