※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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同列か同列じゃないのか。
エロシーンはありません。


奈月の夢と渚の立場 3

「おねえ……いえ、渚さん。わたしはとっても素敵な笑顔だと思いました」

「あら、そうかしら。水輝には意地悪い笑いの方が似合うと思うけど」

 

 背後で意見を交わす二人を無視して水輝はシャツを取り上げた。手早く着込んでからたんすの引出しを探る。普段は使わない引出しの奥の方を探りながら水輝は声だけを背後に飛ばした。

 

「おれの笑い方なんて何でもいいだろうが。それより渚。奈月の着替えを手伝ってくれ」

 

 水輝に言われた渚が静かにたんすに近付く。その後から慌てたように奈月も渚を追った。傍に近付いたところで渚が潜めた声で言う。

 

「……真っ赤になってるわよ、水輝」

「うるせえ! とにかく奈月に服をさっさと着させろ!」

 

 憤りに任せて怒鳴りながら水輝はたんすの引出しからワイシャツを取り出した。白地に薄く細いストライプの入ったシャツを手早く着込む。その間に渚は奈月のたんすを探って一揃いの下着を取り出した。

 

「とても仲がいいんですね。良かったです」

 

 そう言って奈月がにっこりと笑う。水輝はシャツのボタンを留めながら無愛想に言った。

 

「仲がいいとかじゃないと思うが」

 

 前のボタンを合わせてから袖口をカフスで留める。銀で出来たカフスに苦戦していたところで渚が振り向いて水輝のシャツに手を伸ばした。

 

「もう。相変わらず不器用ね」

 

 顔をしかめて口の中でぼやきながら渚が水輝のシャツの袖口を留める。水輝は渚に負けない渋面でうるさい、と呟いた。その後ろでは奈月が嬉しそうに下着を着けている。

 

「渚さんは水輝さんの恋人に正式になられたんですよね? 本当に良かったです」

 

 笑顔で奈月が言う。それを聞いた水輝は渚と同時に顔を強張らせた。渚がゆらりと振り返って奈月に向き直る。水輝は無言でその場から離れ、クローゼットに向かった。

 

「それは違います。私は水輝の愛人になっただけです」

 

 そう言って渚が水輝にそうよね、と振る。水輝は渋い顔でそうだよ、と答えた。部屋の壁にはめ込まれたクローゼットを開けて並べられたスーツをしばし見る。さすがにタキシードはやりすぎか。水輝がそんなことを思っていると困惑した奈月の声が聞こえてきた。

 

「あの! 愛人と恋人って違うんですか?」

「違います」

 

 渚が即答する。水輝は顔をめいっぱいしかめて二人を見た。渚は慣れた手つきで奈月の下着を整えている。

 

「ニュアンス的には愛人ってのは本命って意味じゃないな。恋人にはその意味が含まれているように思うが」

 

 渚が説明してくれないので水輝は仕方なく自分から奈月にそう説明した。すると奈月が更に困惑した面持ちになって水輝と渚とを見比べる。

 

「えっと、水輝さんはいろんな方をお好きですよね? 一番好きなのは紫さんですけど、その他の方も好いてらっしゃるから。紫さんが恋人で、その他の方が愛人ということですか?」

 

 真剣そのものの顔で奈月が言う。それを聞いた水輝は思わずクローゼットの中に頭を突っ込んだ。動揺を必死で隠して何とか身体を立て直し、振り返る。するとそこにはまだ真剣な顔をした奈月と、うろんな眼差しをした渚がいた。

 

「いっ、いや、あの、その」

 

 水輝は慌ててクローゼットの中身に向き直ってため息をついた。何故こうもあっさりと奈月はそんなことを口にしてくれるのだろう。水輝は黒に近い藍色のスーツを選び取ってスラックスに足を通した。

 

「ええと、とりあえずはその答えって保留にしてもいい?」

 

 愛想笑いを浮かべて水輝は奈月にそう問うた。渚にストッキングをはかせてもらいながら奈月が不思議そうに首を傾げる。渚が深々とため息をついて水輝を横目に見た。

 

「あっ、はい。とりあえず、渚さんとか、風の女王様とか、千佳さんとかは愛人だという理解は正しいですよね?」

「うああ」

 

 水輝は力なくその場にへたり込み、がっくりとうなだれた。穿くのが中途になっていたスラックスが膝までずり落ちる。

 

「違うんだ……微妙に同列じゃないんだ……」

 

 口の中で呟いた水輝に乾いた笑いが届く。のろのろと顔を上げた水輝は笑った渚を睨みつけた。

 

「ばかね。客観的に見れば同じ事よ」

「うるさいな、もう」

 

 ばかにしたように言った渚に文句を言いながら水輝はその場に立ち上がった。ずり下がっていたスラックスをきちんと引き上げ、ボタンとファスナーを留める。渚は白い一式の下着を奈月に着せたところでクローゼットに歩み寄った。手を引かれた奈月が不思議そうな顔で水輝と渚とを見比べる。

 

「本当に、仲がいいんですね……」

「まあ、腐れ縁と言ったところですか。……それより水輝。姫君はドレスでいいの?」

 

 さらりと答えてから渚が水輝に話を振る。水輝はそれには答えず、隣のクローゼットの扉を開いた。オーダーメイドで作らせた奈月の服が一式、中には詰まっている。それを指差しながら水輝はスーツの入ったクローゼットに向き直った。

 

「似合うのをセレクトしてくれ」

「判ったわ」

 

 そう言って渚がクローゼットの中身と奈月を慎重に見比べる。




水輝の中では同列じゃないらしいですw
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