身も蓋もないエピタイ……今に始まったことじゃないですけども(汗)
裸で寝っ転がってる訳ですのでエロ……といえば……エロぽい?
でも何もしません。しかも機械です!
渚はどーやっても人形は嫌らしい 1
大きな気配が施設内に二人分現れた、と思った直後、部屋に優一郎が戻ってきた。どうやらもう片方の気配は優一郎とは別に客室に現れたらしい。渚は深々とため息をついてから優一郎に声を投げた。
「お帰りなさい」
渚はメンテナンス台の上に横たわっていた。水輝はまだこの施設内にいる。忠告したのに、と渚は内心で呟いた。恐らく水輝は立城と鉢合わせになってしまっただろう。きっと今ごろは言い争いになっているに違いない。水輝は立城が説明を求めてもプロポーズの件に関しては言わないだろうし、立城は立城で濃厚な人間の男の気配をくっつけていた件については水輝に説明はしないはずだ。結局のところ、どちらも正直なところを言わないだろうから。そう呟いて渚は近付いてきた優一郎を見やった。
「とりあえず、一度は喧嘩でも何でもしてもらっておいたほうがいいかと」
疲れた声で言ってから優一郎が椅子に身を投げるようにして腰掛ける。そうね、と渚は小さな声で同意した。
「疲れたのなら肩でも揉みましょうか?」
いつもは穏やかな笑みを浮かべているところしか見せない優一郎の疲れぶりを見て、渚は何気なくそう言ってみた。額を押さえてため息を吐いていた優一郎が驚いたように顔を上げる。
「いえ、これからテスト工程に入りますから。放置するような事になってもうしわけありませんでした」
「私は別に後回しでも構わないわよ」
さして感情をこめずに渚は提案してみた。特に何かを考えた訳ではない。優一郎が忙しいと思ったからだ。
「ははう……紫さんとの話し合いが必要な作業ですから。どうせもう今日は無理でしょう」
半ば投げやりに優一郎が言う。渚はしばし思案してから口を開いた。
「止めましょうか? 喧嘩。別に今日、無理にやり合わなくてもプロポーズの段になったらきっと揉めるわよ」
どうせその時に言い争うのなら、今わざわざ喧嘩する必要もない。渚は試しにそう提案してみた。すると今度は優一郎が少しの間、黙る。考えるように視線を彷徨わせてから優一郎はため息をついた。
「渚さんの身体はこれまで通りではありません」
伏目がちになって優一郎が言う。渚は小さく笑って言った。
「知っているわ。前よりよほど浅ましい格好で水輝にねだるようにされているんでしょう? 私が
壊れてしまわないように」
渚は疲れた顔をしている優一郎に微かに笑みかけた。優一郎が軽く息を飲んでから苦笑を浮かべる。
「はい。水輝さんに定期的に操作を受けなければ、身体がロックされるようになっています」
要するに水輝が定期的に渚を抱く、若しくは性的快楽を何らかの方法で与えなければ、渚は強制的に自慰をさせられるということだ。ストレス値が一定値まで下がらなければその動作は解除することが出来なくなるのだろう。
「渚さんの基本動作として自慰をプログラムしました。水輝さんの命令が無い状態では、身体に負荷を与えない程度に適切な自慰動作を自動的に行います」
「多分、適切な処置なんでしょうね。あなたの論法では」
いや、ヒューマノイドの機体を預かる者として正しい判断なのだろう。渚は小さく笑ってありがとうと言うべきかしら、と問うた。優一郎が困ったような顔になる。
「この処置で、あなたと水輝さんとの関係がどう変るかはわかりません。正しい方法だとは思えません。ですが、あなたを確実に維持するためには必用な処置だと思います」
「私をそんなに手間隙かけて維持して、あなたに何のメリットが存在するの? 正直なところ、それは単なる無駄としか思えないわ」
淡々と言って渚は口許に淡い笑みを浮かべた。
「渚さんに存在を続けていてほしいという自己満足、なんでしょうね。水輝さんも、今更あなたを失うことは耐え難いでしょうし」
「死ねなかった以上、もう自分から死に向かって行こうとは思わないけれど……やっぱりあなたとは永遠に気が合いそうにないわ」
苦笑して渚はそっと自分の身体を見下ろしてみた。作り物の身体になってからずっと不快感はある。ここまでして命を繋いだその理由を考えてみると、渚にとっての理由そのものは既に失せているのだ。かと言って水輝を追い込む気にもならない。結局のところ、水輝は妹と姉と暮らしたあの日々をとても楽しいと感じていたのだろう。だからこそ、恐らく心のどこかでその再現を願っていたのだ。
「それに、性的嗜好というものは、本人の意思とは無関係な方向に向かっている場合もあるんです。あなたは」
そこまで言って優一郎が黙る。渚はため息混じりに先を促した。どうせ言いかけたのだから全部言ってしまえば? そんな渚の言葉に優一郎が戸惑いの表情を浮かべる。
「水輝さんに半ば強姦されるように乱暴に抱かれ、壊されたあなたのストレスは、一気に最低レベルまで低下しました。さらに、自慰デモンストレーションを水輝さんに見せた時の興奮レベルは、通常の自慰とは全く違うものでした」
「そのようね」
言いにくそうに告げた優一郎の言葉を渚はあっさりと肯定した。感じた快楽の度合いから見て間違いないだろう。それは判る。渚は驚いたように目を見張る優一郎に端的にそう説明した。
「浅ましくて卑しいと思うわ、自分で」
私自身が最低よね。そう呟いて渚は小さく笑った。
「自己卑下したい、水輝さんにどうしようもなく浅ましい姿を見られたい、そういう欲望があるという性的嗜好分析結果が出ました。その分析結果に基き、プログラムは調整されています」
静かに優一郎が告げるのを聞いて渚は渇いた声で笑った。
「そうね。私はどうもそういう性癖の持ち主らしいわ」
そう言ってから渚は笑いを納めた。
「でもそれを恥だと思っているのも事実なのよ。あなたは私に死ぬなと言う。でもあなたが選択させた道は、私に生き恥を晒せと言っているのと同義なのよ。安らかな死と生き恥を晒す道と、あなただったらどっちを選択する?」
そこまで言ってから渚は疲れた息をついた。どうせこんなことを言っても無駄だ。それは判っている。そもそも同じ人間など誰一人として存在しないのだから、判りあうことなど無理だ。
機械書くの難しいです本当に。しみじみ。