※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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説明続き~。
エロシーンはありません。


一段落したので色々、考えないと 3

「母上が居てくれて正直助かってます。冬休みももう終わりですし」

 

 優しい口調で優一郎が言う。そろそろ学校も始まる。そうしたらまた優一郎や斎姫、要たちは地上の学校に通うことになる。そうだね、と呟くように答えて立城はそっと宝石箱の蓋を閉じた。

 

「君たちももうじき高校三年生か。時が経つのは早いね」

 

 言いながら立城は宝石箱を取り上げて優一郎に差し出した。

 

「要さんはもう卒業ですね。次の生徒会長は誰になるのかなあ」

 

 宝石箱を受け取りながら優一郎が感慨深そうに答える。そうだねえ、と立城は首を傾げた。

 

「生徒会の構造はかなり変わるんじゃないかな。要さんから代変わりするとなると」

 

 清陵高校の生徒会役員は全て生徒たちの選挙で決められる。それは立城があの頃、生徒会会長を務めていた時から変わりない。生徒たちの自主性を重んじるという学校の方針はそこにも活かされ、教師達は一切の口を挟まない。もちろん、選挙のルールというものも存在するが、それらも全て生徒たちの手で決められるのだ。

 

「水輝さんが今も通っていたら確実に生徒会長になってたでしょうけどね」

 

 笑い混じりの優一郎の言葉に立城は苦笑して首を振った。

 

「水輝はやらないと思うな。他薦されても本人にその意志がなければ候補者にはならないからね」

 

 あの頃、立城は吉良瀬を背負って立つに当たって企業体を動かすノウハウを全く持っていなかった。そんな立城がシミュレートの場として選んだのがこの清陵高校だった。この地を開発しつつ、一方で学校という組織を作り上げる。それは立城にとってとても楽しい時間だった。

 

 吉良瀬の当主にならないのか?

 

 あの七日間の中で真也にそう言われなければ、恐らく立城は吉良瀬の当主として立つ気にはならなかっただろう。

 

「斎姫にさせてみようかな」

 

 ぽつりと優一郎が呟く。立城は苦笑してメンテナンス台に横たわる斎姫を見た。斎姫は裸で股間を晒しながら眠りについている。

 

「前評判はいいだろうしね。要さんに推薦してもらう、という形を取れば悪くないと思うよ」

 

 そう言って優一郎に目を戻し、立城はゆらりと手を伸ばした。宝石箱を支える優一郎の手にそっと触れる。指先に伝わってくる体温がとても心地いい。

 

「要さんと言えば。諜報部はどうする気なのかな? 如月の者も居るみたいだし」

「如月は吉良瀬の影だからね。当然、斎姫さんにも誰か護衛がつけられている筈だけれど」

 

 今はきっと優一郎は考えることがたくさんある。この研究施設を中心とした組織を構成するに当たり、様々なことを考慮しなければならないのだ。立城はそうだよね、と呟いて優一郎に触れていた手をそっと下ろした。白衣のポケットに手を入れて優一郎に微笑む。

 

「女性諜報員のヒューマノイド化も視野に入れるかな」

 

 優一郎が思案顔のまま告げる。立城は頷いた。

 

「そうだね。役割は分けておいた方が何かと便利だし……」

 

 振り返って鈴を見つめる。如月の者として教育された鈴には恐らく諜報活動のノウハウが叩き込まれている。今はまだ、知識と経験がすりあわされていないようだが、じきにそれも改善されるだろう。尤もそれは任務に当たって経験を積めば、の話だ。立城は鈴を見つめてそう告げた。

 

「とりあえず、春にはヒューマノイドの数は百体を超える規模になりますからね。組織をきちんとしないと」

 

 立城の言葉に頷きながら優一郎が告げる。その言葉には優一郎のやる気がこもっているように思える。立城はそうだね、と笑って優一郎を見た。

 

「さすがに僕の使い魔も百はいなかったからね。大変そうだけど君なら何とかしてしまいそうだね」

 

 そう言って立城はさりげなく優一郎から離れた。優一郎が手にしていた宝石箱を棚にしまいこむ。立城は横たわる彼らの顔を順繰りに眺めた。

 

「基本的に、ピラミッド型の組織を形成するしかないと思っています」

 

 そう説明しながら優一郎がパイプ椅子を開いて腰掛ける。立城はそれをちらりと見やってから頷いた。

 

「そうだね。命令系統をきちんとしないとね。幾ら全ての機体のマスターが君とは言っても、君一人で全てに命令を下す訳にはいかないだろうし」

 

 かつての桜のようなものだろうか。そう思い起こして立城は苦笑した。いや、桜は今の優一郎に立場が近かったのかも知れない。桜は立城の使い魔の全てを統括していた。あれは立城にとっては特別の存在だったのだ。それ故、桜は他の使い魔たちより力ははるかに強かった。力のない龍神に比べれば桜は格段に強かったのだ。

 

 そして桜の命令の許に他の使い魔たちは動いていた。立城の使い魔たちはその属性から全てが植物を元に作られている。この国の四季に応じて命令系統は分かれていたのだ。そしてそれを桜が統括していた。下の者たちは桜のことをお姉さまと慕っていたようだ。言えば立城の使い魔たちは大人数の姉妹のようなものだったのかも知れない。

 

「ヒューマノイドは機械ですから、そのあたりの設定は簡単です。命令系統をプログラムで設定すればいいんですから」

「あ、そうか。そうだよね」

 

 優一郎に説明されて立城は困ったように笑って頭をかいた。ごめんね、少し惚けてたみたいだ。そう言葉を付け足して立城は静かに笑いを納めた。

 

「人間の関わる組織よりはずっと運営は楽ですよね。問題は性欲の処理ですね。まあ、ヒューマノイド適性のある女性はレズ行為も受け入れ易いから……。いや、もう割り切ってレズ属性を標準プログラムに加えてしまうか」

 

 顎に手を当てて優一郎が呟くように言う。考えを巡らせながら喋っているのだろう。優一郎のせりふは自然と尻すぼみに消えかける。立城は肩を竦めて苦笑した。

 

「男性の比率が圧倒的に低いよね、ここは。君と多輝だけ? まあ、多輝は男性と言い切るのはちょっと乱暴だけれど」

 

 ヒューマノイドはその特性から性行為とは切っても切り離せない関係にある。ストレスが溜まれば当然、それを解消しなければならない。人のようにストレスの度合いが曖昧ではない以上、その作業は絶対不可欠だ。

 

「人に近いボディを持っているなら、人間相手のセックスも可能ですけど、人とのセックスはトラブルの元ですからね」

「まあ、確かに相手は選ばないとならないよね」

 

 そう呟いて立城はこっそりため息を吐いた。僕も外で誰か食べてこようかな。そう胸中で呟く。機体を修復してもらって以来、立城はずっと性欲を抑えようとしてきた。優一郎の手伝いに没頭することである程度は何とかなっていたのだが、さすがに機械の身体では気合だけで乗り切ることは到底出来ない。

 

「メイドタイプはほとんどレズかバイセクシャルで、性欲のはけ口として機能する事を前提に作って有ります。どうです? 抱いてみますか?」

 

 優一郎がにっこりと笑う。立城は苦笑して首を横に振った。

 

「ううん。ごめんね」

 

 アレクサンドライト。あの宝石箱にはそれだけがなかった。緑色の美しいエメラルドは入っていたのに、それだけがない。アレクサンドライトは言えば、立城の紫宝珠を示す石なのだ。

 

 立城は静かに工作室を横切った。硬い床が高いヒールを下ろすたびに特有の音を立てる。長い髪を背に払い、立城はドアのところで立ち止まった。肩越しに優一郎を振り返る。

 

「僕、部屋に戻っているね」

「はい、母上。何かご用がありましたら、通信機で連絡ください」

 

 優一郎がにっこりと笑う。立城はありがとう、と微かな笑みを返して工作室を出た。




まあ、立城は……w
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