※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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エピタイ通りです。
エロシーンはありません。


久しぶりの透 1

 薄暗い空からは音もなく雪が降り続いている。バルコニーではしゃいだ声を上げる巴とちなりを横目に眺め、透は空を仰いだ。巴とちなりは学校から帰るなり、ずっとこの調子だ。今はバルコニーに積もった雪を集めてどちらが可愛い雪だるまを作れるか競争している最中だ。透は雪を払った椅子に腰を下ろしてのんびりと二人を眺めた。

 

「でーきた!」

 

 いち早くちなりが歓声を上げて小さな雪だるまを乗せた両手を掲げる。あー、と残念そうな声を漏らした巴が焦ったように自分の雪だるまに目鼻をつける。二人とも吐く息は白い。

 

「判定してやるから見せてみな」

 

 そう言って透は手を差し伸べた。するとちなりが嬉しそうに頷いて透に駆け寄る。続いて巴が慌てたように寄り、透の手には二人分の雪だるまが乗せられた。コートに手袋と重装備の二人に比べ、透はシャツにジーンズというごく軽装だ。が、透は特に寒さは感じてはいない。吐く息は白いがそれだけだ。

 

 両手の雪だるまをじっと見比べる。ちなりの作ったそれは赤い実で目がつけられていて、小さな枝が腕のところにもさしてある。対する巴のそれは目の部分には黒い実が嵌められていて口のところに赤い実が使ってある。何故か手足の部分に枝がささっていて、巴の雪だるまは自律して立つことは出来なさそうだ。

 

「引き分けだな」

 

 しばし雪だるまを見比べてから透は二人に微笑みかけた。それまで緊張の面持ちで結果を待っていた二人がぱっと明るい顔になる。ありがとう、とそれぞれが言って透に笑みかける。こうしていると二人はまるで仲のいい姉妹のようだ。

 

 小さなノックの音がして扉が開く。恭しく透に礼をしたのは初老の執事だった。

 

「透様。お茶の準備が整いました」

 

 そう言って執事が部屋の中へ消える。透は二人を促して屋敷の中に戻った。

 

 透はあれから清陵高校の地下の施設から、この木村の屋敷へと活動の拠点を移した。あちらでも勿論研究は続けられるのだが、こちらの方が何かと都合がいいのだ。それにあの消えた赤子のこともある。

 

 あの日、透が水輝から奪い取ってきた赤子は唐突に姿を消した。気配を追った結果、赤子はこの屋敷で唐突に消えたことが判っている。赤子の正体はおろか、何のためにこの屋敷の主がそれを引き寄せたのかも判っていない。透は考えを巡らせながら茶の準備が整えられたテーブルに近付いた。後ろから付いてきながら二人がコートと手袋を取る。それを横からタイミングよくメイドの一人が預かって静かに退室する。入れ替わりに入ってきたメイドが今度は茶菓子を乗せたワゴンを押してテーブルに寄る。

 

「学校のほうは何か変ったことはあったか?」

 

 椅子に腰掛けながら透は二人に声を投げた。すると二人が同時に首を横に振る。

 

「ううん。今日は始業式だけだったし」

「絵美佳先輩は欠席ってことで良かったんですよね?」

 

 ちなりが言えば、その後に巴がそう続ける。透はああ、と頷いてワゴンから数種の茶菓子を選んだ。メイドが三人分の茶菓子を皿に盛ってテーブルに乗せる。それを見たちなりが歓声を上げた。

 

「わー! 今日はアップルパイだー!」

 

 嬉しそうに飛び跳ねてちなりが椅子に腰掛ける。

 

「お前たちのメンテ施設ももうすぐ完成するが、何か機体に問題が生じたら遠慮せずに言うんだぞ」

 

 そう言いながら透はティカップを取り上げた。焼きたてのアップルパイに早速手をつける。

 

「ありがとうございます、透先輩」

 

 巴がにっこりと笑ってそう言うと、ちなりがアップルパイを頬張って同意して何度も頷く。

 

 透があの日、赤子を追ってたどり着いた時、屋敷を囲む庭は見る影もない程にずたずたにされていた。幸い、その被害は屋敷内部には達していなかったが、屋敷の主である順は私室で死んだように眠っていた。それ以来、今日までずっと順は眠ったままだ。その時いなくなっていた使用人たちは一人、また一人と屋敷に戻ってきて、今は庭も完全に修復されている。

 

「しかし、あのバカ。訳のわからない遺言状残しやがって」

 

 まあ都合は良かったが。そう続けて透は眉を寄せた。透と一緒にテーブルについていた二人が不思議そうに顔を見合わせる。彼女たちは大分遅れて屋敷に来たため、何故透がここに居ることになっているのか、その詳細については全く知らないままなのだ。

 

 使用人の中で真っ先に屋敷に戻ってきたのはあの老執事だ。自分に何かあった時のために、と順が残した遺言状を危急の際ですからと執事は透に手渡した。その中で順は自分に何事かがあった際は、木村財閥の所有する全ての財産、及び権利を透に譲渡すると記していたのだ。

 

「とりあえず、ここの主人は俺になったってことだ。使用人も信頼できる。安心しろ」

「うん……。でも透くん。ちなり、今日もちょっと見たけどあの人、ぜんぜん起きそうにないね」

 

 ちなりが口許にアップルパイの欠片をつけたまま、消沈した面持ちで言う。すると隣で茶を飲んでいた巴も顔を曇らせる。二人とも眠ったままの順の事をそれなりに心配しているようだ。




そろそろ復活しないとロボ対戦に間に合わないのでw
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