※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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トラブル続行中で、しかも出てきたのがヤバいものです。
とは言っても、元々の話はアップしていないんですよね……すみません。

エロシーンはありません。


優一郎の城に現れたモノ 2

「君も来れるよ。君には独立した座は無いから」

 

 優一郎は斎姫に微笑みかけてそう告げた。すると斎姫がおっかなびっくりの態で歩き出す。やはり斎姫も優一郎と同様に結界を難なく越えた。それを待ってから優一郎は再び歩き出した。近付くにつれて気配はどんどん濃くなってくる。三枚目の結界を越えたところで斎姫は力なくその場にへたり込んだ。

 

「結界内結界を張るか」

 

 結界は無茶に壊れて張った人間にダメージ与えるけど仕方ないよね。そう呟いて優一郎は歩き出した。薄い皮膜のような結界を越える前に足を止める。優一郎の身体を境に結界が揺れる。優一郎は目を閉じて一気に力を解放した。立て続けに硝子の砕ける音がしてその場に施されていた結界が散る。同時に優一郎の身体から立ち上った透明な力が結界の形に展開された。床に座り込んでいた斎姫の身体も透明な結界に包まれる。

 

「物理的にも閉鎖してたのか」

 

 用心深いな。真剣な表情で呟いて優一郎は斎姫を引き起こした。それから施設内部に意識を這わせる。どうやら多輝たちは無事に施設内の者達を避難させたらしい。その気配はどんどん遠ざかっている。優一郎はそのことを確認してから研究室の奥に向かった。その後ろを斎姫が黙ってついて歩く。

 

 問題のメンテナンス室の前で優一郎は足を止めた。試しにノックをしてみる。だが応答はない。

 

「水輝さんの身体を使っている方。この研究室の主として命じます。開けてください」

 

 優一郎は言いながらドアを何度も叩いた。だが呼びかけても何故か応答がない。どうやら気配の主は優一郎の命令を完全に無視しているらしい。だがそれは逆に向こうの力を削ぐ事になる。それならそれで入室することは可能になるだろう。そう思いながら優一郎は何度も同じ呼びかけをした。だがそれでも応答はない。

 

「水輝さんの身体を使っている方。この研究室の主としてこの扉の開放を命ずると共に、誓約の管理者として、監査の要求をします。返答ください」

 

 優一郎はドアを睨むように見ながら力のこもった言葉を唇に乗せた。だがドアはぴくりとも動かず、返答の声もない。その内に研究施設内部にこもっていた不気味な気配がゆっくりと動き始めた。まるでのたうつ蛇のように床を這い、じりじりとメンテナンス室に引き込まれていく。

 

「それでは強制執行します」

 

 そう宣言して優一郎はドアノブに触れた。その瞬間、見えない力が優一郎を撃つ。息を飲んで身体を丸めた優一郎は吹き飛ばされて壁にぶち当たった。だが展開していた結界のおかげで痛みはない。床に何事もなく着地した優一郎は受けた衝撃に少し咳き込んだ。慌てたように斎姫が優一郎に駆け寄ってくる。

 

「大丈夫。向こうのほうが、水輝さんの中の人のほうがダメージは大きい」

 

 心配顔をする斎姫にそう言い置いて、優一郎は再度、ドアに歩み寄った。ドアをこぶしで何度か叩く。そうしている間にも不気味な気配が蠢き、ドアの向こうへと消えていく。

 

「斎姫。力を少し借りるよ」

「えっ? 優くん?」

「もう一度強制執行を行います」

 

 傍らに立つ斎姫の手を取り、優一郎は宣言した。繋いだ手を介して斎姫に込められていた力を吸い上げる。優一郎は深く息を吸ってドアを睨みつけた。斎姫から吸い取った力を一気に解放しながらドアノブを強引に回す。襲い掛かってきた衝撃を力で相殺し、優一郎はドアノブを思い切り引いた。

 

 濃い瘴気にも似たものが立ち込めた部屋の中を見た優一郎は目を見張って絶句した。隣で斎姫が息を飲む。ベッドでは水輝が渚に圧し掛かっていた。渚は目を開いてぼんやりと天井を見上げている。その目からは生気らしいものは感じられない。そして渚を組み敷いている水輝の髪の色は見慣れない色へと染まり変わっていた。美しい紫色の髪が蛍光灯の光を浴びて、時折、翠色に見える。

 

「紫翠……?」

 

 優一郎は掠れた声でそう呟いた。すると渚に身体を合わせていた水輝がドアの方を向く。愉悦に満ちた目で優一郎たちを見つめ、水輝はくすくすと笑ってみせた。水輝はいつもと同じ顔の筈なのに、全く別人に見える。

 

「わたしの人形に手を加えたのはお前か」

 

 柔らかな声で告げて水輝が優一郎を見つめる。その口調もいつもの水輝のものとはまるで違う。

 

「それが渚さんの事を指すのでしたら肯定します。吉良博士と僕によって手が加えられています」

 

 緊張しつつ優一郎はそう答えた。自然と斎姫の手を握る手に力がこもる。水輝はそうか、と笑って身体を起こした。

 

「あなたが渚さんの所有権を主張する根拠の提示を求めます」

 

 そう告げた優一郎の言葉は尻すぼみになった。水輝が上体を起こすと二人の繋がっている筈の部分が見えてくる。水輝の股間も渚の股間も、その性器が完全に消え去っていた。恥骨の部分に至るまで、二人の器が消えている。

 

「これは元々はわたしの作った人形だ。その魂の座、器の所有権を主張するのは間違っているか?」

 

 そう言って嗤いながら水輝が優一郎を見つめる。その目は暗く深い紫色だ。その色はだが、立城のそれとはまるで印象が異なっている。




段落としてはひとまとまりだったのですが、長すぎたので切ってます。
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