※この作品はR-18です。

あべこべ異世界で処女をからかって遊びたい   作:耳野笑

9 / 10
 前回のあらすじ!

 レオンはハクアと共に遊園地デートをする!

 観覧車に乗ったレオンとハクアはキスをする!
 ハクアはずっと気になっていた『今の関係は、恋人なのかどうか』を尋ねる! 「まだ恋人ではない」という答えをもらったハクアは、レオンに告白しようとする!
 しかし、ハクアはタイミングを逃してやめてしまった!

 帰り道、2人は初めてラブホに入る!
 レオンは『お風呂を覗かれないようにするため』という名目でハクアを鞭と手錠で拘束し、囁き声で罵倒しながら、目の前で裸になって誘惑するという生殺し拷問を仕掛ける!
 
 そして、完全におかしくなってしまったハクアを余所に、レオンはそのまま拘束を解いてあげずに眠ったのだった!


第9話 マウント合戦と、兄弟への挨拶と、誕生日パーティー

 

 私は自分の部屋で、めっちゃオ○ニーしていた。

 

 昨日、私はレオンと共にラブホテルへ入った。そして、『お風呂を覗かないように』という名目で拘束された。

 極上のオスの肉体を目の前で見せつけられながら、触れることもできなかった。

 しかも――。

 

 ――処女(笑)♡ 処女(笑)♡ しょ~じょ(笑)♡ はやくプライドなんて捨てちゃいなよ(笑)♡

 

 ――キッモ……。なに悶えてんの、ほんと女として終わってるね。生理的に無理なんだけど。

 

 あまあま囁き声と、ガチ軽蔑罵倒を、交互に耳元でささやかれ続けた。

 

「くっそ……! くっそ……!! く゛や゛し゛い゛ッ゛……!!!」

 

 私はマゾじゃない。なのに、なのに……!

 

 悔しいのに……! ムカつくのに……!

 

「んっ……っ……!」

 

 興奮が、抑えられない。

 

 レオンの罵倒が忘れられない。これは、駄目だ。絶対駄目なやつだ。完全に、性癖を捻じ曲げられてしまった。

 やっぱりレオンは、女を破滅させる男(オム・ファタール)だった。

 

 達してから――私は、脱力する。多幸感に包まれている。ありえないくらい、気持ちよかった。

 

 あぁ……性癖、壊れちゃった……。私、おかしくなっちゃった……。

 

 *

 

 それから数日後。

 

「ハクア、今週末、僕の家泊まりに来ない?」

 

「えっ……!?」

 

 クエスト帰りの車中で、レオンから突然そう提案された。

 

「レオンさんって、一人暮らしでしたっけ?」

 

「うん、そうだよ」

 

 これは、つまり、私が男の子の家に遊びに行くというイベントだ。

 

 え、すっご……。すごすぎない……? そんなことあるの?

 

「い、行きたいです。行かせてください」

 

「うん、よかった」

 

 私はゴクリと唾を飲んだ。

 

 この前ラブホで生殺し誘惑をされてから、ムラムラが止まらないのだ。自然とレオンの胸や脚に目が行ってしまう。

 

 ラブホでの出来事は、今でもハッキリ思い出せる。

 

 『処女』を煽られ、バカにされ、蔑まれ、その挙句――

 

 ――わ、わたしはっ……! 陽キャリア充様が、S○Xしてる間っ、ひ、ひ、1人でマ○コいじりしかできないっ……! 負け組弱者女性ですっ……! 未経験しょ、処女の癖にイキって……申し訳ありませんでしたっ……!

 

 ――あんな、屈辱的な宣言をさせられた。

 

 思い出すだけで腹が立つ。絶対やり返す。やり返さなければ気が済まない。

 

 *

 

 そして、週末。

 

 来てしまった。レオンさんの、お家に。

 どこにでもある賃貸住宅だ。レオンさんの家は2階らしい。

 

 人生で初めて男の子の家にお邪魔する。めちゃくちゃ重大イベントだ。

 

「お、お邪魔します」

 

 リビングには、マットとクッション、テーブル、観葉植物が置かれていた。

 

「綺麗ですね」

 

「結構新しいからね。その分家賃も高いけど……」

 

 ざっと家の中を案内してもらう。私に与えられた一室に荷物を置いていく。あと見ていないのは、レオンさんの部屋だけだ。

 

「じゃあ、どうぞ」

 

「お邪魔します」

 

 そして、私は人生で初めて、異性の部屋へ入った。

 

 そこにあったのは――。

 

「筋トレ器具ばっかりじゃないですか!!!」

 

 懸垂器具。ダンベル。腹筋ローラー。サンドバッグ。ベンチプレス。エキスパンダー*1

 もう、ほとんどジムのような部屋だった。

 

 確かに、レオンさんは前衛でも戦えるくらい強い。見た目からもう筋肉量が違う。その秘訣が、きっとこれなのだろう。

 

「あんまり男の子っぽい部屋じゃないよね。でも、僕には必要なものなんだ」

 

「どうしてそこまで……。魔法職ですし、鍛えていなくても問題はないと思いますが……」

 

「あ、もちろんいざって時戦えるようにって意味もあるけど――」

 

 レオンはエキスパンダーを両手に持ち、左右に引っ張る。おそらく、大胸筋に負荷が掛かっているのだろう。

 

「ハクア、巨乳好きでしょ?」

 

「ぶふッ……!?!?!?」

 

「いっつも僕のおっぱい見てるもんね? だから、ハクアのためにおっきくしてあげてるんだよ?」

 

「うっ、あっ、ぅ……」

 

 いや、なんて答えればいいんだこんなの。恥ずかしいけど、それより遥かに嬉しい。

 

「それとも、えっちな男の子はきらい?」

 

「えっ、いやっ、それは……う~ん……」

 

 いや、質問がざっくりすぎて……。誰にでも身体を許すような、性に奔放な男の人は好きじゃない。でも、私とだけえっちなことするのが大好きな人なら……まあ、好きだ。

 

「なに? もしかして、誰にでも股開くような男の子は嫌いだけど、自分にだけえっちな男の子は好きとか思ってる?」

 

「ぐはっ……!?!?!?!?」

 

 な、なんでバレたの!?!?!?

 

「うわ~処女丸出しじゃん(笑)♡」

 

「そんなこと思ってませんが!?!?!?」

 

 レオンは私の内心を見透かしたように、ニヤニヤと笑っている。

 スカイブルーの瞳が、私を見つめる。愉しそうな、嗜虐と嘲笑の眼差しだ。

 

 レオンは私に近付き、背伸びをして耳元でささやく。

 

「ざぁ~こざぁ~こ(笑)♡」

 

「うぐぅっ……!!!」

 

「処女さんって、ホントそういうとこあるよね~?(笑)♡ えっちだけど一途で清楚な男の子が好きなんだよね?(笑)♡」

 

「……そ、そんなことっ」

 

「夢見すぎ~(笑)♡ 処女の妄想丸出し~(笑)♡ 男性経験ないの丸わかりで可愛い~(笑)♡」

 

 心底私をバカにした声が、耳元から脳内に注ぎこまれる。『処女であることを笑われている』という屈辱で、脳と身体が熱くなってイライラする。

 

「処女(笑)♡ 処女(笑)♡ しょ~じょっ(笑)♡」

 

 劣等感をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられている。熱した火掻き棒で、心の中をぐるぐると掻き回されるような苦しさ。

 

 ムカつく。ムカつく。ムカつく。ムカつく。ムカつく。

 

 なのに、どうしてか、ちょっと気持ちいい。

 

「ねえ、ハクア。なんで囁かれる度に、身体ビクビクってなってるの?(笑)♡」

 

「ッ……!」

 

「もしかして……罵られるの、癖になっちゃった?(笑)♡」

 

「そ、そんなわけっ……!」

 

 急に核心を突かれ、私はびくっと震えた。

 

 その反応を見てレオンは確信したように、にやっと愉悦の笑みを浮かべた。

 

「なら、もっと言ってあげるね?(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ しょ~じょっ(笑)♡ ハクアは身も心も立場も負け組のマゾ処女(笑)♡」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!」

 

「わっ!?」

 

 私はレオンをベッドへ押し倒し、ボタンを弾くように服を剥いた。

 下着が露わになる。――黒レースの下着だ。えっちすぎる。エロすぎる。肉感的な膨らみが、下着を押し上げている。

 

 いつ見ても、でっっっっっっっっっかい。奇跡の巨乳だ。

 

「ちょっ、ハクアッ!?」

 

「ふぅッ……ふぅッ……! はぁッ……はぁッ……!」

 

 私は興奮を抑えきれない。

 先週、私はラブホテルでこの巨乳を目の前にしながらも、触れることすら許されずに生殺し拷問を受けた。

 

「は、ハクア? なんか目が怖いよ……?」

 

「今日こそっ……今日こそ分からせるッッッ!」

 

 私はレオンさんのおっぱいを鷲掴みにするように触れる。

 

「ちょっ、ハクアっ……がっつきすぎ……!」

 

「もうほんっっっっっとにこの前のあれで性欲が限界なんですよッ! あの地獄の生殺しで、どれだけ溜め込んでると思ってるんですか!」

 

 私はレオンさんのでっかい胸筋の感触をたっぷり掌で楽しみながら、レオンに詰め寄る。

 

「……溜め込んでるってなに? どうせオ○ニーしてるくせに」

 

「それはそれ! これはこれです!」

 

「ま、まあ、今週は普段にも増して僕の胸ばっかり見てたし、ほんとにムラムラはしてたんだろうね……」

 

「そうですよ! 四六時中そんな巨乳で私を誘惑して! こんなのもうパイハラですよ! パイハラ!」

 

 私はレオンの乳首を摘まみ、そのまま指の腹で潰すようにいじる。

 

「んぁっ……!♡」

 

「うわ声えっろ……」

 

「やめっ……! クリクリするのやめてっ……!♡」

 

 レオンは快感に身悶えして、ぶんぶんと頭を振る。

 いちいちマ○コをイラつかせるえっちな喘ぎ声だ。もっと聞かせろ、このっ!

 

「んぁああっ!♡ ほんとにっ、ほんとにらめっ……!♡」

 

「やめてほしいですか?」

 

「んっ……や、やめてっ……ホントに乳首は弱いからっ……」

 

 レオンの美しいブロンドヘアは、激しく頭を振ったせいで乱れている。

 スカイブルーの瞳はほんのり涙が滲んでいて、性欲と支配欲を煽ってくる。

 

 めっっっっっっっっっっっちゃえっちだ……。

 

 もっと、いじめたい。

 

「やめてほしいなら、『僕は乳首いじられるだけで感じちゃう敏感ドスケベ男です。童貞の癖にイキって申し訳ありませんでした』って言ってください」

 

「は、はぁあああああああああああああっ!? い、言う訳ないでしょそんなのっ!」

 

「そうですか、ならやめません」

 

 私は思いっきりレオンさんの乳首を抓り上げた。

 

「んぁあああああああっ!♡♡♡♡♡」

 

 レオンは嬌声と共に身悶えして暴れる。

 

「こんのっ……! おっぱい触らせてあげてるのにっ……!」

 

「立場が分かってないみたいですねっ……! たっぷり分からせてあげますからっ……!」

 

 あの屈辱は、必ず返す。

 

 負け組処女宣言させるという非人道的な所業。必ずやり返さなければ気が済まない。

 

「このっ……! へんたいっ……! こじらせ処女っ……! んぁっ……!♡」

 

 レオンの生意気な悪口を、乳首いじめで封殺する。気分がいい。すごく、征服欲が満たされる。

 

 私は執拗にレオンの乳首をカリカリっと引っ掻く。その度、甘い嬌声とともに、レオンの身体がびくびくっと海老反りに跳ねた。

 

 それを、10分くらい続けてやると――。

 

「んぁっ……♡ もぅっ……♡ やめっ……♡」

 

 レオンは息を切らしながら、涙目になっている。快感のせいか、先ほどまでの眼光は勢いを失い、陶然ととろけるような眼差しだった。

 

「もうやめてっ……! これ以上は、おかしくなるっ……!」

 

「さっきの言えば、許してあげますよっ!」

 

「ぐぅっっっ……!!! ……ぼ、僕はっ、ち、ちっ、乳首いじられるだけでっ♡ あっ♡ 感じちゃうっ、敏感ドスケベ男ですっ!♡ ど、童貞の癖にイキって、申し訳ありませんでしたっ!」

 

 レオンは顔を真っ赤にして、涙をいっぱいに溜めながら、そう宣言した。

 

 きっもちぃいいいいいいい~~~~~!!!

 

 私は口角が上がるのを堪えきれない。ヤバい、楽しすぎるこれ。

 屈辱が晴れて、征服欲が満たされる感覚。とてつもなく、嬉しい。

 

「ぜったい……ぜったい許さないっ……!」

 

 レオンは屈辱に震え、真っ赤な顔で私を睨みつけながらそう叫ぶ。

 

 ますます嗜虐心を煽る、えっちな表情だ。私は欲望の赴くまま、再びレオンの乳首を抓った。

 

「んぁああっ!?♡♡♡♡♡♡ は、ハクアッ! さっきの言ったらやめてくれるっていったのにっ!」

 

「はい、『お仕置きの乳首いじめ』はやめてあげます。ちゃんといえたので、ここからは『ご褒美の乳首いじめ』をしてあげますね?」

 

「このっ! ふざけっ――んぁああああっ!♡♡♡」

 

 ピンと立った乳頭を、私は口に咥え、思いっきり吸った。

 

「ぁあああああああああああっ!♡♡♡♡♡」

 

 私はレオンの右乳首を吸いながら、左手で左乳首を思いっきり抓ってやる。

 レオンはぶんぶんと頭を振りながら、快感に耐えかねて暴れる。今日イチのえっちな喘ぎ声だった。

 

「ほらっ! レオンさんの方がよっぽど変態マゾじゃないですかっ!」

 

「ま、マゾじゃないっ! 調子のるなぁっ……!!! んぁっ!♡」

 

「口ではそんなこといっても体はいじめられたがってますよっ!」

 

「うるさいへんたいっ……!!!!!」

 

 一度唇を離す。レオンは肩で息をしながら、陶然とした目で私を見ていた。

 ムラムラする。めっっっちゃムラムラする。

 

 レオンの顔へと迫る。涙に潤むスカイブルーの瞳が、私を見つめる。興奮と、ほのかな期待のこもった、熱っぽい眼差しだ。

 

「ハクア、ぼくっ、もうっ……」

 

 私は、ごくりと喉を鳴らす。そして、荒い鼻息を抑え、レオンへ唇を近づけ――。

 

 ――その時、ドアノッカーの音が響いた。

 

「お~い! レオン~! いるか~?」

 

「遊びに来たよ~! 入るね~?」

 

 2人の男の声が聞こえた。来客のようだが、なんとも間が悪い。

 

「あ、今の、兄さんと弟だ」

 

「えっ!?!?!?」

 

 ガチャっという音が聞こえた。おそらく合鍵を使って解錠したのだろう。直後「あれ? 女の人の靴あるんだけど……」という声が玄関の方から聞こえてきた。

 

 私は慌てて飛びのく。レオンを押し倒しておっぱい吸ってる姿なんて見られる訳にはいかない。

 

「どうしよっかな~?(笑) 乱暴にされたっていっちゃおうかな~?(笑)」

 

「ごめんなさい許してくださいぃいいッ!」

 

 私は必死で頭を下げた。するとレオンは「冗談だよ」と笑いながら、服に袖を通していく。

 

「じゃあ、挨拶してく?」

 

「は、はい……」

 

 え、こわっ。

 

 い、いきなりご兄弟に挨拶することになるなんて。心の準備ができていない。

 

 私はレオンと共にリビングへ戻る。そこにいたのは、レオンと同じくブロンドヘアの男性2人だった。

 

 ひとりは、レオンより背が高い。腰元まで伸びた長髪。片目が少し隠れていて、物憂げな雰囲気を纏っている美人だ。

 

 もうひとりは、レオンより背が低い。可憐な顔立ち。逆立った髪と、ぱっちりとした瞳は、幼いながら強者男性の風格があった。

 

 うっわぁああああああああああッ!

 

 まっぶしっ!!!!!!!!!

 

 な、なんだこの3人兄弟、美人すぎ……!

 

 弟さんであろう男の子が私を見て「え……女の人……」と呟いた。

 

「紹介するね。こっちは兄のベオで、こっちが弟のティムルだよ」

 

 レオンさんのお兄さんと弟さんが会釈をする。

 

「そして、この人はハクア。僕の恋人だよ」

 

「「えっ!?!?!?!?」」

 

 お兄さんと弟さんは衝撃を受けて固まっている。

 

 私の頭はものすごい速さで思考をめぐらせる。

 本当に『恋人』といっていいのだろうか。まあ、いいか。レオンさんがそういってるんだから、わざわざ否定することもない。

 私はレオンさんが好きだし、レオンさんも私のことを好きだと言ってくれた。両思いなのだから、実質恋人みたいなものだ。

 

 結論――。

 

「あ、えっと、ハクアといいます。レオンさんとはお付き合いをさせていただいています」

 

 恋人として名乗った。

 

「あ、えっと……改めて、ベオです。弟がお世話になっています」

 

「あ、いえこちらこそレオンさんにはお世話になっています」

 

 あ、よかった。『どこの馬の骨とも知れない女に弟はやらん!』みたいなこと言われなくて……。

 

「ちょっと待ってよ! どこの馬の骨とも知れない女にレオ兄はあげないから!」

 

 あ、そっちが言うんだ……。

 

 弟さんは、すっごい私を睨んでくる。でも、睨んだ顔すら可愛い。本物の天使か何かだ。

 

「こらティムル、そんなこというんじゃない。ごめんね、ハクアさん」

 

「あ、いえ……」

 

 ベオさんが謝ってくれた。優しい人だ。

 

 私たちはソファに座る。テーブルを挟んで、ベオさんとティムル君と向かい合う形だ。

 

 あ~無理、緊張する。息苦しい。たすけて誰か。

 

「ハクアさんとはどんな風に仲良くなったの?」

 

「えっと、王狼っていう魔獣を討伐する時に、僕がひとりで襲われちゃったんだ。でも、そこへハクアが、白馬のお姫様みたいに助けてくれたんだ」

 

 は、白馬のお姫様って……。分不相応すぎて、居心地が悪い。

 

「なんか懐かしいね、あの時はまだ『ハクアさん』って呼んでたっけ」

 

「そういえばそうでしたね」

 

 そして、レイド後、私とレオンさんは同じ病室になって――独り言のせいで処女だとバレた。

 

 あの日、レオンが私をからかっていったセリフ――『お礼にさ、処女、卒業させてあげよっか?』――あの言葉は、私の人生で最大の衝撃だった。

 

 思えば、あれから結局、処女を捨てられていない。悔しい……。

 

「それがきっかけで一緒にクエスト行くようになって、海へ行ったり肝試ししたりで仲良くなって、付き合い始めたんだ」

 

 ベオさんは楽しそうに聞いている。でも、ティムル君の方は不服そうな顔をしていた。

 

「ティムル、これからお義姉さんになる人だから、仲良くね?」

 

「……ふんっ!」

 

 レオンさんが優しく声を掛けたが、ティムル君は頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。

 

 するとお兄さんが、ティムル君の頭を撫でながら――。

 

「まあ、俺も結婚しちゃって、レオンも恋人ができてってなると、寂しいよな」

 

「えっ、ベオさん既婚者なんですか!?」

 

 私は驚く。確かに年上ではあるのだろうけど、結婚までしてるとは思っていなかった。

 

「去年、籍を入れたんだ。今は妻と一緒にケーキ屋をやってるよ」

 

「パティシエなんですか!?」

 

 すご……!!! うわ~なんか、すご……。目の前の美人が、とっくに女の人と結婚してて、一緒に働いてるって思うと……現実を突き付けられた感じがする。違う世界の人って感じがする。

 

 なんか、勝手に落ち込んでしまう。レオンさんと親しくなる前の私だったら、本当に立ち直れないくらいショックだっただろうな……。

 

「レオンとハクアさんの結婚式は、俺たちがウェディングケーキ作ってあげるよ」

 

「けっ……!?」

 

 急に話が飛んできてビックリする。

 

 結婚……私と、レオンさんが……!? 本当はまだ正式にお付き合いもしてないのに……! そんなの、想像もしたことない……!

 

 でも、大げさに驚くと、ウソがバレるかもしれないので、できるだけ平気な感じを装う。

 

「そうですね、その時は、ぜひよろしくお願いします」

 

「うん。ハクアさんも、レオンをよろしくね」

 

「必ず幸せにします」

 

 私は堂々と言い切った。完璧だ。まさか私が処女だなんて思わないだろう。

 

 でも、レオンさんには笑われてるだろうな――と思いつつ、ちらりと、彼の顔色をうかがった。

 ――レオンは、頬を朱く染めていた。目を合わせるのが恥ずかしいのか、少しうつむいてしまった。

 

 すると、ティムル君が――。

 

「レオ兄がオス堕ちした顔してる!!!」

 

「し、してないよ!」

 

「だまされちゃダメだよレオ兄! どうせレオ兄の体目的だよ!」

 

「ち、違いますよティムル君! 私は誠実です! 無罪です! 非常に清いお付き合いをさせていただいています!」

 

 私は必死で反論する。するとレオンはボソっと――。

 

「さっきまで僕のおっぱい吸ってたくせに……」

 

「「えっ!?!?!?!?!?!?」」

 

「ちょっ!?!?!?!?!?!?」

 

 爆弾発言に、空気が凍る。ティムル君は兄の仇を見るような目で私を睨み付けてくる。

 

「さいっていッ……! このっ、へんたい女ッ……!」

 

 罵倒が突き刺さる。ヤバい、どうしようどうしよう。ホントに軽蔑されてる……!

 

「まあまあ、落ち着けティムル。レオンももう大人になったんだ。同意の上で、彼女とそういうことをすることもある」

 

 ベオさんが助け舟を出してくれた。お、大人だ……。

 

 ティムル君は一縷の希望にすがるように、レオンを見る。

 

「うそだよね、レオ兄……冗談だよね……?」

 

「ごめんね……僕のカラダはもうハクアのものだから……」

 

「レオ兄がけがされた~~~!!!!!」

 

 ティムル君は絶叫し、廊下へと逃げ去った。

 

「うわ~~~~~ん!!! ママとパパに、レオ兄が変態女におっぱい吸われてるって言い付けてやる!」

 

「それはやめてください!!!!!」

 

 ティムル君は玄関の方に走り去ってしまった。ベオさんも立ち上がり、リビングを出る。

 

「邪魔してごめんな、レオン。ごゆっくりどうぞ」

 

「あ、うん、またね」

 

 そして、ベオさんとティムル君は帰っていった。

 

「な、なんてこと言うんですか!」

 

 私はレオンに詰め寄る。

 

「つい……」

 

「怖くてベオさんの目見れませんでしたよ……!」

 

「だいじょうぶだって。兄さんだって彼女とそういうことしてるし、理解はあるよ」

 

「……ま、まあそれもそうでしょうけど」

 

 変態だと思われてないといいな……。

 

 私はレオンの向かいに座り直して、ぐったりと背もたれに体重を預ける。

 

「それにしても、凄い美人でしたね……」

 

「……は?」

 

 レオンの表情が固まる。あれ……誉め言葉のはずなのに、なにか気に障ってしまったのだろうか。

 

「僕、美人なんて1回も言われたことない!」

 

「え、ああ……そうでしたっけ?」

 

「ないよ! なのになんでベオ兄には言えるの!?」

 

「いや、えっと……それは……」

 

 確かに、『美人』といったことはない。『綺麗』といったこともない。『可愛い』といったこともない。

 でも『イケメン』だといったことはある。それじゃダメなのかな……。

 

「い、言ったことがないだけで、思ってますよ」

 

「じゃあティムルのことはどう思ったの?」

 

「可愛いなって思いました」

 

「なんでティムルになら言えるの!? 僕には言ってくれないくせに!?」

 

「あ、えと……」

 

「どうせティムルに罵倒されてる時も、『美少年ショタに罵倒されるの、ちょっと気持ちいい……!』とか思ってたんでしょこの変態!」

 

「いや思ってませんって!」

 

「うそつき! 変態! ショタコン! 処女!」

 

「誤解ですってば!」

 

 レオンはそっぽを向いてしまった。どうやら、本当に機嫌を損ねてしまったようだ。

 

「ふ~んだ! もうしばらくおっぱい触らせてあげないから!」

 

「そんなっ!?!?!?!?!?」

 

 *

 

 夜。

 

 私はお風呂から上がり、リビングに入った。すると、テーブルの上に『僕の部屋に来て』と書かれたメモがあった。

 

「……?」

 

 私は指示通り、レオンさんの部屋を訪れる。ノックすると『どうぞ~』という声が返ってきた。

 

「失礼しま……ッ!?!?!?!?!?」

 

 真っ白なベビードール*2を着たレオンが、ベッドに座っていた。

 

 生地が薄いため、うっすらと肌色が透けている。白いパンツがベビードール越しに見えてしまっていた。

 

 触り心地のよさそうな、絹の生地の向こうに透けて見える――ベビードールを内側から()すように張り詰めた豊かな胸。引き締まったお腹。むちっ♡とした太もも。

 

 えっっっっっっっろッ!!!!!!

 

 思わず、生唾を飲む。

 

 えっ、えっ? さ、誘われてる……?

 

「……ど、どうしたんですか? レオンさん」

 

「一緒に寝ない?」

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 レオンは私をベッドへ手招きした。

 

 ……これやっぱり誘ってるでしょ! もうそういうことでしょ! 食べられるつもりで待ってたでしょ!

 

「い、いいんですか……!?」

 

「うん、おいで」

 

 レオンはそういって微笑んだ。天使のように可憐な笑みだ。

 

 心臓がドクンドクンと爆音を鳴らす。痛いくらいうるさい鼓動が、体内に響いている。

 

 そして、私はベッドに近付き――レオンと共に横になった。

 

 お互いに、見つめ合う。すぐ隣に――目と鼻の先に、レオンの綺麗な顔がある。

 

 眩いブロンドヘアは、わずかに水気を帯びて、濡れた毛先が妖艶に光る。スカイブルーの瞳は妖しく輝き、私の心を捉えて離さない。

 

 少し視線を下ろせば――みっちりと筋肉の詰まったおっぱい。透けたベビードール越しに、豊かな胸筋と、深い谷間が覗き見える。

 

 可憐にして、淫靡。

 

 清らかな天使でありながら、女を毒蜜で誘い逃がさない淫魔。

 

 美とエロスの調和した、究極の肉体美。理想と欲望を一身に詰め込んだような、天上天下ただひとりの魔性の男だ。

 

「ハクア」

 

「は、はいっ……」

 

 レオンは横になったまま、私へにじり寄ってくる。

 

 レオンの白い肌は、ほんのり上気している。お風呂上がりのいい匂いがふわりと香って、たちまち心地よい感覚に満たされる。

 

 あ、やば、えっろ……。エロすぎでしょ、これ……。

 

 も、もう我慢できないッ! 貪りたいッ! むしゃぶり尽くしたいッ!

 

「レオンさんっ!」

 

 私は、レオンのおっぱいへ手を伸ばそうとして、その手首をやさしく掴まれた。レオンは、蠱惑的な笑みを浮かべている。

 ――瞬間、私の本能が危険を叫ぶ。だが、遅かった。

 

「弱体魔法――身体能力低下・超級(パワードレイン・レベル9)。状態異常魔法――脱力・麻痺(パラライズ)

 

「うぁっ!?」

 

 ――身体から力が抜け、ベッドへ仰向けになってしまう。

 その状態の私へ、レオンさんが馬乗りになってくる。両手首を掴まれて、組み伏せられる形だ。

 

 やられた。これだけ強力な魔法――おそらく、予めベッドの下に魔法陣を描いて準備しておいたのだろう。

 

「な、なんでいきなり……!」

 

「僕、お昼に乳首いじられて笑われたこと、忘れてないよ?」

 

「……っ!」

 

 レオンの碧色の瞳が、冷たく見下ろしてくる。怒りを宿す眼差しだった。

 

 背筋が凍る。

 

 ヤバい。ヤバい。これ、またラブホの時みたいに生殺し拷問されるッ……!

 

「ふんぬッ! ぐぬぬぬぅッ!」

 

 私はレオンをどかそうとする。だが、身体に力が入らず、思うように体を押し出せない。

 

「ムリだよ。弱体(デバフ)状態異常(カースド)重ね掛けしてるもん。抜けられるわけ――」

 

「ぐぅおおおおおッ!」

 

「わっ!?」

 

 あの囁き罵倒だけは無理ッ! 本当に無理ッ! あんな生殺しもう嫌だッ! あれだけはマジで苦しくて死ぬッ!

 

 渾身の力を振り絞る。レオンの腕を押し返し、徐々に起き上がる。

 

「す、すごっ……! まだ動けるんだ……!」

 

「うぉおおおおおおおッ!!!!!!!」

 

 いける! もうちょっとで――。

 

 突然、レオンがいきなり私の手首を離し、ベッドとベッドボードの間へ手を突っ込んだ。

 次の瞬間、私の両手首にバシン!と何かが当たり、強烈な力でベッドシーツへ押し付けられた。

 

「ッ……!? な、なにこれ……!?」

 

 柔らかい、ゴム……? あ、エキスパンダーのゴムだ。でも、なにこれ、なんでこんな重いの……? そもそもこのゴム、どこに繋がって――。

 

「このゴム、ベッドの下にある20kgダンベルに繋がってるんだ。もう絶対逃げ出せないよ?」

 

 さぁっと、血の気が引く。私は暴れるが、本当にびくともしない。

 

 さらにレオンは、足元からもゴムを引っ張って、私の両足首を挟んで拘束する。

 こうして、さながら固定標本の蝶のように、私は大の字に拘束されてしまった。

 

「あははっ! あんなに強いハクアが僕に手も足も出ないの、おもしろ~い(笑)♡」

 

「ふんッ……ぐッ……! うおぉッ……!」

 

 完全に組み伏せられてしまった。手も足も出ない状態だ。

 

「ハクア」

 

「な、なんですか」

 

「お昼は『敏感ドスケベ男』とか『変態マゾ』とか、ずいぶん好き放題言ってくれたね?」

 

「ひっ……! ご、ごめんなさいっ! あ、謝りますから、許してくださいっ……!」

 

 私は謝罪する。しかし、レオンはニヤッと、嗜虐的な笑みを浮かべる。

 そして、レオンはゆっくりと私の耳に唇を近づけてくる。

 

「あっ、いやっ……! いやいやいやいやっ! それだけはっ! 本当に嫌なんですっ! やめてくださいっ!」

 

 レオンはふふっと笑い、温かい吐息を右耳に吹きかけながら――。

 

「処女(笑)♡」

 

「く゛ぅ゛ッ……!!!!!」

 

 私は思わず、首だけビクンッとのけぞる。

 

「処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ しょ~じょっ(笑)♡」

 

「やめてッ! 処女っていうのやめてッ!」

 

「悔しい?(笑)♡ 処女って言われるの嫌なんだ?(笑)♡ じゃあもっと言ってあげるね?(笑)♡ 処女(笑)♡ 未経験(笑)♡ 男の子に相手にしてもらえない処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 処女(笑)♡ しょ~じょっ(笑)♡」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ! く゛っ゛そ゛ぉ゛ッ!!!」

 

 クソクソクソクソクソクソッ!

 

 悔しいッッッッッッッッッッ!!!!!

 

 さらに、レオンは左耳に唇を近づけて――。

 

「キモッ……陰キャが悶えてんのマジでキモッ」

 

「う゛ぁ゛ッ゛!?!?!?」

 

 突如、本気の軽蔑が滲むドスの利いた低い声で、罵倒される。

 

 あまあま媚び媚び罵倒とは違う、ガチ軽蔑罵倒。さっきまでとの落差に、より深く心を抉られる。

 

「マジできっしょ。お前に抱かれたい男とかいないから。夢見るのやめろよ」

 

「く゛ぅ゛ッ……!!!!!!!!」

 

「誰もお前みたいなキモい女には股開かないから。一生処女のままひとりで生きていけよ」

 

「く゛ぅ゛ぁ゛あ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!」

 

 劣等感で、ぐちゃぐちゃになる。死ぬほど身体が熱い。血圧が上がって、血管がブチギレそうなくらいムカつく。

 

 クソっ!

 

 クソっ!!!!!

 

 クソっ!!!!!!!!!

 

 レオンは、右耳に唇をちゅっ♡とくっつけて――。

 

「ギルドの男子、み~んなハクアの胸バカにしてるよ?(笑)♡ あんな貧乳いや~って(笑)♡*3

 

「う゛く゛ッ゛……!?!?!?!?!?」

 

 罵倒が、深く心に突き刺さる。ショックで、心臓がぎゅっと縮む。

 

 やっぱり、男性からはそう思われてたんだ。胸が小さい女は無理だって。

 

 ずっと、コンプレックスだった。小さい胸。女性らしさを欠いた胸。

 胸の大きい女性の隣に立たされる度――その差は歴然と示されてしまう。

 

「貧乳(笑)♡ 貧乳(笑)♡ 貧乳(笑)♡ 貧乳(笑)♡ 貧乳(笑)♡」

 

「く゛っ゛そ゛ぉ゛ッ゛!!! ち゛き゛し゛ょ゛お゛ッ゛!!!!!!」

 

 努力ではどうにもならない身体の特徴。なのに、それが男性からジャッジされ『勝ち組』と『負け組』に分類されてしまうもの。

 その要素において、これ以上ない程『負け』の、ぺたんこな胸。

 

 それを、今、笑われている。勝ち組強者男性に、嘲笑されている。

 

「負け組(笑)♡ 弱者女性(笑)♡ 貧乳(笑)♡ 処女(笑)♡」

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!」

 

 レオンは顔を上げる。心底愉しそうに笑っている。

 私を罵倒し嘲笑することが楽しくて仕方ないのか、スカイブルーの瞳はきらきらと輝いていた。

 

「処女かわいい~(笑)♡ なんで処女さんってそんなに『処女』って言われるの嫌なの~?(笑)♡ ねえ教えて~(笑)♡」

 

「もうやめてっ! 言わないでっ! 処女なの嫌なのっ!」

 

 私は必死で許しを乞う。なのに、レオンさんはやめてくれない。嬉々として、私の耳へささやき罵倒を吹き入れてくる。

 

「処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 耳に息入れてあげるね? ひゅぅ~(笑)♡」

 

「んあっ……!!!!!!!」

 

 ビクンッ!と、身体が弓なりに跳ねる。温かい吐息とともに『処女』を罵倒される度、勝手に体が反応してしまう。

 

「処女(笑)♡ 処女(笑)♡ 一生男の子と繋がれないザコ処女(笑)♡」

 

「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!」

 

 プライドをぶち壊され、粉々にされる。

 長い年月をかけて熟成し膨れ上がった劣等感を、ぐちゃぐちゃに掻き回される。丁寧に、丁寧に、熱した火掻き棒で心の中をかき混ぜるように、ぐちゃぐちゃにされる。

 

「ハクアは~処女~(笑)♡ 経験人数ゼロ人の~未経験処女~(笑)♡」

 

「う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛゛ッ!」

 

 悔しい。悔しい。本当に悔しい。恥ずかしくて、怒りでブチギレそうで、顔から火が出そうなほど熱い。

 

「ふふっ、くるしそ~(笑)♡ ちょっとご褒美あげよっか?」

 

「は、な、なにを……」

 

 レオンの天使のような笑顔に、悪魔のような残酷さを感じる。この女を狂わせる男(オム・ファタール)は、一体なにをするつもりなのか――。

 

 レオンは、私のパジャマのボタンを下から3個外し、はだけさせた。ちょうどお腹だけが露出した形となる。

 

「え、な、なにするつもりなんですか……?」

 

「ふふっ……」

 

 レオンは嗜虐的な笑みを浮かべながら、人差し指でつつ~っと私のお腹をなぞった。

 

「~~~~~っ!!!」

 

 私は思わず声を漏らしてしまう。

 

 さらに、レオンは手のひらで、私のお腹に触れるか触れないかくらいのところで撫でてくる。

 

「さわさわ~(笑)♡ さわさわ~(笑)♡」

 

「うっ!♡ んっ!♡ ~~~~っ!♡」

 

 ――フェザータッチ。体表をギリギリ触れるような触り方をされるせいで、甘いくすぐったさが全身を駆ける。

 

 さらにその上、レオンは私のお腹をさわさわしながら、右耳にぴったり唇をつけて――。

 

「んひゃあっ!?!?!?」

 

 舌を、私の耳の中へ入れてきた。

 

 あったかい舌が、意志を持った軟体生物のように、耳の奥へ侵入してくる。――蕩けそうな程の、生温かさだ。

 

「んあっ♡ なにこれっ♡ すごっ……♡ んんぅ~~~~~~っ♡」

 

 ちゅっ♡ちゅっ♡ぴちゅっ♡れろ~っ♡っと、脳内に直接響くような淫猥な水音。

 生温かい舌が耳を犯すかのように耳中を蠢いて、ドバドバと幸せホルモンが放出されてしまい、脳味噌が蕩けそうになる。

 

 同時に、お腹へのフェザータッチもやめてくれない。甘くもどかしい快感が背骨から上がってきて、耳奥から侵入する快楽が脳から全身へ駆け抜ける。

 

「なにこれっ♡ 気持ちいいっ♡ 気持ちいいのに触れないのぐるじいっ♡」

 

 両手両足を拘束されているせいで、体をよじって快感を逃がすことさえできない。

 ――身体の真芯に、快楽が直撃する。

 

「んぅううううう~~~~~~~~っ!♡ はぁッ……! はぁッ……! んうっ!♡ あっ!♡」

 

 レオンさんに触られているお腹の真下――子宮が疼く。じくじくと、火傷しているかのように熱を帯びる。

 

「これくるじいっ……! ヤりたい……! ヤらせてよっ……!」

 

 なのに、マ○コには決して触ってくれない。一番ぐちゃぐちゃに触りたいところには、触ってもらえない。

 脚を開くように拘束されているせいで、内腿を擦り合わせることさえできない。

 

「お゛ね゛か゛い゛し゛ま゛す゛っ! ヤらせてっ! ヤらせてくださいレオンさんっ!」

 

 私は滂沱と涙をこぼしながら懇願する。きっと今、私の顔面は人に見せられない程ぐしゃぐしゃに歪んでいるだろう。

 

「必死~(笑)♡ ウケる~(笑)♡」

 

「な゛に゛も゛ウ゛ケ゛な゛い゛っ! お゛ね゛か゛い゛っ゛! マジでヤらせてっ! これく゛る゛し゛い゛っ゛! ヤらせてくださいっ!」

 

「あははっ(笑)♡ だめで~す(笑)♡ あと何時間続けてほしい~?(笑)♡」

 

「いやし゛ぬ゛っ! マジでし゛ぬ゛っ! こ゛わ゛れ゛ち゛ゃ゛う゛っ!」

 

 レオンは、恐ろしく綺麗な美貌を、私へ近づけてくる。

 

「これで分かった? 処女(笑)のハクアが僕にマウント取ろうなんて100年早いってこと(笑)♡」

 

「ち゛き゛し゛ょ゛お゛ッ゛!!!!!! わかりましたっ! わかりましたからっ! も゛う゛ゆ゛る゛し゛て゛っ!」

 

 ぐちゃぐちゃになりながら懇願する私。対してレオンは、淫魔のように悪辣な笑みを浮かべ、再び私の耳へ唇をくっつける。

 

「ふふっ(笑)♡ もう二度と僕にマウント取ろうなんて思えなくなるまで、徹底的に分からせてあげるね?(笑)♡」

 

「あっ……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!」

 

 *

 

 翌朝。私はレオンさんと一緒に朝食を食べている。

 

「あれ? ハクア眠そうだね?」

 

「誰のせいだと思ってるんですか!!!」

 

 結局、あの後3時間くらい生殺し拷問は続いた。しかも、レオンは「眠くなってきちゃった。おやすみ~」といいながらそのまま寝やがった。

 

「まあまあ、今日も休みなんだから、ゆっくり寝ていってよ」

 

「そうさせてもらいます……」

 

 ちなみに、今食べているのはレオンさんが作ったサンドイッチだ。地味に凄いことだが、私は今、男子の手料理を食べているのだ。

 

「そういえば、ハクアも妹さんいるんだよね?」

 

「あ、はい」

 

「会ってみたいな」

 

「私は会わせたくないです」

 

 妹のことは、苦手だ。

 

 好きな男の子を妹に取られるという黒歴史は、深い哀しみと共に私の心に刻まれている。

 

 今でも、帰省した時以外は顔を合わせない。会った時も、必要最低限の会話しかしない。

 

 あ、そういえば忘れていた。昨日、レオンさんの機嫌を損ねる原因にもなったことを――。

 

「レオンさん」

 

「なに?」

 

「綺麗ですね」

 

「ぶふっ!?」

 

 レオンはコーヒーを噴き出した。

 

「な、なにいきなり!?」

 

「その、兄弟姉妹(きょうだい)の話題で、昨日レオンさんに言われたことを思い出して……。これからは、ちゃんと言葉にしようと思って」

 

「あ、そ、そっか……ありがとう」

 

 レオンはほんのり顔を赤らめながらそういった。

 

 ――レオンさんと結婚して、同棲するようになったら、これが日常になるのだろうか。それは、幸せだな……。

 

 *

 

 ――1週間後。

 

「「「「「ハクア、お誕生日おめでとう!!!!!」」」」」

 

 ハクアの家で、僕たちはお誕生日パーティーをしていた。メンバーは、ハクアパーティーの5人と僕である。

 

「ありがとうございます、みなさん」

 

 ハクアは丁寧にお礼をいった。

 この陽キャ軍団に紛れて祝われるの、ハクアはどういう気分なんだろうな……。

 

 騒いだりケーキを食べたりして、楽しく過ごす。

 ハクアも思った程ぎこちなさはない。処女なのを隠しているとはいえ、なんだかんだ長いことパーティーを組んだ仲なのだ。普通に親しい友達ではあるのだろう。

 

「ハクア、これどうぞ!」

 

 僕はリボンで結ばれた箱を手渡した。

 

「え、これは……」

 

 ハクアはリボンを解き、箱を開けていく。中から現れたのは、2つのペンダントだ。――チェーンの先端の台座に、透明な宝石が嵌め込まれている。

 

「……えっ、これ、もしかして」

 

「うん、通信宝石だよ」

 

「「きゃ~~~~~~!!!!!」」

 

 ギャルズが甲高い声を上げた。

 

 通信宝石は、離れていてもペアとなる宝石同士で音声のやり取りができる。

 そして、このアイテムを持つのは――基本的に婚約済みのカップルだ。

 

「う、そ……」

 

 ハクアはペンダントを見つめながら、呆然としている。翡翠色の瞳は大きく見開かれ、衝撃のせいか微かに身体も揺れている。

 

「えっと、これからも末永くよろしくね……?」

 

 僕がそう声を掛けると、ハクアはバッと顔を上げ――。

 

「は、はい! 幸せにします!」

 

 その真剣な面持ちに、本気さを感じて嬉しくなる。幸せで、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「ひゅ~ひゅ~!」

 

「見せつけてくれるじゃ~ん!」

 

 後輩たちが賑やかす。僕らは少し照れながら、笑い合った。

 

 *

 

 5人が帰ったあと、私は自室でペンダントを手に持って、眺めていた。

 指輪と同じく――夫婦や婚約済みのカップルが持つアイテム。それが、今、私の手のなかにある。

 

 幸福の象徴であり、実際嬉しいのだが――ひどく現実感がない。何年も男子に縁のなかった私には、まだ『自分のもの』という実感がなかった。

 

「わっ……」

 

 ちょうど、宝石が光った。レオンさんからの着信だ。

 

 私は応答する。

 

「はい、ハクアです」

 

「レオンだよ。よかった、ちゃんと繋がるね」

 

 宝石から伝わるのは音声だけだ。レオンさんの顔は見えない。

 

「今日は、ありがとうございました。楽しい1日でした」

 

「こっちこそ、ありがとうだよ。ハクアと一緒にいるの、一番楽しい」

 

 ヤバい、嬉しい。絶対顔赤い。向こうから顔見えてなくてよかった……!

 

「私も、レオンさんと一緒にいると、楽しいです」

 

 めちゃめちゃ恥ずかしいけど、正直な気持ちを伝える。

 

「レオンさんと出会えて、良かったです」

 

「うん、僕もハクアと出会えてよかった」

 

 私たちは、そのあと10分くらい、お話しした。通信宝石で、夜に通話するの、ザ・恋人って感じで――めちゃくちゃ嬉しかった。

 

「じゃあ、おやすみ、ハクア」

 

「はい、おやすみなさい、レオンさん」

 

 幸せなため息を漏らす。

 

 こんな日が来るなんて、思ってなかった。

 後輩たちや、ギルメンたち、そして世のカップルが仲睦まじく愛し合っている夜――私は、ひとり寂しくボトルシップに興じることしかできない惨めさに打ちのめされてきた。

 

 劣等感に苛まれ続けていた。陽キャリア充を呪いながら、何年も惨めさに打ち震えていた。

 

 でも、今は違う。――私には、レオンさんがいる。

 

 デートもした。キスもした。ちょっぴりえっちなことも、経験できた。

 なによりも――好きだっていってもらえた。

 

 涙がこぼれて、頬を伝う。

 

「あれ……」

 

 視界が滲む。涙があふれて止まらない。

 

「ふふっ……私、幸せだなあ……」

 

*1
ゴムをびよーんと左右に引っ張るアレ

*2
ワンピース型のパジャマ

*3
この世界のAカップ女子=元の世界の身長150センチ男子




 『レオン』

 性別:男性
 種族:ヒューマン
 容姿:ブロンドヘア、スカイブルーの瞳。1000年に1人の巨乳(胸筋が膨らんでいるという意味)
 職業:Bランク冒険者
 備考:

 『ハクア』

 性別:女性
 種族:ヒューマン
 容姿:金髪、翡翠色の瞳。ぺったんこ。
 職業:Aランク冒険者
 備考:

 『ルーシー』

 性別:女性
 種族:ヒューマン
 容姿:金髪、翡翠色の瞳。巨乳。
 職業:Aランク冒険者(別ギルド所属)
 備考:――次回、襲来。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。