「分かりました、母上。任せてください。はい、妻も元気です。結婚式では顔合わせ出来ると思います。はい、父上にもよろしくお伝えください。」
五男のエーリッヒは母親のヨハンナからの通話を終えると、ふうっと溜息をついた。エーリッヒも弟の七光で出世した。ただ、エーリッヒにはあくまで王都の官吏としての立場がある、他家に養子に入った事情もあって良くも悪くもエーリッヒは外圧をかけられる立場、バウマイスター伯爵家に対する中央との連絡役なのだ。
そして開発プロジェクトが実施されると中央の担当としては専任の扱いになっていた。それだけにバウマイスター伯爵家との交渉の立役者になる事が多い。
「(それってつまり、バウマイスター家中の問題を外部からコントロールしようとすると、僕かローデリヒ殿の所に話が来るんだけどね。)」
アマーリエを巡っての要請というのは既に別の箇所からもエーリッヒの元に来ていた。アマーリエの実家のマインバッハ騎士爵家からで、エーリッヒを通じて『子供達はこちらで育てるので、このままアマーリエをバウマイスター伯爵の近くに仕えさせて欲しい。』という要請だった。
エーリッヒは五男なので当然ながら長男の嫁を嫁がせたマインバッハ騎士爵家からは存在を把握されている。引退したアルトゥルやローデリヒ経由で話を持ち込むより、筋が良いと判断されたのだろう。マインバッハ騎士爵家当主からの丁寧な依頼状が来ていた。
「(むしろ父上が、マインバッハ卿に僕を使うように唆したまであるな。)」
交渉はエーリッヒの得意分野なので、厄介な案件は自分の所に持ち込んでくれる方が良いとエーリッヒ自身でさえ思う。アルトゥルは着眼点は良いのだが、仕上げが粗いというか、実施する段になると「やれ」としか言わないし言葉も足りない。ヴェルとの相性もことのほかよろしくない。元々、無用な反発を招き易い人なのだ。
「(ヴェルとアマーリエ義姉さんの2人は相思相愛で『あてがい女』の役割が終わってもアマーリエ義姉さんを側近くにおけと母上からも指令が来た、と。これは確かに僕が環境を整える方が良いな。)」
今回の件もローデリヒ殿に話す必要があるだろうな,と思う。そう判断したエーリッヒは早速ローデリヒ宛に通話をかけた。
『はい。バウマイスター伯爵家の家宰ローデリヒでございます。』
「おはようございます。ローデリヒ殿。エーリッヒ・フォン・ブラントです。」
「これはエーリッヒ様、おはようございます。」
ヴェルの家宰のローデリヒは、ヴェルの兄弟は名前で呼ぶように指示されていた。単純にバウマイスター姓が多い為だが、エーリッヒもヴェルの兄弟なのその範疇という訳だった。
「ローデリヒ殿ももう聞いていますね、ヴェルの『あてがい女』の件。」
『はい、お館様よりお聞きしております。』
「2人はとても上手くいってるようです。それで僕とローデリヒ殿で一肌脱ぐ事になりましたよ。」
『それは、どういった事でございましょうか。』
少し怪訝そうなローデリヒに、エーリッヒは母親からの依頼である事を掻い摘んでローデリヒに説明した。
『なるほど。大奥様のご意向という事で、お館様にアマーリエ様を専属メイドとして仕えさせる事になりましたと、エリーゼ様達にはそうお伝えすれば良いのですね。』
「はい。実質的にはヴェルの愛人という事になります。なので他の奉公人と線を引くような形になりますね。そこはローデリヒ殿の方で上手く差配してください。」
『はい。元々、長男のクルト様の奥様であった事を含め、お身内の扱いとなりますので、家中の人間には正しく接するよう指導致します。
ただ、エリーゼ様達にお伝えするタイミングは、いつになりますでしょうか。』
「結婚が終わったら折を見て、ですね。部屋の用意もありますから。それは改めてご連絡します。ただ、もしエリーゼさんにアマーリエ義姉さんの事を聞かれたら、その時はありのまま全て伝えて頂いて構いません。」
『はい。その時は大奥様のご意向で、とお伝えすればよろしいのですね。』
ローデリヒもヴェルの母親の威光を盾にすれば、正妻とはいえエリーゼ達には抵抗が出来ないと判断したようだった。
「そうですね。そしてこれはマインバッハ騎士爵家からの要請でもあります。『2人の子供はこちらで育てるので、側仕えとして使ってほしい。』との連絡が来ています。」
『なるほど、マインバッハ卿からもそのようなお話が。』
「はい。結婚前に伝える話ではないので、ヴェルの方には折を見て僕から伝えます。もし、エリーゼさんから抗議があれば、ヴェルに話が行くのではなく僕の方に連絡するよう伝えてください。」
『承知致しました。ところで頂いたご連絡で恐縮なのですが、お見合い大会の件はよろしくお願いします。』
「あ、その件がありましたね。」
ヴェルの16歳の誕生日に執り行われる結婚式に先立ち、バウマイスター家中の単身者を集めてお見合い大会が予定されていた。
『対象がバウマイスター家の陪臣だけですと、やはり格と言いますか。分家当主のエーリッヒ様、パウル様、ヘルムート様にお越しいただきたいとの、お館様立ってのご希望です。ブラウマイスター辺境伯家からは、筆頭魔導士のプランターク様はじめ大勢の方ににご参加頂きます。』
「はい、分かっています。バウマイスター伯爵家との紐帯を深める為にもそうせよと、僕にもそう指示が降りています。ヘルマン兄さんは参加しないんですね?」
『はい、ヘルマン様はマルレーネ様がおられるので不要との事でした。』
「僕もミリアムに悪いなと思うんだけど。ヴェルに対して僕にも『あてがい女』がいたと伝えてアマーリエ義姉さんとの関係を後押しした以上、なんだか断れなくなってしまいましたね。」
『パウル様も、奥様に気兼ねされていましたが、アマーリエ様の事情を知った奥様が積極的に側室を薦められたそうです。』
「それでは、お見合い大会には必ず参加しますので、当日何か必要なことがあれば打ち合わせましょうね、ローデリヒ殿」
『はい、お越しをお待ちしております。』
その日のアマーリエは朝から浮かれていた。
『今日は久しぶりに王都でデートしましょう。1番好きなドレスを着て待っていてください。』
ヴェルからはそう予告されていた。王都に行くのはいつだって嬉しい。ヴェルと一緒なら尚のことだ。せっかくの買ってもらったドレスも、ヴェルと会う時はすぐ脱がされてしまうのでこれまで活躍の機会がない。綺麗に着飾って王都にお出かけ出来るのは最高だった。
「(今日はどこに行くのかしら?)」
王都はまだ数回だけれど、アマーリエは夜よりは昼の雰囲気の方が好きだった。王都を歩く人々の顔は明るい気がする。大都会で暮らすのは、開拓地で暮らすよりずっと快適な暮らしだからだろう。
「こんにちは、アマーリエ義姉さん。」
「こんにちは、ヴェル君。今日はどこに行くのかしら?」
「あはは、今日も綺麗ですよ、アマーリエ義姉さん。」
アマーリエは食い気味な姿勢をヴェルに笑われてしまう。ヴェルに差し出された変装の魔道具を指に嵌めながら、アマーリエは口を尖らせた。
「だってどんなところに行くかで、心構えが変わるでしょう。」
「王都に行ったら、まず何か美味しいものを食べに行きましょう。その後、今日は宝飾品店に行きましょうか。」
「あら、素敵。」
昼食を食べる店はまだ決めていないそうなので、アマーリエは街歩きしながら自分に決めさせて欲しいとおねだりする。
「分かりました。」
そう応えたヴェルから差し出された手を取ると、ヴェルの瞬間移動の魔法で王都についた。宝飾品店に近い、王都の高級感あふれる一角だった。飲食店も多い。これなら店探しも問題ないだろう。
アマーリエの選んだ店は宝飾店街の一角にある小規模な店だった。大通りに面しているが開放的で格式もそんなに高くない店。庶民が気軽に払える値段よりは少し高いが、飛び抜けて高級という訳でもない。
通りをよく見える席に通される。それはつまり通りからもよく見える席だった。
「こちら、当店からのサービスです。」
「あら、ありがとう。」
グラスに注がれたワインを給仕される。
「これって伯爵様のご威光かしら?」
「アマーリエ義姉さんが綺麗だからですよ、外からよく見える席に美人がいると、店の格が上がるんです。お客さんが増えますよ。」
「まぁ。」
着飾ったアマーリエの服装を見て店も金持ちだと判断したのだろうし、豪華な装いの美女が店先に居るとなれば実際に客も増えると計算したのだろう。ヴェルには店の対応が丁寧なのも納得できる。
「(だってアマーリエ義姉さんは美人だものな。)」
街歩きで喉も渇いたのだろう、2人ともワインはすぐに飲み干してしまった。ヴェルがお代わりを瓶で頼む間に、アマーリエはメニューの検討に入った。
アマーリエは性格的に高級店でお任せの料理を食べるより、自分でメニューから選んだ料理を「どんな味だろう」と想像してから食べるのが好きだった。
料理を作るからだろうか、世の中にどんな料理があって、その出来栄えがどれだけ予想を超えてくるかが楽しみなのだ。
「(上手くすれば、私が真似できる料理があるかもしれないし。)」
メニューを熱心に眺めるアマーリエをヴェルはニコニコと見守った。この世界の文字はひらがなと漢字で構成されているが、バウマイスター家で漢字を読むのが得意なのはエーリッヒとヴェルの兄弟とアマーリエだった。それは貴族の家の育ちであっても少し珍しい。アマーリエ義姉さんに文字を読む手助けは要らないのだ。
「ヴェル君食べたいものはあるかしら?全て私が選んでしまったもので良いの?」
「はい,アマーリエ義姉さんに合わせるから大丈夫ですよ。好きなものを頼んでください。」
店はコース料理ではなく、アラカルトで好きなものを選ぶ形式だった。そしてアマーリエはそういう方が好きだった。料理を自分で自由に選んでみたかったのだ。
バウマイスター騎士爵家では次期当主の嫁とはいえ、そもそも外食の機会が皆無だった。マインバッハ騎士爵家では貴族同士のお付き合いでテーブルマナーは必要とされたが、外食はやはり少なかった。つまるところ外で自由に食事を頼む経験など、アマーリエにはこれまで余りなかったのだ。
仮に飲食店に入ったとしても、父親と一緒であれば無難なコース料理にするか、あるいは何を食べるか勝手に決められて意見など求められなかっただろう。それは父親が夫に代わってもさして変わらない。
「(私、ヴェル君に甘やかされている気がするな。)」
自分が選んだ店で、支払いを気にせず気ままに料理を選ぶ自由にアマーリエは没頭した。
前菜はサラダを頂く。生野菜に塩と酢とオリーブオイルを混ぜたドレッシングがかけられていた。アクセントとして添えられているのはオリーブと茹でたエビだ。
スープはシェフのお任せにする。芋を使った白いポタージュで、微かに甘みがある。
魚料理は蒸し魚にした。大きな白身魚の切り身に野菜がたっぷり添えられていてアマーリエ好みだった。一工夫してあるのだろう、魚の皮が香ばしく、塩だけの味付けなのに旨味を感じた。
「これ本当に美味しいわ」
蒸し魚を一口食べたアマーリエが吐息を漏らす。
「ワインが足りませんね、もう一本飲みましょうか。」
「もう,ヴェル君たら私を酔わせてどうするつもりかしら?」
睨む真似をするアマーリエだったが、ワインは半分以上アマーリエが消化していた。もしかしたら7割から8割は飲んでしまったかもしれない。それもグラスを空けるとすぐお代わりを注がれるからだった。
「(だってお店の人もヴェル君も、ワインを薦めるのが上手なんだもの。)」
2人で2本目のワインをちびちびと飲みながら、料理の続きを楽しむ。
白ワインと果汁を混ぜて氷魔法で冷やした口直しを経て、メインの肉料理は牛ほほ肉の赤ワイン煮だった。よく煮込まれていて、ほろり、と口の中でほぐれる。パンにもよく合うが、それ以上にワインの進む一品だ。
「アマーリエ義姉さん、完璧な組み合わせでしたね。」
食べ終わったヴェルが賞賛の言葉を口にする。
「デザートを頼むべきか、少し悩んでいるのだけれど。ダイエットした方がいいかしら。」
「せっかくだから食べていきましょうか。それにアマーリエ義姉さんはダイエットする必要ないですよ。そのままで完璧です。」
ヴェルのアマーリエをおだてる言葉に、アマーリエはついついのせられてデザートまで完食してしまった。蜂蜜と砂糖をふんだんに使った焼き菓子で、歯にねっとりと絡みつく。マテ茶との組み合わせで美味しく頂けた。
ふと気がつくと店は満員になっていた。少し早い時間に入店したのもあるが、よく笑いよく飲みよく食べるアマーリエの姿が魅力的だったのもあるのだろう。アマーリエ達と似たような組み合わせの料理を頼む人の姿が目立っていた。
「このお店も、最初にサービスしたワインの元は取ったみたいですね。」
ヴェルがアマーリエの耳元で囁く。
「そんな事あるのかしら?」
「だってアマーリエ義姉さんも、視線を感じていたでしょう?」
「(もう、やっぱりヴェル君は悪い遊びを覚えた気がするな。)」
自分の持ち物のようにアマーリエを見せびらかしたいというヴェルの衝動は依然顕在だったらしい。ヴェルが支払いを済ませてから、2人で店を出る。
「ありがとう、美味しかったわ。」
「またのお越しをお待ちしております。」
と、給仕には深々と頭を下げられた。もしかしたら本当に、今日の売り上げはいつもよりも良かったのかもしれない。
ほろ酔い気分のアマーリエは、ヴェルに導かれて宝飾品店に向かう。立派な門構えの高級店で、以前なら気後れしていただろう。
今は、ヴェルが支払うのだからと安心していられるが、やはりその厳めしい佇まいに酔いが覚める思いだった。
「ヴェル君、高そうなお店だけど大丈夫?」
「はい、アマーリエ義姉さん。こう見えて俺は大貴族なんですよ。支払いは心配しなくて大丈夫ですから。」
ウインクするヴェルに促されるまま入店する。
「バウマイスター伯爵です。彼女に合う宝石を見せてもらえないかな。」
変装の魔道具を解き、ヴェルが身元を明かすと奥の間に通される。貴族の奥方用の空間なのだろう。
「ようこそおいでくださいました。指輪、ネックレス、イヤリングなど、本日はどのような品をお求めでしょうか。」
「彼女の気に入った物を一揃いずつください。」
伯爵という身元、同伴する女性へのプレゼント、量を買うという宣言、三拍子揃ってこれで上客と判断されたのだろう。アマーリエの前に多数の宝石が運び込まれる。
「こちらはいかがでしょうか、奥方様?」
アマーリエは左右の手に赤と青の宝石のついた指輪を嵌められて比較させられる。ヴェルはニコニコして見ているだけだ。店員に決断を迫られたアマーリエがヴェルに助けを求める。
「これ、私はどちらの方が似合うかしら?」
「素敵な指輪ですね。両方買いましょう。」
「もう。。。」
これは売れる客だという見通しが立ったからだろう。店員の売り込みが熱を帯びる。
「イヤリングはどちらがよろしいでしょうか?」
「奥方様にはこちらのブローチもお似合いです。」
「ネックレスはぜひこちらの品を。」
もうヴェルはニコニコして見ているだけなので、アマーリエは苦心して数を絞り込んだ。普段使いしたいので品よく目立たない品で、と注文して程々の品にしてもらう。それでも結構な金額になっただろう。
「大丈夫かしら?」
「全く問題ありませんよ、アマーリエ義姉さん。」
「(これは『あてがい女』としてのお手当って事よね。)」
アマーリエはちょっと生々しい想像をしてしまう。ただ、王都の一流店で買った宝飾品があるととても助かる。普通に着飾るにしても使い易い。
「(この『あてがい女』の役目を終えた後は、この宝石を眺めて昔を懐かしんだりするのかしら。)」
似合ったものを何点か身につけ、他はヴェルの魔法の袋に仕舞い込む。王都はスリも多いらしいので、ヴェルに預かってもらう方が安心だろう。
「では行きましょうか。」
「あら、もう帰るのかと思っていたわ。」
食事もしたし宝石も買ってもらった。この後何か予定があるのだろうか。
ヴェルに導かれて辿り着いたのは高級店街の端にある特徴のない建物だった。そこは写真館なのだという。
「まぁ、これが写真館。」
写真機は古代の魔道具なので限られた人しか使えない。実質貴族専用だった。ヴェルはお見合い写真でその存在を知ったのだという。
「今日はアマーリエ義姉さんの姿を写真に収めておきたくって。」
「もう。それなら最初からそう言ってくれたらよかったのに。」
「ふふふ。俺はちゃんと『1番好きなドレスを着て待っててください』と伝えましたよ。」
アマーリエは慌てて鏡で身なりを整える。今日は王都に来るというので気合を入れた格好をしていたし、ヴェルに買ってもらった宝飾品を身につけている。
「(これなら大丈夫、かな。)」
自分が花嫁だった時と比べてどうだろう。若い頃と比べると違いはあるだろうが、着ている物も身につけている物も当時よりずっと洗練されていた。それにヴェルと過ごした楽しい時間の名残、ヴェルに愛されている実感がアマーリエを美しく見せている。
「(これなら少しは自信を持って、いいよね。)」
アマーリエは鏡に写る姿を入念に確認して、自分史上で最高に美人な瞬間かもしれないと考える。
「(確かに私も今まで写真に写った事はなかったわ。撮るなら今が良いのかも。)」
アマーリエはヴェルの『あてがい女』。なのでそもそも写真を拒否する権利は無かったし、綺麗な姿を残せると聞いて素直に嬉しかった。
写真家は女性だった。確かに未婚女性の見合い写真を撮るのに、男性の写真家では色々と具合が悪いのだろう。
スタジオは個室だったし、着替え部屋も用意されている。化粧や髪型を整えてくれる専用の美容師もいて、この環境ならお見合い写真を撮る人が多いのも納得できた。
アマーリエもヴェルも身支度を整えると、写真を撮り始める。2人のもの、アマーリエだけのもの。衣装を変えたアマーリエの追加の1枚。フィルムが1千セントと高価らしいが、今の姿を残せるのならそれだけの価値はあるだろう。
「これで一通り撮り終えたかしら。」
アマーリエは満足だった。写真の被写体になるのは肖像画のモデルになるよりずっと手早く済む。写真を撮るのだからと思うと、ポーズを取るのも恥ずかしく無かった。
「それじゃあ事前に相談したような彼女の写真を撮って欲しいんだ。大丈夫だよね?」
「かしこまりました。」
なんだろう、ヴェルがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。
「アマーリエ義姉さん、これまではお見合い写真のような健全な写真でしたが、これからは貴族の趣味の写真を撮らせて貰いますね。」
「え、え、えー?」
ヴェルの手で、アマーリエはあっという間に下着姿に剥かれてしまう。
「貴族の趣味の写真、やはり下着姿は押さえておかないと。」
「当館の写真は複製不可能、1枚ずつしか存在しませんので、漏れる心配はございません。」
「いや、恥ずかしいわ。早く終わらせてください。」
アマーリエは下着姿でポーズを取らされる。化粧したままで宝飾品を身につけながら、下着姿というのは扇情的だった。
「それでは下着も脱ぎましょうか。」
「!」
アマーリエは『あてがい女』、拒否する権利などない。ヴェルに宥めすかされて渋々下着を脱ぎ捨てた。写真家が女性とはいえ、裸体を晒すのは抵抗がある。
「ダメですよ、アマーリエ義姉さん、手で隠したりしたら。」
ヴェルの追求に渋々裸体をレンズの前に晒しポーズを撮る。
「本当に恥ずかしいわ。やっぱりヴェル君は変態貴族なのね。」
「はい、俺は変態貴族ですから。」
泣き落としをしようにも、嬉々として撮影に臨むヴェルには通用しない。
「本当は俺とアマーリエ義姉さんがしてるところを写真に。」
「それはダメ、ダメよ絶対。」
「当館しても、それは流石に。」
アマーリエと写真館双方に拒否され、ヴェルの撮影はアマーリエのヌード写真撮影までで停止した。
「今日は最高でしたね。」
ヴェルに小屋まで送り届けられても、アマーリエはまだ少々むくれていた。流石に裸体の写真まで撮られるのは予想してなかったのだ。
「写真は誰にも見せませんから、俺が1人で楽しむだけだから大丈夫です。」
ヴェルにそう言われはしたものの、アマーリエは気が気ではなかった。
「(あーあ,撮られちゃったな。)」
アマーリエが後悔しているかと問われると、それもちょっと違う気がする。なんだかんだで自分はヴェルの要求を受け入れてしまっただろうと思う。
「(元々、こんなおばさんの身体に興味を持ってくれるか分からなかった訳だし。)」
アマーリエの身体にヴェルが執着してくれてるのは嬉しい。単にご馳走や宝石に釣られた訳ではない。楽しい思いをしたし、裸を撮影する上で酔っていたのも関係はしただろう。
「(やっぱり、ヴェル君だから特別なんだわ。)」
アマーリエはそう結論づける。『あてがい女』だから何をされても拒否できないという思いもなくはないが、実際にアマーリエの中にあったのは「(もう、仕方ないなー。)」という許容だった。ヴェルだから、ヴェルの為だから許せてしまうのだ。
仮に『あてがい女』だからと、強要する相手だったらどうだろうか。泣きながら抗議するか、屈辱に震えて、もしくは感情を捨てて言われるがままの人形として振る舞っていただろう。
「(でも、ヴェル君に写真を残せて良かったな。)」
2人で小屋に戻る。写真撮影の余韻もあり、2人ともすっかり興奮していた。言葉もなく服を脱ぎ捨てて抱きしめ合う。
アマーリエにはヴェルの、ヴェルにはアマーリエの興奮が伝わるようになっていた。
ヴェルに求められ口づけを交わす。
「(今日は食べた後、口をすすいでいないけれど大丈夫かしら。)」
ヴェルは気にするそぶりがない。ヴェルが気にならないなら、アマーリエも気にしない。2人でベッドに倒れ込んだ。アマーリエの身体がヴェルの手で裸に剥かれる。
「(今日、裸にされちゃうのは何回目だろう。)」
アマーリエは魔道具のレンズで裸身を隅々まで余す所なく写された。
「写真、本当に嫌だったの。撮られるのを許したのはヴェル君だから。ヴェル君が特別だから許したんだからね。」
ヴェルに胸を愛撫されながら、アマーリエが小声で抗議する。今日はヴェルの男性器への口での奉仕もしていない。係争中の写真問題があるので、アマーリエのヴェルに対するサービスが低下しているのだ。
「はい、分かっています,アマーリエ義姉さん」
ヴェルの指がアマーリエの秘所を弄る。
「ダメよ、ヴェル君。ちゃんと話し合わないと。」
アマーリエはヴェルに抱きしめられても微かに抵抗を示す。ヴェルに愛されるのは嫌ではないが、今はちゃんと話を聞いて欲しいそんな気持ち。でもヴェルはお構いなしだ。
「ほら、濡れてきましたよ。」
ヴェルがアマーリエの前に差し出した指は、アマーリエの愛液で濡れそばっていた。
「挿入しますね。」
「いや、ダメよ、ダメ。」
小声で抗議するアマーリエの抵抗を無視するように、ヴェルが強行する。体重をかけてアマーリエの抵抗を削ぎ、アマーリエの膣内にゆっくりと挿入する。
「(あーあ、犯られちゃった。)」
アマーリエは膣内にヴェルの男性器の圧迫を感じる。それはいつにも増して凶暴に動いていた。
「いやん、もう、ダメなのに。」
「でもアマーリエ義姉さんが俺を受け入れてくれるから。」
ヴェルに貫かれ、アマーリエの身体が官能にガクガクと震える。この瞬間が大好きなのに、今日も待ち焦がれた一瞬なのに、今日は写真の事が気がかりで心の底から楽しむ事ができない。快感と不安がアマーリエを同時に襲っていた。
「写真は本当に誰にも見せたら、ダメなんだからね?」
ヴェルの胸に抱かれながら、なおもアマーリエが言い募る。
「はい、誰にも見せませんから大丈夫ですよ、アマーリエ義姉さん。」
ヴェルの男性器をアマーリエの女性器がギュッと包む。挿入を果たしたヴェルは、今日もようやくここに辿り着いたなと少し冷静さを取り戻す。ヴェルはアマーリエの様子を確認しながら腰を動かし始める。
「あん、あん、いやん。」
ヴェルに突き上げられながらアマーリエは身悶えする。喘ぎ声を発するアマーリエヴェルは見下ろす。
「本当に可愛いですよ、アマーリエ義姉さん。出来ればこの姿を写真に収めておきたい。」
「それはダメ、本当にダメなんだからね。」
ヴェルに突き上げられて感じながら、アマーリエはヴェルを睨み、必死に抵抗する。
「写真家が女の人でも、こんな姿を見られるのは嫌なの。この姿はヴェル君だけにしか見せたくないの。」
「じゃあ、次は俺が撮影します。」
予想外の言葉に絶句するアマーリエの怯えと動揺がヴェルに伝わる。アマーリエの動揺した隙を逃さず、ヴェルは激しく腰をつきあげた。
「いや、それもダメ、ダメ、いっちゃう。」
絶頂に達したアマーリエを、なおもヴェルが追撃する。腰を動かしたまま、ヴェルの口がアマーリエの乳首を襲い、もう片方の胸を揉む。
「もう。ヴェル君、まだいってくれないなんて。」
「だってアマーリエ義姉さんが可愛らしいから、もう少し見ていたくって。」
アマーリエの膣がヴェルの男性器をキツく締め上げているのに、今日のヴェルは絶頂に達する様子がなかった。
「私じゃ、ヴェル君をイカせられないの?」
涙目のアマーリエがヴェルに問う。
「そんな事ありませんよ、とても気持ちいいです、アマーリエ義姉さん。」
「私はヴェル君に一緒にいって欲しいのに。」
涙目のままアマーリエがおねだりする。
「分かりました。一緒にいきましょう。」
「うん、嬉しい。一緒にいきたい。」
ヴェルに開かれたアマーリエの身体をヴェルが蹂躙する。アマーリエの熟れた腰つきが、ヴェルの無茶な動きも巧みに呼応していく。
「あん、気持ちいいわ、ヴェル君。」
ヴェルの官能をリードするかのように、アマーリエがベッドの上で舞う。アマーリエの女性器がヴェルの男性器に絡まり,齧り付く。天井が降りてくるような子宮の存在感。アマーリエの膣内が、ヴェルに合わせてますます狭まる。そんなアマーリエの秘所に男性器を突き入れながら、ヴェルも限界に達していた。
「もう限界です、いきますね、アマーリエ義姉さん。」
「嬉しい、いっぱい出してね、ヴェル君。」
今日も膣内に溢れ出るヴェルの精子。全身でヴェルを受け止めながら、ヴェルとアマーリエはお互いの体が溶けて混ざり合うような快感を感じていた。
「バカバカ、ヴェル君のバカ、女性には無理にしたらダメなのよ。」
ヴェルの男性器に奉仕しながら、アマーリエは抗議する。
「ごめんなさい。でも、つい夢中になっちゃって。」
悪びれずにヴェルが言う。
「もう、仕方がないなー。でも私以外の女性にああいう事をしたらダメなんだからね。」
『あてがい女』としてアマーリエには正しい女性の扱いをヴェルに教える義務がある。貴族のお嬢さんで箱入りで育てられたエリーゼさんにあんな風に乱暴に接するとトラブルになるだろう。アマーリエは本心から心配していた。
「はい、分かっています。アマーリエ義姉さん。」
ヴェルの男性器を口で咥え、啜り上げる。睾丸も下で転がし、隙間を舐め上げて綺麗にする。最後にヴェルの尿道口を優しく吸ってから舐め上げて、ちゅぽんっと音を立てて唇から外す。
ゴクリ、とアマーリエの喉が動き、ヴェルの精子を飲み込む。最後にアマーリエが舌なめずりをして、今日もヴェルの男性器への奉仕が完了した。
「気持ちよかったです、アマーリエ義姉さん、とても。」
「今日の『あてがい女』のお味はいかがでしたか?主様。」
「今日も最高でしたよ、アマーリエ義姉さん。」
なんとなく仲直りを果たした2人は、ベッドの上でキスを交わす。
「実はまだ興奮してるんです、続きは風呂でしましょうか。」
「もう、ヴェル君たら。どうして今日はそんなに元気なのかしら。」
ヴェルに抱き抱えられ、アマーリエは風呂場に運ばれていった。
14話も無事に投稿出来ました。元々は全然違う展開を考えていたのですが、感想でデートの希望を頂きましたのでそれを反映しています。エリーゼももっと活躍させたいのですが、なかなか辿りつきませんね。これからも応援よろしくお願い致します。