「ヴェル、最近はずっと石鹸の匂いをさせていたけど、今日は潮の香り。」
帰宅したヴェルを玄関に出迎え、素早く匂いをチェックしたヴィルマがこっそりエリーゼに報告する。今日はアマーリエとの逢瀬はなさそうだ、そう判断したエリーゼは上機嫌となりヴェルに声をかける。
「ヴェンデリン様、おかえりなさい。今日の土木工事はいかがでしたか?」
「エリーゼ、ただいま。今日は工事は途中で切り上げて、バザーで消費した塩を作りにちょっと海まで足を伸ばしたんだ。いずれは道を南の海まで繋げたいけれど、人が住む場所の開発を優先しないと行けないから、道を切り開いて港が作れるようになるのは、まだ当分先になるな。」
「船が使えるようになると、発展が早まりますものね。」
ヴェルと領地の発展について会話しながら、エリーゼはホッとした笑みを浮かべていた。
翌日は朝から強い雨が降っていた。
「(雨が降るなら土木工事はお休みだろうな)」
とアマーリエは思う。それはつまりヴェルは外出しないという事を意味する。今日は小屋に行く必要はないだろう。ところが午後になるとヴェルに持たされている魔道通信機の呼び出しがあった。アマーリエは意外に思いながらも、小屋に移動して連絡をする。
『はい』
ヴェルの声がしたのを確認して、挨拶をする。
「こんにちは、主様。『あてがい女』のアマーリエです。雨が降っていて小屋まで時間がかかったの。遅くなってごめんなさい。」
『もしもし、エーリッヒ兄さんですか』
「はい?ヴェル君?」
『どうもご無沙汰しています。そうなんですね。急用、分かりました。これからすぐに向かいます。』
「ヴェル君、こちらに来てくれるのかな?」
『はい、エリーゼに事情を説明したら行けるので少しだけお待ちください。今一緒にいるので。』
ようやく理解した。ヴェルはアマーリエとの通話を、エーリッヒの通話として演技しているのだ。そうやってエリーゼ達と過ごす時間を抜け出してアマーリエの元を訪れようとしているのだろう。
「(これはきっと、支度して待てという事よね。)」
自分も雨の中を走って濡れていたな、そう考えるとアマーリエは浴槽にお湯を貯め始めた。
「アマーリエ義姉さん、変な通話でごめんなさい。でも、うまく話を合わせてくれて助かりました。」
開口一番ヴェルはアマーリエに謝った。
「もうヴェル君、私はエリーゼさん達を騙すようなやり方は感心しないわ。」
珍しくアマーリエが小言を言う。
「でも、アマーリエ義姉さんと愛し合いたいなって思ったら、俺はもう我慢ができなくて。」
「ヴェル君、そうね。ヴェル君と過ごせるのは今だけだものね。濡れたでしょうから、一緒にお風呂に入りましょうか。このままだと風邪を引いてしまうかもしれないもの。」
ヴェルとアマーリエは互いに濡れた服を脱がせ合う。
「(やはり私はヴェル君に甘いのかしら)」
アマーリエは自分でも良くないなと思う。
「(私はヴェル君に変えられてしまったんだ)」
そう思うと急に腹が立って、目の前にいる裸のヴェルをつねった。
「痛い、どうしたんですか、アマーリエ義姉さん。」
「ヴェル君、やはり私ちょっと腹を立てているのよ。だって嘘はいけない事だと思うもの。それを受け入れてしまう私もどんどんヴェル君に甘くなってしまっているし。それもこれも全部ヴェル君が悪いのよ。」
「分かりました、さっきみたいにエリーゼを騙すような形で、アマーリエ義姉さんに会いに来る事はもうしないようにしますね。」
「うん、私もそうしてくれると嬉しい。ヴェル君はもう十分私の所に来てくれているもの。エリーゼさん達と過ごす時間は大事にしてほしい。私の事、『あてがい女』存在をエリーゼさん達に説明できないのはとてもよく分かるのだけれど。」
心の中の気掛かりを吐き出すと、途端にアマーリエはヴェルに甘えたくなる。
「それでは主様、今日の『あてがい女』どうすればよろしいですか?」
「アマーリエ義姉さん、今日もまず口でお願いします」
「はい、主様。それでは失礼しますね。」
アマーリエが屹立するヴェルの男性器に唇を寄せる。風呂は用意してあるが、ヴェルもアマーリエももう待てない。ちゅぽちゅぽ、浴室に濡れた音が響く。ヴェルの腰の前で、アマーリエの頭が大きく動く。
「アマーリエ義姉さん、俺もう我慢できないから。」
「はい、分かりました主様。それではどうぞご存分に『あてがい女』をお召し上がりください。」
アマーリエは浴室の床に寝そべると、ヴェルを迎え入れる為に身体を開いた。自身の指で身体を慰め、秘所を開く。自分でも驚くほど愛液が溢れ出しているのを感じる。
ヴェルはアマーリエの身体に上からのしかかり、挿入を果たす。入り口を探していたヴェルの男性器が目的地を探しあて、入り口をこじ開け、猛々しく脈打ちながらアマーリエの女性器に入り込む。いつだってその瞬間はアマーリエにとって甘美な一瞬だった。
「あ、あん」
ヴェルの腰が揺れる度、アマーリエは喘ぎ声を漏らす。その音に興奮しながらヴェルは挿入したままでアマーリエの豊かな胸に両手で挑み掛かる。ヴェルにとってアマーリエはちょうど抱きやすいサイズ。ヴェルに貫かれたままのアマーリエにとってもヴェルはちょうど抱かれやすいサイズ。
「気持ちいいわ、ヴェル君。私はヴェル君に抱かれているこの瞬間が一番好き。」
ヴェルに抱かれたアマーリエがうっとりとして思わず本心を漏らす。
「俺もアマーリエ義姉さんに挿入している時が一番落ち着きます。」
まとわりつくアマーリエの膣の感触と、豊満な弾力を返す胸の感触を同時に楽しみながらヴェルが言う。ヴェルはいつも思う。アマーリエの膣内に挿入した自分は、鞘に収まる事が出来た刀のようだと。相手が自分の為にデザインされたような感覚。それとも初体験の相手だからこそ、ヴェルはアマーリエに合わせられてしまったのだろうか。
「ダメよ、それはダメなの、ヴェル君。私とは今だけの関係なんだもの。若いエリーゼさん達の身体は、こんなおばさんよりずっと気持ちいいはずだわ。これはエリーゼさん達を、ヴェル君が愛する為にしている事なんだから。」
ヴェルはそう呟き続けるアマーリエの口をキスで塞ぐ。
「そんな事言わないでください。アマーリエ義姉さんはいつだって最高ですよ。」
キスでアマーリエの口を塞いだまま、ヴェルの腰が動きを強める。ヴェルの男性器を優しく包んでいたアマーリエの女性器は、アマーリエの興奮を反映してキュッとヴェルを締め付ける。アマーリエの身体に中心に一気に火がつく。
「そんなにされたら、私、もうダメよ、感じすぎちゃってダメなのヴェル君。でも本当はヴェル君はエリーゼさんの身体で感じているはずなの。」
「いいんです、アマーリエ義姉さん。気持ちよくいってください。俺は今、アマーリエ義姉さんをいかせてあげたいんです。俺ももういきますから、安心して。」
「いいの、本当にいいのヴェル君。」
ガクガクと興奮に身体を揺らし、涎を垂らしながらアヘ顔のアマーリエがヴェルに尋ねる。
「いいんですよ、俺はアマーリエ義姉さんが一番だから。」
「うん、私も好き。ヴェル君が一番好き。」
絡みつくアマーリエの膣内に、熱いヴェルの精子が撒き散らされる。その熱を感じ取ると、ヴェルに一足遅れてアマーリエは絶頂に至る。
「ヴェル君、ヴェル君、私イク、いっちゃう。」
「俺はもうアマーリエ義姉さんでイッたから。だから気持ちよくイッて。」
ヴェルに優しくキスされながら、絶頂に達したアマーリエは快感のあまりガクガクと震えていた。
「ひどいわ、ヴェル君」
ヴェルの男性器へのご奉仕の後、2人で身体を洗いっこしながらアマーリエはヴェルを糾弾した。
「一緒にイクつもりだったのに、何も言わずに先に1人でイッてしまうんだもの。」
アマーリエはヴェルと一緒に絶頂に達するのが好きなのだ。ヴェルもそうだと思っていた。なのに自分だけ先に済ませてしまうだなんて信じられない。ヴェルに手ほどきをする『あてがい女』として、これは嘘以上に看過できない点だった。
「男性は先に女性をイカせないといけないの。せめて自分がイク時は女性に予告をして上げて欲しいの。」
「すみません、だって昨日はアマーリエ義姉さんと愛し合えなかったから、今日は我慢ができなくて。」
確かにそうだった。昨日は海に行ってそのまま帰ったので、ヴェルと愛し合っていなかった。アマーリエと関係を結ぶようになって以降、若いヴェルの身体は毎日精子を吐き出さないと溜まってしまう一方なのだろう。
「(それは確かにヴェル君辛かっただろうな)」
アマーリエもそう思う。
「もう、仕方がないな。ヴェル君は。でも、奥様達にはちゃんとして上げてね。」
「(私って、やっぱりヴェル君に甘すぎるんじゃないかしら)」
風呂を出た2人はベッドに向かった。
「ヴェル君、今日はそこに横になって」
「はい、アマーリエ義姉さん」
いつもと少し違うアマーリエの様子に素直にヴェルが従う。アマーリエがヴェルの腹の上に跨った。
「ヴェル君が男性として、その、昨日出来なかったから溜まってしまったのは分かったわ。でも、今日のヴェル君は色々酷かったと思うのよ。なので今日はヴェル君に罰を与えます。」
アマーリエの指がヴェルの男性器に絡みつく。
「今日のヴェル君はダメだと思うの。だからこの後はお姉さんが手でシコシコ抜いてあげるね。」
アマーリエがヴェルの男性器に涎を垂らし潤滑液にすると手で大きくしごき始めた。
「ヴェル君、エリーゼさん達に嘘をついてはダメよ。」
「はい、分かりました。アマーリエ義姉さん。」
「ヴェル君、いくときはちゃんと予告しないとダメよ。」
「はい、次からはちゃんとします、アマーリエ義姉さん。」
「ね、悪い事をする子には罰があります。本当はヴェル君ももう一回膣内射精したかったよね。ごめんね。」
「うん、アマーリエ義姉さんの中に入れたいな。」
「駄目よ。ヴェル君が辛いのは分かるわ。私もヴェル君を迎え入れて上げられなくて辛い。でもヴェル君がちゃんとしてくれないと、私達はとっても困ったことになってしまうの。だから今日はこのまま大人しく我慢してね。手でシコシコ行きましょうねー。」
「ダメだよ、アマーリエ義姉さん。俺もうイキそうです。イク、イキます。」
「イッていいのよ、ヴェル君。今日はこのままそっとそおっとイキましょうね。」
ヴェルの男性器がアマーリエの手で優しく射精に導かれる。アマーリエの指に逸物をしごかれ乳首を舐められながら、その日のヴェルは2回目の絶頂に達した。ヴェルの精子がアマーリエの腹と太ももに撒き散らされれた。アマーリエはその様子を残念そうに眺める。
「ごめんねヴェル君。でもヴェル君がイク瞬間の顔はとっても可愛かったよ。」
そう言ってアマーリエはヴェルにキスをする。そしてヴェルの男性器へのご奉仕を開始する。
「アマーリエ義姉さんも、俺を思ってくれてのことって分かっています。だから良いんです。確かに先に1人で先にいかせるのをアマーリエ義姉さんが嫌がる気持ちが分かりました。エリーゼに嘘をつくのもよくなかったかもしれない。それに、アマーリエ義姉さんにリードされるのも支配されている感じがあって嫌いじゃなかったです。」
「もうヴェル君たら。私も、もう手でヴェル君を慰めることなんてしたくないの。だから次は2人でちゃんと愛し合いましょうね。」
「はい、次こそは2人で一緒にイキましょう。」
ヴェルとアマーリエは次回に期待をする目つきで見つめあった。
その日、エーリッヒに呼び出されたと言って慌てて出かけたヴェルは、雨でずぶ濡れになって帰宅した。
「参ったよ。《瞬間移動》でいつものように家の外を思い浮かべちゃって、今日は雨が強かったから玄関でずぶ濡れになったんだ。」
「もう、ヴェルはドジだなー。」
「ヴェンデリン様、濡れた服のままでは風邪をひいてしまいます。すぐお風呂の支度をさせますね。」
慌ててヴェルを迎えるエリーゼに対して、ヴィルマは微かに首を振ってみせた。それは雨でずぶ濡れになったヴェルの身体から、石鹸の匂いを嗅ぎ取ることは出来なかったという意味だった。
翌朝、ヴェルが出かけた後、エリーゼはローデリヒに声をかけた。
「ローデリヒ、ちょっと魔道通信機を貸して欲しいのだけれど。」
「かしこまりました。」
ローデリヒがエリーゼにうやうやしく魔道通信機を差し出す。開発事業を統括するローデリヒは役目上、魔道通信機を預かっている。バウマイスター伯爵家の窓口であり、エリーゼ宛の連絡の取次も彼が行うので、何か連絡を取りたい時にエリーゼが魔道通常機を借りる事は珍しくなかった。
自室に戻るとエリーゼは魔道通信機を使い、ある連絡先に通話をする。
その朝、家族で朝食を楽しんでいた五男のエーリッヒはヴェルとの連絡用に持たされている魔道通信機で呼び出された。
『おはようございます!私、あのヴェンデリン様の婚約者のエリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイムです。』
「おはようございます、エリーゼさん。エーリッヒ・フォン・ブラントです。ヴェルに何かありましたか?」
『突然ご連絡してごめんなさい。ヴェンデリン様が、昨日は突然エーリッヒさんに呼び出されたって話して出かけて行ったのですが、昨日は本当にそういう事情だったのでしょうか?』
「(ヴェル、これは相当アマーリエ義姉さんに入れ込んでいるな。事情を知る僕ならうまく誤魔化せると思ったんだろうな。ここは弟の家庭の平和の為にも僕が嘘をつくしかないな。)」
エーリッヒは正しく事態を理解すると、嘘をつく決心を固めた。
「はい、本当ですよ。王都のお偉い人達がヴェルと話をしたい要件がある時、僕が仲介する事が多いんです。昨日もそんな感じで急に連絡を取るよう迫られて困ってしまって。なので僕からヴェルに連絡を入れたんですよ。」
ミリヤムが横で何事かと耳を澄ませているのを感じるが、エーリッヒの口ぶりに本当のことと信じている素振りだった。実際、魔道通信機はヴェルとのやり取りのために持たされている、それはミリヤムも知っている事なのだ。
『良かった、やはりそうだったんですね。すみません、ヴェンデリン様にはこの通話のことは内緒に。』
「はい、分かっています。」
「(ヴェルもアマーリエ義姉さんの手で大人になったんだな。)」
通話が切れるとエーリッヒはしばし感慨に耽った。
「どんな御用でしたの?」
「ん、ああ、ヴェルの婚約者のエリーゼさんがね、僕がヴェンデリンを忙しくさせすぎじゃないかって。昨日、僕がヴェルを呼び出したタイミングがちょうどエリーゼさんと過ごしていた時間だったらしくて、ほら、あちらでは雨が降っていたそうだからヴェルの土木工事がお休みだったんだろうね。それで、あんまりヴェルを急に仕事で呼び出してくれるなと、ちょっと釘を刺されてしまったかな。」
「そうだったのね。あの方達は結婚を控えて、今が一番ドキドキして楽しい時じゃないかしら。」
「そうだね、ミリヤム。でも僕は婚約時代よりも、愛する奥さんと子供達と一緒に過ごせる今の方がずっと幸せかもしれないな。」
「まあ。」
エーリッヒとミリヤムがしばし見つめあった。
「エリーゼさんにはしっかり釘を刺されてしまった事だし、王都にいる男兄弟で今度集まって説明をしておくよ。ヴェルに急な呼び出しをしないようにしようってね。(これは王都の男兄弟に召集をかけて、ヴェルとアマーリエ義姉さんとの関係をを説明しておく方か良い頃合いなんだろうな。)」