※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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よくあるセリフを言わせてみたかった、というかw
あ、エロシーンはありません。


おかあさんをおれにください。

「これでいいのか?」

「ええ。お忙しいと思いますが、機会があったら渚さんを抱いてあげてください。かなりストレスが溜まっています」

「おれもそうしたいのは山々なんだがな」

 

 そう答えて水輝が俯いて深々とため息をつく。一体、どこで間違ったかな。水輝がそう呟くのを耳にして優一郎は首を傾げた。

 

「マスター登録しましたので、渚さんは水輝さんの命令には逆らえません」

「いや、おれも何度か抱こうとしたんだ。でもその度に電話が」

 

 うんざりしたように言って水輝が顔を上げる。無視すればいいんだろうけどな。そうぼやきながら水輝が肘杖をつく。

 

「それでは、もう一件、その電話に関係あると思われるほうについて協議しましょう」

「やっぱ、お前の耳にも入ってたか」

 

 疲れたように笑って水輝が肩を竦める。それから水輝はため息をついてソファに深く寄りかかった。片方の腕を伸ばして背もたれに預け、もう片方の手でシャツの胸ポケットを探る。水輝が煙草に火をつけたところで優一郎は告げた。

 

「はい。如月老から提案を受けて、どのような状況にでも対応できるように、戸籍関係の情報をきちんと整理して再操作しました」

「あ、悪いな。そっちの方まで頭が回らなかった」

 

 ごめん、と言いながら水輝が頭を下げる。それから水輝はふと思い出したように言い足した。

 

「そういえばまだ訊いてなかったんだが」

 

 逆に質問され、優一郎は首を傾げた。出された紅茶を啜る。どうも渚は相当に気分を害していたらしい。紅茶はかなり大雑把にいれられている。渋みの強い紅茶に顔をしかめ、優一郎はカップをテーブルに戻した。

 

「なんでしょう?」

「ええと、お母さんをおれにください」

 

 急に生真面目な顔になって水輝が低い声で言う。それを聞いた優一郎は思わず苦笑した。

 

「僕はかまいません。本人を呼びましょうか?」

「いや、いい。まだ指輪が出来てないんだ」

 

 唸って水輝が口許を手で覆う。しかめ面でそっぽを向いた水輝に優一郎は笑みかけた。

 

「指輪はいつごろできあがりますか?」

「最速で七日後って言ってたから……あと五日はあるのか」

 

 指折り数えて水輝が答える。なるほど、と優一郎は頷いた。間が悪い。五日後と言えば要と絵美佳の勝負の日の前日だ。最速でそれだと水輝が言うのだから、下手をすると日が重なるかも知れない。

 

「わかりました。母上の身柄はきっちり抑えて、逃げないようにしますから」

 

 ご安心下さい。そう言って優一郎はにっこりと笑った。すると水輝が目をしばたたかせる。

 

「え? 立城、お前のところにいるんだよな?」

 

 それなら別にそんなに苦労しなくても逃げられないだろ。水輝が不思議そうにそう付け足す。後は車で乗り付けて。口の中でぶつぶつと言っている水輝に優一郎は苦笑して首を横に振った。

 

「今、旅行に出ているんです。ただし、きちんと緊急事態が発生した場合の対応について約束していますから」

「旅行だあ!? あいつ、何してるんだ。優一郎のところにいろって言ったのに」

 

 呆れたように言って水輝が頭をかく。次いで、水輝は頭を抱えて喚いた。

 

「人がどんな苦労してロールス買ったと思ってんだ! そういう時の金は自分で作らなきゃ意味がないと思って、おれは血まで売るような真似を!」

 

 ひとしきり喚いてから水輝ががっくりと肩を落とす。それを聞いた優一郎はようやく理解した。近頃、裏の世界でやたらと高品質の宝石が出回っていたのだ。それらは恐らく水輝が全て作り出したものだったのだろう。

 

「水輝さん。あと、マスコミの対応ですけど、もし力で抑えつけようとしているなら即刻止めてください。逆効果です」

「おれは直接的には何もしてないんだが……。まあ、判った。肝に銘じておく」

 

 そう言って水輝が片手を上げてみせる。水輝はカップに残っていた薄茶色の茶を飲み干し、ため息をついた。

 

「何でこんなに面倒なことになっちまったかなあ……」

 

 ぼんやりと宙を見つめて水輝がしみじみと告げる。水輝の唇の端で煙草が不安定に揺れる。優一郎はしばしそれを見つめてから言った。

 

「とりあえず、今から数日後、遅くとも一週間後には記者会見を行うと、それだけを公式にマスコミに流します」

「了解。もう、ここまで来ると秘密裏に事を進めるなんて出来ないだろうしな」

 

 あーあ、と落胆の声を漏らして水輝が俯く。きっと水輝は誰にも報せるつもりはなかったのだろう。下手をするとごく限られた周囲の者にすら水輝は報せたくなかったのかも知れない。

 

「それでは、水輝さんはとりあえず、渚さんを抱いてご機嫌取りでもしていてください。僕は母上の身柄を確保します」

 

 にっこりと笑って優一郎は立ち上がった。はいはい、と水輝がやる気なさそうに手を振る。優一郎は水輝に挨拶変わりに礼をしてから転移した。




ここでやっと水輝は立城がどっか行ってしまってることに気がつきます。
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