※この作品はR-18です。

とある神器持ちの日記IF   作:ウメ種

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100均ヴァルキリーか残念ヴァルキリーかダメキリーか。
私の中でロスヴァイセさんのキャラが固まってない。
……むしろ、これだけ悩むキャラも珍しい。と思う。


戦乙女 IFー1

 フワリと香ったコーヒーの匂いに、顔を上げた。

 

「ああ……ありがとうございます」

 

 リビングで本を読んでいたら、すぐ傍にはコーヒーカップを二つ持った徹君が立っていた。

 一つは私、もう一つは自分用に。

 その脇には一冊の文庫本。

 一言断られて、隣に座られる。

 人一人分の間を開けて座り、熱いコーヒーを手渡される。

 ミルクは多め、砂糖は少な目。コーヒーと言うよりも色合い的にはカフェオレに近い。

 

「……良い香り」

 

 ふーふーと冷まして一口飲むと、心地良い暖かさが喉を下っていく。

 そんな私を見てから、徹君も自分のコーヒーを一口飲む。

 私のとは違い、ミルクは無し。でも、砂糖は大目。ミルクも入れた方が苦味は少ないのに。

 以前言ったら、ブラックの方が大人っぽいとかなんとか。

 私にはよく判らないけど、男の子はそういうのを気にするのかなぁ、と。

 そんな事を思い出しながら、もう一口コーヒーを啜る。

 うん、美味しい。

 

「勉強の調子はどうですか?」

 

 何気ない世間話のつもりでそう言うと、少し困ったような上擦った笑い声。

 ああ、あんまり上手く行ってないんだな、と。

 そう苦笑してしまう。

 

「また、お教えしましょうか?」

 

 そういうと、よろしく、と言ってもらえた。

 ちょっと嬉しい。

 これでも駒王学園で教鞭を振るっているのだ。

 生徒に勉強を教えるのも教師の仕事だ。

 ……以前そうしたら、なぜか黒歌さんから怒られたが。

 いや、確かに部屋で二人っきり。

 勉強を教える為に少し密着したかもしれない。

 でも、何も無かったのだ。……何も無かったから怒られた。

 ――言いたい事は判るけど。

 勉強は大事なんだから、真面目に教えないと駄目だと思うのだ。徹君も、真面目に質問して来るし。

 駒王学園の生徒の皆は不真面目という訳ではないが、いつも私をからかってくるし。

 確かに年齢は近いけど。

 ロスヴァイセちゃんとか、なんとか。

 ……親しく感じてもらえるのは悪くないけど、もっと教師として接してほしい。

 その点、徹君は真面目に聞いて来るから、私も真面目に応えたいのだ。

 ――物凄く呆れられたけど。

 

「……はぁ」

 

 その事を思い出すと、溜息しか出ない。

 まぁ……うん。

 私ももっと仲良くなりたい。

 黒歌さんやオーフィスさんみたいに、徹君とベタベタしたい。

 レイナーレさんのように頼られたい。

 それも本当だ。

 だいたい、今の距離も距離だ。

 コーヒーカップを両手で持って、口元を隠しながらちらりと隣を見る。

 人一人分の間が空いた距離。

 それが、私と徹君の距離。

 この家で、多分……私が一番徹君から遠い。

 レイナーレさんはすぐ傍で控えるし、黒歌さんとオーフィスさんはベタベタとくっつく。

 白音さんは何時も離れているけど、なんだかんだで気付いたらくっついている。

 私はいつも、この距離。

 人一人分の間が空いた、何とも言えない距離。

 

「――近づきたい、なぁ」

 

 口にして、恥ずかしくてまたコーヒーを飲む。

 甘くて暖かい。少し、気分が落ち着く。

 視線は、徹君とさっきまで読んでいた雑誌を行ったり来たり。

 チラチラと、文庫本を読んでいる徹君の横顔を盗み見る。

 はぁ。

 

「ああ、いえ。なんでもないですよ。……なんでも」

 

 溜息を吐いていたら、徹君から心配された。

 なんだかなぁ。

 私の方が年上なのに、心配されたり助けられたり。

 これではどっちが年上か判らなくなる。

 もう本当に、なんだかなぁ、と

 苦笑するしかない。

 

「そう言えば、何の本を読んでるんですか?」

 

 そう聞くと、どこかで聞いた事がある題名を教えてもらった。

 確か、よく女子の話題になっている、有名な文庫本のはずだ。

 でも――。

 

「それって、恋愛小説じゃないんですか?」

 

 しかも……言ってはなんだが、少しエッチな。

 女子たちは「リアルだ」とか言っていたが、私には判らない。

 学生時代なんて、勉強ばかりだったから。恋愛なんてした事も無いし。

 その事で、からかわれたのは……嫌な思い出だ。うん。

 いいじゃないか。恋愛未経験で。まだ十九だし。まだ十代だし。

 そう心中で言い訳をしながら、徹君が見せてくれている文庫本の表紙に視線を向ける。

 

「可愛い絵ですね」

 

 だから、不思議に思ってしまう。

 徹君に恋愛小説……似合うというか、似合わないというか。

 その感情が表情に出てしまったのか、徹君が苦笑する。

 なんでも、椿姫さんから勧められたのだそうだ。蒼那さんの『女王』。

 ……徹君に一体何をさせたいのか。

 

「どんな内容なんですか?」

 

 内容は、普通の恋愛小説なんだとか。

 男の子と女の子の。

 聞く限りだと、確かに普通なのだろう。

 ……まぁ、私に普通の恋愛経験があるのか、と聞かれると無いのだが。

 一般常識内での恋愛だ。

 告白して付き合って、手を握ったりデートしたり……キスしたり。

 そんな、恋愛小説。

 

「へぇ」

 

 興味が湧いて、徹君に近寄って小説を覗き込む。

 ページは122。

 丁度、半分ほど読んだところのようだ。

 場面は主人公とヒロインがデートをして……いるのか?

 やはり、最初から読まないと話の内容が判らない。

 恋愛小説など読んだことは無いが、少しだけ面白そうだと思う。

 学園の女子に人気なのも理由の一つ。

 あと――。

 

「徹君は、この小説は面白いですか?」

 

 徹君が、この本を読んでいるのがもう一つの理由。

 その表情は――どこか困ったような、苦笑い。

 勧められたが、多分合ってないのだろう。

 それでも律儀に読む辺り、真面目だなぁ、と。

 

「後で、私にも貸してもらえますか?」

 

 そう聞くと、同意の声。

 というよりも、読みかけなのに今から貸そうか、とまで言ってくれる。

 流石にそこまでは。

 

「椿姫さんの事ですから、最後まで読んでないと……後で内容を聞かれるかもしれませんよ?」

 

 困ったような表情で、そうか、と。

 その表情が面白くて、徹君には悪いが肩を震わせて笑ってしまう。

 恋愛小説。苦手なんだな、と。

 ……徹君の事がまた少し判って、ちょっと嬉しい。

 

「まぁ、恋愛小説を読むよりも、参考書を読んでもらう方が先生としては嬉しいですが」

 

 徹君の困ったような声。

 それがまた可笑しくて、笑ってしまう。

 

「今度、一緒に勉強しましょうか」

 

 また、教えてあげますから、と。

 教師と生徒。

 今はまだ、それだけの関係で満足している。

 こうやって話しながら、勉強の事で釘をさす。

 歳が近いからか、あまり教師と生徒という雰囲気になれないのが辛い所だが。

 それは、白音さんにも言える事だが。

 私って、威厳が無いのかなぁ。

 そう考えて、また溜息。

 大丈夫か、という徹君の声に顔を上げ――。

 

「――――」

 

 思いのほか近くにあった徹君の顔に、一瞬身を引きそうになる。

 近い。

 どうして――と考えたのは一瞬。

 近づいたのは、私だ。

 小説を読む為に、徹君に近づいた。

 その事で固まり、また徹君から心配される。

 ……この人は、相変わらず無防備だ。無防備で、鈍感だ。

 私が近寄っても表情一つ変えないし、こうやって話を続けてくれる。

 良い事なのかもしれないけど、意識されていないと判るというのも結構辛いモノがある。

 すぐ近くにある徹君の顔を、私はこんなにも意識しているのに。

 徹君は私がこんなに近付いても、いつも通りに話しかけてくる。

 ――ズルいな、と。

 でも。

 

「迷惑なんかじゃないですよ。私は先生ですから」

 

 そう胸を張って言う。

 こうやって、徹君の傍に居られるなら。

 先生として。

 それでいい。

 戦乙女として、眷属として、『御使い』として。

 そして――教師として。

 傍に居る。

 今は、それだけで十分だ。それだけで、満足している。

 ……今は。

 

「沢山課題を用意しますから、楽しみにしていて下さい」

 

 困ったような表情は、すぐ傍。

 先ほどまで感じていた徹君との間は、今は無い。

 肩が触れ合いそうな距離に少しだけ緊張しながら、それでもいつも通りに話しをする。

 徹君は、近くにいる私の事を気にもせず、自然な調子で話し掛けてくる

 本当、なんだかなぁ。

 

「…………はぁ」

 

 徹君に表情を見られないよう、顔を逸らして溜息を一つ。

 私って、魅力が無いのかなぁ。

 

 

 

 




 *月*日

 真羅から小説を勧められた。恋愛小説。女子に人気なんだとか。
 ……何の罰ゲームなんだろうか。
 読んだら感想を聞くそうだ。勘弁してほしい。
 学校で読めないので、家で読んでいたらロスヴァイセさんから食いつかれた。
 興味あったんだ…まぁ、歳も近いからなぁ。
 しかし、相変わらずロスヴァイセさんは無防備だ。
 ぴったりくっついてくるし。薄着だし。柔らかかった。
 勘弁してほしい……俺も一応、男なんだがなぁ。



 こんな感じ。
 
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