いつも要が斜め上にきます。
エロシーンはありません。
「この勝負には教育的指導のルールはないわ! とにかく、逃げる。何がなんでも逃げる。逃げて逃げて逃げまくるわかったわね!」
透の命令に部員達が一斉にはい、と返事する。透はグランドの向かい、ずっと遠くに建っている要の陣営のテントを睨みつけ、胸を張った。
「あたしは、ちょっとあのアホ生徒会長に牽制入れてくるわ。あんたたちだけで準備はできるでしょ?」
言いながら透は不敵に笑ってみせた。部員達が顔を見合わせてはい、と返事する。どうせすぐには戦いは始まらない。プログラムではこの後、校長挨拶だの、来賓代表挨拶だの、さらには余興として何かが催されるらしい。透は強力七号の横を過ぎて要のいるテントに向かった。要と透のロボットはそれぞれカラーリングされている。透の方は青、要のロボットは赤く塗られているのだ。グランドの両端に並ぶ二台の巨大ロボットを横目に透はグランドを横切った。グランド中央に引っ張り出された朝礼台の上では校長が何事かを言っている。それを完全に無視して透は赤いロボットの脇を過ぎた。
制服姿の要がテントの前に仁王立ちになっている。
「元気そうじゃない?」
不敵な笑みを浮かべて透はそう告げた。すると要がふん、と鼻を鳴らす。
「当然ですわっ! あなたも元気そうで何よりよ」
腕組みをして顎を突き出しながら要が偉そうにふんぞり返る。二人の間には緊迫した空気が漂っていた。要のスカートを風が煽り、同じ風が透の白衣の裾をはためかせる。透は大股で要に近付き、無造作に手を伸ばした。いきなりそんな真似をするとは思わなかったのだろう。透に乳房をわしづかみにされた要が悲鳴を上げる。
「無駄にでかいのは変ってないけど、中身はかなり以前とは違うみたいね」
「こっこっこの、無礼者! 何て卑劣な真似を!」
要の乳房を容赦なく揉んでいた透の手を要が乱暴に振り払う。それから要は仕返しとばかりに透の乳房をつかんだ。
「乳房を揉む時はこう! 指先を立てて、力加減を絶妙に、ついでに乳首も刺激しながら揉むのが礼儀というものですわ!」
そう喚きながら要がむにむにと透の乳房を揉みまくる。透は歯軋りして要の手首をつかみ、その手を払いのけた。それから素早く身を寄せて透は要の耳元に囁いた。
「いつの間に優一郎の玩具になったの?」
要の声に驚いたのだろう。幕の張られていたテントから優一郎が姿を現す。それを見止めて透は要から少し離れた。透が囁きかけた側の耳を押さえて要が声高に告げる。
「やはりそうですのね! あなた、優一郎様に気がありますのね!?」
透をびしりと指差し、要が目を吊り上げる。
「あんたが、証拠も無く人のことをヘンタイ扱いするような卑劣な奴だとは思わなかったわ……」
その場によろけながら透は落胆した声で言った。要に並んだ優一郎が笑顔で透に挨拶する。
「姉さんお久しぶりです」
「久しぶりね。元気そうで何よりだわ。今、パパはどうしてるか知ってる?」
笑顔で答えて透は首を傾げてみせた。久しぶりに見るからだろうか。優一郎の雰囲気はまるで以前とは違って見える。容姿そのものは変わっていない筈なのに、妙に洗練されたように見えるのだ。
「父さんは、あっちで実験をしてるようです」
「そっか。なら当分会えそうもないわね」
穏やかな優一郎の答えに透は肩を竦めてみせた。どうやら総一郎は相変わらず家には戻っていないらしい。が、その方が何となく総一郎らしい気がする。思い返せば総一郎はずっと一途に研究を続けてきた。今もなお、新しい研究を続けているならきっと元気なのだろう。
「優一郎、挨拶はこれくらいでいいかしら? この勝負はあたしと生徒会長のものよ。あんたの出る幕じゃないでしょ?」
透はそう言って優一郎に顎をしゃくった。すると優一郎が困ったように笑う。
「いえ。要さんのサポートをずっとしてきましたから部外者扱いは酷いんじゃないですか? 姉さんもパイロットに巴さんを起用してるんだし」
そう言って優一郎はにこやかな笑みを隣に立つ要に向けた。すると要がにっこりと優一郎に笑み返す。
「わかったわ。じゃあとりあえず、あんたは黙っててくれる? あたしは生徒会長に話があるの」
ため息混じりに言って透は要に向き直った。要が一歩、前に出てふんぞり返る。
「わたくし、先のせりふ、証拠もなく言った覚えはございませんわよ! あなた、この学び舎にいる間、さりげなく優一郎様を目で追いかけていたこと、自覚していませんの!?」
透が何事かを口にする前に要がそう叫ぶ。透は疲れたため息をついて額を押さえた。
「あんた。兄弟いる?」
「いませんわ」
即答した要がそれがなにか、と首を傾げる。
「あたし、弟を心配してたんだけど、何かヘンだった?」
「あら。そうでしたの?」
一転して驚いた顔をして要が優一郎を振り返る。要に見られた優一郎は困ったように笑って肩を竦める。ふむ、と呟いて要が再び前を向く。その後、要はスカートのポケットから携帯端末を取り出し、なにやら忙しく操作しはじめた。
これを書いた頃にはまだスマホがなかったのですが、携帯端末、とだけ書けばどーとでもなると信じていました。
実際、そうなってありがたいです(汗)