※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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ロボットバトルの決着がつきます。
エロシーンはありません……と書いて良いのかどうか(汗)
見方によってはエロシーンです。


要VS絵美佳のロボット対戦 4

『降参しなさい! ちょっとあんた、マジやばいわよ! 優一郎、何してるのよ!!』

 

 半ば悲鳴のような透の声が響く。だがそれを受けた要は叫び返した。

 

『絶対に負けませんわ! 敵前逃亡は士道不覚悟、わたくしは降参など致しません!』

 

 凛とした声を発して赤いロボットがぎこちない動きで身を起こす。

 

「あー……ありゃあ、右足関節いっちゃってるわ」

 

 相変わらずのだらしない笑みを浮かべて順は言った。片足を引きずりながらそれでも赤いロボットは青のロボット目指して進んでいく。次第に観客からの歓声は鎮まっていく。観客達は揃って二体のロボットを固唾を飲んで見守っていた。放送席にいる小池も解説を忘れたようにロボットに見入っている。

 

『……いい覚悟ね。わかったわ。巴、これまでどおり間合いをきちんと取って、決して近づかせないように。手を抜いたら失礼よ』

 

 静かな透の声に促されたように、静止していた青いロボットがじりじりと逃げ始める。あはは、と笑って順は指を鳴らした。

 

「やっぱり命がけのしょーぶになっちゃったねえ」

 

 他の客に聞こえない程度の声で順は言った。

 

「どうして、止めないんですか! このままだと要さん……」

 

 二体のロボットを慌ただしく見比べてから奈月がそう言う。やれやれと肩を竦めて順は腰を上げた。右腕に抱いていた立城を奈月に預ける。殆ど這いずるようにして赤いロボットは進んでいる。が、恐らく要の機体は限界を越えて崩壊しつつあるだろう。もちろん、優一郎もそれを止めたいだろうが、生憎と要の機体は今現在、ロボットに直結されているのだ。

 

「んじゃ、ちょっと行って来るかなー……あー、たるーい」

 

 ポケットに手を突っ込みながら順はのんびりと来賓席の並ぶテントを出た。観客は二体のロボットに目を釘付けにされている。順は欠伸をしながらテントの外周をゆっくりと歩いた。

 

 あと七分。時計を見下ろして順は頭をかいた。ゆっくりと歩いて優一郎の詰めているテントに近付く。予想通り、テントの中は大騒ぎになっていた。

 

「優くんっ! 強制停止すればいいじゃないの! どうして放置してるのよ!」

 

 泣きじゃくりながら一人の女子生徒が叫ぶ。おおー、熱いねー、と呟きながら順はさりげなくテントに入った。

 

「止める事はできない。止めたほうが彼女は危ない」

 

 疲れた顔で優一郎が言う。どうして、と告げた女子生徒に順はのんびりと声をかけた。

 

「どーでもいいけど、向こうからロックされてると思うよ? そんな状態で止めたらヤバイんじゃないのかなあ」

 

 平然と告げた順をテントに詰めていた人々が一斉に見る。端末に張り付いていた一人の社員が慌ただしく立ち上がり、礼をする。どうも面が割れていたようだ。はいはい、と苦笑して順はその男性社員に座るように告げた。

 

「多輝、蒼。白銀は眠らせた?」

 

 振り返って優一郎が言う。その視線の先には先ほどのコスチュームに身を包んだ多輝と使い魔の姿があった。テントの隅、敷かれたシートの上に一人の少年が横たわっている。

 

「おう。言われた通りに……でも、こいつ寝かせてどうすんだ?」

 

 訝りの目をして多輝が優一郎に言う。

 

「要さんがピンチになったら暴走する危険性があったからね」

「なんだ。突っ込ませるんじゃないの? 割と穏健だねえ、優一郎くん」

 

 あはは、と笑って順は無造作に横たわる少年に近付いた。多輝が険しい顔をして少年の前に回りこむ。その横に使い魔が並び、同じように鋭い目で順を見る。おおこわ、と笑って順は足を止めた。

 

「あ……かねさんお久しぶりです」

「順って呼んでくれれば弊害はないっしょ? あー、あと六分弱かー」

 

 時計を見ながら順はへらへらと笑って告げた。次いで端末に向かっている社員を含む優一郎のヒューマノイドたちを見やる。

 

「終了後に即時回収、修理に速攻で回すのがベターっしょ?」

「ええ。中途半端な幕切れになったほうが彼女の精神にダメージを与えます」

 

 そう応えて優一郎が頷く。順はテントの前に出てロボットの様子を見た。赤いロボットが走るというよりは歩く速度で青のロボットを追う。それに対応して青のロボットがじりじりと逃げる。ふうん、と呟いて順は口許に薄い笑みを浮かべた。

 

 ま、要ちゃん、悪運は強そうだし。そう順が呟いた途端、物の見事に青のロボットがすっ転ぶ。どういう理由なのだろう。青いロボットの搭乗している操縦者が鈍臭いのだろうか。そう考えた順の目の先で赤いロボットが耳障りな軋みを上げて身を起こし、地面を蹴った。

 

 見ると青いロボットの足元から煙が上がっている。

 

「なるほど。ノーダメージってワケじゃなかったのか」

 

 ぱちん、と指を鳴らして順は納得顔で呟いた。一気に観客席が沸き立つ。それまでの動きがまるで嘘のように赤いロボットは青のロボットに突っ込んだ。ドラム缶を思わせる胴に頭から体当たりしつつ、残っていた手で片腕をつかむ。

 

「右アクティブセンサー、焼損しました」

 

 一人の女子生徒が穏やかな声で告げる。順はにやにやと笑いながらテントの支柱に寄りかかった。赤いロボットが青いロボットに馬乗りになり、残った手ででたらめに殴り始める。青のロボットは逃げようとしているのか、手足をばたつかせている。が、そもそも腕の長さが違いすぎる。

 

「あれじゃ駄目だ。こっちの腕のほうが先に壊れる」

 

 ここまでか。優一郎が苦しむような表情で呻き混じりに呟く。順はあはは、と笑って親指で二体のロボットを示してみせた。

 

「そーでもないみたいよ?」

 

 笑い混じりに告げた順の言葉に優一郎が弾かれたように顔を上げる。要は攻撃手段を転じていた。それまで殴っていた青のロボットのドラム缶状の胴の脇を残った手とぶら下がったままになっている半壊した腕の先端でくすぐり始めたのだ。

 

『きゃはははははは、あっはははははははははっ!』

 

 唐突にスピーカーから巴の笑い声が聞こえてくる。要はそれを聞き取ったのか、残っていた手で傍にあったテントの幕をいきなりつかみ寄せた。支柱のみになったテントの下にいた観客が唖然としたようにロボットを見上げる。赤いロボットがつかんだテントの先端でさわさわと青いロボットの胴をくすぐる。

 

『きゃっ、んふぁはははははははは、あはんっ! あはははは、ううんっ!』

『ほらほらほらほらほら』

 

 巴の笑い声に次第に甘い響きが混ざり始める。くすぐる要の声には雑音が混ざっているが、とりあえずは元気そうだ。

 

「回収班準備したほーがいんじゃないの? どっちにしたって要ちゃんのダメージはけっこーでかいよ?」

 

 くすぐり攻撃を執拗に繰り返す赤いロボットを見つめて順はのんびりと言った。残り時間三分弱だ。

 

「僕は引き寄せの術が得意なんですよ」

 

 順の傍に立っていた優一郎がそう言ってにっこりと笑う。それから優一郎は踵を返した。

 

「地下に戻る。後は頼む」

 

 そう言い残して優一郎がテントから出て行く。おー、と笑って順は優一郎の背中に片手を上げてみせた。これなら仕事は回ってこないだろう。順はへらへらと笑って大きなテントを出た。来賓席に戻って元の席に腰掛ける。奈月の手からさりげなく立城の身体を預かりながら順は椅子の上で身体を伸ばした。

 

『しっ、失礼しました! つい、解説を忘れてしまいました……えーと、残り時間三十秒!』

 

 それまで途絶えていた小池の声が響く。赤いロボットはテントや手を使って巧みに青いロボットをくすぐっている。

 

『だ、だめっ! そんなとこ! ああんっ!』

「感じやすいってのが裏目に出たねえ」

 

 順は笑いながらがんばれー、と呑気な声をかけた。観客たちは総立ちになっている。順は隣に座る奈月を見て苦笑した。奈月は真っ赤になって俯いてしまっている。

 

『ほーらほらほら! 乳房を揉む時は指先を立てて! 乳首を擦りながら! さりげなーくさわさわさわさわさわさわさわ』

 

 スピーカーから響く要の声は、雑音こそ混ざっているがとても楽しそうだ。組み敷かれた青いロボットは手足をひくつかせている。スピーカーから流れてくる巴の声に切羽詰ったものが混ざる。

 

『やっ、あっ、だめっ! くうぅ』

 

 切なそうな巴の声が響くと何故か観客席が騒然となった。どうやら別の意味で巴は人気を集め始めているらしい。

 

『残り十秒! 九! 八!』

 

 小池の叫びがスピーカーから流れる。

 

『さあ、降参なさい! 一気にいかせてさしあげてよ!』

 

 要の叫びが響いた後、唐突に赤いロボットが動いた。青のロボットの両足の間に左足を挟み、小刻みに震わせる。どうやら電気あんまのつもりらしい。

 

『あっ、ああんっ! んっ、んふぅっ!』

『五! 四!』

『このこのこのこのこのこのこの!』

 

 赤いロボットが青のロボットの片足をがっちりつかみ、ドラム缶状の胴を下から足で連打する。あーあー、と笑って順はため息を吐いた。

 

『ああんっ! んっ! くふうぅ! いいっいいのぉ! ああああんっ!』

『0! 時間です! 両者、離れてください!』

 

 レフェリーよろしくマイクをつかんで小池がグランドに駆け出す。青のロボットを組み敷いていた赤いロボットがよろめきながら立ち上がる。対する青のロボットは地面に横たわったまま手足をぴくぴくと動かしている。その両のロボットを交互に見つめ、小池は赤いロボットの立つ側の左腕を天に振り上げた。

 

『判定により、勝者、如月選手!』

 

 小池が叫ぶように言った直後、赤いロボットは残っていた手を天に向かって突き上げた。その瞬間、観客達が一斉に歓声を上げた。赤いロボットはだが、手を天に突き上げた格好のまま、ぐらりと後ろに向かって倒れていった。




実はこれがきっかけになったり色々先々であります。
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