「あと、水輝さんにお礼を忘れないで下さいね。水輝さんが力を分け与えて、母上の身体を機体に戻して愛撫を加えなければ、今ごろどうなっていたかわかりませんよ」
ログを読みながら優一郎はさらりと告げた。すると立城が勢いよく頭を戻して優一郎を見る。その目は妙に鋭い。だが立城はこれと言った反論はせず、またそっぽを向いた。
「それでは母上。痣を消しましょう。痣を消す操作はヒューマノイド本人には実行できないようになっています」
そう言って優一郎は立ち上がった。立城の足元に回り、椅子を引き寄せる。開いた両足の間に座り、優一郎は目を上げた。すると驚いたような顔をした立城と目が合う。
「え? あの、何するの?」
「メイン制御スイッチを操作するんですよ」
くすくすと笑いながら優一郎は露になっている立城の股間に顔を寄せた。立城の陰部はすっかり濡れそぼり、愛液がスティックを伝い落ちている。優一郎は口許に笑みをたたえてクリトリスに指を伸ばした。
「ではいきますよ」
「えっ、ちょ、ちょっとまっ……」
慌てたように言った立城が小さな悲鳴を上げて仰け反る。優一郎は腕を伸ばして立城の尖った乳首をつまんだ。片方の手で勃起しきったクリトリスをつまみ、左右に捏ねる。
「僕の目を見てください」
立城が掠れた声を漏らしながら優一郎を見つめる。よほど我慢していたのか、その目は涙に濡れている。
「これで、痣は消えました」
そう言いながら優一郎はにっこりと笑った。立城があ、と声を漏らして困惑した面持ちで頷く。
「あ、ありがとう」
「それでは、服を着ていいですよ。如月老のところへ行くのでしょう?」
立城から手を離して優一郎は腰を上げた。濡れそぼったスティックを軽く捻って立城の膣から抜く。軽く呻いてから立城は頷いた。
「うん、どうもありがとう」
そう言ってふらつきながら立城が身体を起こす。優一郎は濡れたスティックを丁寧にタオルで拭きながらちらりと立城を見た。斜めになった台から身を起こした立城が放心したようにどこかを見つめている。
「外出時はきちんとショーツと、専用のパンティライナーを装着してくださいね」
「あ、うん。判った」
大人しく返事して立城が台を降りる。隣の空いた台に畳んで置いてあったブラジャーを取り上げ、立城がのろのろとそれを身につける。
「あと、桜さんの件ですが、よろしいですか?」
「あ、えっと、なに?」
ぼんやりとしていた立城が慌てたように返事する。優一郎は端末とモニタの電源を落としてから椅子を片付けた。
「彼女は判断能力や言語能力はあるんですが、知識と経験に欠けるというか、正直、現状に全く対応できていません」
試しに優一郎は桜を呼び出してみたのだが、こちらの意図を伝えるのにかなりの労力を費やしたにも関わらず、殆ど使い物にならないことが判っただけに終わった。どうやら桜にとっての最優先事項は立城の生命であり、それ以外の事柄については瑣末に過ぎないようだ。その考えを基本にされると、今回のような件の場合は桜にとって至極どうでもいいことと判断されるらしい。
「また、使い魔としての力も、現状ではかなり乏しいです」
「そうか……。桜には前の記憶は移せていないし、僕の力も回復していないから」
呆然とした面持ちで答えて立城がため息を吐く。立城は手にしていたブラウスを着てボタンを留めながら小声で言った。
「僕、君にはなんだか迷惑しかかけていないね」
優一郎はそれを聞いて肩を竦めてみせた。
「母上。だからこそ息子の僕を頼らずに誰を頼るんですか?」
「本当は僕がちゃんと対処出来なきゃいけないことだから」
優一郎の言葉に立城が苦笑して答える。優一郎が何かを言いかける前に立城はそれに、と言葉を継いだ。
「今回の件もそうだ。僕に隙があるからあんな噂が流れてしまうんだろう? そのせいで君には迷惑をかけている訳だしね」
そう言ってから立城はにっこりと優一郎に笑ってみせた。優一郎はため息をついて白衣のポケットに手を入れた。
「それは構わないんです。今の自分を過信するのはやめて、もっと上手く他人を頼れるようになってください」
「それは難しいな。今まで人をあてにしたことはないからね」
小さく笑って立城が踵を返す。
「出来るだけ君には迷惑がかからないように努力するよ。……尤も、僕の力が戻らないとただの戯言にしか聞こえないだろうけれどね」
呟くように言って立城が歩き出す。どうも本格的に立城は判っていないのではないだろうか。そんな不安を覚えて優一郎は立城を呼び止めた。ドアのところまで歩いていた立城が怪訝そうな顔をして足を止める。
「具体的にどういう対処をとられるつもりなんですか?」
「煩い連中を黙らせるのが先だろう? マスコミ関係者は放置しておくにしても、騒いでいるのは彼らだけじゃないだろうし、情報元になっている人にも会わなければならないだろうし」
流れるように答えて立城が肩を竦める。優一郎は眉を寄せて小さく呻いた。立城の中では今回の件はただの噂でしかないらしい。が、何故そんな話が出ているのかを立城は知らないのではないだろうか。
「どうやって黙らせるんですか?」
「どうって……否定して回るしかないんじゃないのかな。地道に」
だってそんな事実はない訳だから。立城が当り前の顔で言う。それを見た優一郎は腕組みをして低く唸った。
「とりあえず、如月老のところへ行かれるのですよね? 僕も同行しましょう。母上がきちんと対処できて何も問題なければ、何も手出しはしません。よろしいですね?」
「それは構わないけど……なに? やけに慎重だね」
さすがに疑問を覚えたのか立城が訝りの表情を浮かべて言う。
「旅行を許可した件で後悔してますから」
優一郎が答えると立城が黙り込む。それから立城は判ったよ、とため息混じりに言った。
立城の読みが甘いというか。
優一郎はかなり後悔してます。