未来では男だった。それは予想もしない彼女の答えだった。伯爵にはにわかに信じがたかった。
「マリーよ。お前が男だっていうんなら、日常生活を送っているうちに周囲の人間が気付くはずだ。実際、俺だって違和感を感じたことはない」
「そうでしょう。体は本物の女なのですから」
マリーはわからないことを言い出す。
「僕、未来では日本という国に住んでいる楢山祐輔っていう名前の男子学生でした。私立の高校に通っていて、父のような考古学者になるのが将来の夢でした。ある日のことです。研究室から父親がもってかえった不思議な中世の魔術書グリモワールを辞書を片手に解読してみていたのです。書物には精神転移という文字が書かれていました。そして、その魔術書を解読した瞬間。この世界で目が覚めたのです。周囲の人たちは僕のことをマリーと呼んでいました。どうやら、僕の精神は過去の時代のマリーという女の子の体に乗り移ったようなのです。僕はマリーとしてふるまいながら、必死で元の時代に戻る方法を探していたのです!」
必死でマリーはまくしたてた。
「僕は伯爵様のことが嫌いじゃないです。でも、男とエッチするのだけはダメだ!伯爵様だって男とはお嫌でしょう?」
「なるほど。ずいぶんと長い作り話だったが、着地点はそこなのか。そこまでわしと初夜の儀をかわすのは嫌だというのか」
「信じてください!」
「ふん。男がこんないいにおいをしてたまるか」
伯爵はマリーを後ろから抱きかかえた。髪の甘い女のにおいがただよい、男爵は豚のように貪った。
「マリー。わしはお前をはじめてみた時から、そのいやらしい体を触りたくて触りたくてガマンできなかったのだよ。この気持ちわかるか?」
「僕も男だから少しは気持ちはわかります。でもっ!あっ……」
マリーは色っぽい声を出した。伯爵の手がドレスの裾からみずみずしいふとももに向かってゆっくりと撫で上げたのだ。それをマリーは両手でつかみ抵抗をする。
「いい声を出すじゃないか。本当に男なのか?」
「変なところを触るから。僕、このままじゃおかしくなりそうです。男なのに男に触られてそれなのに」
「それなのに?なんだ」
「いえ、なんでもありません」
「気持ちがいいんだな」
「ちがいますっ!」
マリーは長いまつ毛で伏し目がちになった。まったくどこが違うというのか。色っぽい声を出しているくせにそれをガマンしている伯爵はその姿にさらなる加虐心が刺激され、もっと意地悪をしたくなった。
伯爵はベッドにマリーを組み伏せ、おでこ、目、耳、首筋にキスをした。するとマリーは少しうっとりとした表情になった。
「女の顔をしている」
「嘘だ!僕はそんな……」
瞳を潤ませているのを尻目に胸をむさぼった。つかみ、谷間に顔をうずめ、そして乳先を舐める。
「ひぐっ」
マリーの押し殺したような声が聞こえる。
「うう……」
「泣いているのか?これから、お前を正真正銘の女にしてやるっていうのに」
伯爵はふとももからずずずと、上に手を移動し、ついにたどり着いた茂みをまさぐる。
「俺もここから先ははじめてだ。どの穴にいれたらいいのかわかるか」
「僕に聞かないでください!そんな汚いもの入れられたくないっ!」
「ここかな?ここだな」
伯爵の怒張がゆらりゆらりと穴探しの旅に出る。これまで権力闘争に生きてきた伯爵の戯れは下劣のキワミでロマンスの欠片もなかった。
「はあっはあっ!」
伯爵は入れるべき場所を見つけると荒い息をあげながら、前後に素早くゆれだした。
「い…たい」
そう、小声でマリーが訴えるがどこ吹く風である。伯爵はあくまで、目の前の魅力的なメスを媒体として子孫を残すというオスの本能に従っているだけなのだ。
「くる…しい…。やめて……」
その訴えを聞かず、伯爵はぬくもりをそのまま中に解き放った。
伯爵の脳内は快楽物質と目の前のメスを征服した満足感でお花畑のように充実していた。
「悪く思わないでくれ。これもすべて伯爵家の子孫を残すためなんだ。お前にはたくさん子どもを産んでもらわないといけないのでな」
ベッドルームに一人残されたマリーはさめざめと泣いていた。