冒険者のレオンは、頭を打った拍子に、前世の記憶を思い出した! そして、今いる世界が『貞操観念逆転世界』――あべこべ世界であることに気付く!
ある日、レオンはAランク冒険者のハクアとともに、レイドに参加し――怪我を負って、彼女と共に入院する!
その際、偶然ハクアの独り言を聞いてしまい、彼女が実は処女であることを知る!
「お礼にさ、処女、卒業させてあげよっか?」からの「うそだよ、ざぁ~こ♡」「す~ぐ本気にするんだから♡ でも仕方ないか♡ 処女だもんね♡」と煽りまくるレオン!
レオンはハクアを煽って遊ぶ! ハクアはレオンを分からせると決意する!
こうして、二人の歪な関係は始まった!
僕とハクアは退院し、普通の冒険者生活へと戻った。
ギルド会館で、僕とハクアはテーブルを挟んで向かい合う。
「ハクア、今日予定ある?」
「特に決まった予定はありません。今から決めるところです」
「一緒にクエスト行かない?」
「……いいんですか?」
ハクアの目には、ほのかな期待と不安があった。異性からペアに誘われるというのは、嬉しいことなのだろう。たとえ、相手が僕であっても。
「うん、せっかくだしさ」
「わ、分かりました」
僕とハクアはクエストボードの前に移動し、良さげなクエストを探し始める。
「退院したばっかりだし、軽めのやつ行こうよ。これとか」
僕が指し示したのは、『花畑の害獣討伐クエスト』だ。Cランク相当のクエストであるため、ハクアと僕にとっては余裕である*1。
「そうですね。それにしましょう」
ハクアも了承してくれたので、僕と彼女は受付でクエストを受注する。
その手続き中、なんとなく周りを見渡す。
ギルドメンバーたちは、チラチラと僕らを見ていた。
「おい、あれ。レオン君がハクアさんと一緒にいるぞ」「珍しくない? レオン君が女性とパーティー組んでるの、初めて見た」「まさか、付き合ってたりして……?」などと、あちこちからヒソヒソ話が聞こえてくる。
ハクアも男性と一緒にクエストを受けたことはあるだろうが、それは男女混合のパーティーだ。2人きり、というのはないだろう。
つまり、僕とハクアのペアは、目立つ。
それはハクアも感じていたのだろう。少し、落ち着かなさそうだった。
ただ、ほんの少し口角が上がって、ソワソワしている。異性とペアを組む、という事実と、そう噂されていることが、誇らしくて鼻が高い様子に見えた。
手続きを終えて、受付を離れる。
僕はハクアの耳もとに唇を寄せ、彼女にだけ聞こえるように囁く。
「異性とペア組むだけでソワソワしすぎだよ(笑)♡ 処女さん(笑)♡」
「ッ~~~~~~~~!!!!!!」
ハクアの顔が真っ赤に染まる。怒りと羞恥の入り混じる、凄まじい表情だった。
こんな衆目のなかで、囁き声で『処女』を煽られる。その屈辱と驚愕は、凄まじいものだろう。
「れ、レオンさんッ……!」
ハクアは怒りの表情を浮かべているが、周囲にギルドメンバーたちがいる手前、大声で怒れない。
拳をわなわなと震わせながら、僕を睨みつけるだけだ。
その時――。
「あれ? なんか珍しいペアじゃない? どしたの?」
ハクアの
「実は、僕とハクアでペア組んでクエスト受けるんだ」
僕がそう答えた途端、ギャルズは「きゃ~!」と声をあげた。
「マジ⁉ 珍しっ! 何十人もの誘いを切り捨ててきたレオンっちが、遂に陥落⁉」
「なになに!? 熱愛発覚っ⁉ スキャンダルっ⁉ 新カップル成立っ⁉」
「い、いえ……そういうわけでは……」
ハクアはニヤニヤしながら否定する。まんざらでもなさそうだった。
「うん、僕とハクアはそういう関係じゃないよ。
その発言に、ギャルズは「きゃ~!」と悲鳴のような声をあげ、周囲のギルドメンバーたちはざわつき始める。
「あ、あの難攻不落のレオンっちをオとすなんて、凄い……!」
「さ、流石師匠……! マジ尊敬……!」
「い、いや、えっ……これはっ……!」
ギャルズはキラキラした眼差しで、ハクアを見つめる。その視線には、尊敬の念が籠もっていた。
ハクアもハクアで、うろたえていた。頬を紅潮させて、僕の方を見ている。
「行こっか、ハクア」
「あ、は、はいっ」
僕はハクアと共に出入口へと向かう。
背後から聞こえるギルドメンバーたちの声は――「ねぇマジで~~~~~?」「私、レオン君のこと狙ってたのに……」「悔しいッ……悔しいよぉッ……!」「あ~……なんかクエスト行く気なくなってきた……今日休もう……」「ちっくしょうッ……! 私も彼氏欲しいッ……!」
――悲鳴やら落胆やら絶望やらが、木霊していた。
*
「あははっ♡ ハクア、顔赤いよ~?(笑)♡」
クエスト地行きの馬車に乗り込むなり、僕はハクアにそういった。
隣り合って座るハクアの方を向きながら、僕は彼女を煽る。
「……ッ! あ、あれ冗談だったん、ですか……?」
ハクアは消え入りそうな声でそういった。
「あれ?(笑)♡ もしかして本気にしちゃった?(笑)♡ 素直~(笑)♡ 処女ってかわいい~(笑)♡」
「は、はあっ!?!?!? 冗談だって分かってましたが!?」
ハクアは赤面したまま、うつむいてしまう。けど、僕は逃がさない。
ニマニマと笑いながら、ハクアの顔を覗き込む。ドキッとしたのか、ハクアは目を見開いた。
まん丸に見開かれた翡翠色の瞳が、逃げ場なく僕を視界に収める。
「また嘘吐いた~(笑)♡ そうやってごまかすしかないんだよね?(笑)♡ 自尊心傷付いちゃった?(笑)♡」
僕は一旦顔を上げて、ハクアの耳もとに唇を寄せる。
「ごめんね(笑)♡ ハクア(笑)♡」
びくっ、とハクアの身体が跳ねた。
至近距離の、耳元での囁きに、身体が反応してしまったのだろう。
ハクアは僕から距離を取り、きっ!と鋭い眼差しで僕を睨む。
「もう貴方の言うことは真に受けませんから!」
*
馬車に揺られること3時間。
クエスト地である花畑に到着した。蜂の魔獣――クイーンビーが、花畑に50匹ほど飛んでいる。
それから更に数時間後――。
「リリヘルム流・一の太刀――
ハクアの一撃が、50匹目のクイーンビーを両断した。
花畑一帯の掃討が終わるころには、日も暮れかかっていた。
「流石だね、ハクア」
「いえ、レオンさんの援護のおかげです」
これでクエストは終わった、と思いきや――。
「ブォオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
花畑の中からイノシシの魔獣――
「レオンさんッ!」
ハクアの鬼気迫る声。魔猪が僕に激突するまで、あと1秒――。
「強化魔法――
剣を抜き放ち、一刀両断。魔猪は真っ二つに焼き切られ、屍と化した。
「ん、おつかれさま。ハクア」
「…………」
ハクアは呆然と、僕を見ている。
「どうしたの? 帰ろうよ、ハクア」
「あ、ええ……。はい」
帰りの馬車に乗り込む。来た時と同じく、隣り合って座る。
がらがら、ごろごろ、と車輪の回る音が鳴る。車窓から見える夜空は、真っ黒な海にきらきらと砂金をまぶしたような星々がきらめいている。
「レオンさん、戦闘職としても戦えるんですね」
「うん、まあね。ソロでも戦えるように、前衛としての鍛錬もしてるんだ」
「……凄いですね。戦闘職でも、魔法職でも、ここまで戦える方は滅多にいません」
「あ、ありがとう」
こんな素直に褒められると、ちょっと照れる。ハクアに照れさせられるの、なんか負けた気分だ。
「ハクアも、めちゃめちゃ強いね。強いのは知ってたけど、想像の3つくらい上を行ってた」
前回のレイドと、今回のクエストで、ハクアの実力はよく分かった。僕が5人いたとしても――多分ハクアには勝てない。
おそらく、うちのギルドで最も強いのはハクアだろう。
だからこそ、ひとつ疑問がある。
うちは200人規模の中小ギルドだ。一方、すぐの隣の大都市には、5000人規模の大ギルドがある。
そっちに行けば、もっと良い稼ぎと、良い環境が手に入る。ハクアなら大ギルドへ行ってもやっていけるだろうに、なぜこんなギルドにいるのだろう。
「その、もし気に障ったらごめんなんだけど、ひとつ聞いていいかな」
「何を質問するつもりかは分かりませんが、処女って煽られるよりは気に障らないと思います」
「それはごめん」
「謝るならもうしないでください」
「無理。ハクアのことからかって遊ぶの楽しいから」
「この性悪男ッ……!」
ハクアは青筋を浮かべる。相当イライラするらしく、目の辺りがぴくぴくっと引き攣れている。
「話戻すんだけどさ、ハクアってどうしてうちのギルドにいるの?」
「…………」
ハクアは、少し沈黙してから、再び口を開いた。
「私、元々は別のギルドにいたんです。隣の都市に大ギルドがあること、ご存じですか?」
「えっ、うん。そこにいたの……⁉」
「はい」
「な、なんで? 絶対そっちにいた方が稼ぎも待遇もいいのに……」
ハクアは僕のことをじっと見つめる。どこか決然としたような、強い意思のある面持ちだった。
「貴方にだけは、話しません」
「え、なんで」
「バカにされるのが分かり切っているからです」
ハクアの意思は硬そうだった。切れ長の目は、普段より一層鋭い。
「教えてよ、ハクア」
「お断りします」
「ハクアの後輩たち、ハクアが処女って知ったらどんな顔するかな?」
「この卑怯者ッ!!!!!!!!!!!!!」
ハクアの顔色が変わる。鋭い眼差しは、理不尽に対する怒りを訴えている。
「なにその反抗的な目?(笑)♡ 立場分かってないの?(笑)♡」
「ぐぬぬぬぬ……!」
ハクアは尚も僕を睨みつけながら、口を割ろうとはしない。
僕は腰を浮かせて、ハクアの真横に座り直し――彼女の耳もとに息を吹き入れるかのように囁く。
「ねえ(笑)♡ 早く教えてよ、ハクア(笑)♡」
「ぐっ……くぅッ……!」
「教えろ(笑)♡ ざぁ~こ(笑)♡」
「くぅッッッッ!!!!!!!!!!!!」
ハクアの身体は、囁き声に反応して、ぴくぴくっと跳ねる。態度に反して、体はちょっと喜んでいるようにも見えた。
「わ、分かりました! 話します! 話しますから離れてくださいっ!」
僕は大人しくハクアから離れる。……ちょっと残念がってるように見えるのは、気のせいだろうか。
そして、ハクアは神妙な顔で話し始める。
「あれは、2年前のことです。私が――」
*
――私が、14歳だった時のことだ。
私は、妹のルーシーと、パーティーを組んでいた。当時から、私たちは大ギルドでも頭角を現していた。
大人顔負けの強さで、ぐんぐんとランクも上がっていった。
ある日、同い年の男の子に、声を掛けられた。一緒にパーティーを組んでもらえないか、というお誘いだった。
その男の子は私たちよりだいぶ弱くて、実力不足だったけれど――男の子に頼りにされるのが嬉しくて、私たちは快諾した。
半年間、私とルーシーと彼の3人でパーティーを組み続けた。
色々な苦難を、ともに乗り越えた。
ある日、彼がドラゴンに連れ去られ、エサとして巣に持ち帰られるという事件が起きた。
私は命懸けで彼を助けに行き、救出した。
その出来事があってから、心なしか彼の態度は変わった。私に対して優しいし、私を見つめる視線にも熱が籠もっているような気がした。
勝った! 遂に、春が来た! と、思った。
私は、調子に乗った。大いに、調子に乗った。
ギルメンたちに、それを自慢しまくった。「もう交際秒読みだし? いや~困っちゃうな~」とか言いふらしてた。
そんなある日、私は彼に呼び出された。遂に告白か?と思ったが、そこにはなぜかルーシーもいた。
そして、彼は私に告げた。
「実は、僕たち、付き合ってるんだ」
「………………………………はい?」
「驚かせちゃってごめんね、お姉ちゃん! 実は――」
ルーシーと彼が、交際し始めた成り行きを話し始める。
彼がドラゴンに連れ去られてから生還したあの日の夜――彼はルーシーの部屋を訪れ、抱かれたらしい。
「怖かったよね? でももうだいじょうぶだよ」とか言われながら、慰められえっちをしていたらしい。
私が『よし! これは好感度上がったでしょ! もうすぐ付き合えちゃったりして……!』とか考えてたあの晩、ルーシーと彼は愛し合っていたのだ。
なんで?????
なんで、命懸けで彼を助けた私より、その夜慰めただけの妹が選ばれるの?
顔? まあ、そうかもしれない。私は目つきも鋭いし、表情も怖いと言われる。だが、妹はぱっちりとした可愛らしい目で、いつも笑顔だ。
胸? 私は胸がない。妹にはある。本当に同じ血を分けた妹なのか疑わしいくらい、妹は胸が大きい。
性格? まあ私は、少しだけ、わずかに、ほんのちょっとだけ、プライドが高い。見栄が邪魔をして本音で話せないことも、ある。
ちくしょうッ……! 全部負けてるっ……!
「――というわけで、付き合い始めたんだっ! ずっと黙ってるのも悪いかなって思って話すことにしたのっ!」
そう。――つまり私は、ただのイタキモ勘違い処女だった。
それを知った私の中に生まれた感情は、ひとつだった。
死にてぇ~~~~~~~~~~~~!!!!!
私は「あ、そうなんですね、おめでとうございます」とだけいって、2人から逃げた。
2人の熱愛は、すぐにギルド全体の知る所となった。祝福ムードの中――私の友達は爆笑していた。
「あれ?(笑) ハクアネキ、彼と交際秒読みだったんじゃないですか?(笑)」
「妹に男取られててワロタwwwお腹痛いっwww」
「ぶっちゃけそんな気はしてたよハクア(笑) ドンマイ(笑)」
――私は、この日決めた。もうこのギルド辞めよう。
そして、今のギルドに籍を移した。
これが、私の黒歴史。好きな男の子を、実の妹にNTRれたという、最悪の悲劇だ。
*
「いや、付き合ってないなら、それNTRじゃなくない?」
私が話し終えるなり、レオンはそうツッコんだ。煽りとかじゃなくて、純粋に疑問に思っているかのように、首を傾げる。
「いえ、NTRです。絶対NTRです。私は、思わせぶりな男と心ない妹に貶められた被害者です」
「いや、普通にフリーの男の子とフリーの女の子が付き合っただけじゃない?」
「ぐはッ……!!!!!!!!!!!」
その言葉が、私の心にグサッと突き刺さる。やめて、痛い。心が痛い。
その時、私の代わりに泣いてくれるかのように、雨が降り始めた。荷台の窓がダダダッと叩きつけられるような、激しい雨だ。
馬車は一旦道を外れ、橋下に入って雨をしのぐ。御者が下りて来て、困り顔で私たちに話しかけてくる。
「こりゃ参った。大雨だ。今日は動けないぞ」
「分かりました。宿を探して泊まります」
「すまないね」
「いえ、問題ありません」
私は宿を探しに行くため、席を立った。大雨は、好都合だったかもしれない。もうこの話題は胸が痛い。
「ねえ、ハクア」
レオンの、スカイブルーの瞳が私を見つめる。
「優しいんだね、ハクア」
さっきの話のどこを聞いてそう思ったのだろう。命懸けで彼を助けたこと? それとも、彼と妹に一言の怨み言も言わずに去ったこと?
いずれにしても――。
「それは、私にとって侮辱にも等しい言葉です。あの男の子にも同じことを言われましたが……結局、選ばれたのは私ではないのですから」
「僕は、ハクアのこと好きだよ」
「……言ったはずです。もう、貴方の言葉は真に受けません、と」
どうせ本気にした途端「冗談だよ(笑)♡ すぐ本気にするんだから♡ でも処女だから仕方ないか~(笑)♡」とか煽られるに決まっている。
何度も同じ手に引っ掛かるものか。
そして、私とレオンは馬車を下りた。
*
僕たちは、近くにあった宿に泊まった。もちろん、僕とハクアは別部屋だ。
僕はお風呂に入った後、部屋に戻り、ベッドに横になる。
ハクアの過去を知って――優しい女の子だな、と思った。
命懸けで誰かを助けて、それでも報われなくて。そんなことがあっても、妹たちに怒りをぶつけることはしなかった。
プライドが高くて、見栄っ張りで、イキリオタクみたいなところはあるけど、そこが可愛い。からかうと、悔しくて顔真っ赤になるところも可愛い。
ハクアのことが、好きだ。これは、本心だ。本気で付き合いたいな、と思う。
――それは、私にとって侮辱にも等しい言葉です。あの男の子にも同じことを言われましたが……結局、選ばれたのは私ではないのですから。
そう語るハクアの表情は曇っていた。翡翠色の瞳は、失望を宿していて、光がなかった。
可哀想だ。……うん、ちょっとハクアにご褒美でもあげにいこうかな?
*
私はお風呂に入ってから、客室に戻った。ベッドに寝転がったまま、天井を見つめる。
嫌なことを思い出してしまった。なんとなく、気分が塞ぎ込む。
しかも、レオンに黒歴史を知られてしまった。明日からどんな風に煽られるのか、想像するだけで恐ろしい。
その時、コンコンと扉がノックされた。
「はい」
「僕だよ、ハクア。開けてもらっていい?」
私は思いっきり顔をしかめた。
嫌です、って言いてぇ~! いっそ寝たふりすればよかった。なんで返事しちゃったんだろう。
私はしぶしぶ、扉を開ける。
「――ッ!」
そこには、
お風呂上りなのもあって、血色が良い。頬はほんのり上気して――えっちだった。
大きく開いた襟元から、露わになった鎖骨。健康的でむっちり♡とした太ももがまぶしい。
うわ、えっっっっろ………!!!!!!!!
「お邪魔するね」
レオンが入ってくる。なんの躊躇いもなく、ベッドに腰掛ける。
ハレンチな!と思ったけど、別に私のベッドって訳じゃないし、何も変じゃないか。
いけない、意識しすぎだ。
私は彼の隣に座る。
あ、ヤバい、心臓が早い。バクバクいってる。意識しないようにしても、脳と身体が勝手に緊張してしまう。
「ど、どうしたんですか、レオンさん」
「ちょっと、ハクアとお話ししたいなって思って」
レオンはそういって覗き込んでくる。可愛い上目遣いだけど――全く目に入らない。
胸元の緩い服なので、前かがみになったせいで、服が重力に従って垂れ下がる。――レオンの胸が、際どいところまで見えていた。
でっっっっっっっっっか!!!
なにその胸板! なにその胸筋! 膨らみすぎでしょッ!*2
「ねえ、ハクア」
「は、はい」
「胸チラチラ見てるの、バレてるよ」
「……ひゅッ、あ、あ、ち、違くて、その……ごめんなさい」
レオンのスカイブルーの瞳は、玩具を見付けたかのようにキラキラと輝く。
「ふふっ……や~い処女(笑)♡」
「……ッ!」
「ハクアのえっち~(笑)♡」
「……ぅッ! ……ぐッ……ッ!」
「処女ってホント可愛い~(笑)♡」
「あの! この際だからハッキリ言っておきますが! 人の性経験の有無は、本来プライベートな部分です! そういった部分に言及するのは失礼なうわエッ……いや、今のは違います」
「また胸見たじゃん」
「それは今レオンさんが前屈みになって見えそうになったから!!!!!」
「えっち~(笑)♡ ハクアは~(笑)♡ 性欲まみれの処女ガール~(笑)♡」
「処女呼ばわりは度の過ぎた暴言です! セクハラですよ! 男性から女性へのセクハラであっても、それは立派な犯罪です!」
「なら、それ警察局に言ってみれば?(笑)♡ 『男の人に処女だってバカにされました。悔しいのであいつ捕まえてください』って(笑)♡」
「ぐッ……! こっのッ……!」
ほんっとに、マ○コがイライラする。今すぐ押し倒して分からせてやりたい。
でも、そんなことができるはずもない。
仮に力押しでレオンを分からせてやったとしても、強
絶対的な、男女の壁。越えてはいけない一線。法律という盾をいいことに、その盾の向こうから好き放題私をバカにするレオン。
「そういうの、私だからいいですけど、他の女に言ったら襲われますよ!」
「だいじょうぶだよ(笑)♡ だってハクアだもん(笑)♡ 男の子とS○Xしたことないから、どうすればいいのかも分かんないもん(笑)♡」
「ホントに襲いますよッ!」
「処女かわいそ~(笑)♡ どうせ構ってくれる男の人いないから、毎晩自分でシてるんだよね?(笑)♡ ひとりエッチだけ上手になっていくんだよね?(笑)♡ ざぁ~こ(笑)♡」
押し倒したい。マジで、分からせたい。
「可哀想だから、いいもの見せてあげるね?」
「え?」
レオンは立ち上がり、私の目の前に立った。
「えいっ」
レオンは、自分の服の裾を両手で掴んで――まくり上げた。
お腹が露わになる。エロの極みみたいな、筋肉質な腹筋。硬質で、触り心地がよさそうだ。
下腹部のあたりには血管が浮いていて、いやらしい。真ん中のヘソは、卑猥に窪んでいて――ひとつの性器のようだった。
エ、エロ過ぎる……! さ、触りたいッ……! な、舐めまわしたいッ……!
「ねえ、ハクア」
「ごくり……! はあッ……はあッ……!」
「ハクアが土下座しながら『もっと見せてください。男の人に相手にされなくて、男の裸が見れない処女の私に、
「なッ………………⁉」
突き付けられた要求に、私は驚愕する。そんな屈辱的な処女宣言土下座懇願を私にしろというのか、この悪魔は。
「はあッ……はあッ……! ふぅッ~! ふぅッ~! ふぅッ~~~~~~!」
ヤバい、呼吸が荒い。心臓が爆発しそうなくらいバクバクいってる。
い、言っちゃう? プライドを捨てて――おっぱいを見せてくださいって、お願いしちゃう?
レオンと目が合う。ニヤニヤした表情。その目には――嘲りがあった。
心底バカにしきった眼差し。私を下に見る態度。
そして、今から、おっぱいを見せてくださいと懇願する処女を、嘲笑してやろうという悪意に満ち満ちた顔だった。
クッッッッッッソ!!!!!!!!
「言いませんッ! 貴方みたいな性悪男に私は負けませんッ!」
私は、ハッキリと拒絶した! どうだ! 見たか性悪男!
レオンは意外そうに目を丸くする。しかし、すぐに微笑んで――。
「へぇ……やるね、ハクア。じゃあ今日のところは、これでおしまい」
レオンはそういって、服を下ろした。ざ、残念なんかじゃない。もっと見たいだなんて思ってない。
「でも」
レオンは唐突に、私の耳もとに顔を近づけ、耳を食べるのではないかという距離で、囁き声を吹き込んでくる。
「そのプライド、これからたっぷり時間かけて、ぐちゃぐちゃにしてあげるね?♡」
身体に、電流が走ったような感覚。これから、ぐちゃぐちゃに……?
「じゃあ、おやすみ。あ、さっきの、オ○ズにしてオ○ニーしていいよ(笑)♡ ざぁ~こ(笑)♡」
ふぅ~っ♡と、最後に息を吹き入れてきて、レオンは去っていった。
レオンがいなくなった後、私はへたりと、ベッドに倒れ込む。
「ふぅッ~……! ふぅッ~……! ふぅッ~~~~~~!」
毛布を抱きしめ、必死で耐える。あの男でオ○ニーだけは、しない。
レオンをオ○ズにすることだけは、絶対にしない。それはレオンに負けたことを認めるも同然だ。
レオンは、多分非童貞だろう。
イケメン彼女とえっちしたことがあるであろうレオンと、彼に指一本触れることすら許されず無様にオ○ニーしかできない自分。
その格差を味わって惨めになるから、オ○ニーだけはしない。
私は、必死で性欲に耐えながら、一晩を過ごした。
*
それから、私とレオンは朝一で、馬車に乗って帰った。
私は帰宅するなり、ベッドに倒れ込んだ。
めっちゃ疲れた。酷い一日だった。レオンに『処女』をバカにされ、黒歴史を知られた挙句、えっちなお腹を見てしまったせいでムラムラして一睡もできなかった。
ま、まあ、眼福ではあったけど……。
あ、ホントに眠い。流石に疲れた……。
私は眠気に身を委ねて、意識を手放した。
――そして、翌日。今日は土曜日なので、休みだ。
冒険者はいつクエストを受けていつ休んでもいいので、決まった平日休日なんてないけど、私は土日を休日にしていた。
朝食の、ハムと目玉焼きを乗せたトーストを食べる。
何もなくても――ついレオンのことを考えてしまう。
――露わになったお腹。エロの極みみたいな、筋肉質な腹筋。
――前屈みになった時に、際どいところまで見えた、大きな胸筋。
触れれば、きっと五指にその硬い感触を味わえるのだろう。硬くて、えっちで……。
「ッ……! 何考えてるの私ッ……!」
休日にまで思い出すとか、流石にどうかしている。
落ち着こう。最近ハマっているボトルシップ*3でもやろう。
その時、ドアノッカーが叩かれる音が聞こえた。来客だ。誰だろうか。
玄関に出て、扉を開けると――。
天使かと見紛うような美少年がいた。
陽光を浴びてきらきらと眩ゆく輝く、ブロンドヘア。初夏の青空のような、透き通るスカイブルーの瞳。
顔立ちは端正で、美しさと綺麗さとあどけなさの調和した――絶世の美男子だ。
白のブラウスに、小さなフリルの付いたアッシュグレーの半ズボン。処女が好きそうな、ザ・清楚系男子の
身も、心も、魂も、スパーンッ!とまとめて射抜かれて、串刺しにされたような感覚だった。
「おはよっ、ハクア。遊びに来ちゃった♡」
彼は天使のスマイルで、そういった。
その美少年の名は――レオン。天使の器に、悪魔の魂が入った、
「ど、どどどどどどどうしてここに⁉」
「ハクアの後輩に聞いたんだ。ほら、ハクアのこと師匠って呼んでるあの二人に」
「くッ……! なんてことをッ……⁉」
じょ、冗談じゃない。レオンにこの家を知られるなんて。
私みたいな陰キャ女にとって自宅とは、人と話さず、ギルメンとも距離を置いて、一人でゆっくり休める安寧の場所だ。
なのに、こんな精神的カロリーを使いまくる男を相手にするなんて、とんでもない。
「入れてほしいな、ハクア」
「うっ……」
入れたくない。でも、正直男の子を自宅に招く、というイベントに心躍る私もいる……! 相手はレオンなのにッ……!
「ど、どうぞ……」
「おじゃましま~す」
レオンは楽しそうに、我が家に入る。
「ハクアの部屋はどこ?」
「え、あ、そっちですが……」
すると、彼はリビングを素通りして、私の部屋へ向かった。
……って、いやちょっと⁉
「待ってくださいッ!」
「お構いなく~」
「私が構うんですよ!!!!!」
レオンを追い抜き、両手を広げて立ち塞がる。
「片付けるので5分くださいッ!」
「うん、分かった。待ってるね」
レオンは大人しく、リビングに戻ってくれた。私は慌ててベッドを綺麗に整え、大量のちり紙が入ったゴミ箱を荷物置き部屋に避難させ、ついでに窓も開けて換気する。
まあ、最低限、人を入れられるレベルにはなったかな……。
「レ、レオンさん、どうぞ……」
「おじゃましま~す」
レオンが私の部屋に入る。ぐるりと部屋を見渡して、ひとこと――。
「ハクアの匂いがする」
「ッ……く、くさかったですか……?」
ヤバい、泣きそう、辛い。
「ううん、好きな匂いだよ」
レオンはそういって、にっこりと笑った。
胸がぎゅ~っとなった。な、なんでこういう時だけ優しいの? いや、もしかしてからかわれてる?
考え込んでいると、レオンは私のベッドに座った。
……いや、ハレンチ!!!!!!!
男の子が女のベッドに座るの、ハレンチでしょ!!!!!
でも、レオンは特に気にした様子もない。もしかして、私の気にしすぎか? むしろこれを注意したら「うわ、ダッサ~(笑)♡ 処女丸出しじゃん(笑)♡」とか煽られるかもしれない。
うん、何も言わないでおこう。
「女の子の部屋入ったの、初めてだよ」
嘘を吐くな、嘘を。
私は、床に敷かれたラグの上に座る。テーブルには、作りかけのボトルシップが置きっぱなしだ。
「ボトルシップ、好きなの?」
「はい、最近ハマりました」
うわぁ~~~~~~~~~~~~! わぁ~~~~~~~~~~!
ホントに! 男の子が! 私の部屋にいる!
改めて、その事実に対する実感が湧いてくる。私の部屋の、私のベッドに、男の子が座っている。
とんでもない奇跡だ。こんなことが私の人生に起こるなんて、思ってもいなかった。
「懐かしいな~、子どもの頃ボトルシップやったんだけど、全然できなくてすぐ投げ出したんだ。今ならできるかな?」
「やってみますか?」
「うん、やってみたい」
レオンがベッドから降りて、私の隣にやってくる。
「ここを、こうして――」
ボトルシップの組み立て方をレクチャーする。レオンは初心者ながら、一生懸命組み立てていく。
「ここ、どうすればいいのか分かんない」
「ああ、ここは……」
私は言葉で説明するが、レオンには伝わっていない様子だった。感覚的な動作なので、言語化が難しい。
「ええと……」
レオンの背後に回り、腕を添えて教えようとして――。
いや待ってこれゴリゴリのセクハラだ。教えることを口実に体を密着させるって、セクハラの典型例じゃん。
かつていたギルドで、男の子の剣士に「剣術の指導をする」という名目で、後ろから抱き着くような形で剣の振り方を教えていたスケベ心丸出しのおばさんがいたのを思い出した。
内心、心底軽蔑していたが――今の私は、同じことをしようとしているではないか。
「いいよ?」
「えっ?」
「体、触ってもいいよ?」
――ゴクリ、と唾を飲み込む。
え、いいんだ……。なんか今日のレオンさん、優しくない? 気のせい?
「それとも、緊張しちゃって触れない?(笑)♡ 処女には酷なお願いしちゃったかな?(笑)♡」
「うるさいですっ!!!!!!!!」
全然優しくなかった。いつも通りだ。
私は怒りを勇気に変え、思い切ってレオンの背に自分の身体を押し付けて、彼と右手を重ねて――部品の動かし方をレクチャーする。
レオンさん……小っちゃいな……このまま抱きしめたい……。
「レオン、さん……」
切ない声が、漏れてしまった。
「なに?」
「……いえ、なんでもないです」
言える訳ない。抱きしめてもいいですか?なんて。
すぐに該当箇所のレクチャーは終わり、レオンから離れる。
あぁ~~~~~~~~! 抱きしめたかった~~~~~~~!
*
「ところで、今日泊まっていってもいい?」
「はい!?!?!?!?!?」
レオンが、衝撃の発言をした。
「泊まりたいな」
「えっ、あのっ」
「きょどりすぎだよ(笑)♡ 処女さん(笑)♡」
「うるさいですッ! いや、泊まるのはいいんですけど……着替えとかは……?」
「持ってきたよ。お泊まり道具一式も」
「えぇ……」
初めから泊まる気だったんだ……。な、なんで? 年頃の男の子が女の家に泊まるって、危なくない?
最近の陽キャは、そういうのが当たり前なの? そんなことないよね?
「な、ならどうぞ……」
「ありがとう、ハクア」
え、これマジ??????????
男の子が家に泊まっていくって、マジ?
こうして、私には生涯縁がないと思っていたお泊まりイベントが、いきなり発生した。
*
夜。夕食を食べ終えてから――。
「流石にお客さんが家主より先に入る訳にはいかないよ」とのことで、私が先にお風呂へ入った。この後、レオンが私の入ったお湯を使う――と考えると、なんだか妙な気分になった。
お風呂を出る。
「出ました。レオンさんもどうぞ」
「うん。じゃあ、お風呂いただくね~。……あ、覗いちゃだめだよ?(笑)♡」
「分かってますよ!!!!!!!!!!」
レオンは笑いながら浴室へ向かった。
流石に、覗いたりはしない。私は理性と善性のある女だ。
私は手持ち無沙汰に、リビングで彼を待つ。しばらくして――レオンはお風呂から上がった。
しっとりと濡れた髪。上気して赤らんだ頬。香ってくる、男の子のいい匂い。
半袖半ズボンの
わぁ……えっちだ……。
「ねえ、ハクア。ハグすると、一日の疲れの1/3が取れるって知ってる?」
レオンは突然そういった。なんでいきなりそんな話題を……?
「と、唐突ですね。聞いたことはあります」
「やってみる?」
「えっ……?」
「ハグ、してみようよ」
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
な、なんで!?!?!?!?!?
もしかして、ボトルシップのレクチャーで密着した時、「抱きしめたかった」って思ってたのがバレてた!?!?!?
いや、そんなわけない。私がどれだけ分かりやすい処女で、彼が女の子の心を読める経験豊富な男子でも、そんなことまで分かる筈がない。
ただの、偶然だ。めっちゃ都合のいい、偶然だ。
いや、待て。都合がよすぎないか? そうだ、相手はあのレオンだ。処女煽りを嬉々としてするような性悪男だ。これはつまり、私をからかおうとしているだけだ。
「いえ、どうせ、私がその気になったら『なに本気にしてるの?(笑)♡ これだから処女は(笑)♡』とか煽られるんですよね?」
「言わないよ、今回は本当だよ」
「……」
私は半眼でレオンを睨む。彼は困ったように、私に近付いて、腕を差し出してくる。
「だいじょうぶだって♡ ほら、怖くない怖くない♡」
「……嘘だったら怒りますからね」
私は一歩踏み出す。もう、すぐ目の前にレオンがいる。あとは腕を彼の背中に回せば、抱きしめられる至近距離だ。
恐る恐る腕を広げる。しかし、自分から抱きしめる勇気が湧かない。
ホンモノの、異性の身体が目の前にある。その事実に、怖気づいている。
「えい♡」
――レオンの方から、私を抱きしめてきた。
身体全体で感じる、男の子の硬さ。お風呂上がりの、あったかい人肌。
薄い
――今、私は男の子を抱きしめている。
「あ、これっ、すっご………………」
脳内に、ドバドバと幸福ホルモンが分泌される。意識がぼーっとして、多幸感に満たされる。
ヤバい、いい匂いする。胸板、硬い……。これが、男の人の身体……。
あったかい。硬い。えっちすぎる。
「…………」
し、幸せだ……。
ストレスの1/3どころか、全部が吹っ飛ぶ。
こんなことを、かれピと同棲している女は毎日やってるのか。ずるっ……。
ずっとこのままでいたい、と思う。でも、レオンは無情にも「はい、おしまい」といって離れてしまう。
ぼーっとしたまま、レオンを見る。首元は、煽情的な鎖骨が見えている。
その少し下には――圧倒的なおっぱい。薄い
それは、もはや山脈。1000年に1人の、奇跡の巨乳だ。
「ハクア、また胸見てる(笑)♡」
「うっ……! いまのは違くてっ……!」
しまった。油断した。頭がぼーっとして警戒してなかった。完全に自然と目が行ってた。
レオンは目を細めて、嗜虐的に笑う。
「胸ばっかり見すぎ~(笑)♡ ハクアってホントにおっぱい大好きなんだね(笑)♡」
「ぐッ……!」
は、反論できないッ……!!!!!!
「見たいの?(笑)♡ でも残念(笑)♡ 処女が見れるのはここまでで~す(笑)♡」
「ッ……! この性悪びっち!」
「失礼だなあ、性悪びっちだなんて。僕、童貞だよ?」
「………………………………え?」
時が止まる。いや、私だけが止まってる。
今、なんていった? 聞き間違いでなければ、『童貞』っていった……?
「今、なんて仰ったんですか……?」
「だから、童貞だってば。びっちじゃないよ」
き、聞き間違いじゃなかった。でも、信じられる訳がない。
「え、いやいや……貴方みたいなイケメン男子が、童貞なわけ……」
「僕がずっとフリーなの、知ってるでしょ? 年齢=恋人いない歴だよ? 女の子と手を繋いだこともないよ」
レオンは、大真面目な顔でそういった。からかったり冗談を言ったりする時の嘲笑がない。
……え、本当に????????
「レオンさんが、童貞!? 童貞なんですか⁉ 本当に⁉」
「童貞童貞連呼しないでよ。そういうの、失礼だと思うよ」
「どの口が言ってるんですか!!!!」
レオンはちょっとだけばつが悪そうに、目を逸らした。うっすらとだが、赤面しているように見えた。
「というか、それなのに私のこと処女ってバカにしてたんですか⁉ レオンさんだって経験ないじゃないですか!」
「いや、童貞と処女は違うよ。童貞は尊ばれるものだけど、処女は蔑まれるものじゃん」
「ぐぅッ……⁉」
私はクリティカルな一撃を喰らい、膝を突いた。
童貞と処女は等価値ではない。女性は童貞が好きだが、男性は処女を好ましく思わない。それは、よく知っている。
なんて不平等。なんて理不尽な世界なんだ。
「ぐぅううううッ! ずるいっ! 男って立場ずるすぎるッ!」
「あははっ。まあ、そうだね、女の子って可哀想だよね(笑)」
そういって、レオンは笑った。
「そろそろ夜も遅いし、僕は寝るね。おやすみ」
「お、おやすみなさい……」
レオンは、私が彼に与えた部屋に戻っていく。私も、私の部屋に戻った。
ベッドに倒れ込む。
「童貞……童貞、か……」
レオンは、絶対経験済みのリア充だと思っていた。
でも、まさかの童貞。まだ、誰とも体を重ねたことのない、男の子。
ごくり、と生唾を飲み込む。
先ほどのハグの感触を思い出す。
胸板、背中の硬い感触。さっきまで全身で密着していた、えっちすぎる身体。
お風呂上がりの、あったかい人肌。ほんのり赤らんだ頬。襟元から覗き見える肌色。
布団をキツく抱きしめて、顔を埋める。その布団にレオンを重ねるように、全力で身体を押し付ける。
「ふぅッ……! ふぅッ……! ふぅッ~~~~~!」
ずっと、レオンをオ○ズにしてオ○ニーしたら、負けだと思っていた。あの生意気な性悪びっちの掌の上で踊らされているような気がして。
何より、敗北を認めたような気がして。
決してオ○ズにはしないという誓いを守ってきた。今日まで、負けなかった。
だが――遂に今日、私は負けた。
『レオン』
性別:男性
種族:ヒューマン
容姿:ブロンドヘア、スカイブルーの瞳。1000年に1人の巨乳(胸筋が膨らんでいるという意味)
職業:Bランク冒険者
備考:遂に童貞カミングアウトした。
『ハクア』
性別:女性
種族:ヒューマン
容姿:金髪、翡翠色の瞳。ぺったんこ。
職業:Aランク冒険者
備考:初めてレオンをオ○ズにしてオ○ニーした。
『ルーシー』
性別:女性
種族:ヒューマン
容姿:金髪、翡翠色の瞳。巨乳。
職業:Aランク冒険者(別ギルド所属)
備考:ハクアの妹。かつてハクアの好きだった男の子と恋人になった。