※この作品はR-18です。

アマーリエ義姉さん 〜あてがい女の手ほどき〜   作:時田士郎

30 / 61
外伝主人公 甥のカール(アマーリエ長男) ※寝取られ展開がありますのでご注意ください
【NTR・寝取られ展開注意】外伝4 甥っ子カールの『あてがい女』前編


クルト兄さんとアマーリエ義姉さんの間に生まれた2人の子供、カールとオスカーはアマーリエ義姉さんの実家の名前を受け継いでマインバッバの家名でバウマイスター伯爵家より開拓地の分与を受けた騎士爵家として独立する事になっている。カールが騎士爵家当主、オスカーが陪審筆頭の従士長になる予定だ。

 

その関係でヴェルの甥のカールとオスカーはマインバッバ家で養育されていたのだが、マインバッバ家は領地を隣接するブレンメ男爵家と諍いになった。カールの文通相手はブレンメ男爵家の令嬢イヴァンカ。彼女の告発によりブレンメ男爵家の陰謀が明らかになった。ブレンメ男爵家にとってイヴァンカの内部告発は裏切りにあたる。

 

カールは男気を見せて、ブレンメ男爵家に身の置き所のなくなったイヴァンカを自身の領地に引き取り妻にすると宣言した。無事、ブレンメ男爵家に引導を渡し領地の再編を行うと、残っているのはカールとイヴァンカの結婚の問題だけだった。

 

貴族同士の恋愛結婚というのは珍しい。そういう事例が無いではないが、幼馴染がそのまま親を通じて結婚を申込み合う関係が多い。カールとイヴァンカのように文通相手が紛争という劇的なプロセスを経て結ばれるという展開などなかなかあるものではない。カールの恋愛リア充ぶりは高く、恋愛小説好きのイーナも大満足する展開だった、筈だった。

 

「話があるの、ヴェル君」

 

アマーリエ義姉さんが何だか怒っていた。大事な息子を恋愛結婚という形で攫われたのだ。しかもアマーリエ義姉さんは俺と共に生活している。つまりカールの家庭にはアマーリエ義姉さんという姑が不在となる。現在は婚約者という形で暮らすカールとイヴァンカの熱愛ぶりは、カールの弟のオスカーが『一緒の家にいられません』と嘆く程だった。

 

「息子のカールに『あてがい女』を探して欲しいの。」

 

なるほどそうきたか。まさか結婚前にカールとイヴァンカに肉体関係はないだろうが、結婚式を上げたら、すぐにでも子作りに励むことになる。

 

となると正しい性知識の伝達が必要になる。アマーリエ義姉さんの頼みで甥のカールの『あてがい女』を探すのはやぶさかではない。クルト兄さん亡き今、領地を分与させ、カールの母親であるアマーリエ義姉さんに彼らにとって妹であるロジーナを産ませた俺が保護者といえるだろう。『あてがい女』を手配するのが俺と言われても不自然ではなかった。

 

「カールの為に『あてがい女』をつけたいというのは分かりました。誰かあてはありますか?」

 

アマーリエ義姉さんは首を横に振る。本来、『あてがい女』は夫側の親族が用意して結婚まで生活を共にさせる。今回のカールの例でいうと、カールは既に領地で婚約者であるイヴァンカと生活を共にしている。こうなると『あてがい女』選びが難しくなる。

 

まさに俺が婚約者のエリーゼ達の目を盗んで、パウル兄さんの領地でアマーリエ義姉さんと逢瀬を楽しんだようなものだ。過去は繰り返すとはこういう事か。

 

いずれにせよ、カールの為に『あてがい女』を探して欲しいというアマーリエ義姉さんの切実な願いは理解した。

 

エリーゼはじめ妻達を集めてこの件を相談するも返答は捗々しくなかった。マインバッバ騎士爵家はバウマイスター伯爵家とは別の家になる。俺の甥であり領地の分与先の話なので全くの無関係ではないものの、妻達からするとアマーリエ義姉さんの私事という範疇のようだった。

 

「ヴェンデリン様のお好きなようになさってください」というのがエリーゼの返答であり妻達の総意だった。確かに、アマーリエ義姉さんがエリーゼの実家のホーエンハイム子爵家の『あてがい女』探しに関わるかと言われたら、そんな必要はないだろう。

 

「どこかに良い人はいないかしら。」

 

アマーリエ義姉さんが嘆く。

 

「まだ少し日にちに猶予があるのなら、募集してみてはどうでしょう。」

 

エリーゼが知恵を出す。

 

「フリードリヒの家庭教師にも多数の応募がありました。バウマイスター辺境伯家の縁戚の家の当主のメイドとして、然るべき家柄の出自の未亡人を募集すると。そういう形であれば、こちらの希望に沿った相手が見つかるかもしれません。」

 

妙案だった。俺の知り合いにカールと釣り合いの取れそうな未亡人など全く見当たらない。

 

「エリーゼありがとう。なら、募集をかけてみよう。候補者がいたら、アマーリエ義姉さんと俺とで事情をちゃんと説明して『あてがい女』を引き受けてくれる人を決められると思う。」

 

「はい、ヴェンデリン様のお役に立てて良かったです。」

 

カールの『あてがい女』探しをエリーゼにも話し知恵を借りた上でパウルブルクで募集をした。そして家宰のローデリヒから『意外な人物が応募してきた』と知らされたのは、募集を開始して1週間ほど経った日の事だった。

 

「お館様、カール様の領地の女官の募集に意外な方からの応募がありました。」

 

ローデリヒからの連絡を受けた俺は、アマーリエ義姉さんを伴って館の応接室に通された候補者に会いに行った。彼女は自らの名をカルラ•フォン•プルークと名乗った。結婚前はブロワの姓を名乗っていた。かつては結婚相手としても強く意識した相手、カルラ嬢の姿がそこにあった。

 

「 カルラさん、どうしてここに?」

 

「私が夫と死別した未亡人だからですわ、バウマイスター辺境伯様」

 

アマーリエ義姉さんが物問いたげな視線を投げかける。そうか。カルラ嬢が当家の客人として滞在していたのは結婚前の事なので、アマーリエ義姉さんはカルラ嬢の事を知らないのだろう。

 

「カルラ様はブロワ辺境伯の御息女で、以前お館様と結婚のお話も出た間柄なのです。」

 

ローデリヒがアマーリエ義姉さんに説明をしている。

 

「まぁ」

 

アマーリエ義姉さんも驚いているようだ。

 

「いや、ブロワ辺境伯が俺との結婚話を口実にカルラさんを後継者問題で揉める家の外に逃したというか、カルラさんには元々意中の相手がいてその人と結婚したのですよ。」

 

そういうと俺が振られたみたいに聞こえるが、実際、カルラ嬢の事は前世での恋人に似ていると思い強く意識していた時期がある。カルラ嬢が俺に靡いていたら、喜んで妻の1人に迎え入れていた相手だった。

 

そういう意味では、俺の願いの叶わなかった相手ではある。フラれたと相手で間違いないだろう。あの時はエルがカルラさんに熱を上げていて、俺がフラれたのも間違いではないが、俺以上にエルがカルラさんにフラれた展開でもあった。

 

しかし今の彼女は、あの頃と比べて大きく変わってしまっていた。昔の楚々とした美少女の印象は薄れ、不健康に痩せた身体に見える。失礼ながら辺境伯家の娘として着飾っていた頃の面影はない。貧乏騎士爵家の娘としての体面を守れるかどうかも怪しい身なりだった。髪や顔立ちにも生活の苦しさが現れていた、パウルブルクの街ですれ違っても、きっとカルラ嬢だとは気がつかなかっただろう。

 

「拙者がいては言いにくい話もあるかと存じますので、一旦席を外させて頂きます。」

 

そう言ってローデリヒが席を外す。ローデリヒが立ち去った後、俺はカルラ嬢に何が起きたのか質問をした。

 

「カルラさん、確か武術大会の弓の部で優勝して、西部のホールミア辺境伯家の弓術指南の一人に取り立てられたとカミルいう青年と結婚すると話していましたね。」

 

「はい。」

 

カルラさんはカミルを連れて挨拶に来た。その時にブロワ辺境伯家の籍を抜け、母親の騎士爵家からも離れてカミルの妻として生きていくと決意を語っていたはずだ。それがどうして未亡人になってしまったのだろうか。

 

カルラ嬢の話はこうだった。カミルとの結婚生活は幸福な物だったらしい。当初は西部のホールミア辺境伯家で幸せに暮らしていたらしい。

 

しかし弓術師範の椅子を巡って家中で争いが起きた。腕自慢で乗り込んできた新参者のカミルがやっかみにあってあの手この手で足を引っ張られたらしい。弓術師範として相手を黙らせるだけの実力はあるので当初は対処出来ていたそうなのだが。

 

「私が目をつけられてしまったのです」

 

実はホールミア辺境伯は色好みだったらしい。新規に召し抱えた弓術師範の美しい妻がブロワ辺境伯の娘と知ると、俄然興味を示しカルラさんを自身の愛人として差し出すようカミルに迫ったらしい。

 

カミルをやっかんだ同僚が、ホールミア辺境伯にカルラさんの美貌を吹き込んだのがきっかけになったようだった。

 

カミルはカルラさんを連れて逃げる決意をしたそうだが、西部の辺境から逃げ出すのは容易ではなかったらしい。そして『夫の立身出世の為なら』とカルラさんもホールミア辺境伯の愛人になる事を一度は承諾したそうだ。

 

「まあ、そんな酷いこと」

 

アマーリエ義姉さんはショックを受けた様子だった。ただ陪臣の地位は高いようで余り高くない。辺境伯ほどの大貴族となると横暴に振る舞う者も多い。新参の家臣の若く美しい妻というのは、確かに大貴族の当主に目をつけられても不思議ではないのかも知れなかった。

 

「その後、これまではホールミア辺境伯の愛人として過ごしておりました。ずっと夫の元にも帰れずで。」

 

そして気がついたらカルラ嬢を差し出した事で、家中で居場所をなくしたカミルが自殺をしていたらしい。しかしこれは、自殺に見せかけて弓術師範の地位を狙って殺害された疑惑が深いようだった。

 

「夫との間に子供はありませんでした。せめて息子がいれば弓術師範の家を残すことも出来たのかもしれないのですが」

 

夫の死と共に愛人としてのカルラさんも用済みとなったらしい。血筋と家臣の妻という事で興味本位で手を出されただけのようだった。さして執着される対象ではなかったのだろうという。

 

弓術師範の地位を餌に、また新たな犠牲者を探すのが目的ではないかとの事だった。それで散々弄んだカルラさんは放り出されたらしい。

 

「ブロワ辺境伯家の籍は抜けた立場の私です。行くあてもなく、有り金をはたいてパウルブルクに参りました。」

 

ブロワ辺境伯の娘として認知されたのは、当時はバウマイスター伯爵であった俺との婚姻話が持ち上がってからだった。つまりカルラ嬢が辺境伯の娘として振る舞った事があるのはバウルブルクでの短い時間だけだったらしい。今ではそれは良き思い出のなっているそうだ。新婚前に最後に立ち寄った思い出の地でもある。バウルブルクで人生をやり直したかったそうだ。

 

そんな折、カールの『あてがい女』の求人を見かけたとの話だった。

 

「夫も生前、『もし自分に何かあればバウマイスター伯爵を頼るように』と。」

 

涙脆いアマーリエ義姉さんは、俺の横でハンカチでしきりに目元を押さえていた。苦労の跡が生々しいカルラ嬢の話に聞き入って同情してしまったのだろう。俺も同じ気持ちだった。カルラ嬢の力になってあげたいと思う。

 

しかし、カルラ嬢はこの仕事の中身を理解しているのだろうか?

 

「カルラさん、事情は分かりました。俺としても貴方は大歓迎です。ぜひ働いて欲しいと思っています。ただ、その前にこの仕事についてよく説明させてください。その上で、別の仕事を希望されるなら、バウマイスター辺境伯家で別の仕事を考えます。」

 

そして俺は一から順に説明した。今回の募集はマインバッハ騎士爵家を新たに立てる甥のカールの世話をする女性限定の仕事である事。カールが婚約者のイヴァンカとの結婚を控えている事。カールの母親で未亡人だったアマーリエ義姉さんが俺の性の手ほどきを行う『あてがい女』となり、そのまま愛人を続けて俺が娘を産ませた事。今回の募集はカールに性の手ほどきをするメイド兼妾の『あてがい女』の募集である事。全てをきちんと説明し終えた。

 

「私にその仕事をさせてください、お願いします。」

 

カルラ嬢は即答だった。俺としてはカルラ嬢は俺が面倒を見ても良い気がしたのだが、やはりエルとの関係が難しくなるだろうか。俺の視線に気がついたのだろう、カルラ嬢が理由を語る。

 

「私はバウマイスター伯爵との結婚をお断りした身です。今更、私がバウマイスター辺境伯のお世話になろうだなんて虫が良すぎます。それに私はこの数年間、子供を授かる事がありませんでした。だからこそ、身を粉にして若様のお世話をする係をやってみたいのです。」

 

ホールミア辺境伯の愛人を務めた経験が活かせるとしたらこの仕事しか考えられない、とカルラ嬢は言い切った。確かに辺ホールミア境伯の愛人を強要されたカルラ嬢の経歴だと、今後はまともな結婚は難しいだろう。

 

もう貴族には相手にされないだろうし、庶民で良い相手がいても良くて金持ちの愛人、正妻として求められる相手の場合、悪くすればまた目上の立場に妻を差し出さざるを得ない弱い立場の人である可能性が高い。今更、エルの愛人になるのも現実的ではない。エルは喜びそうだが、エルの家庭が揉めるのは必至だろう。

 

この仕事をするとなると勤務地がバウルブルクでないのも好都合らしい。弓の腕を振るえるし、エルはもちろんエリーゼやイーナやルイーゼといった知り合いとも顔を合わせにくいだろう。

 

「アマーリエ義姉さん、どう思いますか?」

 

俺としてはカルラ嬢で文句はない、というか籍は抜けたとはいえ辺境伯家の娘だったのだ。騎士爵家の陪臣にするには惜しい人材と言える。アマーリエ義姉さんが断れば、無理を言ってでも俺が引き取りたい相手だった。

 

「ヴェル君が良ければ、私はぜひお願いしたいわ」

 

良かった。アマーリエ義姉さんも同じ気持ちだったようだ。

 

「あの、お引き受けするにあたり、一つお願いがあります。」

 

「何でしょう。」

 

「準備に、時間とお金を頂きたいのです」

 

「そんな事でしたら」

 

元々、支度金は渡すつもりだったし、カルラ嬢はやつれすぎている。正直、昔をよく知る俺だから会話をしているが、普通の貴族家なら門前払いをしても不思議ではない。今の彼女の裏ぶれた姿を見て、カールが性的にその気になるか疑問だった。

 

「アマーリエ義姉さんにカルラさんの面倒をお願いします。少し時間をかけてのんびりしてください。カルラさんが回復して準備が整ったら、カールと引き合わせましょう。後の説明はアマーリエ義姉さんに聞いてください。」

 

カルラ嬢はなおも何か口にした気だったが、せっかくまとまった話を壊したくない俺は半ば強引に話を打ち切った。後はアマーリエ義姉さんに任せるほかないという思いもある。本来、カールのマインバッハ家はアマーリエ義姉さんが当主のような立場だ。細かい指示はアマーリエ義姉さんが出すのが良いだろう。

 

ローデリヒを呼び戻すと、バウルブルクで1番の宿にカルラ嬢の宿泊先を用意するように告げる。もちろん支払いは当家で行う。

 

「俺の愛人と噂になるといけないから、ちゃんとカールの教育係として採用予定の貴族階層の女性と説明しておいてくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

カルラ嬢はブロワ辺境伯家の籍は抜けているが、母朝の実家である騎士爵家の籍は抜いていない。既に嫁いだので余り重要ではないかもしれないが、下級貴族出身としておくのが通りが良いし、この場合はカルラ嬢の出自として実情に最も近いだろう。

 

もし俺の妻になってくれるのなら、ブロワ辺境伯に掛け合って籍を復活させた上で改めて婚姻関係を結ぶ事が出来るのかもしれない。しかし流石の俺も、傷心のカルラ嬢を今はそっとしておくべき事は理解していた。今後の事は時間をかけて解決していくしかないだろう。

 

過去に俺ではなくカミルの妻を選んだのだ。そんなカルラ嬢にしては、過去の選択を悔いるような生き方は出来ないのだろうとも思った。

 

「(ま、誇り高いカルラ嬢にしては俺を頼ってくれただけ信頼はされているのかもな)」

 

恐らく彼女が述懐したようにバウルブルクでの生活は楽しかったのだろう。結婚する前の輝かしくも短い青春の一時だったに違いなかった。

 

「(俺もまだ結婚前だったし)」

 

カルラ嬢にとって、信頼できる貴族の知己は家族以外では俺たちしかいないのかもしれなかった。

 

カルラ嬢への支度金はアマーリエ義姉さんに預けた。立場的にアマーリエ義姉さんを通じて支払う方が良いと考えたのだ。

 

後は折を見てと考えていたある日、アマーリエ義姉さんを通じてカルラ嬢から連絡が入った。

 

 

 

「あの、このホテルを引き払いたいのですが」

 

意外な申し出だった。

 

「何もせずにホテルにいるのがなんだか申し訳なくって。」

 

危惧していたように、やはりバウルブルクではバウマイスター辺境伯の新たな花嫁候補や愛人候補と見られるらしい。実態があるのならまだしも、実態がないとなると誇り高いカルラ嬢には苦痛なようだった。

 

確かに何もせずに高級ホテルに籠っているだけだと、雇用予定の相手とはいえ愛人疑惑も出てしまうだろう。

 

苦労してやつれていたカルラ嬢の細く鋭かった輪郭は、やや丸みを回復しつつあった。前回会った時よりもずっと魅力的に見える。

 

俺は容姿よりもカルラ嬢個人として識別していたので特に違和感はないが、何も知らない女性として見た場合、前回よりも今回のカルラ嬢が好ましいと思う。

 

自分で言うのもなんだが、カルラ嬢はバウマイスター辺境伯の愛人に相応しい容姿へ急速に回復しつつあった。

 

アマーリエ義姉さんとは定期的に会って、カールの事や領地の事などやり取りをしていたらしい。身の回りの品も買い揃えたようだった。ただ出歩く事でデメリットもあったようだ。

 

「私が以前、バウルブルクにブロワ辺境伯の娘として滞在していたのを気づく人もいるようで」

 

確かに目端のきく商人なら、バウルブルクを訪れる貴族の顔は記憶していておかしくない。バウマイスター伯爵と結婚の噂のあったカルラ嬢は、やつれた容姿の時は見破る人は少なかった筈だが、容姿が以前に戻りつつある今なら正体に気が付かれても不思議ではないだろう。

 

「それで考えたのだけれど、ヴェル君、パウル様の領地にある私の小屋をカルラさんに使って頂くのはどうかしら?」

 

それは妙案だった。俺がアマーリエ義姉さんとの逢瀬を楽しんだ小屋は今でもアマーリエ義姉さんの物として保存されている。今となってはアマーリエ義姉さんの物置に近い扱いだったが、色々手を入れた関係で他の人には使いづらい建物だった。というか俺もアマーリエ義姉さんも誰か別の人間を住ませる気にはなれなかったのだ。

 

パウル兄さんからは正式に譲って貰っているので、アマーリエ義姉さんが自由に使えるようになっていた。とはいえ距離はそれなりにあるので瞬間移動が使える俺と一緒でないとそうそう簡単に使える場所ではないのだが。

 

アマーリエ義姉さんはパウル兄さんの領地で暮らしていた時期があるので、カルラ嬢を連れてあの小屋に行っても不自然さはない。むしろカルラ嬢が生活するのにうってつけの場所と言えた。

 

「なるほど、カールに『あてがい女』をね。あいつももうそんな年齢になったのか。」

 

魔道通信機で連絡を取ると、パウル兄さんはすぐに事情を飲み込んでくれた。カールとオスカーはパウル兄さんの元にいた事がある。正確には一緒に暮らす俺の父上の元で養育された時期がある。カールとオスカーにとって父方の祖父の家なので、カールを連れてくる事に違和感はないだろう。

 

カルラ嬢とアマーリエ義姉さんに問題ないことを報告する。

 

「それでは今から向かいましょうか。」

 

カルラ嬢の荷物と共に瞬間移動で小屋に飛ぶ。少し驚いているカルラさんに対して、瞬間移動で運ばれ慣れたアマーリエ義姉さんは堂々とした物だった。

 

「凄い、こんな立派なお部屋」

 

カルラ嬢が部屋の内装を見て驚いている。小屋の調度品は偶に職人を使って定期的に新しくしているから、今見ても違和感は無かった。

 

「ここはヴェル君との逢引きに使っていた場所なんです」

 

アマーリエ義姉さんがカルラ嬢に少し恥ずかしそうに説明している。

 

「パウル兄さんと話して、掃除や食事の手配をしてくるよ。」

 

俺はカルラ嬢をアマーリエ義姉さんに任せると、本館へと足を向けた。

 

パウル兄さんとのやりとりは手早くまとまった。元々カールの面倒を見てくれていた家族だし、今回も実に協力的だった。

 

掃除と食事を運ぶ為のメイドをつけてもらう事を了解してもらった。イヴァンナと同居しているカールの新領地で『あてがい女』引き合わせるのは問題があるだろうから、落ち着くまでは小屋にカールを連れてくる方が良いだろうという話もする。

 

この小屋なら目立たないし、風呂トイレ完備なので下手なホテルよりも環境が整っているのだ。小屋に戻るとアマーリエ義姉さんとカルラ嬢が意味ありげに視線を交わし合っている。ん、何だろう、何か異変があったのだろうか?

 

「あの、バウマイスター辺境伯様、本当に良くして頂いて感謝の言葉もありません。」

 

「カールの為に働いてもらうんです、当然の事ですよ。」

 

ふと気がつくとカルラ嬢は着替えを済ませていたようだった。彼女が身に纏っているのはブロワ辺境伯令嬢として身につけていた美しい緑のドレスだった。花を髪に飾っていたかつての少女の姿が蘇る。美しく長く伸ばされた黒髪は背後に束ねられ、上品そうな口元は当時と同じ笑みを浮かべていた。

 

「驚きました、あの頃のままですね。」

 

俺は素直に称賛を口にする。

 

「この服は思い出が詰まっていて、なんだか手放せなくって」

 

身を飾る宝石はすっかり減っていたが、当時と同じドレスをまとったカルラ嬢はあの頃のままに輝いて見えた。

 

「あの、お願いがあります。」

 

真剣な様子でカルラ嬢が俺に訴えかける。

 

「バウマイスター辺境伯様に、『あてがい女』としての私の品定めをして欲しいのです。」

 

そういうとカルラ嬢は自身のスカートを捲り上げた。彼女は下着を身につけていなかった。黒い毛に覆われた小さく可憐な女性器が剥き出しになる。俺は視線を捉えられ、彼女の秘所から目を逸らすことが出来なかった。

 

「大丈夫です、これは品定めですから。」

 

欲望に満ちた目でカルラ嬢に見つめられる。

 

「でも、俺が手を出したら」

 

「私が最後に抱かれたのは夫のカミラではなくホールミア辺境伯でした。そしてあの男からは『顔が良いだけで床下手な女』と罵られていました。」

 

哀しそうに顔を背けながらカルラ嬢が浴びせられた罵声を告白する。

 

「そんな事はないでしょう。」

 

「自分では分かりません、そんな事。だからバウマイスター辺境伯様に品定めして頂きたいんです。そうしなければ、私はこのお役目を果たせる自信が持てません。」

 

カルラ嬢が自身の性的な能力に自信を失っていたとは知らなかった。しかしこの数日間、心も身体も休ませた彼女は実に魅力的な容姿を取り戻しつつあった。

 

「(まずい、この場所でこんな風に彼女に迫られると抵抗できない。)」

 

困った俺は視線をアマーリエ義姉さんに走らせる。こんな場に同席させてアマーリエ義姉さんを困らせてはいないだろうか、意外にも俺の視線に気がついたアマーリエ義姉さんは、カルラ嬢の味方だった。

 

「私はカルラさんとこの数日間色々なお話をしたの。そして思ったわ、私は恵まれていたなって。カルラさんにはカールの為にも幸福な性体験をして欲しいの。私からもお願いしますヴェル君、カルラさんのお願い叶えてあげて。」

 

アマーリエ義姉さんの止めの一言で、俺の理性は完全に崩壊した。カルラ嬢に手を出して良いのだろうか? しかしアマーリエ義姉さんに肯定されると、もう俺に抵抗する理由はない。カルラ嬢はかつて結婚まで考えた相手だったのだから。

 

カルラ嬢を抱き寄せてキスをする。くすぐったそうな様子でカルラ嬢は応じてくれた。

 

「バウマイスター辺境伯様。」

 

情欲に潤んだ瞳でカルラ嬢は俺を見上げた。

 

「俺もカルラと呼び捨てにする。だから、今だけは俺を『あなた』とそう呼んで欲しい。」

 

「あなた」

 

そういうプレイと承知したのだろう、素直にカルラ嬢が「あなた」と口にしてくれる。それを聞いた瞬間に俺の体に電流が走った。カルラ嬢と結婚していたら見えていたであろう風景が脳裏をよぎる、やれやれ、俺もエルのこと全く笑えないな。

 

カルラ嬢の事が愛おしく、俺は抱きしめてキスを繰り返す。もどかしい手つきで彼女のドレスを脱がせようとする。するとアマーリエ義姉さんが慣れた手つきでカルラ嬢を裸に剥いてくれた。スイッチが入った俺の様子に、アマーリエ義姉さんがカルラ嬢のドレスを畳みながら奥へ下がっていった。

 

「私は初夜の見届け人というところね、私のことは気にしないで、お二人で初夜をゆっくり楽しんでね。」

 

久しぶりに義姉さんらしい態度をとると、アマーリエ義姉さんは完全に見学に回ると宣言した。

 

「カルラ」

 

「あなた」

 

見つめ合う。俺たち2人は起こり得たかもしれない初夜を再現する雰囲気になっていた。

 

カルラ嬢を抱き抱えベッドに運ぶ。男性にしては細身の俺だが、妻を抱き抱えて運ぶくらいの鍛錬はしていた。首元にそっと回されたカルラの手が愛おしい。俺はベットに優しくカルラを抱き下ろすと、その手を取ってキスをする。それは本心から相手を愛しいとおもているから出た自然な所作だった。

 

あまりにも唐突に始まった出来事なので俺はまだ服を脱いでいなかった。慌てて脱ごうとすると、今日は見届け人のアマーリエ義姉さんが手伝ってくれた。すっかり脱ぎ終わると、カルラ嬢の視線が俺の股間に注がれていることに気がついた。マジマジと見つめられている。こんな大胆な女性だっただろうか。やはり愛人生活が彼女を変えてしまったのかもしれない。

 

「汗をかいているかもしれないから、先に風呂を済ませた方がいいかな」

 

「香水の匂いがしない相手は久しぶりなの、よかったらあなたの汗の匂いを嗅がせてください」

 

アマーリエ義姉さんが俺の服を畳むとそっと浴室へ姿を消した。きっと風呂の支度をしてくれているのだろう。もう、このまま始めてしまおう。俺はカルラの横に腰を下ろした。閉じられているカルラの足を開くと、女性期をマジマジと覗き込んだ。

 

「綺麗な形をしているね」

 

カルラ嬢の女性器は、ホールミア辺境伯に夜な夜な蹂躙されたとは思えぬほど綺麗な形を保っていた。物欲しげに透明な愛液が溢れている。

 

「興奮してくれているんだね」

 

そう囁くとカルラ嬢は顔を赤ながらコクンと頷いてみせた。カルラ嬢の女性器に舌を這わせると彼女は『あっ』と声を上げた。

 

「どうしたの、カルラ?」

 

「本当に女性器を愛撫してくれるんだなって、あの、アマーリエさんに言われて、事前にちゃんと洗っていますから。」

 

一瞬奇妙な違和感を抱いたが、それでも目の前の女性器に俺はすぐ夢中になった。俺の舌による刺激に、カルラ嬢は全身で反応していた。敏感な反応に俺も嬉しくなる。

 

「気持ち良いんだね。」

 

カルラ嬢は意外な反応を示した。

 

「敏感な女は良くないのでしょう? 男が気持ちよくなるまで、女は乱れずに我慢をしてひたすら奉仕しろって。」

 

どうやらカルラ嬢はかなり特殊な性癖の辺境伯様のお相手を強いられていたようだった。

 

「カルラ、俺は敏感な女性の方が嬉しいよ。俺だけじゃない、大抵の男はみんなそうなんだ」

 

「そうなの、ですか?」

 

どこか呆然とした様子のカルラ嬢に、俺は指で刺激を加えながら説明を加えた。

 

「相手が気持ちいいから、俺も気持ちよくなれるんだ。俺はそうやって妻達を満足させてきたし、カルラの事も満足させたい。」

 

指でカルラの肢体の輪郭を撫でる。皮膚を触られる官能の予感にカルラの肢体がわななく。乳首の先端に指を這わせると、物欲しげにカルラ嬢が口を開いた。

 

「あの、あなたの持ち物がとても立派なので驚いています。」

 

カルラ嬢が俺の股間を見て驚いた理由がようやく理解できた。

 

「普通だと思うけれど、まぁ俺は男同士で比較したことがないからよく分からないけれど。」

 

男には普通は勃起した男性器を見せ合う機会はない。

 

「いいえ、あなたのはとても立派」

 

半分俺に言い聞かせるように、そして自分自身に暗示をかけるようにカルラ嬢はそう発言すると、俺の男性器に手を伸ばした。

 

スラリとしたカルラ嬢の手が俺の男性器に触れる。その冷たい感触にゾクゾクさせられる。

 

「あなた、そこに横になって」

 

カルラ嬢に促されるままに横たわる。彼女は俺に微笑みかけると、俺の股間に手を伸ばし、男性器に手を添えると躊躇いなくその口に含んだ。

 

「あっ」

 

カルラ嬢の思いもよらぬ激しい攻撃。天性の才能なのか激しい訓練の結果なのか。彼女の口技はこれまで経験した誰よりも巧みだった。

 

「カルラ、とても上手だよ」

 

「私、これだけは得意になりましたから。」

 

俺の男性器から口を外すと、どこか自慢げにカルラが告げる。カルラ嬢に手を引かれて俺は立ち上がる。俺とカルラ嬢は体勢を入れ替えた。長い黒髪の上にカルラ嬢の裸体が乗る。

 

「あの、我慢できないの。あなたの立派な物で私を貫いて。」

 

そういうとカルラ嬢は俺の前に身体を開いた。カルラ嬢の興奮を反映して彼女の身体はすっかり潤っている。2人とももう待てなかった。

 

「入れるよ」

 

「はい」

 

慎重にカルラ嬢の女性器に俺の男性器をあてがう。彼女の膣口は小さく、挿入が困難だった。

 

「あれ、やはりうまく入らないな。」

 

十分に濡れている筈なのに、俺の男性器はカルラの中に入って行かない。どうしたのだろうか。

 

俺の男性器は浅い所に引っ掛かりはする。しかし少し鬼頭が入るくらいの所で先に進まなくなるのだ。体の構造を考えても、カルラ嬢の膣がそんなに浅いはずは無かった。

 

「あの、やはり私はあそこの具合が良くないのでしょうか?」

 

心配そうにカルラ嬢が尋ねる。

 

「カルラ、心配しないで力を抜いて。角度を調節すればちゃんと入ると思うから。」

 

カルラ嬢は夫のカミラとホールミア辺境伯の2人を相手にしている筈だ。まさかそんな事はないと思うが、身体の構造的に入れづらい形をしているのかもしれなかった。

 

「カルラ、俺は我慢できない。だから少し強引かもしれないけれど、入れるよ。」

 

「はい、私も同じ気持ちです、存分になさって。」

 

カルラ嬢の了解を得ると、俺は力を込める。やはりすんなりと入っては行かない。でも、徐々にまだ奥がある感覚が伝わってきた。カルラ嬢もそれを感じているようだった。

 

「あの、私のあそこがゆっくり開いていくような。」

 

カルラ嬢の身体の緊張をほぐしながら、徐々に徐々に俺は深く入り込んでいった。これは錯覚ではない。ほんの少しずつだが、俺の男性器は鬼頭よりさらに深く埋まっていったのだから。

 

「私、私、こんなに深く入られるのは初めてで怖いわ」

 

「大丈夫だよ、子供を授かるために女性の身体は奥行きがあるんだ。今はうまく奥まで繋がらないけれど、時間をかければちゃんと繋がるようになっているから」

 

カルラ嬢の股間からは激しい出血が見られた。俺以外に、そっと見守ってるアマーリエ義姉さんももうその理由が分かっていただろう。

 

ビックリするほどの時間をかけて、カルラ嬢の身体が開いた。一度身体が完全に開いてしまうと、そこから奥にはすんなりと進めた。

 

「あんな大きなものが、すっかり私の中に入ってしまうなんて」

 

俺の身体の下ではカルラ嬢が驚きをあらわにしていた。

 

「でも、カルラの中に俺がいるのは分かるだろう?」

 

「はい、よく分かります。挿入されるってこういう事だったんですね。」

 

やはりそういう事だったのだ。カルラ嬢はまともな挿入を経験した事がなかったのだろう。

 

先天的に処女膜が分厚く硬すぎる女性がいる、経験不足で痛いと思われがちだが、実際は人より厚い膜が挿入や快感を妨げたりする。

 

俺の男性器のサイズに驚いていたという事は、カルラ嬢が相手をしたのは俺よりもっと男性器の小さい相手だった訳で、カルラ嬢の女性器の処女膜を完全に打ち破るのに至らなかったのだろう。処女膜には元々中央に穴がある。彼らには単にとても小さく浅く入らづらい膣として感じられていた筈だ。

 

「痛いかい?」

 

「今は落ち着きました、あの、あなたが身体の中で溢れている感覚がありますが」

 

恥ずかしそうにカルラ嬢が告白する。

 

「それじゃ動いてみるよ」

 

「ああん」

 

俺とカルラ嬢を妨げるものがなくなった。少し身動きをするだけでも敏感なカルラ嬢の身体が跳ね上がる。

 

「ああ、こわいです」

 

愛人経験豊富なカルラが未経験の性体験を知って怯える。

 

「大丈夫、気持ちの良い事だから。」

 

俺はカルラ嬢を気遣ってゆっくりと腰を動かした。俺を迎え入れたカルラ嬢は顔を伏せて震えていた。

 

「怖いかい?」

 

「違うの、あんまり気持ちが良くて」

 

顔を上げたカルラ嬢は表情が蕩けきっていた。元々、カルラ嬢は感情が表情に出にくい。そんな彼女がここまで内面を露わにして乱れ切っている様に俺は驚いた。

 

「俺も気持ちがいいよ、カルラを深く感じる。俺を気持ちよくしてくれている。」

 

実際、カルラ嬢の中は心地が良い。これまで閉ざされていた箇所を無理に押し広げた事もあるが、とても具合良く馴染んだ。これもやはり、彼女が感じてくれているからだろう。

 

「動くよ」

 

「はい、あなた」

 

カルラ嬢が感じているようなので腰の動きを早める。カルラ嬢は息を合わせるのが上手だった。膣奥への挿入は初めてでも、性体験は豊富なのだ。

 

カルラ嬢は初めて抱く相手なのに初めて抱く気がしない。それは不思議な経験だった。前世から知っているかのような感覚。実際彼女は前世の恋人によく似ているのだ。カルラ嬢の方が遥かに綺麗なのだが、忘れかけていた懐かしい感覚がある。

 

緩急をつけたリズムでカルラ嬢の膣内の感触を

堪能する。俺も妻達に鍛えられている。早漏なカミラに慣れているカルラ嬢を絶頂に導くことは容易かった。

 

「凄い、凄いわあなた」

 

目を白黒させながらカルラ嬢が快楽の頂点に上り詰める。

 

「いくよ、カルラ。」

 

カルラ嬢を快感に導いた事を確認すると、俺はようやく待ちかねたカルラ嬢の中へと己の精を解き放った。

 

射精する瞬間、俺の精子を受け止めてくれるカルラ嬢への深い愛を感じる。カルラ嬢は俺が精子を吐き終える間、ずっと目を閉じて快感に浸りきっていた。

 

「とても気持ちよかったよ。」

 

「こんな悦びがあると思いませんでした」

 

目を開くとゆっくりとカルラ嬢が述懐する。俺はカルラ嬢から男性器を引き抜くとアマーリエ義姉さんに男性器の汚れを拭いてもらう。

 

「逆に今まではどうしていたの、その、旦那さんとする時とか。」

 

「カミラはその、若くて敏感だったのですぐいってしまったんです。」

 

完全に挿入出来なくとも、入り口付近で擦り付けているだけで気持ちよく達してしまう事はあるだろう。おそらくカルラ嬢は挿入を恐れ、痛がっていたのだろうから、カミラなりの配慮を示すうちに浅い挿入が当たり前になってしまった事もあるのかもしれなかった。

 

実際、カミラ嬢の柔肌に触れるだけで心地よいのだから、太腿に擦り付けているだけでも男性は問題なく射精可能だっただろう。

 

「それにホールミア辺境伯は、その、前より後ろでする方が好きだったので。」

 

俺の脳裏によからぬ想像が広がる。

 

「後ろというと、あの」

 

「はい、お尻の穴です」

 

消え入りそうな声でカルラ嬢が告白する。俺にその趣味はないが、貴族にはそういう人もいるのだろう。

 

実際そういう行為をするのは準備が色々大変だと聞くが、大貴族となると違うのだろうか。ホールミア辺境伯の性的嗜好はともかく、これで色々と合点がいった気がする。

 

「多分、その男と俺は全く別の嗜好の持ち主だと思うよ。」

 

新婚で変態貴族の愛人にされたカルラ嬢が気の毒だった。アマーリエ義姉さんが『幸福な性体験を』と言った意味が分かる。

 

今後カールの相手を務めて貰う場合を考えても、カルラ嬢には色々な経験を積んでもらうほかない。それが出来るのはきっと俺しかいないのだろうから。俺はカルラ嬢について色々な決心を固めた。

 

 

その日、カルラ嬢に風呂の使い方を説明すると『食事はパウル兄さんの館のメイドが運ぶはずだから』と説明して彼女に別れを告げた。念のため、予備の魔道通信機を渡している。最後はアマーリエ義姉さんと連れ立って小屋を出た。

 

「アマーリエ義姉さん、今日は見学みたいな形になってすみませんでした。」

 

アマーリエ義姉さんはメイド時代に俺たち夫婦の性生活を目撃するのに慣れている。今はもちろん妻として参加する側だが、俺が他の女性を愛するのに、もしかしたら一番抵抗のない人かもしれなかった。

 

「ヴェル君、私の事は気にしなくていいの。カールの為に私が探して欲しいとお願いした『あてがい女』がカルラさんだったのだから。彼女の面倒、しっかり見てあげてね。」

 

そういうアマーリエ義姉さんの様子は本気で、どこか真剣にカルラ嬢の事を俺に託している様子だった。

 

俺の不思議そうな様子に気がついたのだろう。アマーリエ義姉さんが言葉を重ねる。

 

「あのね、私もカルラさんと同じなのよ。ヴェル君と結ばれて始めて女の喜びを知った気がするの。そして、それより前の生活はなんだったんだろうって思ったわ。」

 

俺はクルト兄さんのことに想いを馳せる。確かにアマーリエ義姉さんは、あまり幸福な結婚ではなかったと語っていた。

 

「だからカルラさんにはしっかり女の喜びを教えてあげて。それが息子のカールの為になると私は信じているから。」

 

アマーリエ義姉さんは、俺が好きだから俺の事を過大評価している気がする。でも俺もアマーリエ義姉さんが大好きだから、その気持ちは嬉しかった。俺たちは小屋の外でキスをした。

 

「大好きですよ、アマーリエ義姉さん」

 

「もう、ヴェル君たら。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。