※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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このエピソードは長いので、ぶつ切りになります(汗)
しかも話がころころ変わるので変なところで切って、エピタイをつけることにしました。
水輝視点で続いていてます。
エロシーンはありません。


渚の願いを叶えるか否かの話し合い

 不意に意識を強い思惟が叩く。水輝は目を見張ってぴたりと身体の動きを止めた。そんな水輝を立城が訝りの目で見る。水輝は愕然と目を見張ったまま、顔を俯けた。恐らく誰にも聞こえてはいない。だが水輝の耳には確かに渚の声が届いていた。

 

「……なに?」

 

 立城が静かな声で問う。聞こえなくても水輝に何事かがあったと悟ったらしい。水輝はああ、と呟いてから何でもないと首を振った。それから身体の向きを変えて近くにあったベッドに腰を下ろす。ため息を吐いて水輝は上目遣いに立城を見やった。立城は腕組みをしてじっと佇んでいる。

 

 ドアが小さく鳴る。水輝はちらりとドアを見返ってから立城に目をやった。立城がため息を吐いてどうぞ、と返事する。開いたドアの向こうには水輝の思った通り、優一郎が立っていた。

 

「お話があります。ちょっとよろしいでしょうか?」

 

 真剣な表情で優一郎が言う。水輝は立城と目を合わせてから顎をしゃくった。優一郎が頷いて部屋に入り、ドアを閉じる。立城は言わなくても察したのか、無言でキッチンに消える。水輝は腰を上げてソファのある場所に移動した。手招きして優一郎に腰掛けるように言う。すると優一郎は大人しく水輝に従い、ソファに腰を下ろした。

 

「それで?」

 

 話ってのは何だ。水輝はソファに腰を下ろしながら促した。

 

「現在、渚さんの動作テストを行っています。このまま事態が進行した場合の最終形態と成り得るプログラムを敢えて設定してみました」

「ほーん」

 

 気の抜けた返答をしつつ、水輝はキッチンのある方を見た。まだ立城は出てこない。どうやら三人分の茶をいれているようだ。気配を読んでから水輝は優一郎に目を戻した。

 

「あの……水輝さんは、聞こえましたか?」

 

 恐る恐るうかがうように優一郎が言う。水輝はそうか、と肩を竦めた。

 

「お前はこの城の主だったな。聞こえない方がおかしいか」

 

 ため息混じりに言ってから水輝は俯いた。

 

「それ以前に、僕は一応、彼女の主ですから」

 

 疲れた優一郎の声に水輝はそうだな、と苦笑した。確かに渚は使い魔として優一郎に仕えている身だ。そしてヒューマノイドとしては水輝に仕えている。水輝は息を吐いてから目を上げた。キッチンから立城が戻ってくる。三人分の茶をテーブルに乗せて立城は静かに優一郎の隣に腰掛けた。

 

「母上、頂きます」

 

 優一郎はそう言ってからちらりと立城を見た。もの言いたげな視線を受けた立城が微かに笑んで首を傾げる。

 

「お砂糖とミルクが要ればどうぞ。ミルクは牛乳を使ったけど、ちゃんと温めてあるから」

 

 笑顔で言って立城も紅茶のカップを引き寄せる。水輝は腕組みをしてから背もたれに深く寄りかかった。

 

「今さら、渚の話を聞いたところで別に立城はびびらないだろ」

 

 水輝は優一郎の視線に代わりに返答してからカップをテーブルからさらった。口につけてから熱さに顔をしかめる。もう、と小声で言ってから立城が水輝の前にミルクを押し出す。いらね、と呟いて水輝はカップの中身に息を吹きかけた。

 

「渚さんには水輝さんしか見えていません。風の貴婦人の申し出があった時も、彼女が水輝さん自らの手で殺される事を望んだのは、以前、告げたとおりです」

「……あれがおれの手にかかって死にたがるのには訳があるんだ」

 

 優一郎が苦しげに言った後、水輝は疲れた息を吐いて低い声で言った。立城がぴくりと眉を上げる。ちらりとそれを見取ってから水輝は慎重にカップの中身を啜った。冷めた上澄みだけを少しだけ口に含む。

 

「僕、席を外そうか?」

 

 静かな声で立城が言う。水輝はため息を吐いて首を横に振った。

 

「どうせお前も関係ある。居ろ」

 

 そう言ってから水輝はカップをテーブルに戻した。ソファに寄りかかりながらポケットに手を入れて舌打ちをする。結局、煙草を買いに行けていない。それを察したのだろう。立城が無言で立ち上がり、ドレッサーから自分の煙草を取り上げて水輝に差し出す。ありがたくそれを受け取って水輝は煙草に火を点けた。立城がテーブルに乗せた灰皿に灰を落とす。

 

「僕の我儘なのかもしれません。でも僕は渚さんに存在を続けて居てほしい。短い間しか接していませんけど、僕は彼女を好ましく思っています」

 

 念のため言いますけど恋愛感情とは違いますよ。もしかして優一郎がそう続けたのは冗談だったのかも知れない。が、笑おうとしたその顔は寂しい表情にしか見えない。水輝はそれを見てからため息を吐いた。




優一郎は渚を嫌いじゃないというか、けっこう好きなんですよね……w
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