※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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多輝の視点でエピローグです。
エロシーンはありません。

エピローグは長かったので7分割されてます。すみません(汗)


エピローグ
エピローグ 1


 その日の朝は、近頃にしては珍しく晴天に恵まれた。朝一番で研究施設に現れた水輝と紫は学校に行く準備をしていた優一郎に揃って挨拶をした。ちなみに立城という名はもう使わないそうで、多輝も紫と呼ぶようにとその時に言われた。客室に残っていたスーツケースを引っ張り出した水輝が優一郎に言う。

 

「いいか。おれの居ない間、絶対、絶対、気をつけろよ!? 間違っても変なのに引っかかるんじゃないぞ!」

 

 やけに気合を入れて言う水輝に優一郎は苦笑していた。その傍で紫が嫌に不機嫌な顔をしていたのが印象的だった。それから二人は連れ立って旅行に出かけて行った。温泉に一週間ほど行くのだと多輝はその後で優一郎から聞いた。

 

 それから一週間の間、周囲はやけにばたばたしていた。グランドの片づけるために大型のトラックやトレーラー、クレーン車が現れる。多輝は片付けを蒼と共に手伝った。片付け要員の中には白銀の姿もあった。

 

 グランド整備は二日ほどで終了した。そして清陵高校はごく当り前の授業を開始した。要や絵美佳は三年生のため、殆ど学校に来なくなったという。清陵高校では三年は一月から授業もなくなり、自由に講義を受講することが可能なのだ。

 

 そんな中、次期生徒会役員を決めるための選挙が始まった。まずは立候補者を立てて一週間の選挙活動期間を設ける。要や野木、周藤といった現職の役員はこの選挙に関わる全ての職務から除外される。万が一の不正行為を防ぐため、要が決めたルールだ。現職生徒会役員に代わって働くのが選挙管理委員、及び監査たちだ。彼らは選挙に関わる予算などを管理し、立候補者が平等に選挙活動を行えるように指揮をとる。

 

 選挙活動期間、立候補者たちは放送室から中継で演説できる。その時間は昼休憩と放課後に限られているが、それぞれが持ち時間をフル活用してなかなか熱気に満ちた演説をしていたようだ。彼らに斎姫の姿が混ざっていたことは意外だったが、多輝は何となく納得もした。優一郎に勧められて立候補したのだと斎姫はキッチンで漏らしていた。その時の斎姫の表情はとても嬉しそうだった。きっと斎姫は優一郎につくすことだけが生きがいなのだ。言われた通りに動き、優一郎の道具として存在する斎姫のことを多輝は心から尊敬した。

 

 皆が学校に行って留守の間、多輝は蒼と頻繁に手合わせした。が、やっぱりまだ本気を出されるとかなわない。だが蒼は何度も勝負を挑む多輝のことをうっとうしがったりはせず、笑顔でそれに応じてくれる。もしかしたら蒼はそんな風に一緒にトレーニングすることが嬉しいのかも知れない。

 

 やがて選挙が行われ、ぶっち切りの得票で斎姫が生徒会会長に当選した。新生徒会役員の面々を見た要が高笑いしたという話も多輝は聞いた。どうも要は最初からそのメンツが当選することを読んでいたらしい。やけに嬉しそうな笑い方だったというのが野木の言だ。

 

 その野木は近頃やけにそわそわしている。どうも地下一階に上がった梨恵と出くわした時から様子がおかしいのだという。一体、何事かと周藤が問うのだが、梨恵と一緒の空間にいるとどうも野木の喋り方は歯切れが悪い。要は訳知り顔でにやついているし、きっと野木の気持ちに気づいているのだろう。

 

 二月になり、寒さも一層厳しくなった頃、要は大学の受験のためしばらく研究施設に来なくなった。だが要曰く、それは本命ではないらしい。本命にはとっくの昔に受かっているのだと要はいっていた。じゃあ、なんで受験するんだよ。そんな多輝の問いに要は胸を張って応えた。

 

「決まっていますわ! 見聞を深めるためです!」

 

 どうも要の思考回路は自分とは全く違う動きをしているらしい。受験など出来るだけしたくないものではないのか。そう考えてはみたが、多輝はそれは言わずにおいた。受験料さえ払えば大学側は受験者を拒みはしないだろう。男漁りが目的なのではないかともちらりと思ったのだが、多輝はそれも言わずにおいた。

 

 あれから優一郎は定期的に多輝と共に眠るようになった。毎日は無理だからという優一郎の言葉に多輝は素直に頷いた。不思議なことに優一郎が忙しい時には多輝の身体は男性のそれに戻ってしまうのだ。だがそのことを多輝は特に疑問にも思わなかった。男の時には由梨佳を始め、女を抱けばいいだけの話だ。そして優一郎はそんな多輝を止めることもなかった。

 

 旅行から帰ってきても水輝は相変わらずちょくちょく研究施設に顔を見せる。だが手ぶらで来るのはさすがに申し訳ないとでも思ったのか、水輝は来るたびに手土産をぶら下げてきた。食材を持ってきてくれるのはとてもありがたいのだが、全力でそれを遠慮しなければならない時もある。一度など酷いもので、水輝は鯨を丸ごと研究施設の小さなキッチンに転移させようとしてくれた。その場にいた全員で必死で水輝を止め、事なきを得たが、止められた方の水輝は不思議そうに首を傾げていた。だが幾ら一番小さな種類だといっても鯨一頭というのはどうか。しかも丸ごととなるとそれを誰かが捌かなければならないだろう。そう喚いた多輝に水輝は平然と言ってのけた。

 

「あー? 苺なら魔法でちゃっちゃと捌けるだろ?」

 

 さすがにそれは思いつかなかったが、どっちにしろ鯨を研究施設に入れるのは遠慮願った。




鯨とか持ってこられてもね……w
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