げーむも大事だけど、作品を投稿して感想をもらうのも大事。
ふわふわと、揺れている。
水面で踊る綿毛のように、風に攫われた木の葉のように。
ふわふわと、ふわふわと――。
暖かな温もりに包まれて。
幸せな香りに包まれて。
確かな感触に包まれて。
ふわふわと、ふわふわと。
揺れる。
揺れる。
――揺れる。
目を開けると、すぐ傍に思いをよせる男性の顔があった。
けどどうしてか、それを当たり前に思い、驚くよりも安心を感じてしまう。
視線が重なった。
ああ、私は今まで眠っていたのか、と。
そんな事をぼんやりと考えながら――。
「おはようございます」
寝惚けた頭で、何も考えずに挨拶を交わす。
そのまま、愛しい人の裸の胸に頬を擦りつける。
獣がマーキングをする様に。ここは、私の場所だと主張する様に。
ぐりぐりと、ぐりぐりと。
徹さんが困ったように苦笑して、でも私の頭を撫でてくれる。
髪を梳く様に、いつの間にか現れてしまっている猫の耳を擽ってくれる。
優しく撫でてくれる。
それがとても気持ち良くて、私はもっと彼の胸に頬を擦りつける。
ずっとそれの繰り返し。
徹さんに私の匂いを沁み込ませる。
徹さんの手は大きくて、温かくて、気持ち良い。
初めて撫でてもらった時からずっと、私はこの人に撫でられるのが癖になってしまっている。
どうしようもないのだ。
どうしようもないほどに――この人に撫でられると、とても気持ち良い。
それがとても大事な事のように思えて――。
「―――――」
今何時だろうか。
そこまで考えて、思考が凍った。
いや。
いやいやいや。
「…………え?」
どういう状況だというのか、コレは。
どうして自分は、徹先輩の胸に頬を擦りつけてるのか。
中途半端な体勢で止まった私を訝しんで、徹先輩が声を掛けてくる。
名前を呼んでくれる。
今までのような「白音さん」ではなくて、「白音」と。
それが少しくすぐったくて、でも凄く嬉しくて、混乱した頭なのに心臓は高鳴ってしまう。
その声に反応し、視線を上げる。
すぐ傍に、大好きな人の顔。
心配そうな――ではない。
楽しそうな、嬉しそうな……面白そうな、そんな表情。
それが何を意味するのか――判らないほど、私も馬鹿ではない。
寝惚けていた。
寝惚けて……徹先輩に甘えていた。
その事実が脳に届くと、同時に頬が熱くなってくる。
「……おはよ、う……ございまぅ」
そのまま視線を逸らし、赤い顔を見られないようにゆっくりと毛布に潜る。
思い出した。
昨日の夜。
私は、この人に“初めて”を捧げたのだ。
初めてなのに、痛かったのに、気持ち良くて、甘えてしまったのだ。
「ぅぁー……」
思考が灼熱する。
ついでに、頬も灼熱する。
毛布で顔を隠し、徹先輩に背中を向ける。
よく考えると、あのまま寝てしまっているから私は裸のままだ。
……そして、徹先輩も。
昨日の度胸はどこへ行ったのか、裸を見せるのも、裸を見るのも、恥ずかしい。
と言うよりも、無理だ。
そう考えている間も、徹先輩の手は私の耳を撫でている。
優しく、優しく、撫でてくれている。
それが気持ち良くて、毛布に隠していた頭を上げてしまう。
もっと撫でてほしい、と思ってしまったから。
猫の耳がピクピクと、私の意志に反して動いてしまう。
背を向けたまま、徹先輩の身体に密着しそうになってしまう。
裸同士だから、きっと暖かくて気持ち良いんだろうなぁ、とまで考えて、いやいやと首を振る。
……私の思考よりも、身体の方が正直だ。
認めないが。
認めたら……なんだか色々と負けのような気がした。
「――むこう、向いてて下さい」
背中に風があたる。
……裸なんだし、肌と毛布の間に隙間があれば風も入る。
それはつまり、私の背中は、徹先輩に見られているという事。
お尻まで風の流れを感じているのは、お尻まで見られているという事。
――耳が現れているなら、きっと尻尾もだ。
そんな後姿を見て、徹先輩はどう思っているだろう。
そう考えていたら、衣擦れの音が耳に届いた。
そして、むこうを向いたという徹先輩の声。
その声を聞いて、恐る恐る振り返ると、徹先輩は確かに私に背中を向けていた。
……それはそれでどうかと思うが。
自分が言ったのだが……もっと私の裸を見てくれても、と少しでも思ってしまったのは変な事だろうか。
吐いた息は、少しだけ重い。
それは呆れか、残念か、それとももう少し違う感情か――。
いやいや、と首を振って起き上がる。
「――」
下腹部に、鈍い痛み。
それは、昨夜の事が夢ではなかった事。
私は昨日の夜、この人の――愛しい男性の女になったという事。
痛いのに、嬉しくて、お腹を撫でる。
ベッドを見ると、赤い血の跡もあった。
「――どうしよ」
多分、洗濯するのはレイナーレだろう。姉様かもしれない。ロスヴァイセの可能性もある。
だから、どうしよう、と悩む。
知られてるだろうし、きっと何も言われない。
それこそ祝福されても、皆の性格なら、と思う。
でも――。
だからといって、恥ずかしさが無くなるわけではない。
さっきとは別の理由で、頬が熱くなる。
はぁ、と小さく溜息。
嬉しくて、幸せで――そして、とても恥ずかしい。
そんな事を考えながら、着替えを済ませる為に動き出す。
床に落ちている白い下着を手に取り、身に付ける。
と……視線を感じた。
振り返ると――慌てて目を逸らされる。……まったく。
「すけべ」
枕を投げると、そのまま後頭部に当ってしまう。
徹先輩の言い訳を聞きながら、服を身に付ける。
服を着ながら……自分でも成長がよろしくないと思う胸に視線が行ってしまう。
溜息しか出ない。もう少し大きければ、と思ってしまう。
でも、徹先輩は……あんまり気にしない、のかな。
さっきも、私の着替えを見てたから――少なくとも、悪くは思われてない……と思いたい。
昨日の夜も――。
どうしよう。
……恥ずかしさよりも嬉しさの方が強い。
ドキドキしてる。
それはとても暖かな感情。
胸の奥が、満たされる。ポカポカする。
その感情を感じるだけで、不思議と笑顔になれる気がする。
振り返ると、少し遅れて服を身に付け始めてる徹先輩が居る。
その後ろ姿を見ていると、胸の奥の温もりが、じんわりと身体全体に広がっていくような感じがした。
トクン、トクン、と。
穏やかに、緩やかに、ココロが鳴る。
その暖かな感情の赴くままに、私に背を向けている愛しい人に抱きつく。
首に手を回し、耳に唇を近づける。
驚いた声が心地良い。
ああ――この人を好きになって良かった。
そう、心から……心の底から、思えた。
「大好き、徹さん」
私達二人しかいない部屋だけど、誰にも聞かれないように小さな声で紡ぐ。
首に回した腕に、少しだけ力を込める。
香るのは、汗の匂い。徹さんの匂い。
それを胸一杯に吸いこみ、目を閉じる。
――幸せだなぁ。
こんなに幸せでいいのかな、とすら思ってしまう。
そう思いながら……万感の想いを込めて、その頬に唇を寄せた。
白音さん可愛い。
もっとベタベタさせたいです。