※この作品はR-18です。

とある神器持ちの日記IF   作:ウメ種

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えっちではない。
オーフィスちゃんのえっちはIF-2くらい。
書くか判らないけど。


無限 IFー1

 

 人は、理解できないものを恐れるのだと聞いた。

 さて――と。

 なら、我はこの胸の内にある理解できないものを恐れているのか?

 否。

 恐れてなどいない。

 恐怖とは、心拍数を上昇させ、集中力を乱し、思考を鈍らせる。

 そして何より、誰も恐怖を感じたいとは思わない。

 真の恐怖は、心を壊す。

 では――と。

 

「わからない」

 

 そう呟いた我の声を聞き逃さず、どうかしたのか、という声。

 その声はすぐ傍で、更に言うなら、すぐ隣。

 視線は前に、だが気配は我を見ている男を感じている。

 今見ているのは「サタンレンジャー」の最新話。

 

「好き、とはどんな感情?」

 

 隣に座っていたカミシロトオルが、不自然に震えた。

 それが、どうしてか判らずに、視線をテレビからカミシロトオルに移す。

 見上げると、視線を逸らされた。

 判らない。

 首を傾げてしまう。

 テレビの中のヒーローは、ヒロインに告白されていた。

 ヒーローはサタンレッドで、ヒロインはサタンイエロー。

 サーゼクスと、その『女王』。

 なんでも、この撮影の後、サーゼクスは『女王』に折檻されたらしい。どうでもいい。

 ただ、気になるのだ。

 

「好きだと、口付けする?」

 

 驚いた声は、隣から。

 視線を向けると、また逸らされた。

 判らない。首を傾げながら、視線は再度テレビへ。

 

「映画やドラマ。告白の後、皆口付けしてる」

 

 それは恋愛を題材にした物だけではない。

 アクションやミステリー。そんなモノでも、告白の後は口付けをする。

 そんなにも、口付けとは大切なものなのだろうか?

 唇を合わせるだけ。

 たったそれだけの事に、どれだけの意味があるのか理解できない。

 なので、聞いてみる。カミシロトオルの方を向きながら。

 

「口付け、してみたい」

 

 いつもならここで、レイナーレやロスヴァイセ達に邪魔をされる。

 上手くはぐらかされてしまう。

 でも、今日は居ない。

 もう暫くは、用事や仕事で家に帰って来ない。

 黒歌に感謝。

 

「口付け、したい」

 

 一言断って、立ち上がろうとしたカミシロトオルの手を取る。

 逃がさない。

 今日はチャンス。そう黒歌が言っていた。

 このチャンスを逃したら、また暫くはカミシロトオルと二人っきりになれない。

 

「好きとは、どんな感情?」

 

 口付けを交わせば、理解できるだろうか?

 この胸の内にある、理解できない感情。

 理解できない。

 けど、怖い訳ではない。

 嬉しいという感情も、楽しいという感情も、いまだによく判らない。

 そして、テレビに映る好きという感情も。

 時々、胸の奥によく判らない感情がある。

 モヤモヤしたモノで、それが何なのか判らない。

 聞いても教えてもらえない。

 

「教えてほしい」

 

 だから、乞う。

 嬉しいとはどんなものなのか。

 楽しいとはどんなものなのか。

 好きとは――どんなものなのか。

 

「カミシロトオル……教えて」

 

 そこまで言って、そこでふと、気付いた。

 胸が、心臓が――魂が、震えている。

 それが理解できなくて、カミシロトオルの手を握るのとは逆の手を、胸に添える。

 視線を胸元へ向ける。確かに高鳴る心臓に、首を傾げる。

 判らない。何故?

 

「カミシロトオル、我、変だ」

 

 グレートレッドと対峙した時でも、サマエルに力を奪われた時でも、ここまで変化があっただろうか?

 答えは、否。

 だからこそ、余計に判らない。理解できない。

 グレートレッドやサマエルに無くて、カミシロトオルにあるもの。

 それが理解できない。

 我の中にある感情、そして、カミシロトオルに感じるもの。

 それは何?

 

「胸が高鳴っている。何故?」

 

 耳に「サタンレンジャー」のセリフが届くが、頭に残らない。

 視線はカミシロトオルに、カミシロトオルの視線は我に。

 どれくらいの時間をそうしていたか判らない。

 だがこの時間は、確かに、我が望んでいた静寂の時間だったと思う。

 心地良くて、暖かで――退屈ではない、静寂。

 手を繋いだままカミシロトオルが、再度ソファへ腰を下ろす。

 少し空いてしまった間を埋めるように、そのすぐ傍へと移動する。

 肘が触れ合い、その二の腕に頭を預ける。

 黒歌はよくこうしている。白音はそうする黒歌を羨ましそうにしている。

 黒歌だと肩に頭が届くが、今の我では届かない。それが少し残念。

 不思議。

 この静寂の時間は、とても心地良い。

 永遠の静寂の中で眠りにつく。

 我がずっと願っていた事。

 

「我、変わった」

 

 誰もが言う。我は変わったと。

 我には判らないが、少し判ったかもしれない。

 我は、永遠の静寂よりも、刹那の静寂を求めている。

 何時から変わったか判らない。

 だが、悪くない。

 永遠ではなく刹那だからこそ、カミシロトオルと二人だけという刹那だからこそ、心地良い。

 

「………………」

 

 「サタンレンジャー」は、いつの間にか終わっていた。

 全然見てなかった。覚えていない。ちょっと残念。

 でも、動くとこの静寂が無くなりそうで、動きたくない。

 ああ、そうだ。

 

「………………」

 

 我は、カミシロトオルと口付けがしたいのだった。

 でも、静寂が壊れるのは嫌だ。

 どうしたものか――。

 そう考えていると、名前を呼ばれた。

 だが不思議と、静寂が壊れたとは思わない。不思議。

 

「なに?」

 

 返事をすると、何か飲むか、と聞かれた。

 

「いい」

 

 こうしていたい。

 カミシロトオルに身体を預けるのは、悪くない。

 黒歌の気持ちが少し判った気がする。

 これが好き? よく判らない。

 黒歌はカミシロトオルが好きだけど、それが我に当て嵌まるかは判らない。

 

「我、カミシロトオルと口付けがしたい」

 

 また、身体が震えた。

 見上げると、顔が少し赤くなっていた。

 

「変。我も、カミシロトオルも」

 

 面白い。

 そう、想った。

 そして思う。今は多分、我は笑えている。

 そう感じた。

 だから、ソファに膝立ちになる。

 カミシロトオルから少しの間だけでも離れるのは嫌だったけど、膝立ちになって、顔の高さをカミシロトオルと合わせる。

 口付けがどういうものかは知っている。

 我の唇と、カミシロトオルの唇を合わせる。それだけ。

 それだけで、好きが判る。判る? どうだろう。

 でも、してみたい。

 判らなくてもいいからしてみたい――そう思う。

 

「口付けをしたい」

 

 カミシロトオルが何か言っている。

 それを無視して、その頬に両の手を添える。

 唇が触れる。

 触れたのは一瞬。

 

「…………?」

 

 判らない。

 もう一度しようとして、今度はカミシロトオルが離れる。

 ソファの端まで移動される。

 

「あ」

 

 離れられるのが嫌で、手を伸ばす。

 伸ばした手はカミシロトオルの服の袖を掴んだ。

 

「もう一度」

 

 駄目と言われる。

 どうして?

 首を傾げると、またカミシロトオルが何か言っていた。

 でもなぜか、視線はその言葉を発する唇に。

 変だ。

 変。

 

「もう一度、口付けがしたい」

 

 高鳴る胸の鼓動が、まるで自分のモノとは思えない。

 膝立ちのまま、両手をカミシロトオルの頬に添える。

 カミシロトオルは動かない。

 顔が赤い。

 不思議。

 多分――これが嬉しい。好き。楽しい。

 どれだろう。判らない。

 ソレか、全部がない交ぜになってしまったのか。

 

「いい? 口付けしていい?」

 

 返事はどちらだったか……。

 その答えを認識するよりも先に、もう一度唇を重ねる。

 瞼を閉じると、より鮮明に唇の感触を感じられた。

 初めての口付けよりも長い口付け。

 悪くない。

 

「嫌だった?」

 

 返事は無い。それは多分、肯定。

 だから、もう一度。

 静止の声は一瞬。

 三度目の口付けは、唇を重ねるだけではなく、その首に両手を回す。

 この方が楽。

 そして、今までよりも強く押し付ける。

 黒歌が甘える理由が判る。

 この瞬間は悪くない。

 カミシロトオルと二人だけの刹那は、心地良い。

 永遠ではないからこその大切さ。

 

「不思議」

 

 唇を離すと、自然と言葉が漏れた。

 カミシロトオルの瞳の中に我が写っている。我だけが、瞳の中に居る。

 

「唇を重ねるだけで、変になる」

 

 首に回していた腕を解き、ソファから降りる。

 カミシロトオルから離れると、胸の奥が冷たくなった気がした。

 ああ、多分――

 

「またいつか、口付けがしたい」

 

 ――この感情は、寂しいだ。

 

 

 

 何か言われる前にリビングから出る。

 カミシロトオルから何か言われたら、どうなるか判らなかった。

 自分が判らない。好きを知りたかった。嬉しいを、楽しいを。

 でも――判ったのは、寂しい。

 口付けをして高鳴っていた胸が、今は締め付けられるように苦しい。

 リビングの外で、先ほどカミシロトオルと口付けを交わした唇を指でなぞる。

 まだ確かな感触が残っている。温もりも、胸の高鳴りも覚えている。

 

「また、口付けがしたい」

 

 そう、願ってしまった。

 永遠の静寂の中での眠りではない。

 グレートレッドとの決着でもない。

 我は、カミシロトオルとの口付けを、願い、求めてしまった。

 ――ああ、

 

「我は変わった」

 

 その事が、嬉しい。

 

 




支取とどっちを書くか迷った。
あと何人かはネタがあるので、そのうち投下すると思います
偶に覗いてくださいw
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