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するとそれまで黙っていた立城がおもむろに片手を上げた。
「その案は却下だ。君たちに迷惑をかける気はない。どうせ政略結婚だろうから僕が話を受ければ済むことだ」
淡々と告げて立城が紅茶を啜る。水輝はやれやれとため息を吐いて頭をかいた。そういえばそっちの問題も残っている。いっそのこと、ここでぶちまけた方がいいのか。ちらりとそう考えてから水輝はその思いつきを即座に否定した。
「母上、もう決心されたんですか?」
驚いたように優一郎が立城を見る。立城はテーブルにカップを乗せて優一郎に笑みを向けた。
「力は当分、戻りそうにないしね。となると、力を安定させるために別の権力を取り込んでしまえというところなんだろう。彼らの言い分は」
肩を竦めて立城が答える。水輝はあー、と低い声で呻いてがっくりと肩を落とした。
「相手が誰であろうと婚約を受けると、そう決心されたんですね? なら、バックアッププランの準備は停止していいですか?」
訝るような顔で立城を見ながら優一郎が言う。それに対して立城は実に気軽に頷いた。
「うん。ごめんね、迷惑をかけて。ここで逃げるなんてことはどうも出来そうにないし、かと言って正式に断ることも出来ないだろうしね。となると話を受けるしか……なに?」
微笑みを浮かべて優一郎に解説していた立城が途中で不機嫌な声を水輝に飛ばす。水輝は別に、と呟いてテーブルからシガレットケースを取り上げた。そ知らぬ顔で煙草を失敬して唇に挟む。ライターを取ろうとした立城を制し、水輝は自分で煙草に火を点けた。
「わかりました。ですけど、内々にするにしても斎姫との婚約はすませたいと思います」
彼女にはいろいろ負担をかけたし。呟くように言った優一郎に立城が柔らかな笑みを浮かべる。
「そう。おめでとうと言うべきかな」
「別に婚約だの結婚だのが役に立つとも思えんがな」
にこやかな立城の言葉に続けて水輝は何となくそう言葉を足した。すると立城がぎらりと水輝を睨む。へいへい、と呟いて水輝は口を閉ざした。
「いえ、話をしてからすっかり舞い上がってしまっていて」
頭をかきながら優一郎が言う。どうやら照れている訳ではなく、困っているらしい。ほー、と呟いた水輝をまた立城が睨む。それから立城は気遣うように優一郎を見つめた。伏目がちになった優一郎の手をそっと取る。目を上げた優一郎に立城はにこやかな笑みを向けた。
「斎姫さんなら大丈夫だと思うよ。その気がないのに約束をする方が、彼女にとっては不誠実だと思うけれど?」
「それはお前の論法で」
「水輝は黙っててくれる?」
口を挟もうとした水輝に強い口調で立城が言う。水輝は顔をしかめてそっぽを向いた。勝手にしろ、と呟いて黙って煙草をふかす。
短いのは話が行ったり来たりするから……すみません。