「おはようございます。アルトゥル・フォン・ベンノ・バウマイスターです。」
「おはようございます!アマデウス・フライターク・フォン・ブライヒレーダーです。」
「長男の嫁からは、上首尾であったとの報告を受けました。」
「『あてがい女』の件が上手くいったのですね。それは何よりですね、お喜び申し上げます。」
「ハァ、これでようやくクルトの騒動に方がついた思いです。」
「それは事件の関係者が、罪を償うという考えからですか?」
「はい。それもあります。ただ、長男の嫁もあれで自分たちの将来が不安な心持ちであったと思うのですよ。」
「ヴェル君との関係を構築できて、口約束が果たされる確証を得た、ですか。思いの外、上手くおさまったようですね。」
「はい、お陰様で。なにやらアマーリエはヴェンデリンにはひどく喜ばれたようです。ヴェンデリンには年増なので少し心配していたのですが。」
「おお、それはそれは。」
「アマーリエは『ヴェンデリンは立派に務めた、何もかも上手くいきました』とそう申しておりました。」
「次に会った時に我々のささやかな作戦の成功を祝って、祝杯を上げなければなりませんね。」
「はい、楽しみにしておきます。」
アルトゥルとの通話を切ったブライヒレーダー辺境伯はしばし物思いに耽った。バウマイスター騎士爵家の長男の嫁の顔を思い浮かべ、ヴェンデリンとどのような痴態を繰り広げたのかとあらぬ想像をする。
「これは、側室に送り込んだ子達にも頑張ってもらわないとなりませんね。」
『あてがい女』と上手くいったかどうか。今後の結婚生活にも大きく影響を与える。ヴェンデリンの男性としての能力が十全であるなら、その事を関係者に報告しなくてはならなかった。これで結婚の障害がない事が確認された、と。
ヴェンデリンは、彼を取り囲む周囲の大人達に『あてがい女』の件を共有されると知ったら恥ずかしさで身悶えするだろう。しかし余計な横槍を入れさせず、ヴェンデリンが『あてがい女』を楽しむ為には、これも必要な措置だった。全てはヴェンデリンを取り巻く人脈の利害の調整。
「花嫁の関係者に連絡を取るのは、寄親としての責務とはいえ中々大変なものですね。」
魔道通信機を持ち上げると、指定された時刻である事を確認して、ホーエンハイム枢機卿に連絡を入れる。
「はい」
「おはようございます。ホーエンハイム枢機卿でいらっしゃいますね? アマデウス・フライターク・フォン・ブライヒレーダーです。」
「おはようございます、ブライヒレーダー辺境伯。貴方に神のご加護を。」
「今、連絡がきまして、『あてがい女』の件は上首尾であったとの事です。『何もかも上手くいった』と、先方からはそう聞いています。」
通話の相手は、ヴェンデリンの婚約者にしてボーエンハイムの聖女と讃えられるエリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム嬢の祖父、ホーエンハイム枢機卿だ。
相手も歴とした貴族とはいえ、聖職者相手に性的な話をするのはいささか緊張するが、内容が孫娘の結婚生活に関わるだけにホーエンハイム枢機卿から『是非とも結果を共有してほしい』と、強く頼まれていたのだ。
貴族の繋がりからも断る訳にはいかない願いだった。というより、正室のホーエンハイム家には動かれては滅茶苦茶となる可能性さえあった。このような根回しは絶対に必要とさえ言える。
「例の騒動を起こした長男の嫁、でしたか。それはヴェンデリン殿にとっても良い遺族救済となりましたね。無事に済んだのならば、それは良かった。では、孫娘には私からこの件ではヴェンデリン殿を邪魔をしないように伝えておきましょう。」
結婚は私的な性関係である以上に、家と家の結びつきを示す高度な貴族の政治だった。貴族の正室は家中において絶対的な統率者となる。側室や愛人、特に『あてがい女』のような存在に、驚き動揺するような事はあってはならない。それは貴族社会の妻として、正室であるエリーゼ本人の為にならない。
今回はヴェンデリンの男性としての機能が問題ない事が証明されて、正室のエリーゼも喜ぶべきなのだ。2人の貴族男性の認識は、その点では見事に一致していた。
「はい、またお会いする機会を楽しみにしております。」
「こちらこそ、ブライヒレーダー辺境伯」
再び浴室で身を清めると、アマーリエは新たに運び込まれた天蓋つきのベッドにゴロリと寝転んだ。
このベッドは小屋を去る時に整えれば十分だろう。それよりもまず心を落ち着かせたかった。激しい情事の後で身体が火照ってしまい、平静な気持ちではいられなかったのだ。まだ日常に溶け込む準備が出来ていなかった。
「(側室や愛人ならばこんな時、堂々と愛されたままの姿で出歩いて関係を誇示しても良いのかしら)」
チラリ、そんな事を考えたりする。秘めたる関係の『あてがい女』の立場では、主様の訪れを公然と誇る事は出来ない。結婚と同時に消える役割、あくまでも周囲に気づかれないように、家中の軋轢にならないように努めなければならない。
ヴェルとの交合で晒した痴態を思い出して赤面すると共に、まだ興奮が残る自身の身体をアマーリエは持て余していた。
「(今日は短かった、一度しか発射してくれなかった)」
まだ2度目の逢瀬なのに、もうそんな事を考えたりする。それにゆっくりする時間がないと、考えを整理できなかった。2人の関係はこれからどうなるのか。
「本気にするわよ」
「していいですよ」
初日のヴェルとの短い会話がアマーリエの頭を離れない。手に握った魔道通信機を眺める。今ここで呼び出しをすれば、ヴェルは出てくれるだろうか。
これからはかわいい5人の奥様達と楽しい夕食の時間のはずだ。いや実際は夕食にはまだまだ早いが、誰かに何かを察知されるような危険は犯せない。
そのような匂わせ行為は、最も女性同士の関係を悪化させる。『あてがい女』の立場上、アマーリエがよく思われないとしても仕方がないが、こちらから正妻に喧嘩を売るような真似は得策ではない。何よりヴェルの為にならない。この道具は『あてがい女』が主様からの連絡を受けるもの。それ以上の関係であってはならない。アマーリエの慎み深さは、実のところ『あてがい女』として極めて大事な資質たった。
「王都のお店に下着とドレスを買いに行きましょう、か。」
ため息と共に、心の中に閉じ込めておけなかった言葉を吐き出す。憧れの大都会に行ってみたい気持ちはある。アマーリエも人並みに買い物は好きだ。王都の高級店で買い物をするなど、これまでは望んでも得られなかった夢。もしアマーリエが騎士爵家の正妻であったとしても、この夢を叶えられる可能性はほとんどなかっただろう。
「もしそれが本当なら、以前よりずっと良い暮らしが出来るのかしら」
不安はある。いつ終わるかも分からない関係。幼馴染ならまだしも、歳の差のある2人。ヴェルには正妻と側室が合計で5人もいて、自分達は結婚式までの仮初の関係。誰に明かすことも出来ない、身体だけの秘めやかな繋がり。
「・・・それでも、本気にしていいのかしら」
アマーリエはヴェルの言葉を信じたい。もうきっと2人の心も繋がっている。2人の関係が終わる時、アマーリエは泣かずにはいられないだろう。もうこんなに心を寄せてしまったのだから。ヴェルの立っている高み、望んでも得られない世界を垣間見せ、幸福の瞬間から突き落とされる。それでも2人の子の行く末の為、アマーリエは強く生きてゆかねばならない。ただ、気持ちを整理する為には何日も何日も泣いて暮らす事になるのは間違いない。
「・・・日陰の身は、こんなにも辛いものなのね。」
幸い、身内はアマーリエの事情を知っている。隠居のアルトゥルも、この分家当主のパウルも、恐らくは他のヴェルの男兄弟でさえ承知しているヴェルとの関係。彼らはアマーリエがヴェルに対価を支払った事を把握している、関係が終わってそのままヴェルに忘れさられても、アマーリエはこの家で生きてゆく事が出来るだろう。
「そろそろ行かないと、変に思われてしまうわね」
手早くベッドを整えて小屋を出る。その時アマーリエは大変なことに気がついた。
「どうしましょう、王都まで服を買いに行く服がないわ」
王都を出歩ける程の服装の手持ちがあっただろうか。嫁入りの時に着たドレスはまだ取っておいてある。まだ身体が入るだろうか。王都の強い陽の光の下では、年増が若作りして娘の格好をしていると思われないだろうか。
小屋から一歩踏み出したアマーリエは、ヴェルが王都への買い物に連れ出してくれるのを、もう微塵も疑ってはいなかった。
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その翌日、早朝に待ちかねていたヴェルからの連絡がきた。アマーリエは魔道通信機を持ち歩いていたから、すぐにその呼び出しの振動に気づけた。教えられた通り、すぐには通話に応答せず、他に誰も入る事が出来ないあの小屋に移動して、ヴェルへ折り返しの通話を入れる。
『あてがい女』としてのヴェルとの関係を周囲に気取られない為、何よりアマーリエ自身が説明に困る立場に追い込まれる事がないように、対策は徹底されていた。ただ不自然でないように小屋に移動するのに、少し時間がかかってしまった。
「主様ごめんなさい、『あてがい女』のアマーリエです。お待たせしてしまったかしら?」
「アマーリエ義姉さん、おはようございます!」
魔道通信機からは元気なヴェルの声が飛び出す。その声の様子にアマーリエは密かに安堵する。良かった、自分はまだヴェルに必要とされている。
「突然ですが、今日は予定を空けられますか?この前話したように、王都に買い物に行きましょう。」
俺も今日は工事を休みにしました、とヴェルは楽しそうな口調で伝える。
「はい、主様のお言い付けとあらば大丈夫ですわ」
王都まで出かけるとなると、アルトゥルやパウルにも声をかけた方が良いだろうか。そんなアマーリエの思考を先取りするかのように、ヴェルは続けた。
「父様とパウル兄様には、アマーリエ義姉さんを連れ出すことは伝えておきます。アマーリエ義姉さんは何も心配しなくて良いですよ。」
「あら、嬉しい。主様のご配慮ありがとうございます」
「それでは今日、朝食を終えたら小屋で待機しておいてくださいね。俺が迎えに行きますから。」
「はい、必ず」
ヴェルとの電話が切れるとアマーリエは暫し放心した。夢想した事がどんどん現実になってゆく。
「私、こんなに幸せでいいのかしら?」
クルトの起こした事件ではどん底に突き落とされた気がした。2人の子供と放り出されても何も文句を言えなかった。犯人の嫁と子として後ろ指を指される立場でさえあった。それがパウルの領地の穏やかな生活を経て、今再び女として咲き誇れる季節を迎えていた。
「今日着る衣装は小屋に運んでおきましょう。ここで着替えないと変に思われてしまうもの。」
まだ見ぬ王都に思いを馳せながら、アマーリエはそそくさと外出の支度を開始した。
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朝食後、待ちかねたヴェルからの通話が来た時、アマーリエは小屋にいて、用意万端全ての支度を終えていた。残念ながら下着はこれまでと同じ質素な木綿製のものだったが、化粧も入念に施した。若い頃のドレスを纏った姿は王都を主人に連れ歩かれる愛人としてなら、まずまずの得点を獲得できそうだった。バウマイスター伯爵は年増好き、との噂が立つのは避けられないかもしれなかったが。
「(王都に知り合いは殆どいない筈だけれど、ヴェル君と公然と連れ立って歩いて大丈夫なのかしら?)」
疑問はすぐに解消した。
「はい、アマーリエ義姉さん。この指輪をつけてください。変装用の魔道具ですよ。」
ヴェルが指輪を差し出す。アマーリエがそっと手を差し出すと、ヴェルがそっと指に嵌めてくれた。アマーリエの風貌が別人の顔に変わる。ヴェルも同じような指輪を装着した。
「大物貴族たちがお忍びで出かける時に使う変装用の魔道具です、元の顔をベースに変更するので誰かと同じ顔になる事はありません。」
「なんて凄い魔道具」
「はぐれないように、俺の変装した顔を覚えておいてくださいね。」
相手を見失わないように互いの顔を確認し合う。ヴェルはそのままか少し年上の、アマーリエは少し年下の、結婚を控えた2人のカップルが街歩きに出たようなそんな雰囲気になっていた。まだ雰囲気も相まってアマーリエが年上に見えるが、せいぜい2歳か3歳の違いに収まっていた。貴族同士の結婚で、この若さでこれくらいの年齢差なら、よくある関係に収まっている。
「良かった、これなら用意した衣装も若作りした事にならなくて」
アマーリエが本心を漏らす。
「アマーリエ義姉さんはどんな格好をしても素敵です。とても若作りしている風になんて見えないですよ」
ヴェルが耳元で囁く。本心なのかお愛想なのか、ヴェルのアマーリエに対する評価が甘すぎるだけではないのか。それでもヴェルの言葉にアマーリエはすっかりその気にさせられる。
「早く王都に行きたいわ」
知り合いに見られたらどうしよう、恥ずかしくて死んでしまうのではないか。そんな最後の懸念が無くなって、アマーリエは直裁に希望を述べる。
「分かりました、では向かいましょうか。」
ヴェルに差し出されて腕を組むと、ヴェルがすかさず瞬間転移の魔法を発動する。そこはもう王都の高級店の並ぶ大通りだった。
「うわぁ。」
思わず少女のようにクルクルと回って辺りを見渡すアマーリエの身体をヴェルが受け止める。行き交う通行人からはクスクスと笑われていた。きっと地方から来たばかりのお上りさんのカップルに見えているのだろう。まぁ、ちょっと年齢差があるだけで実際に概ねその通りなのだが。
「凄い、これが王都なのね。初めて見た。」
変装姿に自信を深めたアマーリエは無邪気にはしゃいで見せた。誰も自分の顔を知らないなら、多少騒いでも怖くはない。何よりヴェルが横にいてくれる安心感があった。憧れの王都を前にして、日常からの解放を実感していた。
「さ、入りましょう」
ヴェルが目の前の大店の豪華な扉を開けた。それまでは背景にしか見えてなかったアマーリエは、そんな高級店に入るのかと緊張する。ヴェルに掴まって恐る恐るドアをくぐると、ずらりと従業員が出迎える。
「バウマイスター伯爵です。少し見せてもらいますね。」ヴェル君はすっと指輪を外して、素顔を見せる。客の正体に従業員一同の頭が深く下げられる。女連れの大貴族は、きっと良い顧客になるのだろう。
「どうぞ、こちらへ」
女性従業員に誘われて2人は店の奥に向かう。店の奥には貴族を出迎える特別室がいくつも備えられていて、その一つに案内された。
「ここは下着で有名なお店なんです。それでは彼女に似合う下着を幾つも見繕って持ってきて貰えますか。」
ヴェルが従業員に声をかける。従業員が特別室を去った頃合いを見計らって、アマーリエは抗議する。
「ヴェル君酷い、最初に下着のお店に連れてくるなんて。」
「大丈夫。ドレスのお店にはこの後行きます。でもドレスの試着をする時は下着姿になります。だから先に素敵な下着を選ぶ方が良いですよね。」
ヴェルの言葉にアマーリエは深く納得した。絹のドレスを着る時に.木綿の下着姿では確かにいたたまれないだろう。落ち着いてドレスを選ぶどころの騒ぎではない。
「そうなのね、ありがとう。」
アマーリエは素直に感謝の言葉を口にする。扉をノックして入室を許可された後、女性従業員達によって大量の下着が運び込まれた。全て彩り鮮やかな絹製品で、サイズも目測でアマーリエのサイズに近いものばかり。その量に圧倒される。種類だけで100や200は超えている。所狭しと並べられた下着の山、ヴェルが好みのものとそうでないものを選り分けている、好みから外れたものは即座に下げられ、ヴェルの好みを把握した店員によって新たな下着の山が運び込まれる。
「素敵…」
アマーリエは思わず引き込まれた下着を何点か手に取る。これはどうしよう。選びきれない。幾つ買って良いのだろう。履いて試す事は出来るのだろうか。思い悩むアマーリエの姿にヴェルがそっと声をかける。
「今日はここにある下着を、全部買っても大丈夫。」
「ええっ、でも…」
自信に満ちたヴェルの顔を見てアマーリエは思い出す。ヴェルは魔法の袋を持っているのだ。きっとこれくらい持ち帰るのは造作のない事なのだろう。そして信じられない程のお金持ちでもある。
「いいの、かな。」
笑顔でうなづき返すヴェルに元気付けられる。
「あちらの試着室で、お試し頂けます。ご試着される下着は、この上からお付けください。こちらは差し上げます。」
女性従業員からは小さな薄手の絹の下着を手渡される。そして女性従業員に促されまま、アマーリエは気に入った下着を掴んで試着室のカーテンの先へ向かった。
「どう、似合う、かな。」
下着姿でカーテンを開ける。やはりアマーリエは直接ヴェルの反応を確かめたかった。『あてがい女』は主様の趣味に合わせた下着を身につけるべきだろう。それには直接見てもらうのが1番。変装の魔道具で顔を変えている事も、アマーリエの行動を大胆にしていた。
「もし、好みじゃなかったら、教えて」
意識して同年代のカップルの会話に聞こえるよう心掛ける。アマーリエの下着姿を見たヴェルの反応はバッチリだった。大きく股間を膨らませているし、何より目が釘付けなのだ。何かの気配を察した女性従業員がそそくさと部屋を去る。
「とても素敵ですよ」
下着姿のアマーリエはヴェルに抱きしめられ、囁きかけられる。
「凄く、したくなりました」
「ここではダメよ、お店に迷惑がかかるわ。」
アマーリエは優しくヴェルを押し留める。ヴェルが落ち着くまで、アマーリエは優しくヴェルを抱きしめて背中を撫で続けた。
「はい、そうですね、我慢しましょう。」
ようやく離れたヴェルはアマーリエに笑みを見せる。アマーリエもヴェルと同じ気持ちだった。でもバウマイスター伯爵と明かして入店した以上、ここでの行為はヴェルの評判に繋がる。それは2人とも分かっていた。分かっているから我慢をする、互いに交わす視線の中に、この少し切ない思いが込められていた。
「下着、早く選んでしまいましょう。」
「そうですね。」
2人でヴェルの好みの下着を選んでは、とっかえひっかえ試着を繰り返す。なんとか数を絞り込むとそれでも30点ほどになった。外に控えていた女性従業員を呼び込む。
「こちらを買います。贈り物なので包んでください。彼女が今身につけているものはそのまま着て帰っても大丈夫かな?
あ、後、試着した下着でもし汚したものがあればそれを買い取ります。」
「(もう、ウェル君なんて事をいうのっ。それじゃ私が我慢できないどアソコを濡らしたはしたない女みたいじゃない。)」
実際の所、アマーリエの秘所はグショグショに濡れているから間違ってはいないのだが、最初に渡された薄手の下着が漏れを防いでいるので、商品への被害はない筈だった。それに試着した下着は、ほぼ買う方に入っている。
女性従業員は手早く商品を確認し、商品に問題ない事を告げる。
「それではお包みしますね」
そう言って商品は全て持ち去られる。アマーリエはそそくさと試着室に戻り、ドレスを着ようとした。その油断したタイミングでヴェルに背後から抱き止められる。
「ひゃっ」
すっかり油断したアマーリエは、変な声を漏らした。お尻のあたりにヴェルの怒張した男性器が押し付けられている。
「今はダメよ。」
「分かっています。」
従業員の控えめなノックを合図にヴェルはそっと離れた。きっとヴェルなりに下着姿の評価を伝えていたのだろう。ドレスを身につけながら、アマーリエは考えていた。
「(今日も間違いなく、抱かれるんだわヴェル君に。)」
アマーリエにその気があるか、答えはもちろんイエスだった。『あてがい女』にはそもそも拒否権などない。それでもああいった態度でヴェルに予告されるとドギマギした。
試着室を出ると、ヴェルが丁度支払いを済ませている所だった。積み上げられた金貨の山が明らかに請求額より多い。きっと口止め料が含まれているのだろう。上客と判断されたら、大抵の事は多めに見られるに違いない。
「もしお連れ様とお時間をお過ごしになられたい場合は、2人にして欲しいと、そうお申し付けくださいませ。」
女性従業員の言葉にアマーリエは思わず赤面する。やはりそういう関係に見られていたのだ。当然ではあるものの、見ず知らずの第三者にそう見られるのは、やはりとても恥ずかしい。
「今日はなんとか大丈夫、でも次に来たらそうさせてもらおうかな。」
ヴェルはにこやかに返すと、魔法の袋に下着を仕舞ってゆく。魔法の袋があるが故に、窃盗をしていないし、商品を触ったら必ず多めの金額を支払って買うようにしているのだろう。
商売は信用が大事で、きっぷよく支払うとなれば大抵の事は問題とされない。
「(次に下着を買いに来たら、私はここで抵抗できずにヴェル君に抱かれてしまうのかしら)」
「さ、次はドレスを買いに行きましょう。」
ヴェルに差し出された手を取ると、アマーリエは導かれるままに店を出る。ヴェルも変装の魔道具を装着し、再び2人は街歩きのカップルの風情となる。
「変装した顔で下着をお見せして、大丈夫だったかしら?」
隣を歩くヴェルの耳に囁きかける。
「アマーリエ義姉さんの顔はわかっています。ちゃんと似合うかどうか判断できているから大丈夫。」
囁き返すヴェルの言葉にアマーリエは安堵する。ドレスの店はすぐに到着した。ヴェルとの会話と王都の街歩きが楽しくて、行程が一瞬に感じられたのかもしれなかった。
「さ、ここではドレスを選びます。大丈夫、王都でも指折りの一流の店ですよ。」
「(それはむしろ緊張させられるわ)」
ドギマギしながらアマーリエはヴェルと腕組みをしたまま入店する。今度のお店でも、ヴェルが素顔を晒して身分を明かすと速やかに特別室へと通された。
ただ下着の店と違って、ヴェルはドレス姿にあまり関心がないようだった。
「服選びはお任せします、好きなだけ買ってください。」
ヴェルのその発言の後は、上客が来たと判断した女性従業員によりアマーリエは着せ替え人形とされた。ちょっと良い普段使い、街歩きに使える衣装。礼服。着る機会があるかわからない夜会用のドレス。そして夜の性生活を彩る鮮やかな高級ドレスに艶やかな絹の薄物のガウン。5点位で済ませるつもりがドンドン追加され、10点でも収まらず、15点を超える買い物になった。
「足りなくなったらまたすぐ買い物に来ましょう。この後ちょっと街を歩きましょう、お出かけ用の格好に着替えてくださいね」
ヴェルに試着室に送り込まれると、背後で会計を指示するヴェルの声がかすかに聞こえた。アマーリエが着替える間に支払いを済ませてくれるつもりなのだろう。
アマーリエが着替えて外に出ると、買ったドレスはもう全てしまわれてヴェルがそこに立って待っているだけだった。アマーリエに手を差し出して、それまで来ていた娘時代のドレスを魔法の袋に仕舞い込む。
「あんなに良いドレスばかり買って頂きましたから、もう古いドレスは捨てた方が良いのかもしれないけれど、思い出の品なの。」
「バウマイスター騎士爵領への嫁入りの時、あのドレスを着ていましたよね。」
「ヴェル君、覚えていてくれたなんて。」
「まだ子供でしたけれど、初めて凄く綺麗だなって思った女性を目撃した瞬間だから忘れられませんよ。」
サラッと話すヴェルの言葉に、アマーリエの胸はときめく。幼い頃の憧憬の想い、まだそれがヴェルの中にあるなら、初めて見た綺麗な姿がヴェルの心の中にずっとあるのなら、ヴェルとのこの関係は信じられるとアマーリエには思えた。
「さ、王都を見物しましょう」
差し出されたヴェルの腕に、アマーリエは喜んでしがみついた。
高級なレストランでの豪華な昼食を終え、ほろ酔い気分の2人はヴェルの導くままに、王都を見下ろす高台に備え付けられた陸橋の上に辿り着いた。
背後では貨物を満載した馬車が行き交っているが、昼間は橋を渡る人はまばらで、足を止めて景色を楽しむ人も多い。
「綺麗だわ」
眼下に見下ろす人の流れ。遠くを見ると立派な家の連なりに、教会の尖塔や遠くに王城と城壁が見えた。
「王都は楽しいですか?」
「はい、とっても。」
アマーリエはヴェルの問いかけに心からの笑顔を返した。
「アマーリエ義姉さん、ここで」
「?」
アマーリエはヴェルが何を要求しているのか分からなかった。ヴェルがアマーリエの腕を掴む。
「アマーリエ義姉さん、もう我慢できない、ここでしましょう」
「この橋の上で!?」
ヴェルはアマーリエの腕を掴むと飛翔魔法を発動して橋から飛び上がった。下に道が通っている陸橋は、道との間に幾つか構造物があった。橋のアーチと、橋の下だけ下の道を覆うように作られた天井。その天井の上は橋の下からも橋の上からも見る事ができない。空を飛ぶか梯子をかけないと入り込めない空間だった。
よく風が吹き抜けるからだろうか。石造りの天井はそんなに埃も溜まっておらず綺麗だった。石造りの道路のようなものだった。
「こんな所、よく知っているのね」
「空を飛べると色んなところに目が行くものなんですよ」
ヴェルに促されてアマーリエは外から容易に中を見れない橋の影に移動した。上からも下からも隠されていて、真横の空中に空を飛ぶ人が現れない限り見られる心配のない場所。
ヴェルが魔法の袋から蓋付きの籠を取り出す。2人は無言で服を脱ぐ。『あてがい女』は主様の命じるままにする他ない。
直射日光に照らされていないとはいえ、そこは完全な外だった。靴を除いて外気に素っ裸を晒した経験などアマーリエにはもちろんない。心細く震えていると、アマーリエの身体をヴェルの熱い身体が抱きしめた。
そのまま2人は向き合って熱い口づけを交わす。この場所は陸橋を通過する場所の振動、王都の喧騒が伝わってくる。でも誰かに覗かれる心配の少ない特別の場所。
イキリたったヴェルの男性器が、アマーリエの腹に強く押し付けられていた。
「よく見せて」
ヴェルに促されてアマーリエが身体を開く。女性器を覗き込むように、ヴェルがアマーリエの目の前でしゃがみ込む。初めて秘所をヴェルに晒したのは夜のランプの灯りの下だった。午後の太陽の下で愛し合った事はあったけれど、こんな風にマジマジと秘所を観察される事はなかった。
「恥ずかしいわ」
いやいや、という風にアマーリエは首を振る。まだ変装の魔道具を装着しているので、その容貌は年齢より若く、ヴェルとそう変わらない年代に見えるままだ。
「大丈夫」
短くヴェルが言うと、そっとアマーリエの秘所に唇で触れた。アマーリエの身体を刺激が貫いた。『あてがい女』は奉仕する存在、そう信じていたからこそ、女性器の愛撫の仕方をヴェルには教えてこなかった。実際、貴族社会においては女性器を男性が愛撫する習慣は薄い。女性が男性に奉仕するもの、その考えが根深い為だ。女性器の中で男性器を発射させれば良い、その為には男性器への奉仕だけが重視されていた。
でもヴェルは躊躇なくアマーリエの女性器に唇で触れる、そのまま舌先で愛撫する。アマーリエの外に突き出した敏感な箇所が、ヴェルの舌先で転がされる。1人で夫を迎え入れる時に指で触って準備していた箇所。そこを初めて心から好きな異性に愛撫されて、アマーリエの身体がドンドン開いていく。愛液が滴り落ちる。ヴェルの身体を汚していないだろうか。いつもなら頭の片隅でアマーリエは色々と考えている。
でもこんな外で、初めて女性器を口で愛撫されている中でもう何も余計な事は考えられなかった。
「いや、いや、いっちゃう。」
官能の波に攫われアマーリエが絶頂する。足がガクガクして立っていられない。石段にへたり込みそうになるアマーリエの腕を支えて、ヴェルがアマーリエを抱える。
「アマーリエ義姉さん、今日もよく濡れていて嬉しいな。さあ、身体にしっかりしがみついてください。」
こんな細い身体のどこにそんな力があったんだろう。アマーリエが思わずそう感じたほどにヴェルが力強くアマーリエの身体を抱き抱え、アマーリエの足を開いたまま持ち上げる。アマーリエの両腕がヴェルの頭の後ろで組まれていることを確認すると、ゆっくりとアマーリエの身体の中心をヴェルのそそり立つ男性器に下ろしていく。
「(女性を抱え上げてする、こんな体位があるなんて)」
思いもよらぬヴェルの性知識の豊富さに舌を巻きつつ、アマーリエの身体はヴェルの男性器に貫かれた。
「きゃぁ」
思わぬ刺激に悲鳴が上がる。待ち望んでいたヴェルの身体。でもこんな風に外で、こんな風に裸で、ヴェル君に抱えられてちょっと乱暴に交わるなんて信じられない。
ヴァルの身体も、アマーリエの興奮に当てられていた。女性を抱え上げて立って挿入する事を思いついたのも、下着選びから昂められてきた欲望の溢れた結果だった。こんなアクロバティックな体位は初めてだったが、魔法による身体強化の可能な今世では実現できた。
いつもより熱いアマーリエの膣内。挿入を果たしたヴェルの男性器はアマーリエの女性器内で暴れ回った。抽送を繰り返すヴェルの腰、アマーリエは抵抗もできずただ犯されるまま感じていた。元々絶頂した直後でもあり、アマーリエの身体は感じやすいままだった。そこに乱暴なヴェルの男性器が暴れるたび、アマーリエは何度も何度も絶頂に導かれた。
今日はもうアマーリエにはアヘ顔を隠す余裕もない。全てをヴェルに曝け出して、されるがままに犯されていた。
「あ、あ、あん」
リズミカルにアマーリエの嬌声が響く。石畳や場所の騒音にかき消されていても、もしかしたら声は下の通りまで聞こえているかもしれなかった。それでも誰も気に留める素振りがないのは、ここが人で溢れる王都だからだろう。辺りを見渡して声の主がそこにいなければ、それ以上気に留めたりしないものなのだ。
ヴェルも色々限界だった。ただでさえアマーリエの気持ちが昂っていて、アマーリエの膣の締め付けがキツいのだ。ヴェルの男性器も興奮しきっている。いつもよりちょっと大きくなっいる気さえする。
それでもまだヴェルが絶頂に達していないのは、アマーリエの秘所が濡れすぎていて摩擦がスムーズなのと、いつもより力ずくで刺激が強すぎるという理由が強い。それに何度か結合が外れているので、達しそうになるたびに醒まされる事も続いていた。アマーリエが絶頂を繰り返す度に、2人の誤差が収束していく。
全力でヴェルの男性器を咥えにかかるアマーリエの女性器に、ついに暴れていたヴェルの男性器が屈する。
「アマーリエ義姉さん、出ます、出ます。」
「うん、うん、ヴェル君来て、いっぱい出して」
ギュッとしがみつくアマーリエの膣に、ヴェルは一滴も余さず精子を注ぎ込んだ。数回腰を動かして、精子を出し切ったと確信すると、いつのまにか腰に回されたアマーリエの足を開かせて、石段に立たせる。
アマーリエが両足を開いて立つと、膣から溢れたヴェルの精子とアマーリエの愛液の混合液が床に絞り出された。
ふらつくアマーリエを片手で支えると、ヴェルは敏感になったアマーリエの乳首に舌を這わせた。ただでさえ絶頂に達して立てていないアマーリエは、更なる刺激に身を震わせる。
ようやく身体の動きを取り戻したアマーリエは、ヴェルの両肩にしがみついてしっかりと立ち上がった。
「お願いよヴェル君、下着を取って欲しいの。そうしたら、この後はベッドで楽しみましょう。」
アマーリエの言葉に、ヴェルは頷く。アマーリエに下着を履かせ、服の入った籠を魔法の袋にしまいこむと、瞬間移動で裸のままの2人は小屋に戻った。そして天蓋つきのベッドに倒れ込み濃厚なキスを交わす。
アマーリエもヴェルも汚れたままの身体をしている。でもヴェルはそんな事気にならないようだった。ヴェルが気にしない、ならばヴェルの『あてがい女』のアマーリエも気にしない。アマーリエの秘所から溢れ出した精子と愛液が、真新しい絹の下着を汚していく。でもそんな事はもう2人は気にならなかった。
「ヴェル君、もう我慢できない。脱がせて欲しいの」
アマーリエは変装の魔道具を取り外し、自分の顔を取り戻すとクネクネと身をよじりながら甘くおねだりした。ヴェルの男性器はすっかり硬さを取り戻し、テラテラと濡れた先端が光を反射していた。
ヴェルはコクリと頷くと、アマーリエの下着を優しく抜き取った。そして下着を裏返す。パンティーの底には、ベッタリと2人の愛液が付着していた。
「ほら、アマーリエ義姉さん。凄い事になってます。」
ヴェルが見せようとするのを、アマーリエは抗う。いくら『あてがい女』と言っても、慎み深く育てられたアマーリエにも限界があった。
「早く入れて、挿入してください。」
涙目になりながら懇願する可愛いらしい仕草のアマーリエ。その姿にヴェルの心は鷲掴みになった。興奮も隠さずアマーリエに覆い被さり、興奮も隠さず一気に挿入を果たす。
待ち望んだヴェルの男性器を迎え、アマーリエの身体を歓喜が貫いた。ベッドの上では思う様乱れられる、ヴェルを受け入れられる。
ベッドをのたうちまわるアマーリエの身体は、その中心をヴェルの男性器に貫かれている。顎を上げて感じているアマーリエの、無防備になった乳首にヴェルは吸い付いた。腰を軽く動かしながら、アマーリエの乳首への愛撫を繰り返す。
組み敷かれたまま大暴れするアマーリエに、一度発射済みとはいえヴェルは耐えられなかった。アマーリエの女性器が思いもかけない動きでヴェルの男性器を揺さぶり、咥え込み、離さないのだ。アマーリエの内部に轟を感じながら、ヴェルは絶頂が近い事を感じた。
「アマーリエ義姉さん、もうダメ、もうダメだから。イク、イクよ。」
悲鳴を上げるヴェルの声が聞こえているのか聞こえていないのか、もう何度も絶頂していたアマーリエがヴェルと同時に絶頂して身体を痙攣させた。
2人とも身体を投げ出し、もう余裕などなかった。ヴェルもアマーリエも、挿入したままで寝入ってしまった。
ヴェルが目を覚ました時。アマーリエは既に起きていた。ヴェルの男性器も綺麗に拭き取られて綺麗になっている。
「(またアマーリエ義姉さんは口で綺麗にしてくれたんだろうか)」
そう考えるとウェルの男性器が硬くなる。
「主様、今日もいっぱいいかされてしまいましたわ。」
ヴェルの目覚めに気がついたアマーリエが声をかける。
「あんな体位は初めてだったの、驚いたわ」
アマーリエはそう言いながら、ヴェルの身体の上にしなだれかかった。
「『あてがい女』がもう教える事がないのだもの、私はもうお払い箱かしら」
どうしても気になっていた事を口にしてしまう。
「そんな事は無いですよ、アマーリエ義姉さん。今日も最高でした。また明日来ますからよろしくお願いします。」
屈託のないヴェルの返事。明日も抱くとの予告。ヴェルを試したと自覚しながら、アマーリエはヴェルの返事に心を躍らせた。
「アマーリエ義姉さん、この小屋って一応風呂があるんですね」
「そうなの、でも水汲みが大変だから、身体を洗う場所としてしか使ってないわ」
「浴槽が狭いし、汚い……分かりました。次は風呂をなんとかしましょう。買った衣類を収納する箪笥も必要ですね」
「そんなにしてもらって、いいのかしら。」
「俺はアマーリエ義姉さんと、何回も何回も連続で愛し合いたいから、ちゃんとした風呂を用意しましょう」
「……そう分かったわ、ありがとう」
感謝の言葉とともに与えられたアマーリエのキスを、ヴェルは喜んで受け入れた。
書いていていつもより長くなってしまいました。R-18である以上、濡れ場のない話を投稿しない方針ですので、ご容赦ください。
アマーリエの話をどれくらい続けられるか分からないのですが、自分の興奮するポイントみたいなものは押さえられているかと思うので、もう少し書き続けられると思います。