エロシーンはありません。
(シャワーは使いますけどw)
電話を切って水輝は慌てて布団に潜った。枕元に放られた電話機が水輝の動きを受けて揺れる。
「奈月! おい、奈月! 起きろ」
布団に潜って水輝は隣に眠っていた奈月を揺すった。ついでに布団を跳ね上げてベッドを飛び降りる。寝ぼけた奈月が寒くないよう、水輝は手早く暖炉に火を入れた。水輝の飛ばした炎が薪に燃え移り、あっという間に火が大きくなる。
「水輝……さん? あっ、おはようございますっ」
寝ぼけ眼を擦りながら奈月が小さく頭を下げる。奈月もやはり裸のままだ。水輝はおはよう、と声を返しながら慌ただしくベッドの下に放られていた下着を着けた。シャツを羽織ったところで奈月を抱え上げる。
「とにかくシャワーだ」
「は、はいっ!」
腕の中で驚いたように目を見張る奈月に頷いてから水輝は急いで部屋を出た。今朝方まで交わっていたために二人ともかなり身体が汚れているのだ。水輝は奈月を抱えたまま、急いでバスルームに向かった。
まだ朝の冷え切った空気に満たされる屋敷内を駆けて水輝は脱衣室に飛び込んだ。慌ただしく服を脱いでバスルームに入る。
「ロールスは昨日来たし……後は問題なかったかな」
口の中で呟きながら水輝はシャワーの湯を出した。同時に大きなバスタブに湯を張り始める。温度を調節して蛇口を全開にしてから水輝は奈月に向き直った。
「あの、ありがとうございます」
奈月がそう言って恥ずかしそうに胸元や股間を隠そうとする。が、思い直したのだろう。その手を下ろして頬を染めながら水輝を恥ずかしそうに伺う。水輝はああ、と苦笑してシャワーの湯を静かに奈月の身体に当てた。
「何だ。恥ずかしいか?」
肩から静かに奈月の身体を流しながら水輝は笑いかけた。すると奈月が照れたように視線を泳がせる。
「恥ずかしいですけど、水輝さんがご覧になりたいのでしたら」
頬を染めて奈月が小声で言う。水輝は苦笑して奈月の髪にシャワーをあてた。長い髪にまんべんなく湯をかける。
「見てるとやりたくなるんだけど、ちょっと今日は勘弁ね」
そう言いながら水輝は手にシャンプーを取って丁寧に奈月の髪を洗い始めた。シャワーは出したままにして奈月の身体に当たるよう、ヘッドを壁のフックに固定する。そのまま水輝は出来るだけ優しく奈月の髪を洗った。
「あっ……。みずきさん……」
奈月がうっとりした顔になる。水輝は奈月の顔にシャンプーの泡がつかないよう気をつけながら髪を梳くようにして洗った。髪を指で洗いながら軽く奈月に口づける。
泡を綺麗に落として今度はリンスをつける。奈月が顔を洗っている間に水輝は自分の頭にもシャワーの湯をかけた。
「運転は……まさか重森のじいさんに頼む訳にもいかないしなあ」
そうぼやきながら水輝は手早く自分の髪を洗った。その間に奈月がスポンジを取り上げてボディソープをつける。
「わたし、とても幸せです」
ほっとしたように呟く奈月に笑みかけて水輝はシャワーヘッドを取り上げた。奈月の髪についたリンスを丁寧に流す。濡れた髪を背中にきっちり払ってから水輝は奈月の手にしていたスポンジを取り上げた。
「おれも奈月が戻ってきて嬉しいよ。……っと、こっちはもういいかな」
水輝はそう言ってから蛇口を捻ってバスタブに注がれていた湯を止めた。出来るだけ優しく奈月の身体を洗う。先に奈月の身体を流してから、今度は水輝は自分の身体を洗い始めた。バスタブの湯に浸かった奈月が嬉しそうな笑みを浮かべて水輝を見つめる。
「わたし、夢を見たんです。とても幸せな夢でした」
バスタブの縁に寄りかかりながら奈月が呟くように言う。へえ、と笑って水輝は奈月に目をやった。
「どんな夢?」
何気なく問いながら水輝は泡だらけの身体をシャワーで流し始めた。湯ですっかりバスルームは暖まっている。
「えっと、あの、家族がいるんです。わたしはまだ幼くて、でもお父さんとお母さんと、お姉さんと、お兄さんがいて」
「うわっ」
頬を染めて言葉を切った奈月の目の前で水輝はシャワーヘッドを取り落とした。ははは、と乾いた声で笑いながらタイルに落ちたシャワーヘッドを取り上げる。改めて身体を流しながら水輝は奈月に笑みを向けた。
「そ、それで?」
聞かない方がいいかな。そうは思ったが水輝は奈月を促した。すると奈月がぱっと明るい顔になって頷く。
「あのっ、お兄さんが水輝さんだったんです。とっても優しくて、わたしと遊んでくれて、いろんな事を教えてくれて」
「あー……」
力ない声を返して水輝はそっとため息をついた。どうやら奈月の意識は莢花のそれと完全にリンクしていたらしい。確かに身体に入られたのだから、多少、意識がつながっても仕方がないだろう。そう思いながら水輝は手早く身体を流し、奈月の入っているバスタブに入った。
「お姉さんも、優しくて、三人で仲良く遊んで、でも……」
腰を下ろして膝の上に奈月を抱える。少し寂しそうに俯いた奈月に水輝はそれで、と声をかけた。
「いえ、たいしたことじゃないんです。良く、思い出せないですし」
「そっか。じゃあ聞かない方がいいのかもな」
結局のところ、莢花の命は自分が散らしたのだ。そこにどんな思いがあったとしても、その事実に変わりはない。奈月に要らぬ負担をかける必要もないし、心配させることもない。水輝はそう判断して話を中途で打ち切ろうとした。幸せな夢だったという割に奈月の表情は少し沈んでいる。そのことに気付いて水輝は手を組んで水鉄砲を作り、奈月の顔に軽く湯をかけた。小さな悲鳴を上げた奈月が濡れた顔を拭って困ったように笑う。だがその笑みもすぐに引っ込んでしまった。
奈月は若干どころかものすごく影響を受けてますw