※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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TS注意です!
この話ではTSはよくあることなのですが……えーと、ショタ化もしているので何ていえばいいのか……。


何でいきなり小さく(しかも男の子に)なるかな!?

 作業が一段落ついたところで立城は大きく息をついた。これまでに溜まっていたメールは全て処理できた。挨拶回りも大分済み、後は折を見て顔を出せば事は済むだろう。正月明けから各企業は動き始めている。それらの報告書にはこれから目を通す予定だ。立城は大きな執務机に乗ったモニタ画面を見つめてからこめかみを強く押さえた。

 

 吉良瀬トータルソリューションという名の会社のビルの最上階には、会長室という名の立城の執務室がある。立城は一人、その部屋にいた。時折、秘書の女性がスケジュールの調整のために執務室を訪れる以外は人の出入りはない。立城は大きな椅子から降りて、伸びをした。

 

 広々とした窓からは優しい陽光が差し込んでいる。冬の日差しは夏ほど強くないかわりに澄んでいる気がする。立城は窓から外の様子を眺めた。眼下に広がっている街並みを見つめ、次いで周辺を見回す。清陵の街の中心部にあるオフィス街には様々な企業のビルが立ち並んでいる。立城のいるビルはそんな中では背は低い方だ。が、立地条件がすこぶるいいため、周辺には日差しを遮る建物はない。このビルの前には広い車道が、そして背後には広々とした公園があるのだ。休憩時間ともなると各ビルから憩いの時間を求めて人々が公園を訪れる。きっちりと管理された公園は緑も多く植えられ、大きな噴水も設えられている。

 

 立城はあの日以来、ずっと女性の身体で過ごしている。下手に力を使って器の形を変えるなと水輝に強く言われているのだ。そしてその理由も立城は理解している。無駄に力を消耗すれば、それだけ力を取り戻すまでに時間がかかる。

 

 そんな当り前のことも判らないくらい、僕は動揺していたのかな。これまでのことを思って立城は苦笑した。思い返してみると優一郎には迷惑しかかけていなかったような気がする。立城は申し訳ない気分になりながら窓から離れた。

 

 時計が三時を示したところで執務室のドアが鳴る。立城の返事を受けた秘書が一人、一礼して入室する。この秘書は優一郎が用意してくれたヒューマノイドの一人だ。名を大前道代という。道代は広い執務室を横切り、部屋の奥にある応接セットに近付いた。立城も窓から離れてソファに向かう。

 

「ありがとう、大前さん」

 

 立城の分の茶とケーキをテーブルに乗せた道代がにっこりと笑う。

 

「紫様こそ、お疲れ様です」

 

 丁寧に挨拶した道代に立城は微笑を返した。道代の背は女性の姿をとった立城より若干高い。その体型はあくまでも美しく、めりはりも利いているため、ファッションモデルと言っても誰もが納得するだろう。面立ちはすっきりと整っており、可愛らしいというよりは凛とした感がある。

 

「今日は定時で上がってね。僕に付き合うことはないから」

 

 静かにソファに腰を下ろしながら立城は告げた。昨日の晩など、道代は律儀に深夜まで立城に付き合っていたのだ。

 

「昨晩の事なら御気になさらないで下さい。この身体は疲れ知らずのようですから」

 

 穏やかな微笑みを浮かべて道代が告げる。立城は苦笑して首を傾げてみせた。

 

「そうじゃなくて。やっぱり女性を遅くまで引き止めておくのは良くないでしょう。それにまだ試用期間なんだから、きちんと診て貰った方がいいと思うよ」

 

 そう告げて立城はにっこりと笑った。すると生真面目な顔で道代が告げる。

 

「今はもう自律性のテストに入っています。保美さんには可能な限り、外部からのメンテナンスや制御を受けずに連続動作するように指示を受けています。セルフメンテは当然行いますが」

 

 どうやら道代の方が一枚上手らしい。立城は苦笑して判った、と頷いた。道代が失礼します、と礼をして退室する。これは今日は徹夜をさせる羽目になりそうだ。そんなことを思いながら立城は紅茶を取った。程よく入れられた紅茶を啜って喉の渇きを潤してからケーキに取り掛かる。しばし茶を楽しんでから立城はふと立ち上がった。

 

「そういえばあのファイルはどこにしまったかな」

 

 気になることを思い出して立城は何気なく書棚に寄ろうとした。が、急に不気味な違和感に襲われる。執務室の中央で足を止め、立城は息を殺して違和感の正体を探ろうとした。

 

 不意に身体の力が抜ける。え、と目を見張って床にへたり込んだ立城の身体が予告なく縮む。驚きに息を飲んだ立城の身体は音もなく少年のそれに転じた。着ていた女物のスーツが身体に纏わりつく。大人物の大きなサイズのスーツの中で立城は目を丸くした。床にぺたんと座り込んで腕を持ち上げる。余りきった袖が手の先で垂れ下がる。

 

「どういう、こと?」

 

 立城は力なく呟いて床に両手をついた。力を使った覚えはない。それに外部から強制的に力を叩き込まれた感じもない。ただ、いきなり器が組み変わってしまったのだ。こんなことはこれまでに一度もなかった。

 

 どうしよう。立城は困惑に視線を泳がせた。幸い、今日は誰かに面会する予定はない。必要書類を片付けたり、判をついたりする程度のことはこの身体でも出来る。だが立城はそれとは別に切迫したものを感じていた。性的な欲求がこみ上げているのだ。立城は泣きそうな顔でどうしよう、と再度呟いた。




ちょっと長いエピソードなので分割しました。
この段落で六章は終了です。
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