小春との放課後の一件があった翌日。土曜日で家にいた翔太郎は、考え事をしながらエロゲーをプレイしていた。
結局相談したかったことは有耶無耶になってしまったが、小春も昨日の行為で嫌がる素振りは見せなかった。
女の子にとってはそこまで嫌なことでもないのかと、翔太郎は自分の感覚を疑った。疑いながらも、さすがにそんなことないだろうとも思う。
現状を改めて確認すると、妹と幼馴染に性欲処理を手伝ってもらうというとんでもないイベントが立て続けに発生し、しかもお願いすればまたしてもらえることになっている。
どう考えてもおかしい。自分が今置かれている状況は明らかにおかしいのだ。どうしてこうなった?
次に小春と合う時にどんな顔をすればいいのか分からない。そういう意味では昨日が金曜日で良かった。土日でお互い多少は整理ができるだろう。……できるのか?
そんなことを考えて悶々としながらエロゲーをプレイしていると、
――――コンコンッ
「ん? はい?」
考え事をしていたせいだ。パソコンの画面に映し出されているのが男女の情事であることなど忘れて、ゲームウィンドウを隠すこともせずに返事をして振り返った。
「お兄ちゃん? ちょっと聞きたいんだけど…………あっ」
優衣はパソコンの画面を視界に入れるとピタッと固まって、
「ごめん、取り込み中か。失礼しました」
察して踵を返した。
「あっ……ちょっと待って!」
遅れて事態に気づいた翔太郎は、ゲームウィンドウを閉じて妹を引き止めた。
「違うんだ! これはそういう目的で見てるわけではなくて……ほら勃ってないでしょ!?」
翔太郎は立ち上がって、妹に膨らんでいないズボンの股間を見せつける。
「ん? まぁ確かに……」
「主人公とヒロインが愛を確かめるシーンであって、いかがわしいだけのものじゃないからね」
「ふーん、そういうものなんだ」
「まぁ抜くこともあるっちゃあるけど」
「あるんかい」
翔太郎は妹のツッコミを聞き流して、優衣が手に持っている本を見て尋ねる。
「それで聞きたいことって?」
「数学で聞きたいところがあって」
「そういえばそろそろ期末テストだもんな。優衣は高校に入って初めての期末か」
「うん。それでここなんだけど……」
「ああ、場合の数ね」
翔太郎は優衣の一つ上の学年なので教えられて当然とも言えるが、実は翔太郎はかなり勉強ができる。翔太郎の通っている高校は市内で一番の公立校で、しかもこと理系科目においては校内でも上位の成績だ。
「まず組み合わせと順列の違いは理解してる?」
「一応」
「それが分かってるんだったらこの問題は…………」
天才ではなく秀才を自称する翔太郎の教え方は理路整然としていて、優衣もすぐに理解することができた。
「なるほど……そういうことか。お兄ちゃんの説明分かりやすくて助かった。真っ昼間からエッチなゲームやってるお兄ちゃんがなんでこんなに頭良いのかだけは謎だけど……」
「……エロゲーは関係ないだろ」
不満げな翔太郎を無視して優衣が言う。
「ついでに、できたら古文も教えて欲しいんだけど」
「古文かぁ……文系はあんまり上手く教えられる自信ないんだよなぁ」
「お兄ちゃん完全に理系だもんね」
「うん、誰か教えてくれそうな人いないの?」
「うーん……クラスの子に聞くぐらいかな?」
「そっかぁ……あっ……あー、だったら小春に頼んでみようか?」
小春も翔太郎と同じ高校に通っている時点でそれなりに勉強はできる。
昨日の出来事が気にはなるが、優衣を間に挟むことになるので、無理にでも普通に接するよう心がけることになってちょうど良いかもしれない。
「小春ちゃん?」
「そうそう、小春は文系だから古文できるんじゃないかな」
「悪い気もするけど……お願いできるなら助かるね」
「それじゃあ早速聞いてみるか……」
翔太郎はスマホを手にとってメッセージを送る。
『明日暇? 優衣が古文教えて欲しいって言ってるんだけど家来れる?』
小春からの返事は一分と待たずに送られてきた。
『いけるよ! それなら私も翔ちゃんに理系科目教えて欲しいな。いい?』
もちろん小春のお願いを断る理由も無いので、三人で勉強会を行うことになった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日、約束通りに小春が家にやってきた。
「お邪魔します」
「いらっしゃい、急に呼んでごめんね」
「ううん、私も勉強教えて欲しかったから良かったよ」
翔太郎は普通に話せていることに安心した。この調子なら問題は無さそうだ。
「小春ちゃん久しぶり」
「優衣ちゃん? 大きくなったね!」
「そう言う小春ちゃんだって、小学生の頃と比べたら大きくなったでしょ」
小学生の頃は度々小春が遊びに来ていたので、優衣も一緒になって遊んでいた。中学に上がる頃にはめっきり来なくなっていたので、二人が顔を合わせるのは数年ぶりか。
談笑しながらリビングに移動して、問題集とノートを広げる。
「飲み物麦茶でいい?」
「うん大丈夫だよ、ありがとう」
翔太郎がコップに麦茶を注ぐ間、優衣は小春の顔をじっと見ていた。
「なんか小春ちゃん可愛くなったよね」
「え? そ、そうかな?」
「大人っぽくなったというか……お兄ちゃんも思わない?」
大人っぽい。その単語から想起されたのは、夕暮れの部室での乱れた小春の姿だった。
「えっ、あー、うん。そうかも……?」
「ほ、本当? ……あっ、ありが、とぅ……」
尻すぼみに言う小春も恐らく同じことを思い出していただろう。顔を合わせることができなかった。
「んー?」
突然漂うぎこちない空気に、優衣は首を傾げた。
翔太郎はなんとか誤魔化そうと、優衣に口を開かせないよう割って入る。
「は、はい、麦茶ね……それじゃ勉強始めようか?」
「そ、そうだね!」
小春も調子を合わせてくれたので、優衣は疑問に思いながらもそれを飲み込んだようだった。
「俺は暗記系やってるから、理系科目全般で聞きたいことあったらいつでも言ってね」
「うん。優衣ちゃんは古文やりたいって話だったよね? 学校で助動詞とかはもうやったかな?」
「習ったけど活用とか接続は怪しいかも」
「覚えること多くて大変だよね。じゃあ確認し直していこっか」
優衣と小春の関係は昔と変わらず良好なようで、丁寧に教える小春に優衣も素直に従っていた。
優衣が穴埋めテストをやって暗記している間に、小春は数学を勉強していて、時々詰まると翔太郎に助けを求めた。
「翔ちゃん、この積分の問題上手くできないんだけど……」
「ん? ああ、これは多分ここをtって置くと…………」
小春は頬を薄く染めて説明する翔太郎の顔をチラチラと窺い、その様子を優衣が横目で観察するが、翔太郎はそんなことには全く気づかずに説明を続けるという構図になっていた。
そんなこんなで三時間ほどが経過し、翔太郎は今日やるつもりだった分の勉強を終えてしまった。
「ふー、ちょっと休憩。部屋からなんか適当に他の教科持ってくる」
翔太郎がそう言って立ち上がると、続いて小春が声を上げて立ち上がった。
「あ、私も久しぶりに翔ちゃんの部屋見てみたい」
「え? いや、まあいいけど……別に面白くないと思うよ?」
変な物出しっぱなしにしてないよなと、内心不安になりながら小春を連れて階段を登った。
「お邪魔しまーす……」
小春はおっかなびっくりといった様子で覗き込んでから部屋に入ってきた。
「別に普通でしょ?」
「思ったより綺麗にしてるんだね」
そもそも物が少ないのもあり、翔太郎の部屋は片付いている印象を与えた。
しかし、そんな中で唯一出しっぱなしにされていた物があった。
デスクトップパソコンが置かれている机、そこに少し厚みのあるB5ほどの大きさの箱があった。小春の目を引いたのは、その箱に描かれているイラストが美しかったからだ。
「ん? これ何?」
紺青に茜が差す黄昏時の広い空を背景に、波打ち際で裸足の少女が両手を広げて歩いている、そんなイラストだった。その素晴らしい色使いと印象的な構図は、小春にひと目で興味を持たせるには十分だった。
「あっ」
小春が手に取ったそれは、昨日プレイするために出してしまい忘れていた物。
「ちょっと待っ……」
小春は何気なく箱をひっくり返して裏面を確認すると、
「……ぴゃっ!?」
目を丸くして小さな悲鳴を上げた。
それもそのはず、箱の裏面には表のイラストからは想像できないような、淫らなシーンが描かれていたのだ。
「あー……なんでエロゲーのパッケージって表はすごくいい感じなのに、裏にはエッチシーンのCGを載せるんでしょうか…………」
「もー……またこんなえっちな……。翔ちゃんはいつもこんなこと考えてるの……?」
「いやまぁ……はい、すみません……」
とっさに謝罪する。えっちでごめんなさい。
俯く小春はもじもじとしながら小さな声で、
「……ね、ねぇ翔ちゃん……あのね……実は……」
その先を言おうか言うまいか少し悩んでいる様子だったが、意を決した小春はスッと息を吸ってから言葉にした。
「……この前の、その……部室でした時から、私もえっちなこと考えちゃって……気持ちよかったのが忘れられなくて……」
小春の表情は徐々に熱を帯びてきていた。
「私ね、翔ちゃんのせいでえっちな子になっちゃったみたいなの……だからね……」
小春が自分でスカートのホックを外す。スカートは自重でストンッと落下し、赤い下着が忽然と姿を現した。
「小春……!?」
小春はもう完全にスイッチが入っていた。上目遣いのその目は、あの時と同じように蕩けていた。
「……勉強だけじゃなくて、えっちなことも、もっと教えて……?」
幼馴染は思っていたよりもスケベだったらしい。最高である。
どうやらテスト勉強だけでなく、えっちな勉強会もする必要がありそうだ。
「……わかった、ならしよっか……えっちなこと」
部室でした時はお互いに自慰を見せあった。そこからワンステップ進むなら……
「この前は自分でしたからさ、今度は触り合うのは、どう……?」
「触り、合う……?」
「俺が小春のを触って、小春は俺のを触る、ってこと」
「翔ちゃんが私のを……。う、うん、いいよ」
「俺脱ぐからさ、小春のも見せてよ。小春の、おまんこ……」
「わ、わかった…………」
翔太郎は小春に先立ってズボンとパンツを下ろして、まだ半勃ちの性器を露出させた。
小春もそれを見ると、パンツを下げて片足ずつ上げて脱ぎ去る。その仕草がやけに艶めかしくて、翔太郎は息を呑んだ。
「はい……脱いだよ……」
何も纏っていない小春の股間には、女性器の割れ目を巧妙に隠すように陰毛が茂っていた。
白い肌の一角に黒く存在を主張する陰毛は、小柄な彼女が十分女性的な魅力を兼ね備えるまでに成長したことを雄弁に物語っていた。端的に言ってエロい。
お互いに性器を露出させて向き合う瞬間の鼓動の高鳴り。二人の興奮は加速度的に高まっていった。もうペニスはこれ以上ないほど大きくなっていた。
小春に近づくために一歩踏み出す、その一瞬がやけに長く感じた。
近づいて斜めに向き合う。もうお互いの右手がお互いの性器のすぐ近くにあった。
「触っていい……?」
「……どうぞ…………」
目をつぶって俯く小春が頷いたのを見てから、秘部に手を伸ばす。
恐る恐る、中指を割れ目に沿わせるように、そっと触れて――ピクッ――小春の体が跳ねる。
「大丈夫?」
「びっくりしただけだから……大丈夫、触って……」
「わかった」
「ん……」
秘部を指で軽く撫でる間、小春は緊張しているのか小刻みに震えていた。
翔太郎は小春に安心して欲しくて、空いている左手で小春の肩を抱き寄せた。
「あ……」
「大丈夫、優しくするから」
「うん、ありがとう」
「小春も俺の触ってくれる?」
「やってみる」
小春は小さな手を翔太郎のペニスに伸ばして、指先で亀頭に触れた。
翔太郎はいきなり走った甘い刺激に、思わず右手が止まる。
「っ……」
「すごい……ピクって動いた……」
「握ったり扱いたりして大丈夫だから」
「う、うん」
小春は優しい手つきでペニスを握って、少しずつ手を動かしてくれる。
翔太郎も負けじと、指に感じた小さな蕾を軽く転がした。
「あっ、んっ……」
小春の小さな嬌声が上がった。
翔太郎は秘部をなぞって指を下へ動かすと、そこにもう湿り気を帯びた蜜壺を見つけた。そのまま導かれるように、未開拓の秘境へと踏み入った。
「あっ、翔ちゃんの指が……んっ、私の、中に…………」
小春の息遣いを感じながら、奥へ奥へと進んでいく。中指が奥まですっぽりと入ったら今度はスローテンポで抜き差しした。
指を曲げた時にザラッとした感触を指先に感じて、同時に、
「ぁ、んっ」
小春から反応が上がった。
その場所を指の腹で優しく撫でてみる。
「んんっ……!」
どうやらここがいいらしい。小春はペニスをいじる手も止めてしまっていた。
「小春気持ちいいの? 手が止まってるよ」
「はぁ……翔ちゃん、んっ……そこ、気持ちいいの……あ、あっ……」
「俺のことも気持ちよくして? もっと激しくしても大丈夫だから」
「うん、ふぅ……やって、みる」
小春の手が激しく動きだしてペニスを扱きあげる。
「あぁ、いい感じ、気持ちいいよ小春」
翔太郎は感じながらも、小春の中で動かす指は止めない。クチュクチュと水音を立てて、垂れてきた愛液で翔太郎の手は濡れていた。
「んん、はっあっ……あぁっ……」
お互いに限界は近かった。
「はぁ……小春、イキそうっ」
「んんんっ、ぁっ……わ、わたしっ、も……!」
体重を支え合うように片手で抱き合って、
「う……くッ!」
「んっんっ、はっ、はっぅううんッ!」
二人はほとんど同時に達して、ビクンッと体を震わせた。
「はぁはぁ……」
小春の太ももには白濁液が流れ、足元の床には透明な液体が垂れていた。
「ふぅ……小春、どうだった?」
「うん……気持ち良かったよ」
抱き合った姿勢のまま、至近距離で小さく笑い合う。
小春は学業もえっちなことも真面目に取り組む優等生だ。非常に教え甲斐がある。
「ねぇ、翔ちゃん、また…………」
小春が言いかけたところで――――
「小春ちゃんー? お兄ちゃんー? 何やってるのー?」
優衣の声が遠くに聞こえた。
「わわっ」
「まずい! 急いで片付けよう!」
大慌てで飛び散った液体を拭き取って、服を着ると二人はリビングに戻った。
あまりに焦っていたせいで、翔太郎が部屋に来た最初の目的である教材は手に無く、しかしそれが優衣に指摘されることはなかった。