ヴェルとアマーリエは木陰のベンチで休んでいた。分与予定の開拓地に瞬間移動で飛んで来たので辺りに人影はない。誰にも見られる心配がない事が、2人を大胆にしていた。
と言っても、アマーリエが姿勢良くベンチに座り、ヴェルに膝枕をしているだけであったが。暖かな日差しと、服越しに伝わる互いの体温が心地よい。
「これぞ癒し、ですね。」
胸越しにアマーリエの顔をうっとりと眺めるヴェルは満足そうだった。
「そう?ヴェル君お疲れみたいだから、しっかり休んでおいてね。」
アマーリエの息子に分与する予定の土地なので、このままベンチを常設しても誰に知られる事もない。爽やかな風が駆け抜ける。
「今日は天気が良くて心地いいわ」
昼食は先ほど2人で済ませていた。アマーリエの手作りのサンドイッチだった。狩りで得た肉をマヨネーズで味付けしてある。王都で食べるご馳走に比べると素朴な味だったが、2人きりで外で食べる食事は、それなりに特別で美味しく感じられる。
「それで、お見合い大会は大成功だったのですね。」
アマーリエはヴェルの話すお見合い大会の様子を聞いていた。エーリッヒもヘルムートもパウルも側室が決まったそうだ。
「はい。肝心のエルは直前に失恋をして、お見合い大会当日はまだ茫然自失のまま、ショックが抜けていませんでしたけどね。
ブランタークさんは今回で相手を決めないとアニータ様との結婚が待っているって事で、奥さんを決めました。後、俺が出る予定の一族の結婚式は4件になっています。」
クルトとヴェルを除くと、側室を迎える貴族の男兄弟はヘルマン、パウル、ヘルムート、エーリッヒの4人だ。結婚式が4回あるという事は、その全てが側室を迎える事になる。
「あら、それではヘルマン様にも側室が?」
「ええ。その話は長い話になります。
ヘルマン兄さんにはルックナー財務卿から貴族家の女性を紹介されました。ただ、マルレーネ義姉さんの代わりに正室にという条件だと伝えたら、ヘルマン兄さんが『では側室はいりません。』とキッパリ断ってしまったんです。」
「そう。ヘルマン様とマルレーネさんはとても仲睦まじいご夫婦だものね。」
アマーリエはヴェルの髪を撫でながら、話の続きを促す。
「側室紹介に失敗したルックナー財務卿に代わり、エドガー軍務卿がファイネン男爵の庶子をヘルマン兄さんに紹介してくれました。
このファイネン男爵は、正妻が伯爵家出身で頭が上がらないとかで恐妻家として有名な人らしいんですが、庶民の女性との間に子供を作っていたらしく、それを義娘という体裁でヘルマン兄さんの側室にどうか、と。
ファイネン男爵の妻からすると、正妻としてのプライドから地位の低い庶子が正室となると条件は受け入れられないらしくて、側室なら容認という話でした。
庶子の女性も本家に引き取られず貴族の生活とは無縁に育ったので、本人も側室の扱いで十分らしく、それでも貴族家の血縁関係はとり結べますし、ヘルマン兄さんやマルレーネ義姉さんとも上手くいくのではないかと言われています。
マルレーネ義姉さんもつい最近、3人目を授かったそうなので、今回はルックナー財務卿とエドガー軍務卿という偉い人2人に声をかけられていますし、このタイミングでヘルマン兄さんが側室を迎えることに同意したみたいですね。」
「そう良かったわ。それではマルレーネさんは正室のままなのね。」
アマーリエとしては仲の良いマルレーネが不幸にならずホッとした。
「はい、俺もマルレーネ義姉さんの事は心配してたんですが、そこはヘルマン兄さんに任せるしかないと思っています。」
アマーリエは気が付いていなかったが、今回のヴェルの男兄弟の側室の話はアマーリエがヴェルの『あてがい女』に就任した事がきっかけで生じた連鎖反応だった。
ヴェルの男兄弟の中では、アマーリエがヴェルの『あてがい女』になった、その事を羨む声が多かった。
そもそもヘルマンやパウルは『あてがい女』がいなかったし、『あてがい女』を経験したエーリッヒやヘルムートにしてもアマーリエほどの美人に相手をして貰った訳ではない。
同じ男として、ヴェルが美人の愛人との愛欲にどっぷり浸る生活を、男兄弟は羨ましく思っていたのだ。皆、本能的な男の欲望を喚起されていた。
そこに弟のヴェルが5人の妻と結婚予定なのも影響する。弟の七光で出世している夫達にとって、貴族社会での対外的な関係性こそが重要であり『この機会にお兄さんも側室を』と勧められると、断りきれない状況が発生するのだ。そしてこの『夫の出世に影響する』という点は妻達にも良く理解された。
諸事情があるとは言え、本家長男の嫁であったアマーリエがヴェルの『あてがい女』となったのだ。嫁の中では頂点の位置にいた存在が、事件の影響から『あてがい女』に滑り落ちた。
クルトとヴェルでは貴族としての格、爵位が大きく異なるし、内内の込み入った事情もある。アマーリエも幸せそうだからそこに問題はない。ただ、それはそれとして正妻の地位のコントロールの問題は強く認識され懸念された。
男兄弟の妻達は気づいたのだ、自分達の地位が脅かされない訳ではないのだ、と。これは上手く処理しないと正妻の座を滑り落ちる危機である。もし自分が側室の地位へ落ちれば、夫との間の子供の地位も後継者から低下する。そうさせない為、全ては状況を正妻達がコントロールする為の『側室容認』であった。
『ヴェルは5人も婚約者がいるので、兄である自分も側室を増やすよう迫られている。』と夫に言われると、『自分は正妻のままで側室を迎える形なら』とOKせざるを得なかったのだ。むしろ『新たな正妻を』という話にならないように側室を薦めた。恐妻家として知られるヘルマンの嫁のマルレーネでさえ、側室を認めたのだ。
それだけ『アマーリエのあてがい女旋風』は、一族にエロティックな影響を巻き起こしていた。
事の発端は、アマーリエとヴェルがそういう関係になって上手くいったこと。ヴェルがアマーリエとの快楽にのめり込み、アマーリエが満更でもない、むしろ大歓迎に近いという事が伝わった為で、実際の行為を見聞きするよりもヴェルの男兄弟達が興奮させられたからだと言える。
当人達は周囲がどう想像するかや、自分達の関係が他に影響を与えているとは全く気がついてはいなかった。ただ快楽にのめり込んでいただけである。
アマーリエの『あてがい女』は一種の見せしめであると同時に芝居の演目のような形で機能しており、直接本人達に説明されるより、間接的な影響を見聞きする方がより理解が深いという事例がそこにはあった。
「それで俺は1週間に結婚式が4回もあるんです。アマーリエ義姉さんと会う時間が減るかもしれません。」
話が元に戻った。ヴェルが懸念しているのはその点だった。ローデリヒの立てる計画は、もはやヴェルの瞬間移動を前提としている。
結婚式出席には関係するバウマイスタ家の移動をヴェルが行う必要があるし、自分達の結婚の準備をする婚約者達を実家に送り迎えする必要もあった。
「アマーリエ義姉さんと会えないと辛いですけど。」
「仕方ないわ、ヴェル君。私はいつでもお相手出来るんだから、今しか出来ないことを頑張ってね。」
「(何をどうしたら、こうなってしまったのだろう?)」
アマーリエは不思議に思っていた。全てのきっかけは側室を迎えるヘルマンに対するマルレーネの愚痴を聞いていた事だった。
子供が出来たのね、とヘルマンの魔道通信機を通じてマルレーネに連絡をした所、翌日にはヘルマンに連れられたマルレーネがパウルの領地までやって来たのだ。
ヘルマンが子供達を連れて両親に会っている間、アマーリエにヘルマンの側室について愚痴っていたマルレーネが「ヘルマンが側室と初夜を迎える日が怖いの」と言い出した。
他の日はいざ知らず、結婚式当日の夜は初夜である。花婿は花嫁、つまり新しく迎えた側室と一夜を共にする事になる。首尾よく遂げたか見届け人もつく。正妻には身の置き所のない夜になるだろう。
ヘルマンとはおしどり夫婦だったマルレーネにとって、特に辛い夜になるであろう事はアマーリエにも想像がついた。ただ貴族の風習とはそういう物なのだし、受け入れる他ないともアマーリエは思う。
「マルレーネさんは正妻なのだから、落ち着いて構えていればいいのではなくて?」
「ううん、私の性格だとヘルマンが何をしてるかヤキモチをやく。寝室のドアを開けてしまうかもしれない。」
「それは花嫁さんが可哀想だから、やめてあげてね。一生に一度の日になるのだから。」
「うん。分かってる。だからね、ヘルマンの花嫁さんの初夜の日は、私がヴェル君の臨時の『あてがい女』に立候補する事にしたの!」
「・・・はい?」
目を白黒させるアマーリエに、マルレーネは続けて言った。
「だってヘルマンばかりズルいじゃない。私はちゃんと、『大事にしないとヴェル君のあてがい女になっちゃうよ』って言ってあるから!」
こんな事はアマーリエさんにしか頼めない。ともかくヴェルに連絡を取ってくれ、とアマーリエはマルレーネに押し切られた。アマーリエもクルトが死んで未亡人になったとはいえ、かつてヴェルの兄嫁ではあった。
「(マルレーネさんとヴェル君で直接話してもらって、ヴェル君からうまく説得してもらう他ないかも。)」
アマーリエとヴェルの関係は特別な物。したい盛りの年頃のヴェルとはいえ、ヘルマンとの関係を慮って、ヴェルもマルレーネの提案を断ってくれるとアマーリエは期待した。
「分かりました!」
「ありがとう!ヴェル君!」
マルレーネの提案をヴェルは快諾した。但し、マルレーネが提案した内容は、『ヘルマンが初夜を迎える日は同じ屋根の下にいたくない。アマーリエさんの小屋に遊びに来たいからヴェルに送迎して欲しい』という穏当な内容に変更されていた。
アマーリエはマルレーネの話を訝しむと共にホッとしていた。流石にマルレーネの『臨時のあてがい女』は冗談だったのだろうと考えたのだ。
今回の提案内容はまともな物なので、アマーリエが口を出す内容ではなかった。
「ヘルマン兄さんも今回の結婚で色々気にしていると思うんです。そんな事でマルレーネ義姉さんの気が休まるなら、喜んで送迎しますよ。」
「それでね、ヴェル君。今回結婚するのはヘルマンだけじゃないじゃない。」
「確かにその週は、エーリッヒ兄さん、ヘルムート兄さん、パウル兄さん、ヘルマン兄さんの順に結婚しますね。」
「お話しした事は無いんだけど、ミリヤムさんも私と同じような気持ちだと思うんだ。ちょっとミリヤムさんともお話ししたいから、これから王都に送って欲しいな。」
「ええ、構いませんよ。」
マルレーネの希望に沿って、ヴェルはマルレーネをブラント家に送り届けた。
「結婚式が近づいて来たので、最近はこんな感じで送迎ばかりしているんですよ。この後、イーナとルイーゼを実家に送る事になっているんです。そちらが終わったら迎えに来ますから、必要だったらアマーリエ義姉さんの魔道通信機で連絡をください。」
ミリヤムとマルレーネを対面させると、アマーリエを残してヴェルは慌ただしく立ち去っていった。
「突然押しかけてごめんなさいね、ミリヤムさん」
「いえ、今までお目にかかる機会がなくてごめんなさい、マルレーネお義姉様、アマーリエお義姉様。」
ミリヤムはマルレーネの提案に注意深く耳を傾けて言った。
「分かりました。でも私はエーリッヒの事を愛しています。ですので、ヴェル君と最後までは•••」
「うん、分かっているわ。私も同じ気持ち。無理はしなくていいの。でも正妻の地位を守る為には、ヴェル君との間に秘密を共有しておくのが良いと思うの、そうアマーリエさんのようにね。だから私達は、私達にできる事をしましょう。」
「ええ。わかりました。私もそう思います。」
マルレーネの説得に決意を固めたミリヤムの様子を、アマーリエは複雑な気持ちで眺めていた。
エーリッヒの結婚式の日、ヴェルは父親と母親を連れて瞬間移動し、会場入りした。家族の到着を待ち構えていたエーリッヒに迎えられる。
「エーリッヒは何を着ても似合うから羨ましいですね。」
母親の褒め言葉も、エーリッヒは涼しい顔で受け流す。普段から周囲に褒められ慣れているのだろう。
「ヴェル、父上と母上を連れてきてもらってすまないね、って大丈夫かい?」
「気疲れですね。きっと。」
「そうか、明日も頑張って。」
明日はヘルムートの結婚式が待っていた。ヴェルの到着を知って大勢の招待客が押し寄せる。娘がヴェルに見そめられる事を期待しているのだろう、娘を同伴している貴族や商人が多い。
「今日はミリヤム義姉さんも出席しているんですね。」
「ちゃんと結婚式に正室も同席して、『側室の存在を正妻が認めていますよ』って示すのが必要な形式だからね。それに今回は、ミリヤムと父上と母上との初顔合わせだから。」
エーリッヒにさらりと言われてヴェルは気がついた。そうか、王都で結婚式を挙げた関係で、これまでミリヤム義姉さんは舅と姑に会った事は無かったのだと。
「ミリヤムには父上と母上の側にいてもらうつもりだから、ヴェルは押し寄せる貴族達に、迂闊な言質を取られないように頑張ってね。」
結婚式も終わりに近づいた頃、ヴェルはミリヤムに話しかけられた。
「お久しぶりね、ヴェル君。」
「ミリヤム義姉さん、ご無沙汰しています。父上と母上とはうまく話せましたか?」
「うん、心配しないで。とても良い方達だった。私もお二人と一緒で良かったわ。」
「父上も気難しいところがありますが、引退して最近はだいぶ丸くなったんですよ。疲れて、そろそろ帰りたがっていませんか?」
「はい、実はもう帰りたいからヴェル君を探して欲しいって言われて探しに来たの。」
「そうですか。俺も今日は家臣の結婚式が2件ありまして、そろそろ抜けないといけなかったんです。こちらの二次会にも出られません。じゃあエーリッヒ兄さんに挨拶したら父上と母上を連れて帰りますね。」
「あ、ヴェル君、ちょっといいかしら。マルレーネさんに言われてた今夜の事なんだけれど。」
「あー、やはり今夜はエーリッヒ兄さん達と同じ屋敷で過ごすとミリヤム義姉さんも気まずいみたいですね。」
「後で、こっそり私を迎えに来て貰えますか?エーリッヒにも内緒でお願いね。」
「分かりました。アマーリエ義姉さんの所に送れば良いんですよね。」
「うん、待ってるわ。」
ミリヤムの思い詰めた真剣な眼差しに、次の予定の消化で頭がいっぱいのヴェルは全く気がついていなかった。
送迎で疲れ果てたヴェルがミリヤムの元を訪れたのは宵の口だった。宴の後、召使ももう早く下がらせたのだろう。室内にはミリヤムしか居なかった。
「遅くなってすみません、ミリヤム義姉さん。」
「ううん、大丈夫よ、ヴェル君。あの人たちももう寝室に引き上げたから。このタイミングでちょうど良かったの。」
どこか寂しげにミリヤムがいう。
「では、小屋に移動しましょうか。アマーリエ義姉さんも待っていると思います。」
ヴェルに差し出された手を、ミリヤムが掴んだ。瞬間移動で飛んだ先はアマーリエとの逢瀬で使っている小屋だった。豪華な内装を見て、ミリヤムが驚く。彼女も貴族の正室ではあるのだが、ミリヤムの普段の生活から見ても贅を尽くした部屋と感じられたのだ。
「まあ。話には聞いていたけれど、とても立派な部屋なのね」
既にランプには火が灯され、軽食も用意されていた。室内は完璧に整えられていたが、アマーリエの姿はそこにはなかった。
「最初はもっと殺風景だったんです、それじゃあんまりだって事で色々と手を入れたんですよ。アマーリエ義姉さんが居ないみたいなので、俺が呼びに行きますね。」
そう言って立ち去ろうとしたヴェルの背中に、ミリヤムが抱きつく。
「アマーリエさんは、今夜はもうここに来ないわ。」
ヴェルの背中に、ミリヤムの胸が押しつけられた。
「ミ、ミリヤム義姉さん?」
「私、今日はアマーリエさんに代わって臨時の『あてがい女』なのよ。今日だけはヴェル君は私に何をしてもいいの。」
「そんなダメです、エーリッヒ兄さんに悪いから。俺はそういう事は出来ません。」
抵抗するヴェルを、ミリヤムはなおも誘惑する。
「エーリッヒは、今、新しく迎えた花嫁さんと初夜を迎えているの。だから、今日はヴェル君が私を慰めて。」
「いえ、でも。」
「私、エーリッヒの心が離れてしまうのが怖いの。私はエーリッヒを心から愛してるわ。2人も子供を授かった。でも側室が来たらあの人は凄く喜んでいるの、分かるでしょう。私はもう、エーリッヒの正室ではいられないかもしれないわ。」
「エーリッヒ兄さんはブラント家の婿養子です。だから、そんな事は気にしないで大丈夫ですよ。」
「ううん、今のあの人はブラント騎士爵家より遥かに出世してもう準男爵になったわ。それも全てヴェル君のおかげ。このままいけばもっと出世するでしょう。そうしたら、ブラントの家名が邪魔になって、バウマイスターに戻したくなる時がくるかもしれない。」
「そんな事、エーリッヒ兄さんはミリヤム義姉さんを愛してます。俺とこんな事をする必要はありませんよ。」
「一回だけでいいのよ。私もヴェル君との間に約束が欲しいの。自分が正室でいられる、あの人と別れないで済む、エーリッヒがもっと出世して別の女性を正室にと望んでもヴェル君がそれを許さないと知っておきたいわ。」
「大丈夫です、エーリッヒ兄さんとミリヤム義姉さんを別れさせないと俺が約束します。だから安心してください。」
「でも、ヴェル君はエーリッヒとは仲が良すぎるわ。エーリッヒに言われたら、なんでも賛成してしまうでしょう? もし私と離婚したいとエーリッヒが言ったら、ヴェル君は受け入れてしまったと思う。それじゃダメなのよ。」
なおも抵抗するヴェルの口をミリヤムの指がそっと押さえた。
「お願い、ヴェル君。私も色々と決心をしてこの小屋にきたの。女に、恥をかかせないで。」
ミリヤムがドレスを床に脱ぎ捨てる。そのように用意していたのだろう。ミリヤムは下着をつけていなかった。ミリヤムの白い裸体がランプに浮き上がるのを、ヴェルは呆然と見つめた。
「私も2人も子供を産んでいるから、体型は崩れてしまったかしら。こんなオバさんでは、ヴェル君は興奮しない?」
「そんな事ありません、とても綺麗ですよ、ミリヤム義姉さん」
まんまとミリヤムの誘導にのったヴェルは、つい反射的にミリヤムの身体を褒める。そして迂闊だったな、と思ったが、もうミリヤムの誘惑を断る事が出来ないと悟った。
ミリヤムの震える唇がヴェルに押し当てられた。エーリッヒ任せで、いつもミリヤムがリードする事などないのだろう。それはぎこちない仕草だった。
ミリヤムがヴェルの手を掴むと、そっと自身の乳房を掴ませる。小ぶりな乳房をヴェルの手が揉みしだいた。
「ヴェル君は、おっぱいが好きなんでしょう?触らせて上げられるのは今日だけだから、いっぱい揉んでね。」
ミリヤムの乳房は小ぶりだった。でも柔らかく、感度は良い。ヴェルが揉むたびに押し殺した喘ぎ声を漏らした。
「ミリヤム義姉さん」
「うん、分かってるわ。」
ミリヤムはヴェルの服を脱がせると跪いた。
「大きい、のね。」
ミリヤムは初めて見るヴェルの男性器を口に含む。小柄なミリヤムは口も小さい。主に舌先を使ってペロペロとヴェルの男性器を舐め上げ、手も使って刺激を加える。
「どう、気持ちいいかしら?」
ミリヤムにはアマーリエのような奉仕の技術はなかった。ただ夫に対するように従順に奉仕するだけ。そのミリヤムの未熟でスレていない感じは、独特の感慨をヴェルにもたらす。
「(貴族の奥さんて、こんな感じなんだろうな。)」
ヴェルの男性器がゆっくり頭をもたげ、そそり立つ。
「それじゃ俺も舐めますね」
ヴェルはミリヤムをそっとベッドに運んだ。少し怯えているのだろう。ミリヤムの小柄な体は震えていた。ミリヤムの身体を開き、ヴェルはアマーリエに教わった通り、舌を使って丁寧にミリヤムの女性器を愛撫した。
ジンワリとミリヤムの秘所が濡れる。
「気持ちいいわ。」
「エーリッヒ兄さんは、よくこんな風に愛撫してくれるんですか?」
「ええ。あの人は少しも嫌がらずに私を舌で気持ち良くしてくれるのよ。前戯だけで何度もいかされちゃうわ。」
ミリヤムはきっと敏感でいきやすい体質なのだろう。ヴェルの愛撫にもすぐに順応してヒクヒクと反応していた。
「ミリヤム義姉さん、本当にこのまま続けて大丈夫ですか?」
「うん、ヴェル君。今の私はヴェル君のあてがい女よ。私を抱いてください。」
「分かりました。」
うなずいたヴェルの男性器がミリヤムの膣に挿入される。ミリヤムは小柄で膣も小さい。ヴェルの男性器がすぐにミリヤムの奥底に到達した。
「ミリヤム義姉さん、とてもキツいです。」
「うん、ヴェル君は凄く大きくて熱いわ。」
アマーリエと異なり、ミリヤムの身体は体温が低いのかあまり熱を感じない。正常位でミリヤムを抱いていても、ヴェルはミリヤムの身体に独特の冷たさを感じる。
女性器の食いつき方もアマーリエとは違う。フワフワとした感触でどこか頼りない。ヴェルにされるがままにその形を変えてしまいそうな嫋やかな姿をしている。
「(傷なんかつけないように、優しく扱わないと。)」
ヴェルのいつもより控えめで優しい抽送が開始される。ミリヤムはヴェルの身体の下で感じ切っていた。
「あ、あ、ダメ。エーリッヒじゃないのに、いっちゃう。」
ミリヤムの締め付けが強まる。だがそれ以上にミリヤムの興奮する喘ぎ声に唆されて、ヴェルも絶頂に達した。
「出しますね、ミリヤム義姉さん」
「はいっ」
ミリヤムの冷たい身体にヴェルの熱い精子が注ぎ込まれた。
「あ」
初めて他人の精子を受け入れ、戸惑うミリヤム。
「ごめんなさい、やはり膣内射精はダメでしたか?」
「ううん、大丈夫。少し驚いただけ。」
ヴェルはアマーリエから膣内射精が貴族の性交渉の基本と教わっている。貴族は子供を作るのが基本だからだ。ただ不倫となると、どの作法が正しいのかヴェルも知らない。単に『あてがい女』と言われたので、ヴェルはアマーリエとの感覚を再現していただけだった。
「今日は大丈夫な日だから、安心して。」
ミリヤムの膣は小さい、ヴェルが男性器を抜くと、膣内からすぐにヴェルの精子が溢れ出した。ミリヤムはその様子を少し不思議そうに眺める。アマーリエが事前に用意したのだろう、清潔なタオルが積まれているのでヴェルはミリヤムにそれを渡す。
「私、自分で拭くの初めてかもしれません。」
いつもエーリッヒに女性器を拭かれているとミリヤムはいう。
「ミリヤム義姉さんは、エーリッヒ兄さんに大事にされてるんですよ。とても愛されているんですね。」
エーリッヒはミリヤムを大事な人形のように扱っているのかもしれないな、とヴェルはふと思う。イケメンなエーリッヒにはその行動が似合っているようにも感じられた。
「ええ、そうなのかもしれないわ。」
ミリヤムもヴェルの言葉に同意した。ミリヤムが膣内のヴェルの精子の処理を終えると、ベッドの上でしばし抱き合い休息する。ヴェルがミリヤムを背中から抱くようにして、ミリヤムの顔はヴェルと反対を向いている。
不意にシクシクとミリヤムが泣き出した。ヴェルがそっと背中からミリヤムを抱く。
「やはり後悔しているんじゃありませんか、ミリヤム義姉さん。」
間に涙を溜めてミリヤムは、ヴェルの方に向き直った。
「ううん、違うの。ヴェル君との事じゃないの。今頃、花嫁さんがエーリッヒに私と同じように身体を拭かれたんだなって思ったら、不意に悲しくなってしまっただけなの。」
「そうだったんですね。」
「私、今日は来てよかった。やはり、1人では耐えきれなかったと思うから。」
ヴェルの指が、そっとミリヤムの涙を拭う。
「今だけはエーリッヒの事、忘れさせて欲しいな。」
ヴェルの腕の中でミリヤムはヴェルに甘えた。ヴェルがミリヤムの顔を持ち上げて、キスをする。ミリヤムはキスに応えて、2人で舌を絡めあう。
「よく濡れていますね。」
先ほど綺麗にヴェルの精子は拭き取った筈なのに、ミリヤムの秘所はもうよく潤っていた。挿入されたヴェルの指を締め付ける。
「いや、そんな事言わないで。」
「ミリヤム義姉さん、立ってください。ベッドに手と膝をついて、腰を俺の方に突き出してください。」
「こう、かしら? なんだか恥ずかしいわ。」
「少し足を開いて、それじゃあ挿入しますね。」
ヴェルはミリヤムの腰に手を当てて、後背位で一気に突き入れる。
「いや、これ、奥まで入りすぎているわ。」
2回目はヴェルはもう遠慮をしなかった。最初から自分が気持ちよくなるように全力で腰を振る。小柄で非力なミリヤムは、ヴェルになされるまま背後から犯され、ヴェルの動きについて行くのに必死だった。
ミリヤムの膣内がヴェルの男性器に削られ形を変えられる。1回目より2回目の方がずっとヴェルの男性器にフィットするように変化してきていた。
「(私、ヴェル君に形を変えられちゃったの)」
ミリヤムはもう声を押し殺せない。その余裕がない。大きく喘ぎながら、ミリヤムは自身の変化を感じ取っていた。それはミリヤム自身が膣の変形を自覚するほど激しい。ヴェルの形に染められる感覚。非力ながらミリヤムの女性器はヴェルを絶頂に導こうと懸命に締め付ける。
背後からヴェルにのしかかられたミリヤムの手が支えを求めてシーツを掴む。ヴェルに犯され、ミリヤムはずっと絶頂しっぱなしだった。
「出しますね、ミリヤム義姉さん」
「はい、ヴェル君、もう私耐えられない。」
ヴェルに膣内に射精されると同時に身体を支えていたミリヤムの膝が崩れ落ち、ベッドに横這いになる。ミリヤムの身体がガクガクと震えた。
ヴェルが膣から男性器を引き抜いた。ミリヤムの膣からヴェルの精子が溢れ出し、シーツを濡らす。
部屋に2人の息遣いだけが響いた。ほうっとため息をつき、ミリヤムが放心から醒めた。
「エーリッヒじゃない人とするのって、こんな感じなのね。」
「後悔はしていませんか?」
「ううん、大丈夫よヴェル君。相手がヴェル君で良かったと思っているの。私がずっとエーリッヒの正妻でいられるよう、約束は守って欲しいと思っているけれど。」
「それは大丈夫です。俺はエーリッヒ兄さんとミリヤム義姉さんの結婚を邪魔する必要は少しもありませんから。」
「2人とも、今日はもう帰った方がいいと思うの」
「わかりました。家にお送りしますね。」
「今日はありがとう、ヴェル君」
WEB版
エーリッヒの妻=ミリヤム
式の順番=ヘルムート→エーリッヒ
書籍版(8巻)
エーリッヒの妻=ミリアム
式の順番=エーリッヒ→ヘルムート→パウル→ヘルマン
のようです。これまで基本Web版に沿って進めてきましたが、結婚式前後の時期については書籍版の方がやや詳しく、書籍とweb の2つを折衷した内容になっています。ご承知おきください。
今回はこの展開を思いついたので強引に書いてしまいました。ヴェルの男兄弟達が側室を娶る上では、妻達の側に一定の反動があったと思いますが、それ以上にこの展開しか書く事が出来ませんでした。