※この作品はR-18です。

とある神器持ちの日記IF   作:ウメ種

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オーフィスちゃんが本編では出番が少ないので、IFでたくさん書いてる。
会長も書きたいな。
ロスヴァイセさんも完成させないとな。
本編で徹君と絡みが少ない人たちの話も書きたい。
……書きたい話が多すぎて困りますorz


無限 IFー3

 

 湯船に浸かるとふわふわする。

 このふわふわが気持ち良いという事だと教えてもらった。

 気持ち良い。

 このふわふわが気持ち良い。

 なるほど、と思う。

 ずっとふわふわしていたい。

 

「…………」

 

 見上げると、浴室の天井から水滴が垂れてくる。

 ぽちゃん、ぽちゃん。

 浴槽の湯に水滴が落ち、静寂の中に音が混じる。

 静寂が乱れる。

 ぽちゃん、ぽちゃん。

 何度も、何度も、何度でも……静寂が乱れていく。

 だが、悪い気分ではない。

 気持ち良い。

 ああ――ふわふわして、気持ち良い。

 水面に黒髪が広がり、水を吸った髪は湯船に沈む。

 それを掬い上げ、手を離すとまた沈む。

 また、また、また。

 何度でも掬い上げ、何度でも髪が沈む。

 長い髪。

 この黒髪を、カミシロトオルは褒めてくれる。

 手入れも何も判らない、無造作に伸ばした髪。

 でも、綺麗だと言ってくれた。褒めてくれた。

 水を吸い、濡れ光る髪を口元に運ぶ。唇へ触れさせる。

 ――穏やかに鼓動していた心臓が、少しだけ強く震えた。

 

「…………」

 

 浴槽の中で体を伸ばすと、もっとふわふわする。

 不思議。

 お風呂は、嫌ではない。

 初めは妙な感じだったが、慣れてくると、入らないと物足りない気分になる。

 ぽちゃん、ぽちゃん。

 水滴が落ちる。

 水面に波紋が広がる。

 その広がる波紋を目で追うと、なんとなく気分が落ち着いてくる。

 水滴が落ちる音を聞きながら、湯船に広がる波紋を目で追う。

 どれくらいの時間そうしていただろうか。

 お風呂場に時計は無いので、時間は判らない。

 今何時だろうか? どれだけの時間をここで過ごしただろうか。

 ぼんやりと考える。

 

「…………」

 

 そろそろ上がろう。

 あまり長く入るのは駄目だと言われた。

 他の皆も入るから。

 判る。

 このふわふわは、皆で共有したい。

 

 

 

 

 

 お風呂から上がると、カミシロトオルに捕まった。

 髪を乾かすのは面倒。

 放っておいても、いずれ乾くのに。

 そう言うと、女の子だから駄目だと言われた。

 よく判らない。

 放っておけば乾くのに。

 リビングのテレビの前に座って髪を乾かす。

 床に座ると、我の背中を支えるようにカミシロトオルも腰を下ろしてくる。

 それを、当たり前のように感じている我が居る。

 ――変な感じ。

 支えられる。……慣れてきたけど、完全には慣れない。

 でも、それが本当に当たり前になりつつある。

 悪くない。

 

「……面倒」

 

 苦笑された。

 よく判らない。

 髪の水分をタオルで取り、ドライヤーで乾かされる。

 その間、我は動けない。

 動くと止められる。

 この髪を乾かす時間が勿体無い。そう思う。

 でも、髪を触られるのは嫌いではない。

 これも少しふわふわする。

 櫛で髪を梳かれ、熱風が攫う。

 カミシロトオルの指が、我の髪に触れている。

 どうしてか――そう考えると、ふわふわする。

 

「トオル、先に入るにゃー」

 

「先に使わせてもらいます」

 

 そうしていると、黒歌と白音がお風呂へ向かう。

 仲が良い。

 姉妹だから?

 我には繋がるモノが無いから、よく判らない。血も、絆も。

 ロスヴァイセはテーブルで何かをしている。

 授業の準備と言っていた。カミシロトオル達が昼間に行っている学校の準備だそうだ。

 眼鏡を掛けた姿は珍しい。そして、髪を纏めている姿も。

 カミシロトオルが褒めていた。これも珍しいと思う。

 …………。

 

「カミシロトオル。我も」

 

 髪を乾かしているカミシロトオルに向き直る。

 身長差があるので見上げる形になるが、これにも慣れた。

 だが、我が何を伝えたいのか伝わらなかった。

 首を傾げられる。

 こういう所を、ニブイのだという。

 黒歌達も、カミシロトオルを悪く言わないレイナーレでさえ、偶に言っている。

 カミシロトオルはニブイ。

 よく判らない――こうやって気付いてもらえない。

 それもまた、面白い。

 気付いてもらうようにするのも、面白い。

 

「髪」

 

 そう口にするが、首を傾げられた。

 これでも伝わらない。

 どうすればいいだろうか?

 いつの間にか髪を梳く手は止まっていて、ドライヤーとテレビの音だけが煩い。

 困った。

 

「ロスヴァイセの髪。我も」

 

 乾かしたいのか、と言われた。

 違う、と首を振る。

 どうすれば伝わるだろうか。

 難しい。

 言葉も、行動も。

 今まで我は独りだったから、こういう時にどうすればいいか判らない。

 だから、カミシロトオルの服の袖を引く。

 

「髪型」

 

 そこまで言うと、ようやく伝わったようで、カミシロトオルが得心したようにああ、と声を上げる。

 次いで、満面の笑顔で我の言葉が伝わった事を喜んでくれた。

 ふわふわする。

 よく判らない。

 お風呂に入っている訳でも、髪を梳かれている訳でもない。

 カミシロトオルが笑ってくれた。

 その笑顔を、すぐ傍で見る事が出来た。

 たったそれだけ。

 それだけで、ふわふわした。

 それをどうしてか、カミシロトオルに知られたくなくて、背中を向ける。

 

「髪。まだ乾いてない」

 

 そう言うと、髪を梳く手がまた動き始める。

 ふわふわする。

 さっきより、もっと。

 お風呂に入っている時より、もっと。

 髪を梳かれながら、目を閉じる。

 胸の奥に、心臓がある。

 その傍に、ふわふわする“感情”がある。

 気持ち良いという感情。

 でも何か、少し違うような気がする。

 このふわふわは、どんな“感情”なのだろう。

 カミシロトオルに背を向けたまま、身を寄せる。

 髪が乾かしにくいと言われた。

 …………。

 

「カミシロトオルはニブイ」

 

 よく意味も判らず、でもそう口にしていた。

 カミシロトオルの手が、一瞬止まった。

 なんだろう。

 この気持ちは、何なのだろう。

 この気持ちを少しでも長く感じられるなら、カミシロトオルがニブイのも悪くない。

 そう思った。

 

「気持ち良い…と思う」

 

 そうか、という声。

 でもこの“気持ち良い”は、髪を乾かしてもらっているから?

 それとも――カミシロトオルが触れているから?

 判らない。判らないけど……悪くない。

 笑ってくれているだろうか?

 そう思うと――よく判らない。

 なんだろう。この“ふわふわ”は。

 気持ち良いとは違う。寂しいとも違う。新しい――心地良い感情。

 知りたい。

 そんな事を考えていると、いつの間にか髪は乾かし終えていた。

 

「髪型。ロスヴァイセと同じ」

 

 そう伝えると、判った、と苦笑される。

 カミシロトオルに髪を触られる。

 楽しみ?

 よく判らない。

 この“ふわふわ”が、なんという感情なのか、我は知らない。

 ――後で、誰かに聞いてみよう。

 

「出来た?」

 

 そう簡単にできない、と笑われた。

 カミシロトオルの明るい声。楽しそう。

 ――そんな声を聞いていると、また胸がふわふわした。

 ふと視線を感じると、ロスヴァイセが笑っていた。

 何が面白いのだろう?

 そう考えている間に、髪型を整えられた。

 変な感じ。

 少し、頭が軽くなったような気がする。

 ゴムで髪を引っ張られるような感じに違和感を感じてしまう。

 あと、うなじが涼しい。

 

「変な感じ」

 

 手で髪を触ろうとすると、確かに今まですぐに触れた髪が、纏められていた。

 変な感触。

 少し面白い。

 頭を振ると、髪が引っ張られるような感じ。

 

「……そう」

 

 似合う、と言ってくれた。可愛いと、言ってくれた。

 よく判らない。

 自分が見えないから――判らない。

 でも、カミシロトオルがそう言ってくれるなら、そうなのだろう、と。

 そう思うと、またココロがふわふわした。

 身体が軽くなったような、すぐ動きたいような、変な感じ。

 

「良く似合ってますよ、オーフィスさん」

 

「うん」

 

 ロスヴァイセからも褒めてもらえた。

 そのまま、カミシロトオルに背中を預ける。

 胡坐をかいた足の間に、身体を埋める。

 そうすると、気持ち良い。

 驚いた声が上がるが、止められなかった。

 胸が高鳴る。

 ――それが心地良くて、胡坐の上に腰を下ろす。もっと背中を押しつける。

 

「相変わらず、仲が良いですね」

 

 カミシロトオルがロスヴァイセの名前を呼ぶけど、ロスヴァイセは笑ったまま。

 

「何が面白い?」

 

 その疑問を口にする。

 そう聞くと、少しだけ驚いた顔をして、また笑顔を浮かべる。

 どうしてそんなに楽しそうなのか。面白そうなのか――我、何か変?

 髪を触る。

 この髪型が変なのだろうか?

 

「似合ってない?」

 

 二人から否定された。

 似合ってる?

 

「何が面白い?」

 

「オーフィスさんが楽しそうですから」

 

「……楽しい?」

 

 我は今、楽しそう?

 

「我、楽しそうにしてる?」

 

 そう聞く。

 すぐ後ろ、我が背中を預けているカミシロトオルに。

 見上げると、楽しそうだ、と言われた。

 よく判らない。

 でも――。

 

「そう……」

 

 多分、我は嬉しい。

 きっと喜んでいる。

 胸のふわふわがくすぐったくて、纏められた髪を一房手に取り、口元を隠す。

 変な感じ。

 嬉しい。喜び。その感情が、心地良い。心地良いのに――隠したい。

 

「変な感じ」

 

 くすぐったくて、ふわふわしてて――その気持ちを気付かれたくない。

 口元に寄せた髪から、良い匂い。

 シャンプーの匂い。悪くない……好きだ、と思う。

 でも――カミシロトオルは、この匂いをどう思っているだろうか?

 好き……だと良い、と思う。

 我と同じものを、カミシロトオルも好きなら、と。

 

「“私”、変じゃない?」

 

 変じゃない、と言ってくれた。

 そう、とその胸に頭を預ける。

 “私”の耳が、カミシロトオルの心音を捉える。

 平音とは違う。鼓動が早くて、高い。

 

「――良かった」

 

 何が?

 ……自分でも判らない。

 でも、良かったと思う。

 カミシロトオルに変だと思われなくて。

 この髪型が似合っていると、褒めてもらえて。

 

「“私”は嬉しい」

 

 聞かれないように、口元を隠し、小さな声で呟く。

 嬉しい。

 ――その気持ちが、嬉しい。

 ふと、視線を感じて、その方向へ目を向ける。

 

「何が面白い?」

 

「いえいえ、別に?」

 

 その視線がくすぐったくて、すぐに目を逸らす。

 その視線から隠れるように、身体をもっとカミシロトオルに寄せる。

 くっつくと、心地良い。

 ――座り辛い、と言われた。

 

「……カミシロトオルはニブイ」

 

 でも、そんなカミシロトオルだから。

 “私”は――嬉しいのだろう。何となく、そう思った。

 

 




オーフィスちゃんの色んな髪型が見たい。
原作の方で何とかなりませんかね、石踏先生? みやま先生?
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