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「……龍神が昔、どうやって生まれていたか、知っているか?」
低い声で水輝は言った。すると水輝の前に座る優一郎と立城が顔を見合わせる。それから今度は立城が静かに答えた。
「紫翠や白、水輝、火藍、識晃……黒もかな。君たちは世界が生んで」
何もなかったところに唐突に生まれたんだよね。立城が考えるような顔でそう続ける。
「僕は全く知りません、とお……吉良博士の論文でもそのあたりには触れられていませんし」
翠さんからのプレゼント爆弾にも含まれていなかったし。優一郎が続けた言葉に水輝は苦笑した。
「翠は行動にかなりの制約をつけられてる。あいつにはあれが出来る精一杯だっただろうな」
翠が優一郎に何事かを伝えようとしていたことは知っている。そして同時に優一郎の覚醒を促した。だがそれらの事象はあらかじめ決められていたことだ。翠はそれに従ったに過ぎない。
「立城のそれは、紫翠の記憶から拾った情報だな? ……ま、尤も、他の奴に聞いても同じ答えが返ってくるだろうがな」
そう言ってから水輝は深々とため息をつき、俯いた。こうしている間にも渚の悲鳴のような思惟は聞こえてくる。本当は二度と会わない方が互いのためになったのだろう。が、会わないまま時を過ごすことは出来なかった。それは恐らく、最初から決められていたことだ。
「紫翠ってのはあれで真面目に化け物じみててな。おれたちの記憶を根こそぎ書き換えてやがったらしい」
そう言いながら水輝はのろのろと頭を上げ、指でこめかみをつついてみせた。立城が不快そうに眉をひそめ、優一郎が不思議そうに首を傾げる。
「立城さんの話だと、そもそも、世界とは何なんだって疑問も残りますよね? そのあたり、おかしいとは思われなかったんですか?」
優一郎が首を傾げたまま立城を見やる。立城の方は薄々は気付いたらしい。嫌そうに顔をしかめてため息をつく。ついでとばかりに立城はテーブルに置かれたシガレットケースに手を伸ばした。唇に細い煙草を咥えたところを見計らい、水輝はライターで火を灯した。立城が顔を寄せて煙草の先に火を移す。
「どうでもいいが、メンソールは止めろ。口の中に匂いが残って気持ち悪いんだよ」
「人の好みにけちをつけないでくれるかな」
小声で言い合ってから立城が顔を上げる。優一郎にかからないよう、横を向いて煙を吐いてから立城は冷ややかな声で言った。
「世界は」
そう言ってから立城は煙草の先で水輝をさし示した。水輝は肩を竦めて唇に煙草を挟み、だそうだ、と優一郎に言葉を向けた。
「ということは、その記憶の説が正しければ水輝さんが龍神の母親だと?」
「龍神に母親なんて概念は存在しない。そもそも性別は本来はなかった存在だからな」
優一郎が言ったことに水輝はさらりと答えた。伸びた灰を灰皿に落としてから煙草を咥え直す。優一郎はよほど水輝の答えに疑問を覚えたのか、カップを握ったまま一人で首を捻っている。
「今は違いますよね? 龍神は性別に縛られている。翻弄されていると言ってもいいかもしれません」
確かめるようにゆっくりと優一郎が言葉を吐き出す。灰皿に煙草を乗せてカップを取り上げた立城が深々とため息を吐いて本当にね、と呟く。水輝は口許に薄い笑いを浮かべてそんな二人を交互に見た。
「人は信じやすい情報を信じようとする傾向がある。立城が紫翠の記憶から拾った情報も、嘘じゃないが本当じゃない」
尤も、おれにしても全てが判ってる訳じゃないがな。そう呟いて水輝は天井に煙を吐いた。それにしても細身のこの煙草は吸った気がしない。そうぼやきながら水輝は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「情報操作の基本ですよね。今回の件でも、最悪の場合は僕と斎姫の婚約を発表して対処する予定です。それで丸く収まるはずですし」
頷きながら優一郎が言う。
そもそも設定がない状態から書いてるので!w