「こんなの書くなら本編書け」という感想がこようが、後悔はしない。多分。たぶん……
まぁまず、読んでもらえるかが疑問だけど。
今日初めて、一番大好きな人に勝つ事が出来た。
お酒を飲む事で、だけど。
私の隣で、飲み過ぎてぐったりしている姿に、どうしようもなく情欲が刺激される。
ソファに背を預け、吐く息は短く早い。火照った頬に、少し汗ばんだ首筋。
視線はどこか虚ろで、今すぐにでも閉じてしまいそう。
コクリ、と喉が鳴った。
――黒歌
名前を、呼ばれた。
優しくて、暖かな声音。私が大好きな、大切な男性の声。
お酒に酔ってるからだろう、いつもとは少しだけ違う、湿った声。
「んー? 何かな、トオル?」
そんな彼の隣――肩が触れ合うほど傍に座り、私はもう一度コップを傾けて魔王から貰ったという酒で喉を潤す。
熱い。
度の高い酒が喉を焼き、目が覚めるような刺激だというのに、思考に霞がかかる。
ああ、私ももうすぐ限界だ。
酒精の匂いと、彼の汗の香り。
鼻孔を擽るそれらすら、私の思考に霞みを掛ける。
いつもならベタベタくっつく私に照れたり、引き剥がそうとする彼は、今はお酒に思考を鈍らせて成すがまま。
肩に頭を預け、投げ出されていた手に自身のソレを重ね、指を絡ませ、少しだけ力を込めて握る。
大きな手。男の子の手。
酔ってるんだろうけど、少しだけ握り返してくれて、それが嬉しくて、私も握る手にもう少しだけ力を込める。
ドキドキしてる。
自分でも、酒精以外の理由で頬が紅くなっている事に気付いてしまう。
――生娘でもあるまいし。
そうは思うが、まるで初めて恋愛をした小娘のように、胸の高鳴りを抑えられない。抑える事が出来ない。……抑えようとも、思わない。
お酒の所為で冷静さを失ってしまったのか。初めから、冷静でなどいなかったのか。
自分の現状を理解し、その理由をお酒の所為だと、言い訳する。
「お子様たちは寝ちゃったね」
そう言うと、そうなのか? という、どこか気の抜けた声。
それと同時に、愛しい彼もまた、私の方に体重を掛けてくる。
偶に酔った時、トオルはよく近くの人にくっついてくる。そういう酒癖なんだろう。
世の中には、抱き付いたり、キスをしようとしたりする人もいるのだし。そう考えると、随分落ち着いた酒癖だと思う。
私はトオルに身体を預け、トオルも私に体重を預けてくる。
密着する面積が増え、触れた場所から相手の体温が染み入ってくる。
暖かい。暖かくて、気持ちいい。
着崩した着物――素肌から感じる愛しい人の体温は、とても心地良い。
私もこのまま眠ってしまいそうになってしまう。
でも、ダメだ。もう少し頑張らないといけない。
そう自分に言い聞かせ、視線を愛しい人に向ける。俯いた顔を、覗き込むように確認。
目を閉じていた。もうほとんど眠ってしまっているのだろう。規則正しい吐息が耳を擽る。
それを見て――
「寝ちゃった?」
そう尋ねる。確認するまでも無い事だけど、どうしても声に出して確認してしまう。
声音が喜びに震え、頬が緩んでしまうのは仕方がない。
これは勝者へのご褒美だ。たかがお酒、されどお酒。いつも負けてばかりだから、勝った時くらいご褒美が欲しい。
そんな、自分でもよく判らない理由を頭の中で並べてしまう。
そして、返事を確認する事無く、コップに注がれていた酒を少しだけ口に含む。
今度はすぐに飲まず、視線をトオルの唇へ。
眠ってしまった彼の唇に、自分の唇を重ねる。
「――ん、ふ」
舌で唇を開け、歯茎を撫で上げ、口に含んでいたお酒をトオルの口内へ。
見上げる体勢故に、口の中に含んでいたお酒は殆ど零れ、顎を伝い、大きく開いた胸元を汚す。
だが、僅かばかりのお酒は、ちゃんとトオルの口内へと辿り着く。
その決して多いとはいえないお酒を、大切な宝物のように、零れないように、トオルと私の舌の上で転がす。
「は、ぁ――ん、ふぁ、ぃ」
口が塞がれているからか、トオルの鼻息が荒くなり、私の顔に当る。
それは私も同じで、酔って感度が増した私の身体も、息が荒くなり、正面から抱きつくようにして体を支える。
力が入らない。
それは酔っているからか、それとも欲情しているからか。
口内に残っていた酒はあっという間に口から零れ、私はトオルの唾液を奪い取り、私の唾液をトオルへと渡す。
思考の霞が濃くなる。いつもならトオルの事だけではなく、大切な家族の事もちゃんと考えてくれる頭が、白い靄に隠される。
ただただ本能のままに、愛しい彼へと舌を絡め続ける。
息が苦しくて、体勢が辛くて――ようやく唇を離した時には、酷い有様だった。
口元は酒と唾液で汚れ、垂れて胸元まで汚してる。変な体勢でキスしたせいで、元々着崩していた着物は、前を殆ど隠せていない状態だ。
自分でも、大きさ、形は悪くないと思っている胸。
押し付ければトオルは顔を赤くして、いつも照れていた。
そんな反応が面白くて――そして、とても嬉しくて、トオルをからかっていた。
キスで目を覚まし、若干の酸欠で意識が朦朧としているトオルをソファへ押し倒す。
――寝惚けたような声で、名前を呼ばれた。
そこが限界。
我慢をするつもりなんて最初から無かったが、もう自分を抑えられなくなった。
ソファに仰向けになったトオルに、もう一度キスをする。
今度は唇を重ねるだけ。優しいキスは、昂ぶった精神を少しだけ冷静にさせてくれた。
唇を離すと、次は舌を絡めて、激しいキスを。
そう考えていたら、大きな手で頬を撫でられた。
くすぐったくて、でも嬉しくて、その手に自分から頬を寄せる。
もっと撫でて。私に触れて――声には出さず、態度で示す。
頬を撫でていた手は次に髪を、そして耳を。
優しく、優しく、撫でてくれる。
自分でも驚くくらい、嬉しくて――そして、興奮してる。
たったそれだけでも、気持ち良いと感じてしまう。嬉しいだけではなく、女の芯を刺激されてしまう。
押し倒したまま、どれくらいそうしていただろう。
その優しさに甘えてしまいそうになる自分を抑え、トオルの首元へと唇を動かす。
舌を這わせ、大好きな人の汗を舐め取る。
変な味。でも、不思議と嫌ではない。
それどころか――お酒よりも、興奮する。まるで心臓が耳元で鳴っていると錯覚しそうになるくらい、高鳴っている。
耳を撫でていた手は髪へ。そして、剥き出しの肩を撫でられた。
「ぁ」
自分でも驚くくらい、甘い声が漏れた。
いつもの冗談じゃない、本気の声。
それが恥ずかしくて、トオルの胸に顔を埋めてしまう。頬が火照ってる。
今のは無い。さっきのは駄目だ。
“感じた声”を聞かれるのって、こんなに恥ずかしかっただろうか?
そう考えている間にも、トオルの手は肩、そして背中を遠慮する事無く撫でてくる。
酔いで汗ばんだ体を撫でられるのは、こんなに恥ずかしいのか。それとも、撫でているのがトオルだから恥ずかしいのか。
そう考えたのは一瞬。
「――ン」
肩を撫でられる度、背中を撫でられる度、愛撫とも言えない刺激に身体を震わせる。
酒で感度の上がった身体には、まるで生殺しのように思えてしまう。
気付いたら、私は自分からトオルの身体に自分の身体を押し付け、時折体を震わせながら喘ぎ声を漏らしてしまっている。
愛撫でもない、撫でられてるだけなのに。
その事が恥ずかしくて、更に強くトオルの胸元に顔を押し付けてしまう。
一方的に感じさせられてるのが悔しくて、ワイシャツのボタンを一つ一つ開けていく。
撫でられるだけで感じてしまう敏感な身体は時折震えて、上手に外せない。
ようやく全部のボタンを外す頃には、自分でも驚くほどに息が上がっていた。
「いじわる――ぅん」
そう言うと、耳の後ろを撫でられる。
いつもはくすぐったい刺激なのに、感度が上がった身体はその刺激すら性感として捉えてしまう。
視界が滲んでいるのは、もう酒の所為だけではない。そんな言い訳は、もう出来ない。
いつの間にか、両足はトオルの右足を挟み、一番大事な部分を太ももへ擦りつけてしまっている。
多分、もう濡れちゃってる。
たったこれだけの刺激で、自分でも驚くくらいに感じちゃってる。
生娘という訳ではない。今まで何人もの男と寝た事がある。
――でも、こんなに気持ちが昂ぶって、嬉しくて、満たされるようなのは初めてで。
「とおる、とおる……だいすき、とおる」
肌着を捲り上げ、お腹に、胸に、舌を這わせる。
汗がまるで媚薬のように感じてしまう。一舐めごとに、自分が興奮していくのを理解してしまう。
それでも止められない。
トオルの匂いを取り込むように、私の匂いをトオルに沁みつけるように、お腹を舐め、胸を舐め、乳首を舐める。
むき出しになったお腹に私の胸を乗せ、乳首を転がす。お互いの汗と唾液で濡れていて、私以外の体温で暖かいそこへ擦りつけると、自分でするのとはまた違った刺激を感じてしまう。
何度もトオルを想って慰めた。
そんな、今までの自慰とは全く違う。
トオルの足に腰を擦りつけ、お腹で胸を刺激する。
絶頂へ至る事は無いが、性感は今まで感じた事が無いほどにまで昂ぶり、心は凄く満たされてる。
「は、はっ――んっ……ぅん」
腰を擦りつける時に、お腹に堅いモノが触れた。
自分の事ばかり考えてて、今まで気付いてなかったモノ。
その感触に、どうしてか――どうしようもないほどに、嬉しさを感じてしまった。
「トオル、も……感じてるんだ」
トオルも、だ。
私は――もう抑えられないくらい、誰が見ても判るくらい、感じてる。
きっと、トオルのズボンには隠しきれないシミが出来ているはずだ。
トオルを舐めるのを中断し、上半身を起こす。
汗を吸い、肌蹴た着物が重い。
ソファに横になっているトオルなんて、シャツを肌蹴たまま、酔ってぼんやりとした視線を私に向けてくる。
まるでレイプされてるみたい。
私が、トオルを犯してるみたい。
そう考えると、今までよりもっとドキドキしてしまう。
私って、変態なんだろうか?
そうかもしれない――好きな人を犯したいって、思ってしまったから。
「とおる、好きだよ? 大好き。……愛してる」
口付ける。最初は重ねるだけの、優しいキス。
次に、舌で唇を舐め、こじ開け、トオルの舌と絡みあう。
トオルの唾液を舐め取り、嚥下する。私の唾液を口内へと垂らす。
まるで二人で溶け合うような感覚に、酷く興奮してしまう。
それと同時に、片手でズボンのベルトを外そうとしたけど断念。
自分で思ってるより私は緊張しているようで、手が震えてしまってる。
その事が可笑しくて、心中で自分を笑ってしまう。
「ふ、ぁ――んっ、ぅ――」
鼻息が荒くなるのが恥ずかしい。でも、キスを止められない。
大好きな人と舌を絡ませ合うキスは、今までしてきたどんなキスよりも興奮する。
舌を、歯茎を、頬の裏を、上顎を、トオルの口内の隅々まで、私の舌が嘗めていく。
胸はトオルのお腹へ押し付け、乳首を擦りつける。
その柔らかい刺激がもどかしくて、腰が浮いてしまう。
はやく、はやく。
早くトオルを感じたくて、でも焦って上手くベルトを外せない。
緊張していて、興奮しすぎて、酔いで頭の中がぐちゃぐちゃで。
その事がもどかしくて、キスがより一層激しくなってしまう。
ベルトを外すのに、どれくらいの時間を要したのか判らない。
ようやく外れた頃には、トオルの――多分私の顔も、唾液まみれで汚れてしまっていた。
「はっ、はっ――んっ、はぁ……」
口内に残っていたトオルの唾液を、舌の上で転がしてから嚥下する。
下着越しに、お尻にトオルの熱を感じる。
熱くて、堅い。
興奮してる。私と同じように、興奮してる。私で、興奮してくれてる。
その事が嬉しくて、自分でも驚くくらい胸の中が満たされていく。
私がお尻を動かすと、トオルが小さく呻く。喘ぎ声を上げる。
――あ、かわいい。
「いれたい?」
自分のご主人様を見下ろしながら、そう問う。
腰を動かし、熱く猛る肉棒を刺激しながら。
まるで焦らす様に、少しだけ肉棒を刺激し続ける。
お尻で、下着を擦りつけるように、痛くないように淫液で濡らして刺激する。
「んっ、ん……いれたい、トオル?」
見上げてくるトオルの瞳が濡れている。
淫熱で、酒精で、快楽で。
そして、それは私も同じ。
トオルを焦らすように腰を動かして、そして、我慢できずに少し腰を引いてしまって。
性交の経験はあるのに、まるで自分の身体を制御できない。
早くトオルを感じたい。トオルの雄を受け入れ、私の身体を満たしたい。
見下ろして、主導権を握っているのは私のはずなのに、頷かない事で私を焦らしているのはトオル。
腰を動かしているのはトオルを焦らす為じゃなくて、私が早く受け入れたくて、我慢できていないだけ。
腰の動きが少しずつ早くなる。お尻で刺激していたはずなのに、気付いたら淫裂で刺激して、その上にある陰核を擦りつけていた。
「は、ぁ――ンっ」
閉じる事が出来なくなった口から涎が垂れ、トオルの胸元を汚す。
なんだかそれが、とても悪い事のように思えて、慌てて舌で自分の涎を拭う。
腰は止める事が出来ずに、トオルの陰茎と私の淫裂を擦り合わせてしまってる。
止まらない。
身体全体をグラインドさせるように、全身を使ってトオルの身体を刺激する。
舌も、胸も、腕も、お腹も……一番敏感な場所も。
下着越しの刺激がもどかしい。この肉棒で胎内を穿たれたら、どれだけ気持ち良いのだろう。
気付いたら、そんな事ばかりを考えてしまっている。
挿れたくて、挿れたくて、挿れたくて。
一生懸命、トオルにご奉仕する。
いれたいか、と聞いていたのは私。
飲み勝負に勝ったのも私。
トオルの上に乗ってるのは私。
「ごめ、ごめん……ごめんね、とおる」
右手で、下着を少しだけずらす。
その際に触れた下着は、自分でも驚くほどに湿っていた。
自分でする時よりもずっと――もしかしたら、マタタビを嗅いだ時と同じくらい。
そんなに自分が感じていたのかと思うと、顔から火が出そうになる。
「ん、…いれるね」
入れたいか、と聞いたのは私。
飲み勝負に勝ったのも私。
トオルの上に乗ってるのも私。
――でも、負けたのは私。
我慢できなくなったのは、私。
「んっ――んぅっ」
ソファの上だと不安定で、激しく動けない。
だから、トオルが私の中に少しずつ入ってくる感覚をはっきりと感じる事が出来た。
少しずつ、少しずつ、私の胎内にトオルが入ってくる。
初めて受け入れたご主人様の肉棒は、とても熱くて、堅い。
「はい――はいった」
大きすぎず、小さすぎず。
私の胎内にちょうどいい大きさ。
相性が良い、とも言える。
……その事が嬉しくて、こんな形だけど結ばれた事が嬉しくて、
「もうすこし、このまま」
私の言葉に同意する声が耳に届く。愛しい人の声が耳を擽る。
その手が耳を、髪を、背中を撫でてくれる。
胸に頭を重ねると、高くて速い心臓の音。
トオルも緊張してるんだ。そう思うと、幸せだった胸の中がもっと幸せになる。
繋がれて、満たされて、一緒に緊張してる。
「あったかいなぁ、トオルは」
私の居場所。私が帰ってくる場所。私が居たい場所。
そう考えていると、トオルの腰が少し動く。
「ふふ――うごく、ね?」
上半身を起こすと、私の胸が震える。
トオルは酔ってしまってるようで、なすがまま。
本当に、私がトオルを犯してるみたい。
でも、私はトオルを手に入れたいわけでも、奪いたいわけでもない。もちろん、傷付けたいわけでも。
――トオルに、気持ち良くなってほしい。
「んっ、ん――どう、とおる?」
身体が、腰が重い。
酒精の所為か、興奮してる所為か、自分が敏感な所為か。
陰茎が腰の奥へと届く度、腰を下ろす衝撃で胸が震える度、自分の上げる喘ぎ声が自分でも驚くほど甘いと感じる度。
私の限界が、絶頂が近付いてくる。
トオルも限界が近いようで、うめき声が――喘ぎ声がだんだんと大きくなってくる。
可愛い。可愛くて、愛おしい。
そんなトオルに唇を重ねる。
トオルが可愛すぎるから。
あと――私の喘ぎ声を聞かれるのが恥ずかしいから。
今更だと思う。でも、恥ずかしいモノは恥ずかしい。
「ふぅっ――ッ、ンゥッ、フゥ」
荒い息遣いは、私か、トオルか、それとも両方か。
それすら判らなくなるほどに、激しく舌を絡ませ合う。
酸素が足りなくなって、意識が霞む。それでも腰の動きは止まらない。
多分、もう何度かイっている。
思考が明転してる。時計の針の音も、何も聞こえない。私とトオルの荒い息、喘ぎ声だけがリビングに響いてる。
それでも止まらない。まだトオルがイっていない。だから止まれない。
何度も、何度も、絶頂しながらも腰を動かし続ける。
膣口が抉られ、子宮口を小突かれ、カリが敏感な所を擦っていく。
でもそれは、私の意志だ。
私が腰を動かし、陰茎を敏感な部分に届くように誘導している。
右手は片手では溢れてしまう胸を鷲掴みにして、左手は空いているもう片方の胸の乳首を刺激する。
トオルをイかせたいのに、私は私の身体を追い詰める。
何度もイって、それでもトオルがイかないから―――唇を離し、酸素を取り入れる。
「はぁっ――イ、イキそうっ……トオル、またっ」
初めて、トオルに告げる。
自分から、絶頂に至りそうだ、と。
それと同時に、男の腕が私を抱きしめた。
逃がさないように、暴れないように。
逃げないのに、暴れないのに――私はトオルのモノなのに、抱き締めなくてもいいのに、トオルは抱き締めてくれた。
「イクッ、いくっ……ッ」
トオルの精が、私の胎内を満たしていく。
私の膣が、トオルの精を一滴も逃がさないように締め付けてる。
そして、私を抱きしめるトオルの腕も、痛いくらいに力が籠っている。
でも、それが心地良い。
少し痛いけど、トオルの腕の中だと思うと、それも幸せに感じられる。
荒い息が耳に届いて、くすぐったい。身動ぎをしようとすると、ダメだと言わんばかりに腕に力が込められる。
「うん――もうすこし、このままで」
熱くて、温かくて、男と女の交わりが、こんなにも心地良いものだと初めて知った。
そう、初めて。
こんなに満たされたのは、初めて。
心も、身体も、全部トオルに――大好きな人に満たされてる。
体内にある、自分のモノではない熱が嬉しくて、右手でお腹を撫でた。
トクン、トクン、と早鐘を打つ心臓は、私のか、トオルのか、それとも両方か。
愛しい人が、私の名を紡ぐ。
――あ、だめだ。
「ん……」
ムクムクと起き上ったのは、私の情欲か、トオルの欲望か。
何度もイって、お酒も回って、身体は重いのに――悦んでいる、自分が居る。
「……すけべ」
若いもんね。一回じゃ、治まらないよね。
好きと言ってくれない彼だけど、だからこそ、とも思うのだ。
これから先、もっと幸せになれるんだ、と。
好きと言ってもらえないから、好きと言ってもらえたら、もっと幸せになれるんだ、と。
トオルの腕の中で、ずっと微睡んでいたい。
トオルの膝の上で、眠りたい。
平穏からは一番遠いご主人様。
いつも面倒事に巻き込まれてる私のご主人様。
「いいよ、トオルの部屋に行こう」
でも今は、微睡むよりも、眠るよりも、愛しいご主人様に抱かれたい。
喋らない系主人公。
どんな会話をしてるかは、妄想で補ってください。