バウマイスター騎士爵家の以前の領主館は三男のパウルの領地に移築されていた。クルトとアマーリエが以前使っていた部屋は、現在は領主であるパウル夫婦が使っている。
部屋数の関係で、アマーリエ親子は近くに別の小屋を貰った。別棟くらいの位置関係なので食事は母屋で取るのだが、それ以外では母屋に立ち寄る機会が減った。アマーリエにはどうしてもパウル夫婦の邪魔をしたくないという意識が働くのだ。
母屋の家事は主にヨハンナが取り仕切るのだが、アマーリエは母屋に住んでいない。『あてがい女』の役目で小屋の管理が追加された事もあり、現在は母屋の家事からは解放されている。
身体が空いている時は率先して手伝い位はするのだが、使用人も増えていた事もあり、領主館は役割が無いと立ち寄りづらい場所になっていた。この為、パウルの領地に移ってから、アマーリエはヨハンナとは顔を合わせる機会が極端に減っていた。
「(以前はこの家で毎日のように顔を合わせていたのに、お義母様とは少し縁遠くなってしまったわ。)」
アマーリエはこの屋敷で暮らした数年間を振り返る。今となっては遠い昔のようだった。
「アマーリエ義姉さん、今建築している領主館が完成したら、ちゃんと専用に部屋は用意するから。」
パウルからはそう言われていた。長男の嫁という事もあるようだが、母子共にバウマイスター本家当主のヴェンデリンの預かり人だからという意識がパウルには強いらしい。
両親だけでなく、兄の子持ちの未亡人が同居するというのは、まだ新婚と言えるパウルの家庭にとって中々に面倒な事情とはアマーリエも理解している。
「居場所を頂けて助かります、パウル様。」
そういう時、朗らかにアマーリエも返事するようにしていた。浮いた存在になりがちな孫を気遣っているのだろう、アルトゥルが何かとカールとオスカーの世話を焼いてくれるようになっている。
「(確かに、難しい問題になってるのね。)」
アマーリエとしては自分の立場に敏感にならざるを得ない。アマーリエ個人としてはメイドの扱いでも構わないのだが、アマーリエがあまりにぞんざいな扱いを受けるとカールとオスカーにも良く無い影響が出てしまうだろう。騎士爵家当主となるのだから、カールと弟のオスカーには肩身の狭い思いをさせたくはなかった。
住む所を別にするというのは、家の中の序列を可視化させない。つまりアマーリエ親子を客人として扱える点にも理由があるのだろう。そう考えると現在の預かり人という立場は悪いものでは無いのだが、仮初の形は、このままずっと続けて良い物でも無いとも感じる。
「(領主になるための教育は、私だけでは不十分でしょうし。)」
「お義母様、お呼びでしょうか。」
アマーリエはマルレーネに導かれ、パウルの領主館のヨハンナの私室に通された。
マルレーネは次男の嫁、分家はほぼ同格と言っても年齢による微妙な上下関係はあり、パウルの家では兄嫁として振る舞う。元々、嫁の年齢としてはマルレーネは最高齢なので今ではすっかり『バウマイスター分家の嫁代表』といった立場だった。
「今日は来てくれてありがとう、アマーリエさん」
ヨハンナがアマーリエに声をかける。室内は身内だけだった。アルトゥルとヨハンナ、次男のヘルマン夫婦、三男のパウル夫婦だけだ。
「私ね、アマーリエさんのお話をマルレーネさんから聞いたの。」
ヨハンナがアルトゥルを、じっとりとした目つきで見ながら話し始めた。
「アルトゥルが勝手に色々と差配して最初は心配していたの。またレイラさんのような事があるのでは無いかと。」
「(まぁ、お義母様はそんな心配を。)」
「孫もいる息子の嫁に、私が手を出す筈がないだろう。」
アルトゥルが小声で抗議するが、ヨハンナは手を振って黙らせる。
「あなたの女癖の悪さは私がよく知っています。でもね、アマーリエさん。今回の事は、マルレーネさんから色々と教えてもらったけれど、アルトゥルにしては出来過ぎだった。私は本当にこうなって良かったと思っているの。」
そう言ってヨハンナはアルトゥルからアマーリエへと視線を移す。そしてアマーリエにズバリ問うた。
「ヴェンデリンとは、上手くいっているのでしょう?」
アマーリエもヨハンナの視線をしっかりと受け止めて答えた。
「はい、お義母様。私の立場でこう言って良いのかわかりませんが、私は誰に聞かれても『ヴェンデリン様をお慕いしています』と言えます。この気持ちに偽りはありませんわ。」
「それは良かったわ。元々仲が良かったから上手く行くだろうと確信はしていたのだけれど、やはりアマーリエさんに直接そう言われると凄く嬉しいの。」
ヨハンナは柔らかく微笑む。
「ヴェンデリンの面倒を見てくださってありがとう。貴方なら私は本当に安心できるの。どうかあの子の為にも、最後まで役目を務めて上げてくださいね。」
ヨハンナの言葉に、アマーリエはしっかりと頷き返す。
「あの子も出世してしまったから、ヴェンデリンの周りに、アマーリエさんのような昔からの知り合いがいてくれると本当に安心なの。」
私はね、とヨハンナは言葉を紡いだ。
「私はね、よく覚えています。ヴェンデリンが冒険者学校に入学する為にこの家を出て行く時、見送ったのは私とアマーリエさん、あなただけだったなって。」
「そうでしたね、お義母様。」
とアマーリエも懐かしく思い出す。
「あの頃から、私と貴方だけは変わらずずっとヴェンデリンの味方だったの。私にとって貴方は娘なのよ、アマーリエさん。もちろん、子供のお嫁さん達はみんな私の娘よ。
だからね、私の子が長男のクルトであっても八男のヴェンデリンであっても、アマーリエさんが私の娘なのは変わらないのよ。」
「お義母様、でも私は•••」
アマーリエが『自分はヴェンデリンの妻ではない』と言いかける。
「いいの。大丈夫よ、アマーリエさん。クルトの件では、貴方に迷惑をかけてしまって本当にごめんなさい。
罪滅ぼしという訳では無いのだけれど、私がちゃんと貴方は私の娘だと示すわ。確かに最初はみんな戸惑うかもしれない。でもね、当主の産みの母親の立場って強いのよ。
当主のヴェンデリンの母である私が、アマーリエさんを娘として扱うの。それでみんな、ちゃんと配慮をしてくれるようになります。だから貴方は安心して、みんなちゃんと貴方の居場所を用意してくれますから。」
「お義母様。」
思いがけないヨハンナの言葉に、アマーリエは涙ぐんだ。
「最初は心無い仕打ちを受ける事もあるかもしれないわ。でも、私とアルトゥルが貴方を娘と思っています。この事はこの場にいる皆が証人です。だから、アマーリエさんは堂々としていいの。心配せず、ヴェンデリンの近くにいてあげてね。」
「•••はい。」
「みんな本当にアマーリエさんの事を心配していたのよ。」
マルレーネがアマーリエに声をかける。
「カールとオスカーの事は心配しなくていい。私が出来る限り、領主に相応しく鍛えあげよう。なんと言ってもカールは初孫だしな。」
アルトゥルも、ヨハンナの言葉に賛意を示す。
「アマーリエ義姉さん、今建ててる屋敷に部屋はもちろん用意するつもりだけれど、きっとバウマイスター伯爵家にもそのうち部屋が用意されるだろうってみんなで話してる。
だからこちらの部屋は、実家のような物だと思ってくれれば良いから。用意する部屋はずっと空けておくからさ。」
「ありがとう、パウル様。」
最後の温かいパウルの言葉に、ずっと泣かされていたアマーリエは大いに励まされた。
その日、ヴェルは土木作業を終えた夕方近くに現れた。最近は、仕事帰りにひと風呂浴びる感覚でアマーリエのところを訪れるようになっていた。
「こんばんは、アマーリエ義姉さん」
「こんばんは、ヴェル君」
深い理由は無いのだが、会えた嬉しさから2人は思わず抱きしめ合う。
「すぐお風呂にしますか、それとも•••
?」
「今日も、我慢できないから。」
「まぁ。」
ヴェルがズボンを脱ぐと、男性器がそそり立っていた。アマーリエが跪き、ヴェルの男性器を口に含む。舌で舐め上げ、口の中を転がす。
「あぁ、気持ちいいです。アマーリエ義姉さん。」
ヴェルが堪えてきれずに呻き声を立てる。今日は手持ち無沙汰のアマーリエの手で、ヴェルの睾丸をマッサージする事にする。最近はお疲れで回数も減っているのだ、そう、こういうアプローチも良いかもしれない。
「アマーリエ義姉さん、ドレス、脱がせましょうか。」
ヴェルの男性器から口を離し、アマーリエが跪いた体勢でスッと背中をヴェルに向ける。ヴェルがアマーリエの背中の紐を解くと、アマーリエはスッとドレスを床に脱ぎ捨てた。
下着姿のアマーリエがヴェルの前に立つ。何も言わずにヴェルはアマーリエの下着を剥ぐ。ブラのホックを外し、パンツを下げるとアマーリエの片足に留めた。
ヴェルに下着を脱がされる代わりに、アマーリエはヴェルの服を脱がせる。下に下されたヴェルの下着とズボンをスッと抜いて、上はヴェル自身が脱ぐままに留めた。
裸になって2人は向き合う。厳密にはアマーリエは足首に下着を残したままだし、恥ずかしがって乳房は腕で覆い隠していた。
胸を隠すアマーリエの手を、ヴェルがそっとどける。
「綺麗ですよ、アマーリエ義姉さん」
そう言ってアマーリエを立たせたまま、ヴェルはアマーリエの胸を愛撫し始める。乳首を口に含み、舌で転がす。
「あん」
アマーリエが官能の吐息を漏らす。
「ヴェル君、下着を全部脱がせないのは何かこだわりがあるのかな?」
「アマーリエ義姉さん、下着は全部脱がさないで足首に留める、これが男の浪漫なんです。」
「もう、ヴェル君たら、本当にいやらしいのね。」
アマーリエはヴェルに促されてベッドに横たわる。
「一応、ヴェル君の来る時は事前にお風呂は済ませてあるけれど、大丈夫かしら?」
「俺はアマーリエ義姉さんの匂いが好きなんです。」
アマーリエに覆い被さりながら、ヴェルが耳元で囁く。
「せっかくアマーリエ義姉さんの匂いを嗅げるチャンスなのに、風呂で洗い流しちゃったら勿体無いじゃないですか。」
濡れそばったアマーリエの秘所をヴェルの指が掻き分ける。
「アマーリエ義姉さん、今日もよく濡れていますね。」
「ヴェル君が来てくれて嬉しいんだもの。私が結婚していた時だって、こんな風にヴェル君が来てもらう時のように嬉しいと感じた事はなかったわ。」
アマーリエが本心を漏らす。
「アマーリエ義姉さん、俺も同じ気持ちです。アマーリエ義姉さんを抱いている時、俺はとても落ち着いていられて。アマーリエ義姉さんが愛おしくてたまらなくなるんです。それじゃ,入れますね。」
ヴェルの男性器が一気に挿入される。
「きゃあ。」
挿入されたアマーリエがくぐもった喘ぎを漏らす。アマーリエの膣内は適度な湿り気で、ヴェルの男性器を優しく包み込む。ヴェルに激しく突かれながらも、奥へ奥へ誘おうとする。
アマーリエの顔が興奮で赤らみ上気する。目がキラキラと輝き、ヴェルの猛攻に喘いで口が半開きになる。
ヴェルは優しい腰使いでアマーリエを絶頂に導こうとする。アマーリエの身体が官能の波にさらわれ、興奮でガクガクと震える。
「あ、あ、ヴェル君、私、私。」
興奮して口のもつれるアマーリエを、ヴェルがキスをして塞ぎにかかる。ヴェルのキスに応じながら、アマーリエは絶頂に達していた。
収縮するアマーリエの女性器にヴェルの男性器が絡め取られる。
「俺もイキますね、アマーリエ義姉さん。」
「うん、うん、ヴェル君、嬉しい。」
アマーリエは膣内にヴェルの男性器の爆発を感じる。ビクビクと脈打ちながらヴェルの体液が体内に広がる感覚を、アマーリエは官能に打ち震えながら迎えていた。
夜、帰宅したヴェルをチェックしたヴィルマがエリーゼにサインを送る。彼女の鼻がヴェルが入浴した痕跡を嗅ぎ取ったのだ。そして消しきれない女性の移り香も。
「(やはり、今日もですか。)」
エリーゼは悲しい気持ちになる。
「(もう,ヴェンデリン様は毎日アマーリエさんのところに行っているのですね。でも
これも正妻としては容認するしかないのでしょうね。)」
他の嫁の前では強がっていたが、エリーゼには不安がある。
「(単なる『あてがい女』なら、ヴェンデリン様がこんなに足繁く通うはずがない。よほどアマーリエさんの事をヴェンデリン様は気に入られたんだわ。)」
心の相性なのか身体の相性なのか。あるいは憧れの兄嫁をついに抱いたという、興奮の為せる技なのか。
それにしてもこうまで連日というのは、役目の相手に対しては多すぎる気がする。これはもう間違いなくヴェルの気持ちが入っていると判断せざるを得ない。
「(きっと、ヴェンデリン様はアマーリエさんを愛人として愛し続けるのでしょうね。)」
エリーゼは立派な妻になる自信があるし、ヴェルとの間に立派な跡継ぎを産むつもりでいる。しかし、このような形で愛情がアマーリエに偏るのは苦しい。
「(私が、上手くバランスを取らないといけないわ。早く初夜を迎えて、ヴェンデリン様に抱いて頂ければ良いのだけれど。その時は自分の全てを捧げて夫のヴェンデリン様に尽くそう。)」
アマーリエの存在に焦らされたエリーゼは、結婚式の日が来るのを渇望していた。