※この作品はR-18です。

アマーリエ義姉さん 〜あてがい女の手ほどき〜   作:時田士郎

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2話 魔道通信機と立派なベッド

「それで首尾は、どうであったのかね。」

 

ご隠居様と今は領内で称されるアルトゥルが、長男の嫁に尋ねた。廊下でのさり気ない立ち話を装っているが、会話の内容は当家の重大事だった。

 

「・・・ご安心ください。立派になさいましたわ。」

 

アマーリエの抑えた、だがしっかりとした口調にアルトゥルは大きく頷き返した。

 

「・・・良かった、それは良かったな。」

 

微かに顔を綻ばせ、喜びと安堵を露わにする。

 

「報告をせねばならん所がある、むろん詳細は伏せて伝えるが、何もかも上手くいったのであれば、それは誠に重畳。」

 

アルトゥルの鋭い視線が、アマーリエの顔をじっと見据えた。どのようなささやかな兆候も見逃すまいとするように。

 

 アマーリエを観察しながら、アルトゥルは連絡すべき相手の顔を思い浮かべていた。昨夜の詳細を根掘り葉掘り、長男の嫁に問いただす事は憚られる。息子の心情を考えても必要とされる会話の中身から言っても。

 

 だが、それはそれとして『あてがい女の務めに何も問題はなかった』事は、アマーリエに入念に確認をしておきたかった。

 

「はい。お義父様。何もかも、全く問題ありません。」

 

その瞳に誇りを込めて、真っ直ぐに見返すアマーリエの姿に、アルトゥルは求めていた確証を得た。昨夜は何もかも上手く運んだのなら、それは想像以上の上首尾だった。

 

「そうか、何もかも、か。」

 

 実は、アルトゥルもアマーリエも、ヴェルとアマーリエの年の差をだいぶ懸念はしていたのだ。若い娘に囲まれているヴェルにとって、ひと回り年上のアマーリエでは差し障りがあるのではないかと心配をした。

 

 教える役回りだから、ヴェルとの利害関係がハッキリとしているから、口の硬い身内だからと、そういう建前で押し通したはしたものの、全ては他に候補がいない故の苦肉の策でしかなかった。

 

しかし、年増という年齢の壁を問題なく乗り越えられ、ヴェルの反応も仕上がりも上首尾だったらしい。父の贈り物は、息子のヴェルの逸物を喜ばせたのだ。

 

「苦労をかけるが、引き続きよろしく頼む。色々と面倒を見てやってくれ。」

 

短くねぎらいの言葉をかけ、アルトゥルは足早に立ち去った。早くパウルを捕まえて、魔導携帯通信機を借りねばならい。寄親に上首尾の結果だったと早く報告したかった。

 

そんなアルトゥルを見送るアマーリエの胸中は複雑だった。『あてがい女』としての役割は無事に果たした。自身がヴェルを男にした、ヴェルの欲望を満たし、身体を喜ばせる役に立った、その自信はある。

 

「(でも、もう手ほどきの時間は終わってしまったわ・・・。)」

 

昨夜のヴェルとの邂逅で最後かも知れない、そう考えるとアマーリエの胸の奥底がチクリと傷んだ。ヴェルは3人もの婚約者のいる立場、正妻の待つ身、いわば妻たちの所有物。そうだと分かっていても、ヴェルに心が動いたのは止められなかった。今後はもう、ヴェルの寝台に呼ばれる事はないのだろうか。

 

「(それとも、ヴェル君のあの様子なら、まだ期待して良いのでしょうか。)」

 

本気にするわよ、ヴェルにそう言った昨夜の自分の言葉が思い出される。ヴェルの好意に縋るだけの弱い立場、正妻でも側室でもない。周りに知られてはならない、主の欲望を満たす為に存在する、秘めやかな関係の『あてがい女』。

 

「(私は、これからどうなるのかしら。)」

 

アマーリエは、しばし物思いに耽った。ヴェルとの邂逅を終えた今日は、休んで良いですよ、と言われていた。だがヴェルとの情事に使った小屋の片付けを、人任せにする訳にはいかない。

 

「(今日は一日、あの小屋を綺麗に掃除しましょう。ヴェル君がいつ訪れても準備できているように)」

 

アマーリエは気を取り直すと、掃除道具を揃えて昨夜の小屋の清掃へと向かった。

 

「昨夜は暗がりだから誤魔化せたけれど、殺風景な部屋だし、ベッドも粗末ね。シーツや枕もこれでは••••。」

 

大慌てで用意された仮初の場所だから、多少のみすぼらしさは許容するべきかもしれない。だが陽の光にありありと照らされた小屋の内部は、愛の巣としてはみすぼらしく、昨夜の幻想を打ち砕くのに十分だった。シーツや枕は正直捨ててしまいたいくらいの代物だった。

 

それでも汚れ物を片付けて、少しでも綺麗に見えるように磨き始める。

 

「せめて清潔にしないと、ね。」

 

この小屋の姿が、うらぶれた今のアマーリエ自身の姿と重なる。どれだけ上辺を取り繕ってみても、今の自分はもう次期領主の奥方ではない。贔屓目に見ても若作りした年増の未亡人で、2人の子持ちの母親だった。若いヴェルに魅力的に思われるはずもない。

 

「そうね。私もヴェル君がいつ来ても良いように、せめて身なりを整えておかないといけないわね。」

 

出来る限り自身の容姿に磨きをかける。それが主様に対する『あてがい女』なりの誠意と言えるだろう。

 

チラリと汚れた浴槽を見る。小屋は殺風景とはいえ新築ではあるのだが、後から追加された風呂は待ち合わせで作られたもので浴槽は古く、清潔感に乏しい。何よりアマーリエ独りでは浴槽を満たすだけの水汲みも難しい。

 

「当面、洗い場として使いましょう。」

 

水甕に貯めた水で、身体の汚れを洗い流す場所。或いは汚れた衣類を漬け洗いする場所。

 

持ち出せた衣装の中に、何か相応しい衣装はあっただろうか。ヴェルの訪れが続くようなら、事情を深く知るアルトゥルに衣装代の無心をしなくてはならないかもしれなかった。

 

「アマーリエ義姉さん」

 

清掃を終え、汚れた体も拭き清めた午後の遅い時間、アマーリエが小屋でしばし物思いに耽っていると、不意にヴェルが現れて後ろから抱きしめられた。

 

「良かった、小屋にいてくれて。呼びに行った方が良いか、悩んでいたんですよ。」

 

ヴェルの屈託のない笑顔に、アマーリエの心がドキリとする。

 

「ベッドを交換しましょう。クッションとシーツと枕とかも。一番必要なものですから」

 

魔法の力だろうか。ヴェルは次々とアマーリエの望んでいた物をサッと取り出して見せた。古いベットはすかさず魔法の袋に仕舞い込まれる。豪華な天蓋付きのベッドの出現にアマーリエは驚く。

 

「ヴェル君、あまりにも突然でびっくりするわ。」

 

あんなにヴェルの訪れを待ち望んでいたのに、アマーリエは自分でも驚くほど子供じみた、少し拗ねたような口調になっていた。

 

「私のような『あてがい女』にも、主様をお迎えする準備の時間が必要なんです。」

 

こう言ってヴェルは気を悪くしないだろうか。いや、女として身支度をする時間は与えられるべきだ。ぐるぐるとアマーリエの頭を色々な考えがよぎった。これではちゃんと化粧する間もないではないか。

 

「そうですね。すみません急に来て。でも、今日もアマーリエ義姉さんにとても会いたかったんです。それで工事を切り上げて来ちゃいました。でも、夕食までに帰らないといけないんです。」

 

そう言いながらヴェルは、小さくて硬いものをアマーリエに差し出した。

 

「ヴェル君、これはなぁに?」

 

「魔道携帯通信機です、これでアマーリエ義姉さんにいつでも連絡がつけられます。持っていてください。」

 

それは余りにも甘い、ヴェルからの誘惑だった。

 

「(ヴェル君は、こんな高価な物を渡すほど頻繁に私を求めてくれるというの!?)」

 

どうしよう、アマーリエの漏らした呟きをヴェルは聞き漏らさなかった。

 

「いずれ、領地を分与したアマーリエ義姉さんの子供達に渡すつもりの品なんです。だからこれは少し早く、アマーリエ義姉さんに預けるだけなんですよ。」

 

「・・・そう、分かりました。」

 

確かに魔道携帯通信機があれば、2人の秘め事はとても上手く逢引き可能になるだろう、その事がよく分かっている。だからこそ、アマーリエはヴェルの囁く誘惑を諦めて受け入れた、あくまでも子供達の為という名分を信じたふりをして。

 

「使い方は父でも扱えるくらいに簡単なんです、アマーリエ義姉さんならすぐに使いこなせますよ。」

 

手際よく使い方を説明するヴェルの横顔を、アマーリエはじっと見つめた。兄弟とはいえ、夫だったクルトとヴェルは何もかも違っていた。朗らかな笑顔、若いのに自信に満ちた振る舞い、それでいて女性が何を望んでもちゃんと受け止めてくれそうな温かな包容力。ふとした仕草に秘められた気遣い。そもそも、高価な品を太っ腹に貸し与えるなど、死んだクルトには逆立ちしても出来ない芸当だった。

 

ぼーっとしたアマーリエの視線を、ヴェルは誤解したらしかった。

 

「あの、操作の説明難しかったですか?」

 

本心から心配そうに問いかけるヴェルの姿に、アマーリエは心の底からヴェルへの愛おしさを感じた。

 

「(今はこの関係を素直に受け入れて、私も楽しもう。)」

 

アマーリエがこう思った瞬間が、夫だったクルトへの最後の気遣いを捨て去った瞬間だった。

 

「いいえ、説明はよく分かりました。これでいつでも『あてがい女』が御用に立てますね。」

 

茶目っ気たっぷりのアマーリエの言葉に、ヴェルは耳まで赤くなった。

 

「昨夜は主様にたっぷりと可愛がって頂きましたわ、今日はどうなさいますか?」

 

そういいながら、アマーリエはスカートの裾を中を見せるように捲り上げる。アマーリエの白い足と木綿の下着が顕になる。ヴェルの視線が釘付けになった。

 

「・・・今日もしたい、です。その為に来ました。」

 

素直なヴェルの告白を、アマーリエは嬌声と共に受け止める。

 

「それでは、今日はまず女性の下着の脱がせ方を覚えましょう?」

 

そう言ってスカートを大胆に捲り上げて、腰を浮かせ、足を少し開く。ヴェルは興奮した様子で、アマーリエの下着を一気に引き下した。

 

「もう、ヴェル君はエッチなのね。そんないきなり脱がせちゃうなんて。」

 

片足ずつ交互に浮かせると、アマーリエはヴェルに下着を身体から抜き取らせた。そしてそっと手を出して下着を受け取ろうとする、しかしヴェルはアマーリエの手を無視して、下着に自身の鼻をあてて匂いを嗅いだ。

 

「アマーリエ義姉さんの、甘い匂いがします。」

 

「ヴェル君、いや、そんな汚いわ。」

 

そう言いながらもアマーリエはヴェルが自分の匂いを受け入れてくれている事に胸をキュンキュンと高鳴らせ欲情した。

 

 クルトならこのような時はどうだっただろう。クルトに関心があったのは自分がら心地良くなる事だけ。女の下着は汚物として扱い、匂いに関心など示しはしなかった。

 

『脱げ』『股を開け』クルトとの夜の会話はそれくらいの、命令調で語句に乏しい決まりきった関係だった。

 

ヴェル君のように、憧れに満ちた瞳で熱を持って見つめてくれはしなかった。視線をかわすと、ヴェルの欲望とアマーリエの欲望が交差する。

 

「服を脱ぐのは、女性に任せて上げてね。女性は殿方の衣類を脱がすのを任されるの、好きなのよ。」

 

アマーリエはそう言ってヴェルのズボンを下ろし、男性器を露出させた。そのまま交互に足を動かして、ヴェルの下半身から全ての布を剥ぎ取った。もう遮るものは何もない。小屋に差し込む明るい午後の日差しに、ヴェルの硬くなった逸物が浮き上がった。

 

誘い込まれるように、アマーリエの唇がヴェルの男性器を咥え込む。ヴェルの前に跪いて、懸命にしゃぶるアマーリエの奉仕。柔らかなアマーリエの唇が、今日も吐息を漏らしながらヴェルの男性器にご奉仕を続ける。

 

「アマーリエ義姉さん、今日も気持ちいいです。」

 

ヴェルの手が、ヴェルの股間を貪るアマーリエの後髪をそっと撫でる。このまま股間にアマーリエの顔を押し付けたい。そしたらアマーリエは、こんなソフトな刺激ではなく、もっと激しくヴェルの男性器を吸ってくれるのだろうか。

 

ヴェルの葛藤が伝わったのだろうか、スッとアマーリエが視線を上げた。色目を使う、まさにそう形容するしかないほど、アマーリエの目はヴェルの情欲を扇情的に誘っていた。

 

「アマーリエ義姉さん、もう入れたいです!」

 

遂に我慢できなくなったヴェルが吐息を漏らす。

 

「ダメよ、ヴェル君。挿入するのは、女性が濡れているのをしっかりと確認してからにするべきだわ。女性が感じてこそ、その感覚が殿方にも伝わるのよ。私は昨日、そうちゃんと教えましたよね?」

 

アマーリエはあくまで上目使いでヴェルを見上げながら、それでも手と唇の先でヴェルの男性器を刺激し続けた。言葉を紡ぐ為に男性器から引き離されたアマーリエの唇も、名残惜しそうにヴェルの男性器を撫で回して離れようとしない。

 

「でも、主様のお言い付けでは、仕方がないわ。『あてがい女』は主様のご要望のままに従います。」

 

サッとアマーリエが腰を上げた、スカートを捲り上げてヴェルの前に突き出す。ヴェルの指先がアマーリエの秘所に触れると、アマーリエの女性器の内部はしっとりと愛液を湛えていた。待ちかねたヴェルの指先の刺激、少し触れられただけでアマーリエの身体は興奮で震えた。

 

「アマーリエ義姉さん、ちゃんと濡れて、今日も興奮してくれているんですね。」

 

ヴェルの声にアマーリエもハッとさせられる。そう、ヴェルとの交合を楽しみにしているのはアマーリエも変わりはないのだ。ただ『あてがい女』としての立ち合い振る舞いが、本心を僅かに覆っているだけに過ぎない。でもアマーリエの目も、心も、身体も、ヴェルの前では全てが正直だった。とても敏感で、少し触られただけで達してしまいそうな迄に昂っていた。

 

「・・・それでは、ヴェル君に後背位を教えますね。」

 

アマーリエは震える声を絞り出した。ヴェルの右手は執拗にアマーリエの秘所を刺激し、ヴェルの左手は服の上からアマーリエの胸を弄っていた。刺激に耐えきれず、アマーリエが声を漏らす。

 

「あ、や、やん。」

 

ヴェルはアマーリエの腕を取ると、アマーリエの両手を壁につかせた。いつの早技で腕にくぐらされたのだろう。ヴェルが脱がせたアマーリエの下着は、アマーリエの左腕に通されていた。

 

アマーリエとヴェルが呼吸を図り合う。ヴェルはアマーリエの腰に手を当てて、しっかりと自分の猛り立った男性器をアマーリエの尻の下側に突き立てた。アマーリエの両手は体を支える為に壁に手をつかされている。今日はアマーリエが、その手でヴェルの男性器の誘導をする事は出来ない。それでもヴェルの男性器はお尻の穴の少し下、アマーリエの秘所に正確な狙いで挿入を果たした。

 

「ああぁ、いい。」

 

ヴェルの腰の動きに突き上げられて、アマーリエが嬌声を上げる。今日一日中待ち望んでいた瞬間が遂に訪れたのだ。アマーリエの女性器はヴェルの男性器を咥え込んで離そうとしなかった。

 

ヴェルまたアマーリエの女性器の感触に改めて圧倒された。絹布のような滑らかな包み具合。それでいてしっとりと咥えて離さない。何より感動するのは、ヴェルの身体がどう動こうとアマーリエの身体はヴェルの動きに忠実についてくるのだ。女性が乗り手なのか男性が乗り手なのか、あるいは男女双方が乗り合っているのか。

 

ヴェルはアマーリエの腰を掴んで、半ば引き離してはまた腰に打ちつけるように抽送を繰り返した。アマーリエの身体が痙攣し、2人の気持ちが高まってさゆくのを感じる、もう言葉は必要がなかった、ハァハァ、フウフウと漏れる息の合間にバンバンと腰を打ち付ける音が小屋に響き渡った。

 

アマーリエの腕にかけられた下着が、アマーリエの束ねた髪が、腰の動きに連動して宙を舞う。粘膜の感触も、視覚と聴覚の刺激も、全てがヴェルの気持ちを高めた。官能のさざ波が2人を貫く。

 

「いく、イク、もうイキます、アマーリエ義姉さん。受け止めてください。」

 

「ひやぁい』

 

叫ぶヴェルの声に、壁に向かってアヘ顔を晒すアマーリエが応じる。アマーリエはヴェルに顔を見やれないように少し顔を伏せている、それが僅かに残ったアマーリエの矜持だった。これは『あてがい女』としての役割でしている事ですよ、というポーズ。しかしながら、アマーリエも、実際は快楽に溺れ切っていた。

 

ヴェルとアマーリエの2人が同時に絶頂に達した。ドクドクドク、今日も白濁したヴェルの精子が大量にアマーリエの膣内に注ぎ込まれた。ヒクヒクと痙攣するアマーリエの女性器が、ヴェルの男性器から最後の一滴までも搾り尽くそうと動く。

 

そのままの大勢で、2人はしばし身動きが出来なかった。脳天を快感が突き抜け、その後には気だるい疲労感が襲ってくる。

 

ヴェルがアマーリエの腰から手を離し、アマーリエの膣内から小さくなって押し出されつつあった男性器を引き抜くと、アマーリエも壁についた手を外して向き直った。ヴェルの精子が女性器から滴り落ちるのも気にせず、アマーリエがその柔らかな唇でヴェルの男性器へのご奉仕を開始する。

 

最後のお清めを口で行う。それは性的な行為であると同時に、主様に尽くさんとするアマーリエの姿勢を示す、どこか職務への真剣さを感じさせる一種の儀式だった。

 

ちゅぼん.性液を全て拭き取られたヴェルの男性器がアマーリエの唇から吐き出される。アマーリエはゴクリ、と喉を鳴らすと全てを飲み込んだ。そして、チュッっと愛おし気な仕草でアマーリエはヴェルの男性器にキスをした。

 

「今日もまた、しっかりといかされてしまったわ。」

 

少し恨めしそうな目つきをヴェルに向ける。本心は嬉しいのだ。アマーリエは心の底からこの逢瀬を楽しんでいた。でもアマーリエが『あてがい女』であるだけに、ヴェルの心に深入りしてはならなかった。

 

「(私たちは役目の上での関係。ずっと長続きする伴侶ではないのだもの。)」

 

ヴェルは何も答えずに、アマーリエの細い顎を持ち上げると、そっとアマーリエの唇にキスをした。敏感なアマーリエの身体に官能の細波が走る。

 

「今日も素敵でした、アマーリエ義姉さん。ご馳走様でした。」

 

珍しくヴェルが冗談を言って、笑い顔を見せた。

 

「お粗末様でした、今日の『あてがい女』のお味はいかがでしたか?」

 

アマーリエも悪戯心を出してそれに応じる。そこには幾分か、ヴェルの評価を知りたいと思う心が秘められていた。

 

「アマーリエ義姉さんは、いつだって最高ですよ。」

 

ヴェルに抱きしめられて耳元で囁かれると、年甲斐もなくアマーリエの心はキュンキュンした。嬉しくなったアマーリエはヴェルの腕にそっと頭を乗せた。

 

「(せめてヴェル君と歳がもっと近かったら、ちゃんと恋できたかもしれないわね。)」

 

そう考えるアマーリエの心は、もうすっかりヴェルに靡いていた。本心ではヴェルの妻達が羨ましくてならない。でもアマーリエがその地位に辿りつく事は無いのだ。彼女はそう諦めていた。

 

「(でもだからこそ.私は奥様達に顔向けできない事はしない。私はあくまで『あてがい女』として、ヴェル君に尽くさないと。)」

 

自らの本心を押し隠しながら、アマーリエはヴェルに笑顔を向けた。

 

「せっかく立派なベッドをヴェル君が用意してくれたのに、使わなかったのはちょっと勿体なかったかしら?」

 

「良いんです、アマーリエ義姉さん。また次の機会がありますから。」

 

今日は2人とも上半身は脱がずに、下半身だけ服を剥ぎ取ったお手軽な交合だった。お互いに求め合うだけの、手軽なセックス。束の間の身体の貪り合い。

 

「(殿方が『あてがい女』に求める性交渉は、こういうお手軽な感じかお好みなのよね。)」

 

そう考えるアマーリエの足元にヴェルが跪いた。

 

「ほら足を上げてください、アマーリエ義姉さん。ちゃんと拭き取ってあげますよ。」

 

アマーリエがヴェルを優先して、そのままにしていたヴェルの精液。アマーリエの愛液と混じり合って、太ももの内側を流れるままにしていたそれを、いつのまにかヴェルが拭き取ろうとしてくれていた。ヴェルは優しい手つきで、どこからか取り出した濡れた布でアマーリエの太ももを吹き上げる。流石に舌で舐め上げるような事はしないが、秘所をゴシゴシと真剣に見られながら他人に拭かれる感覚は.性的なものよりもむしろ、子供の頃に戻ったような安らぎをアマーリエに与えた。

 

「お互いに相手に気持ち良いと思うことをしてあげるのが大事、そうなんですよね.アマーリエ義姉さん?」

 

そう言ってヴェルは捲り上げていたアマーリエのスカートを下ろした、今度はアマーリエを見上げて微笑むヴェルの姿に、アマーリエは下着を履き忘れているのも忘れてときめいた。

 

「これは貰っていきますね、アマーリエ義姉さん」

 

いつの間にか、またアマーリエの下着がヴェルの手に握られていた。さっきまでアマーリエの腕でクルクルと回っていたはずなのに。

 

「だ、ダメよヴェル君。下着なんて汚いわ。それに、それがないと私は困るの。」

 

ヴェルの前につけて出られる程の綺麗な下着は、もうそんなに残っていない、そう口に出してヴェルに言うべきだろうか。逡巡するアマーリエの心を知ってか知らずか、ヴェルは言った。

 

「はい、だから次回は王都でデートしましょう。僕がアマーリエ義姉さんに、代わりのドレスも下着もいっぱい買って上げますね。」

 

呆然としているアマーリエを尻目に、ヴェルは素早く姿を消した。

 

「今、ヴェル君がここに来ていたのは夢だったのかしら?」

 

新しいシーツと枕、天蓋付きの豪華なセット、そして下着がなくてスースーしているアマーリエの股間が、今の出来事が夢でなかったと証明していた。




初逢瀬の翌日の様子です。アマーリエにもアルトゥルにもそれぞれ葛藤があり、むしろそれがエロいのかなと思いました。『あてがわれる』つまり贈り主の思惑というのは色々あると思うのですが、父と息子という関係性で見るとそれも父の愛というか、家と子孫の繁栄を願い差配する心なんだろうなと。

アマーリエは、周囲が思う以上にヴェルに気に入られています。ヴェルがアマーリエに感じるこの《癒し》の感覚は、父親のアルトゥルやアマーリエ自身にもあまりよく理解されていません。恐らく余り居心地も良くなかった実家で気の合う2人だった事に由来する心の触れ合いがきっかけです。ですので『年増の未亡人のあてがい女』という事実が正しい反面、ヴェルにとってアマーリエ義姉さんは取り替えることの出来ない『癒しの存在』となります。

父親のアルトゥルはクルトにせよヴェルにせよアマーリエにせよ息子や嫁の事をちっとも分かっていませんが、『あてがい女』の件でようやく父としての愛を子に示す事を選択しました。その結果として期せずして最高の贈り物をヴェルに与えているのだと思います。これがきっかけとなり、アマーリエ自身もヴェルとの愛に救われていきます。
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