私に種を蒔いて。 性暴力で孕まなくなったJKと慰めえっちする話 作:黒宮魚
「あんたさ、他に好きな人いるでしょ」
夕方。沈みかけの陽が差す優一の部屋で、沙織がそう告げた。
放課後、珍しく家に来たいと言った沙織と二人で映画を観ている最中に唐突に口にされた。ベッドの上、並んで腰かけた二人の間には、一人分ほどの距離が空いている。
「どうしたんだよ急に」
何でもないように言葉を返す優一。だが、テレビに映るアクション映画の音が耳に入らないほど、内心は動揺していた。
冬休みが明け、迎春のムードもすっかり落ち着いた一月の終わり。三枝美咲と再会してからちょうど一か月が経った頃だった。
「そのままの意味。好きな人いるでしょ、あたし以外に」
テレビに目を向けたまま、沙織は無機質な声でそう答えた。ベッドに後ろ手をついている彼女の瞳は、映画を観ているようで何も映っていないようにも思えた。
「いな──」
「なんかさ」
否定の言葉が遮られる。
「最近の優一ってあたしのこと見てねーだろ。他の誰かのこと考えてる」
誰か、という言葉にとっさに一人の女子の顔が頭に浮かぶ。
「そんなこと」
「じゃあ来週にオープンする駅前のカフェの名前言ってみなよ」
すぐさま優一は口を開いたが、言葉は続かなかった。沙織から話をされたのは覚えている。だが、その中身が思い出せなかった。
「ほら言えない。あたしこないだ一緒に行こうって言ったじゃん。……前はあたしが言ったことならすごいくだらないことでも覚えててくれたのに」
失望したような溜息。沙織は興味なさそうな目をして、スカートの裾を直していた。
「前からずっと思ってた。あんたって昔の女周りのこと絶対に話さないよね」
付き合う前も、そういう関係になってからも度々聞かれることはあった。だが、優一は頑なに三枝美咲について口にすることは拒んでいた。
「あたしの知らない誰かさんのことずっと引きずってんじゃないの?」
沙織の瞳が優一を見つめる。それは、彼の中の三枝美咲のことまでも見透かしているような目だった。
「っ……俺はちゃんと沙織のこと好きだよ。それは本当だ」
「『ちゃんと』ってなに? あたしのこと好きでいるのって義務かなんかなの?」
鋭い視線が優一を刺した。蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。
優一が言ったことは嘘ではない。沙織のことを好きだと思う気持ちは確かにある。
だが、あのクリスマスからずっと、三枝美咲のことが頭を離れなかった。今でもずっと理不尽な暴力を受けているであろう彼女のことが。
「もういいよ」
何も言葉を返せなかった優一に、沙織は諦めたように息を吐いた。
「別れよ」
そうして、沙織は決定的な言葉を口にした。
「そんな風に思わせたのは俺が悪かったよ。本当に──」
「触んないで」
情けなく沙織の手をつかもうとした優一の手を彼女は振り払った。さらりと沙織の茶髪が揺れる。彼女の目は、初めて言葉を交わした時の嘲笑の目ですらなく、他人を見るような色をしていた。
「あんたって優しいけどさ、今はそれウザいだけだから。──内田」
線引きをするように優一を名字で呼ぶ。まだ他人だった頃と同じに。
「それじゃ。そこそこ楽しかったよ」
そう口にすると、沙織はベッドから腰を上げた。そして床に置いてあったバッグを取ると、迷いなく玄関へ向かっていった。
「沙織──っ」
優一は思わず立ち上がって彼女に手を伸ばした。しかし、それは沙織の肩に触れる前に止まった。
立ち止まって振り向いた沙織の頬を、一粒の雫が伝っていたから。
優一はそんな彼女になんと声をかければいいのかわからなかった。表情も体も硬直したまま数秒が過ぎる。
やがて彼女は踵を返して、何も言わないまま部屋を出て行った。ばたん、という鉄扉の無機質な音が、一人だけになった部屋に虚しく響いた。
がこん、という重い音が校舎の自販機コーナーに響いた。優一は缶コーヒーを取り出し口から出して、プルトップの栓を引いた。
平日の昼下がり。二月に入ったこの時期に、コーヒーの温かさが身に染みた。
「あ、サボりだ」
ぐい、と呷っていると横から声が聞こえてきた。
「ん……三枝」
口を拭いながらそちらに向く。
きっちりと整えた制服姿に、艶のある長い黒髪。三枝美咲がそこに立っていた。
や、と手を挙げながら優一に近づいてくる。
「今は授業中だぞ」
「君には言われたくないなぁ」
今は三限目の真っ最中。真面目な彼女がここにいることに、優一は少なからず驚きを覚えた。
優一も人のことは言えないのだが、彼はつい最近まできちんと授業に出席していた。秋に沙織に言われた「いじけてたら弟の勝ちじゃん」という言葉に触発されて、成績を伸ばしていたのだ。
だが、沙織と別れたことでまたサボり魔に逆戻りしてしまっていた。
「奢るよ。何がいい?」
「え、そんな悪いって」
「いいから」
「んーじゃあお言葉に甘えて。オレンジジュースくださいな」
小銭を入れてボタンを押す。出てきた橙色のペットボトルを美咲へ手渡した。
ありがと、と口にした美咲は、蓋を開けて一口飲み下した。
「どうしたんだよ。珍しいな」
「うん。……君に会えるかなって」
優一に微笑みかけて美咲は口にする。
それが、空虚な優一の心がほんの僅かに色をもたらした。
「俺に何か用事あるのか?」
「特にはないんだ。ただおしゃべりしたいだけ」
周りに誰もいないせいか、いつになく砕けた態度の美咲。表情も柔らかい。
「場所、変えよう。ここで喋ってたら多分先生に見つかるから」
優一はそう口にして、階段へ足を向けた。うん、と返事をして美咲もそれについてくる。
二人が向かったのは屋上扉の前の小さな空間。屋上はこの時期はさすがに冷え込むのでやめた。
扉のすりガラスから差し込む光だけが灯りだから薄暗い。そこへ壁を背もたれにして二人腰を下ろした。
「あのさ」
ぽつりとそう呟いて、美咲は話し出した。
「霜月さんとは、その」
おずおずとそう尋ねてきた。気遣うような視線を優一に向けて。
優一もなんとなく予想はしていた。わざわざ授業をサボってまで会いに来るなんて変だと思っていた。
「ああ。別れた」
優一自身も驚くほど簡単にその言葉が出てきた。未練がないわけではないが、それ以上に空虚さがあったから。
美咲はその言葉を聞いて、一瞬悲痛そうに顔を歪めた。そして、その顔を伏せながら謝罪の言葉を口にする。
「ごめん。私のせい、だよね」
「……そんなことない。俺が愛想尽かされただけだよ」
缶コーヒーをちゃぷちゃぷと揺らしながら答える。
「嘘。冬休み前はすごいラブラブだったのに、年明けてから全然違かった。……あのクリスマスのことが原因だってわかるよ」
優一の目が見開かれる。
見抜かれたことより、彼女が自分たちをよく見ていることが意外だった。
「三枝には隠せないな。……うん、『私以外のこと見てる』って言われて振られた」
観念してそう口にした。その瞬間、あの日の他人のような沙織の目がフラッシュバックした。
「ほんとにごめんなさい。きっと君とは他人のままにしてたほうが、内田くんにとってはよかったのに」
美咲は抱いた自らの膝を見つめながら、絞り出すようにそう告げた。
「三枝が謝る必要なんてない。さ……霜月とのことは俺がちゃんと──」
「でも私とのことが無ければ別れることなんてなかった。それはほんとでしょ」
伏し目がちな視線が優一を射抜く。
「……それは、そうかもしれないけど。今更どうにもなんないよ」
彼女の言葉を否定できず、そう返すしかなかった。クリスマスの一件が無ければ、優一にとって三枝美咲との思い出は泡沫の夢で終わっていたことだったから。
「内田くん」
湿っぽい空気の中、美咲が呟く。
気づけば、美咲は体を寄せて優一の手に自らの左手を重ねていた。どきりとした優一の視線が美咲と絡まる。
「お詫び、させてくれないかな」
「お詫び?」
尋ねた優一に、美咲は「そう」と頷いた。
「ちょっとだけ、楽になるようなこと。辛いの少しだけ忘れられること」
さらに美咲が距離を詰めてくる。彼女の左手は優一に重なったまま、右手を脚の間について。まるで抱き合うような形。
美咲の顔が近い。どこか後ろめたさがあるようなその瞳が細められる。
そして微笑みを見せると、彼女は優一の首筋へ唇を触れさせた。
「さ、三枝……そんなことしなくても」
「イヤ?」
思わず美咲の肩を押さえた優一に、彼女は小さく首を傾けた。
不安そうな彼女の顔に、イヤ、とは即座に言えなかった。
「君に慰めてもらったお返し。私にできることなんてこれくらいだから」
夏休みのあの雨の夜を思い出す。
何でもしてあげる、私にはそれくらいしか価値がない。そう口にした彼女のことを。
あの自嘲気味な顔と同じ表情が今の彼女にも張り付いている。あれから彼女の境遇は何も変わっていないんだと、わからされた。
「大丈夫。私ちゃんと気持ちよくできるよ」
彼女を悲しく思う気持ちが、優一の顔に出てしまっていた。それを目にした美咲が的外れなことを口にする。
「三枝。無理してこんなことしないでくれよ」
「無理なんかしてないよ。前に言ったよね? 君だけは違うの。全然イヤじゃない」
美咲は優一の肩に手をかけ、半ば強引にまたがってきた。太ももに柔らかい尻の肉感が押し付けられる。
正面から向き合った美咲の微笑の奥に僅かな悲しみが見える。
「気持ちいいことすれば少しだけ楽になるんだよ。教えてくれたのは内田くんだったじゃない」
そんなのは先延ばしに過ぎない。だが、それが声になることはなかった。
「ん……」
美咲に唇を塞がれる。ジュースを飲んでいたせいか、いつもより湿っていた。
抵抗しない優一に、美咲は腕を首に回して抱きつく。くちゅ、と強く粘膜が押し付けあって、互いの呼吸が絡まった。
「ん、ぇ……っン、む……」
美咲の顔が傾いて、彼女の黒髪が額を擦った。
それと同時に差し込まれる、美咲の濡れた舌。熱く湿潤したソレが、優しく優一のものに重ねられた。
「は、む……っちゅ、っは、ん……っ、ぇ、ぁ……」
いたわるような美咲の舌使い。熱と唾液を激しく擦りつけるものではなく、じっくりと互いの味を確かめ合うものだった。
絡まって、吸いついて、緩慢な動きで美咲の舌が愛撫してくる。口の中を淫蕩な色で染め上げるようなそれに、だんだんと意識がとろけてくる。
「っは……」
一分ほどだろうか。甘いディープキスを流し込んだ後、美咲はゆっくりと唇を離した。
突き出された舌先から唾液の橋がかかっている。
「……甘い味がする」
「ふふ。オレンジジュース飲んだからね。……君は苦いね。コーヒーの味」
甘ったるい吐息を吐きながら美咲は言う。
「じっとしてて、いいから。──気持ちよくしてあげる」
子供をあやすような囁き声だった。しかし、そこに含まれた艶やかさがどきりとさせる。
美咲の唇がまた首筋に触れる。ちゅ、と軽い口づけ。それを何度も繰り返す。
優一は抵抗しなかった。最低なことをしている自覚はある。だが、空虚さを満たしたいという気持ちと、三枝美咲への独占欲のようなものが胸の裡を渦巻いていた。
「ん……っ、ちゅ、ぅ……ン……」
浅い奉仕を繰り返しながら、美咲の手が優一の制服へ伸びる。ブレザーを脱がし、ネクタイを緩めたあと、ワイシャツのボタンを一つずつ外していく。
そしてボタンを外し終えたワイシャツをはだけさせると、キスがだんだんと下り始めた。首筋から鎖骨を経由して、がっしりとした胸板へ。
「さえ、ぐさ……っ」
細やかで焦らすような口づけに、優一の体がぶるりと震える。
空いた美咲の手が、今度は優一のベルトへ伸びた。慣れた手つきでそれを緩めると、ぐい、と下着ごとずらされる。
「ん……まだちょっと元気ないね」
腹筋に口づけながら、上目遣いの美咲が微笑みかけてくる。
彼女は半勃ちの肉茎を右手で握ると、ゆったりとした手つきで扱き始めた。しなやかな手指の感触に、びくびくとソレが反応する。
「ちゅ、ん……っ、おっきくなってきた」
美咲は扱いている肉棒に嬉しそうに目を細めた。
さらに、愛撫しているのとは逆の手もそれに伸ばす。美咲は手のひらを亀頭に触れさせると、甘やかすようにそれを撫でまわす。
敏感な場所への刺激に、ぞりぞりと快感が肉棒突き抜ける。性交を望むように、それはすぐに固くいきりたった。
「あは……おちんぽちゃんと勃起したね。きもちい?」
「ああ、気持ちいいよ。三枝」
頷いた優一に美咲が満足そうに微笑む。
「じゃあおクチでするね。──ん」
腹筋から唇を離した彼女の顔が股間にうずめられる。そして、片手で竿をしごいたまま先端へキスを落とし始める。
柔らかい粘膜が張り詰めた亀頭を優しく刺激する。小さな快感ではあるが、竿からの快楽と合わさって背筋が震えた。
「んっ、ぁむ……っは、ちゅ……っ、ン」
美咲の愛撫も少しずつ熱を帯びていく。ただ口づけるだけから、吸いつくようなキスへ。
はむりと唇だけで啄み、ちゅぷん、と軽い水音を立てながら離れる。そして、時折ぺろりと舐めてくる舌先に快楽がせりあげられる。
「ん、ちゅ……っ、そろそろ、咥えるね──」
亀頭が唾液でとろとろになった頃、美咲が誘惑の瞳でそう口にする。優一が頷くと同時に、かぷりと先端が彼女の口に飲み込まれた。
唾液まみれの熱帯地帯。鈴口を舌先がちろりと舐めて出迎えをしてくる。
「んっ、ぶ……んン、んく……っ」
そして、美咲は躊躇いもなく根本までそれを飲み込んだ。竿も亀頭も彼女の粘膜の感触に包まれて、肉棒全体が快感に染められている。もうそのまま射精してもいいほど心地が良かった。
しかし、そんなものは序の口だ。唇を窄めて軽い締め付けを与えたまま、美咲の顔が上下し始める。
「ぢゅ、ん……っ、ん、ぼ……っ、ぅン……っ、は、ぁむ……っ、ん、っぶ……」
その動きはそれほど速くはない。先ほど半勃ちのものを甘やかしていた手淫のような速さだ。
だが、美咲の口内の感触が快感を比べ物にならないほど膨らませている。亀頭にかかる熱い吐息、引き抜かれるときに裏筋を這う舌に、奥まで飲み込まれた瞬間の狭い喉。全てが快楽になって襲ってくる。
「んっ、は……っ」
しかし、美咲は唐突に肉棒から口を離した。ちゅぽん、と子気味のいい音を立てて引き抜かれる。
急に快楽から解放されたソレがびくびくと跳ねていた。
「っあ……」
「ん、もうちょっとシてほしかった?」
「あいや、そういう訳じゃ……」
そういう訳だったが、気恥ずかしかった優一は口を閉ざした。そんな彼の内心を見透かしたのか、美咲はくすりと笑った。
「出すなら、コッチのほうがイイでしょ?」
美咲はぺたん、と床に尻をつくと、スカートをめくりあげて見せた。
肉付きのいい太ももと、スカートのウエストから覗く白いシャツの裾。そして、逆三角を形作る薄桃色の下着が、くっきりと優一の目に晒される。
反射的にこくりと頷いていた。
「じゃあ、ちょっと待ってね」
美咲はおもむろに立ち上がると、羽織っていた紺のブレザーを床に落とした。さらに、ブラウスもボタンをすべて外してはだけさせる。
覗く白い肌と可愛らしい下着。下から見上げるその膨らみは、大きさが強調されてより魅力的に映った。
「ん……」
そして、軽くかがんでスカートの中に手を入れる。するするとピンクの下着がおろされていく。やがてそれは、彼女の白い上履きの上にぱさりと落ちた。
「それ、挿れよっか」
半脱ぎのまま、美咲が優一にまたがる。紅潮した彼女の顔は、大人しげでありながらも女の顔になっていた。
「んっ……」
彼女の手が肉茎の根元をつかみ、上に向けられる。そこへ彼女の秘部がくちゅりと触れた。
「三枝、濡れてる……」
「うん……君の舐めてたら濡れちゃった。こんな淫乱女、君は嫌いかな」
「そんなこと。そもそも淫乱なんて思わないよ」
「ふふ、そっか」
安堵の息を吐き、美咲の表情が和らぐ。
彼女の両腕が優一の首の後ろに回される。そして、腰に力を籠めるように瞼を落とし、優一のものを飲み込み始めた。
「あっ……ん、んっ、ン……すっご……」
じゅぶぶ、と濡れそぼった場所へ肉棒が挿入されていく。ナカも当然どろどろで、挿入というその行為だけで十分過ぎるほど気持ちがいい。
「っん……! っく、ぁ……ん、あは──内田くん、おちんぽ入ったよ」
美咲の膣はすっかり優一のに馴染んでいるのか、あっという間に奥までたどりつく。太ももに美咲の心地いい体重がかかっていた。
「三枝のナカ……めっちゃあったかい」
「ん……そう? 君のおちんぽもすっごくアツいけど」
くい、と腰を動かしながら美咲が笑う。その僅かな刺激でもきつい膣内に包まれた状態では快感に変わる。
美咲は小さな声を漏らしながら、優一に強く抱き着いた。彼女の顎が優一の右肩に乗せられる。
「じゃあ、腰振るね……君はじっとしてていい、から──っん」
甘い吐息を漏らしながら耳元でそう囁かれる。それにくすぐったさを感じる間もなく、下腹部に鈍く響く快楽。
美咲の腰が前後に動かされる。ぬちゃりとした膣肉の感触を陰茎に染みこませるような緩慢な動き。
「んっ……は、ぁ……っく、ぁ、はー……ぁ、うちだ、くん……おまんこの具合、いい……?」
「ああ……いい、すっごく。締まってて気持ちいい」
激しく抜き差しをしなくとも、美咲の膣内はたまらない快感を与えてくる。いくつものひだがキスするように吸いついてきて、竿も亀頭も隅々まで愛撫される。それが彼女の慣れた腰使いで擦り付けられているのだから、気持ちよくないはずがない。
「っん、うん……よかった……アっ、ん、イきたくなったら、いつでも……っん、せーしだして……?」
砂糖菓子のように甘い誘惑が耳元から流し込まれる。それに触発されて、陰嚢がぐつぐつと精液を作り出す。すぐにでも出したくなるが、それ以上に彼女の感触を味わっていたかった。
抱き合っている美咲の体。どこもかしこも柔らかくて、いつまでも抱いていたくなる。特に、冷たい床と寒い空気の中ではなおさら、情欲を孕んだ熱い体温が心地いい。
「三枝のからだ……めっちゃやらかい」
無意識のうちに、優一は両手で彼女の尻を鷲掴みにしていた。胸に押し当てられている乳房よりも張りのある感触。
「ぁんっ……ん、もう……っあ、ん……んは、っうぁ……いい、よ、好きにさわって……」
どこか嬉しそうに美咲が声を漏らす。それに促されるまま、尻肉を弄ぶ。
ぐにゅぐにゅと形を歪めてみたり、たださすってみたり。滑らかで弾力のあるその白桃は、いつまでもそうしていたいと思わせる魔性の魅力があった。
そして美咲自身も、そうして愛撫される度に体をぴくんと震わせていた。まるで、好きに貪られることを喜んでいるような反応。
「っん、ぁ……っ、あ……だめ、わたしも、きもちぃ……っん、ぁは、アんっ、ん……っ」
腰の動きはそのままに、耳元の彼女の声が熱を帯びていく。刺激に反応するような甘い声から、深くからこみ上げてくるような淫らな声に変わる。
そんな息遣いを一瞬も逃さない至近距離で聞かされ続けている優一も、呼応するように興奮が増していく。膣の形ごと歪めるみたいに尻を揉みしだき、くいくいと腰も動いてしまっていた。
「ぁ、んっ、は……っ、すっご──あっ、ン、んんっ……はぁ……っく、おちんぽすっご……っ、あっ、ん……うちだ、くん……ごめん、っン、ぁ……もう、イっちゃう、かも……」
縋るように抱きつきながら、震える声で美咲は言う。
事実、彼女の蜜穴はきゅんきゅんと痙攣しながら締め付けてきていた。そして、それに絞られるように、優一の白い欲望もどくどくと発射の準備を始めている。
「ん……三枝、俺ももうすぐ出るから、一緒に──」
「ぁ、は……っ、ぅん、このまま、いっしょにイきたい……っ、ん、ぁ、あっ……」
美咲の腰の動きが激しくなる。だがそれもほんの僅か。振り子時計のようなゆっくりとした腰使いで高まっていく。
美咲のナカはむしゃぶりくみたいにちゅうう、とキスを繰り返し、精液をねだってくる。抗いようのない快楽に、すぐにその時がやってきてしまう。
「っさえぐさ、でる……っ」
「んっ、イく、わたしもっ……ぁ、あっ……!」
どくん、と破裂しそうなほど、二人の心臓が跳ねた。
優一と美咲は、本当に一つになってしまいそうなほどきつく抱き合いながら果てた。
「っ、あ……ぁ、ん……ぁはっ……うちだくんのせーし、ナカに、っん、そそがれて、る……っ」
体を震わせて喜んでいる彼女に、どぶどぶと射精する。ねっとりとしたセックスで練り上げられた精液が、重々しく脈動しながら吐き出されていく。
虚脱感と満足感が同時に襲ってくる幸せな時間。熱い体温と柔らかい美咲の体を抱きながらのそれは、背徳的なほどに心地が良かった。
「っ、は……ぁ、はぁ、は……っ、ん……」
絶頂が終わった後もふわふわとした余韻が続く。美咲は優一の肩に頭を乗せ、体ごと枝垂れかかりながら脱力していた。
「……三枝?」
しかし、次第に優一が違和感に気づく。美咲の息遣いが、心地よさげなものから溜息のようなものに変わっていた。
「……ごめん」
ぽつりと呟く。
「わたし、嘘ついたの。……君のこと楽にしてあげるなんて建前」
抱き合っている優一にしか聞こえないほどの小さな声。そこにはうんざりしたような色があった。
「本当は私が楽になりたかった。また、慰めてほしかっただけ」
自らの罪を告白するような、苦しさすら感じさせる言い方だった。優一が口をはさむ間もなく、彼女は言葉を続ける。
「あの時も、そう」
「あの時?」と聞き返した優一に、うん、と美咲が小さく頷く。
「お兄ちゃんとお父さんのことが嫌で、君のことが忘れられなくて──それで、あのクリスマスに君に会いに行った。偶然なんかじゃないんだよ、あれ」
ほんとに会えるなんて思わなかったけど、と美咲は笑った。
あの日観た映画は、ちょうどクリスマスが先行上映の公開日だった。そして、上映していたのはあの映画館だけ。偶然なんかじゃない、という言葉は本当なのだろうと優一は思った。
「ほんと、最低だよね」
自らをこき下ろすように、美咲は吐き捨てた。
「最低なんかじゃない。三枝はずっと酷いことされてて、それで何かに頼りたいってのはなにもおかしくなんかない」
美咲の背中に腕を回し、その体を抱きしめる。優一にはそうやって月並みな慰めの言葉をかけるしかできなかった。
「……そうかな」
ぼそりとこぼした美咲の声は震えていた。鼻をすする音も聞こえている。
優一は、美咲が落ち着くまで優しくその体を抱いていた。
「あの、内田くん」
三限目終了のチャイムが鳴り、階段の下が騒がしくなり始めた頃。二人は着崩した制服を直していた。
「うん?」
「これ、やってる?」
ネクタイを締めながら振り向くと、美咲がスマホの画面を見せていた。そこにはSNSのタイムラインが映っている。
「ああ、うん。一応アカウントは持ってるよ」
そっか、と口にする美咲。
「あの、さ。よかったらアカウント教えてくれないかな。……何か、連絡したいときとか、その、あるかもだから」
つっかえながら、美咲はそう口にした。スマホを胸の前でぎゅっと握りながら、不安そうに優一をちらちらと見ている。
「いい、けど……お父さんとかにまたバレたりしたら大変じゃないか?」
「大丈夫。アプリじゃなくてブラウザから開けばわかんないし、閲覧履歴もちゃんと消すから」
確かにそれなら、やり取りしているところを見られることさえなければバレることはない。
わかった、と優一は口にして、スマホを取り出した。自分のアカウントのプロフィールを出して美咲に見せる。
「うん、ありがと。フォローした。……じゃあ、何かあれば連絡するね」
「ああ。いつでもいいから」
美咲はありがとう、とまた礼を口にして軽く頭を下げた。
「それじゃあ私、戻るね」
「うん。階段から降りてくるの見られないように気をつけてな」
うん、と笑顔を見せて、美咲は階段を降りて行った。
その姿を見送りながら、優一は違和感を覚えていた。今日の美咲はどこかおかしかった。
優しく誘惑してきたかと思えば、事後には自責に押しつぶされて、さっきは逆に心配になるくらいの笑顔を見せていた。
言葉を選ばないで言うのなら、情緒不安定。
美咲の置かれている環境が酷く劣悪なことは知っている。だが、美咲は夏休みの頃より傷を負っているようにも思えた。
もしかしたら、自分にはまだ言っていないことがあるのかもしれない。優一はそんな一抹の不安を抱いた。