※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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このエピソードではエロ単語はガンガン出てきますが、実際にはエロシーンはありません。


ロボット対戦、開戦直前の透と要 1

 異様な叫びがグランドに響く。透はため息をついてテントの中に詰めていた部員達を見回した。グランドの向かいの端にいる筈なのに、要の笑い声がやけに耳につく。

 

「巴。作戦はわかってるわよねっ!」

 

 要の笑い声に目を吊り上げながら透は傍にいた巴に告げた。戦闘用のスーツに身を包んだ巴がびしりと敬礼する。

 

「はいっ! 先手必勝ですっ!」

 

 そう答えた巴に部員達がおお、と感嘆の声を上げて拍手する。すると途端に巴は相好を崩し、ありがとうありがとうと部員達に丁寧に礼を言った。

 

「違うでしょ!」

 

 頭をかきむしって叫んだ透の声に押されたように部員達が静まり返る。

 

「ええええ!? 違うんですかあ!?」

 

 泣きそうな顔で巴が言う。その横ではちなりがともちゃんしっかり、と小声で声援を送っている。そんな二人のやり取りを部員達が興味津々の顔で見つめている。

 

「巴。基本は持久戦よ。今回のバトルは三十分一本勝負で火器どころか剣などの武器さえ一切使用不可のプロレスルールよ。ロボットの基本性能よりも操縦者の技量のほうが重要になってくるの」

 

 すらすらと解説した後、透はびしりと巴を指差した。戸惑ったような顔で頷いていた巴が涙目になってうろたえる。

 

「あ、あの、それってつまり……勝負を長引かせればいいんですか?」

 

 恐々と告げた巴が上目遣いに透をうかがう。

 

「はっきり言うわ。口惜しいけど、正攻法で行ったらあんたの操縦技量ではあのアホ生徒会長に歯が立たないわ。あんたがさっき言った先手必勝の戦法でいった場合のシミュレーションを見せてあげる」

 

 そう告げてから透は部員達の並んだ端にあった端末を操作した。キーボードを叩くと画面に赤と青の二台のロボットが表示される。シミュレート用のそれはコミカルなイラストで描かれている。透がキーボードを操作すると青のロボットが赤のロボットに向かって突っ込んでいった。その瞬間、赤のロボットが青のロボットに足払いをかけ、空中に浮いた青のロボットに殴る蹴るの攻撃を加えた。着地する暇もなく青のロボットが空中で崩壊し、画面にゲームオーバーの文字が現れる。それを透の横で見ていた巴が身震いしてひぃ、と声を漏らした。

 

「こっちのグラフも見て。こちらの強力7号の性能は向こうの3倍に達してるわ。だけど、操縦者の技量を加味したシステムとしての性能を算出すると」

 

 言いながら透は素早く画面を切り換え、グラフを表示させた。続いてキーボードを操作してグラフに要と巴、両者の操縦者の技量を数値化したデータを乗せる。するとあっという間に赤と青のグラフは上下逆の線を示した。それを見ていた巴が顔を強張らせて泣きそうな表情になる。

 

「巴。あのアホはあれでも古武道やら何やら、幼い頃から仕込まれて来てるらしいの。歯が立たなくて当然だから気にしなくていいわ」

「ええ!? じゃ、じゃあ、勝ち目はないってことですか!?」

 

 引っくり返った声で言って巴が泣き始める。部員達が一斉に落胆したため息をつく。その中でちなり一人がだいじょぶだよ、と明るく言って巴の背を励ますように叩く。

 

「だから、勝つために作戦を立てたんじゃないの。あんた、あたしの話、ぜんぜん聞いてなかったのね……」

 

 ため息をつきながら透はやれやれと肩を竦めた。するとはっ、と息を飲んで巴が目を輝かせる。

 

「もしかして長引かせれば勝てるかも!?」

 

 こぶしを握って巴が涙を拭う。

 

「あなたが操縦者として、あのアホに勝ってる部分が一箇所だけあるの」

 

 そう言って透はにやりと口許を歪めた。すると巴が明るい顔になって嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「それは、メカマンコが頑丈なことよ!」

 

 声高に透が告げた途端、並んでいた部員達が一斉に突っ伏す。中には聞きたくない、と耳を押さえる女子生徒までいる。だが言われた当人である巴は目をきらきらさせて頷いた。

 

「はい! 部長の作ってくださったわたしのメカマンコは最強ですっ!」

「いや、あの、ちょっとそういうことを大声で言うのは」

 

 巴が笑顔で断言した直後、男子部員の一人が恐る恐るといった態でそう告げる。

 

「まあとにかく。前回のコネクト事故は覚えているわね? あれを教訓にあたしはあんたのメカマンコを強化改造したわ。三十分どころかこの前の耐久試験では数時間連続でロボットに搭乗しても大丈夫だったでしょ?」

 

 えへん、と咳払いしてから透はごく普通の声に戻してそう告げた。巴がはい、と素直に頷く。だから大丈夫よ、と告げた透を男子部員の一人が振り返る。

 

「でもぶちょー。フル稼働で三十分、タンクに積めた燃料はそれでぎりぎりっすよ?」

 

 手を上げて男子部員が告げる。

 

「ばかね! 今日の勝負は三十分一本勝負だから、それ以上燃料積んでも重くなって不利になるだけなの!」

 

 意見した男子生徒をびしりと指差して透はそう言った。ついでにその男子生徒に近付いて頭を叩く。いてえ、と情けない声を上げて男子生徒が頭をなでさする。

 

「巴、とにかく、逃げて逃げて逃げまくりなさい。こちらから決して攻撃を仕掛けては駄目! 間合いを開いて、攻撃をできるだけ受けないように逃げ回るの」

「了解しました!」

 

 元気よく返事して巴がびしりと敬礼する。ともちゃんかっこいー、と嬉しそうに言ってちなりが拍手する。

 

 不意にハウリングの音が響く。その後、あーあー、と男性の声がした。どうやら始まったらしい。

 

『れっでぃーすえんじぇんとるめん! それでは、第二回、私立清陵高等学校、科学部対生徒会のロボット競技会を開催いたします! このたびの司会はワタクシ、放送部の小池が務めさせていただきます!』

 

 声高に小池とやらが言った後、グランドは歓声と拍手に包まれた。




この辺りは楽しくてノリノリで書いた記憶がありますw
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