※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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エロっぽいシーンはありますが、雪崩れ込んだりはしません。


そろそろ化けの皮が剥がれるだろうなー 4

「人工粘膜の磨耗状況からわかってましたけど、自慰にかなりの時間を割いていたんですね。でもその割にはストレスの減少値が低いですね」

「え、えっと……その」

 

 画面に表示された機体ログを読みながら告げた優一郎に立城が焦った声を返す。だが言葉をきちんとなしていない。優一郎はちらりと立城に目をやってからざっとログを読み流した。

 

「行きずりの男性をセックスに誘おうとしたんですね。そして、痴漢行為を受けたと」

「だ、だっておさまらなくて」

 

 真っ赤な顔で立城が小声で答える。優一郎は腕組みをして眉を寄せた。どうもまずいタイミングで立城に通信を入れてしまったらしい。今から男性と事に至ろうとしていた際に通信を受け、立城は行為続行を断念したようだ。その後、該当する男性とはすれ違って挨拶しただけらしい。

 

「あの結論から言っていいですか?」

「あ、うん。なに?」

 

 そう言って立城が真剣な顔で頷く。

 

「まず、母上は特定の相手との性行為や、特定の相手を想いながらのオナニーでしか、ストレスを解消できないタイプです」

「えっ」

 

 淡々と告げた優一郎の言葉に立城が戸惑いの声を返す。優一郎はため息をついて口許に指を当て、立城を横目に見た。

 

「現実に、行きずりの男性によって行われた前戯や、痴漢行為によってストレスは減少するどころか増大しています」

 

 言いながら優一郎はモニタ画面が見えるよう、立城の方にディスプレイを向けた。立城が驚きに目を見張ったままでモニタ画面を覗き込む。優一郎はグラフに示された数字を指差して時間経過と共にそれが上昇していることを説明した。表示されたその時間が、実際に立城が男性に愛撫された時間と痴漢行為を受けた時間だ。

 

「なっ、何で……? だって、ヒューマノイドは性的快楽があればストレスを解消できるんじゃないの?」

 

 上ずった声で立城が問う。ディスプレイを元の位置に戻しながら優一郎は首を振った。

 

「もともと誰でもいいからとにかくマゾ的に快感を与えられるのが好きというタイプの女性がヒューマノイド化されたらそうですね。そのタイプの女性はマスターも必要有りません」

「そ、そうなの?」

 

 困惑気味に言いながら立城が額を押さえる。ええ、と頷いて優一郎は椅子に深く寄りかかった。立城はヒューマノイドのことを完全に把握した上で機体を構成したわけではなく、あくまでもあの時は反射的にその器を選び取ったらしい。

 

「自慰の場合は特定の相手を想えば、それなりの効率でストレスを解消できるのですが、母上の場合は、相手を想いながら自慰することに抵抗を感じたりとか、相手を想うことを止めようとわざわざ意識したりとか、そういうことありません?」

「あ……」

 

 思い当たることがあったのだろう。立城が力ない声を漏らす。優一郎は表示させる画面を切り替えて目を細めた。立城の動揺が数値となって表れる。

 

「父上に反応するのは当然として、僕にも反応しますね」

 

 そう言いながら優一郎は小さく笑った。すると立城が焦った声を上げてそんなことはないよ、と否定する。だがそう言った立城の感情の大きな揺らぎが画面に現れる。優一郎はくすくすと笑って首を傾げてみせた。

 

「リアルタイムで感情をグラフ化して表示しているのに、説得力ゼロですよ」

 

 笑い混じりに告げて優一郎は椅子を回してメンテナンス台に向かった。台に乗った立城の白い肌には幾つも赤い跡がつけられている。その様はまるで白地の布に赤い花びらが散っているようでもある。きっと立城の身体に触れた痴漢は一人や二人ではないだろう。電車の中で何人もの男に痴漢を働かれている立城の様を想像して優一郎は小さく笑った。

 

「一体何人の男に弄られたんですか?」

「そっ、そんなの判らないよ!」

 

 声を荒らげて立城がそっぽを向く。満員電車の中で見知らぬ痴漢に触られながら立城は必死で声を殺していたのだろう。優一郎は片手でキーボードを操作し、別のウィンドウを開いて先ほどのログを表示させた。機体状態を示す数字をざっと読む。

 

「ストレス処理になると思って抵抗しなかったみたいですけど、逆効果でしたね」

 

 痴漢行為を黙って受け入れていた際の立城の感情は嫌悪感に大きく傾いている。だが痴漢にしてみればいい獲物だったろう。何しろ立城の見目は驚くほど整っている。しかも恐らく立城は欲情した状態のままで電車に乗り込んだのだ。まとう雰囲気が他の女性とは著しく異なっていたに違いない。

 

「母上。自侭を通したいなら、まず、力を回復してください」

「……ごめん」

 

 そっぽを向いたまま、立城が小声で詫びる。どうやら立城のとった行動が無意味どころか悪循環を生み出していたことに、本人も気付いてはいるらしい。気晴らしのつもりで旅行に出たのかも知れないが、これでは意味がない。優一郎は肩を竦めて画面に目を戻した。

 

 ヒューマノイドと一口に言っても素材となる女性のタイプは様々だ。中には立城のように特定の相手でしかストレス値を下げることが出来ない女性もいる。




悶々としたままになるからややこしい!w
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