※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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ヤバい感じの二次な香りw
エロシーンはありません。


カードキャ○ターいちご? 2

「別に前みたいに呼んでもいいけど? わざわざ様つけられるほどの身分じゃねえし」

 

 あっさりとそう言って水輝が口許に静かな笑みを浮かべる。多輝はじっと水輝の表情を見て唇を引き結んだ。多輝が生まれる以前から由梨佳と水輝が知り合いだったのは何となく判る。そうでなければ多輝に水輝が何かを仕掛けることは出来なかっただろう。そもそも水輝は立城とも昔からの知り合いなのだ。

 

 考えるうちに多輝の顔つきは険しくなっていった。そんな多輝を見ていた由梨佳が更に動揺したように視線を泳がせる。だが多輝はそんな由梨佳の様子には気づかなかった。水輝を睨みつけて怒りに肩を震わせる。

 

「後はー……。まあ、衣装を作ってくれた子には詫びるとして」

 

 苺限定だしなあ。呑気に言ってから水輝が多輝をちらりと見る。

 

「思考がだだ漏れだな、苺。別におれは人の女には興味ないぞ?」

「そんなこと言ってねえだろ!?」

 

 即座に怒鳴り返した多輝の頭を唐突に水輝がつかむ。何をされるのかと身構えた多輝の頭を何故か水輝は撫でた。水輝の意図がつかめず、多輝はあんぐりと口を開けてその場に硬直した。

 

「はい、可愛い可愛い」

「ばかにするなあ!」

 

 多輝はそう怒鳴って発作的に力を放とうとした。多輝が生んだ紺色の光はだが、水輝に届く前にあっけなく散ってしまう。はいはい、と苦笑して水輝が多輝に顔を寄せる。間近に迫ったところで水輝は口許に人の悪い笑みを浮かべて言った。

 

「お子様」

「畜生、てめえ! ばかにするのもいいかげんにしろよ! カードとか返せ!」

 

 叫んで水輝の手を振り払い、多輝は手を突き出した。その手と多輝とを見比べてから水輝がのんびりと優一郎を見る。

 

「こう言ってるが、どうする?」

「自分の手で取り返すのが妥当かなとか」

 

 笑い混じりの優一郎の返事を聞いた多輝はよし、と気合を入れた。いったん水輝から飛び離れてから畳を強く蹴る。一気に水輝に迫った多輝は素早く右手を繰り出した。身構えるでもなくその場に立っていた水輝が多輝のこぶしが届く前に姿を消す。転移したのか、と多輝が舌打ちをした瞬間、後ろに嫌に大きな気配が現れた。

 

「阿呆。転移した訳じゃねえ。単純に走っただけだ」

 

 それだけ言って水輝が多輝の腕を取る。右腕を捻り上げられて多輝は思わず呻いた。激しい痛みに汗が吹き出す。自然と膝が折れ、多輝はその場に崩れ落ちた。

 

「うーん……。封じてるにしても鈍すぎるなあ。やっぱお前、おれの言う通りにした方がいいと思うぞ?」

 

 呆れたような面白がるような口調で水輝が言う。多輝は怒りを込めて水輝を見上げ、強引につかまれた手を動かそうとした。

 

 不意に痛みが完全に消える。急に水輝が多輝の手を放したのだ。

 

「水輝さん、お任せしますよ」

 

 優一郎がのんびりと茶を啜りながら微笑む。へえへえ、と間延びした返事をしながら水輝は天井を仰いだ。カードは水輝の周辺に浮かんだままだ。多輝は待て、と掠れた声で言いながら腰を上げた。だがそれ以上、動けない。急に身動き出来なくなった多輝は目を丸くして息を飲んだ。

 

「由梨佳さんは優一郎の傍にいろよ。あんた、時々無茶苦茶するからな」

 

 苦笑して水輝が由梨佳に声を投げる。由梨佳はその言葉に戸惑いの表情で頷き、優一郎の傍に寄った。だが動けない多輝にはその様子すら見ることが出来なかった。どうやら身体を完全に水輝に縛られているらしい。多輝の身体の周りにはいつの間にか青い光が纏わりついている。

 

「おい、優一郎。こいつの女の時の名前ってあるのか?」

 

 唐突に水輝が言う。だが優一郎に話を振りながらも水輝は天井を仰いだままだ。まるで何かが来るのを待っているかのような様子に多輝は眉を寄せた。さっきまでにやにやと嗤っていたのに、いつの間にかまた水輝は真剣な面持ちになっている。

 

「苺ちゃんじゃなかったんですか?」

 

 笑い混じりに優一郎が言う。多輝はぎょっとして待て、と呟いた。だが水輝は多輝の声を無視して了解、と返答する。

 

「了解じゃねえ! おれはそんな名前じゃない!」

「くそがきって呼ばれるよりはましだろうが。いいかげん黙らないと口を塞ぐぞ」

 

 鋭い目で多輝を睨んでから水輝がどすの利いた声で言う。多輝は圧された格好で押し黙った。

 

 水輝がペンダントを持った右手を天井に掲げる。その瞬間、ネックレスの鎖が一瞬で砕け散った。ペンダントヘッドの小さなアクセサリだけが水輝の手を離れて宙に浮かぶ。

 

「人の手の作りし封印の鍵よ。汝の作り手の意のままにその姿を転じよ」

 

 不思議な声が聞こえてくる。多輝は怒るのも忘れて呆然と水輝を見た。口を開いて声を出しているのは確かに水輝なのに、その声はまるで別人のそれに聞こえる。

 

「紅の火よ、金の光よ、銀の翼よ」

 

 それはまるで歌のようだった。それを聞いている多輝の身体から自然と力が抜ける。多輝は吸い込まれるように水輝を見つめた。天を仰ぐ水輝の手に支えられるようにして浮かんでいた小さなアクセサリが少しずつ光を帯びる。水輝の言葉に従ってその色は少しずつ変化しているように見えた。

 

 やがて一際強い光が現れる。アクセサリはその光に包まれて見えなくなってしまった。

 

「……どーする? 誓約も入れとくか?」

 

 唐突に水輝がいつも通りの声に戻り、優一郎を見る。それまで身動き一つ出来なかった多輝は慌てて優一郎を振り返った。いつの間にか動けるようになっている。だがそのことにも気付けず、多輝は優一郎を見つめた。

 

「我等を結ぶ誓約よ」

 

 静かな声で優一郎が告げる。その瞬間、陽炎のようなものが優一郎の身体から溢れた。それが空気の間を揺らぎながら水輝の支える光に吸い込まれる。多輝は仰天して優一郎と光とを見比べた。

 

「よし。……我、青の鍵が命じる」

 

 急にまた水輝の声がいつものそれから不思議な響きに転じる。多輝はおいおい、と呟いて光を見上げた。何色とも言いがたい不思議な色の光は水輝の手の先で明滅している。

 

「かの者の名は苺。カードにこめられし力よ。封印の鍵よ。かの者の助けとなれ!」

 

 そう水輝が言った直後、浮かんでいたカードが光を放つ。多輝は眩しさに思わず目を覆い、その場にへたり込んだ。どこからともなく風が巻き起こり、多輝の身体をさらおうとする。多輝は必死で身を屈めて畳にへばりついた。




のりのりで書いた記憶があります……。
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