※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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ややこしい、と思いながら分割しています。
本来なら別の段落にすべきところを、一度に書いてるので……。
エロシーンはありません。



紫翠と渚の話の続き

「話がそれてしまいましたね。龍神の生まれの件ですけど、結局、何が正しいんですか?」

 

 優一郎がやんわりと立城の手を解いて訊ねる。立城は苦笑して肩を竦めてから水輝を見る。水輝はやれやれと頭をかいてから二人に向き直った。

 

「別にこの話を無理に続ける必要はないんだが? 第一、お前達にとってはそっちの話の方が重要だろう?」

 

 そう言いながら水輝は腕を伸ばして灰皿に灰を落とした。忘れ去られていた立城の煙草をついでに灰皿にねじ込む。あ、と声を漏らしてから立城がごめんと詫びる。別に、と答えてから水輝は身体を起こした。カップをさらってちょうどよく冷えた紅茶で喉を潤す。

 

「いえ、今、最も重要なことは渚さんをどうするかです」

 

 悪いと感じたのか少し沈んだ面持ちで優一郎が言う。水輝は紅茶を啜りながらさらりと言った。

 

「渚はおれが殺す」

 

 そう言った直後、立城が慌てたように立ち上がる。テーブルを平手で叩いて立城が身を乗り出す。

 

「……どういうこと?」

「どうもこうも、言ったままの意味だ」

 

 カップを傾けながら水輝は平坦な声で言った。怒りに目を吊り上げる立城の横で優一郎が目を見張り、次いで顔を歪める。

 

「渚さん自身も、ずっとそれを望んできたようです。僕は、自分勝手に、彼女を延命するための努力を続けて来ました。ですけど、水輝さんがそう決心されたなら異議はありません」

 

 殆ど泣きそうな顔で優一郎が言う。水輝は肩を竦めてそういうことだ、と立城に言葉を向けた。途端に立城が右手を一閃する。頬を張られた水輝は一声も発しなかった。小さく息をついて残っていた紅茶を啜る。

 

「僕は……僕は殺さなかったくせに!」

「お前には生きていてもらわないと困る。まだ役目が残っているからな」

 

 淡々と言って水輝は空になったカップをテーブルに乗せた。唇に煙草を挟もうとしたところで二撃目が飛んでくる。水輝は今度は立城の平手を手の甲で遮った。

 

「あの、でも水輝さん。あと、少しだけ待っていただけませんか? 僕は敢えてヒューマノイドとしての本質を渚さんにつきつけました。その結果ヒューマノイドとして渚さんを維持することは不可能だと悟りました。僕には解決する力はありません。ですけど」

 

 懸命な面持ちで告げた優一郎を水輝はちらりと見やった。まだ怒りに震えている立城の手を払う。立城は悔しそうに唇を噛んではいたが、大人しくソファに腰を下ろした。

 

「無駄だろうな。あいつはおれで、おれはあいつだからな。どのみち、破綻する」

 

 低い声で言ってから水輝は小さく笑った。

 

「父さんなら、吉良博士ならなんとかしてくれるかもしれません。ですから……」

 

 掠れた声で言ってから優一郎が俯く。水輝は苦笑して優一郎の頭に手を乗せた。軽く撫でてから身体を起こす。

 

「ま、お前らならこっから先も生きていけるだろ。大分、薄まってるしな」

 

 言いながら水輝は立ち上がった。ちょっと待って、と慌てた声を上げて立城が立ち上がる。立城は水輝を厳しい目で見つめてソファを指差した。

 

「座って。話はまだ済んでいないよ」

「……お前も損な性分だな」

 

 ぼそりと呟いてから水輝は大人しくソファに座り直した。おかわりを持ってくるから逃げないように。そう言い置いてから立城がキッチンに引っ込む。やれやれと肩を竦めて水輝はまだ俯いている優一郎に声をかけた。

 

「好きなら持って行っていいぞ。あれ」

 

 そう告げて水輝は咥えていた煙草を指でつまんだ。煙を細く吐き出して灰皿に灰を落とす。

 

「それをしてしまえば、彼女が、彼女で無くなります」

「お前ら二人と来たら、まじで損な性分だな」

 

 半ば呆れた気分で水輝は言った。仕方ない、と呟いてソファに深く寄りかかる。まあ、あいつの場合は誓約のせいか。そう小声で言ってから水輝は苦笑した。

 

「彼女を作り変えて僕のものにすることは可能です。でもそれは彼女を殺すことと同じなんです」

「おれが殺すのとどう違う?」

 

 両腕をソファの背もたれに乗せて水輝は優一郎に顎をしゃくった。それまで俯いていた優一郎がのろのろと顔を上げる。

 

「渚さん自身は、水輝さんに殺されることを、望んでいます」

 

 喉の奥から絞るように声を紡いでから優一郎が唇を噛む。申し訳有りません、と続けた優一郎に水輝は苦笑して肩を竦めた。

 

「別に謝ることはない。どっちにしろ渚の本性は変わりない。あれは元々、人形だ」

 

 静かに言って水輝は灰皿に煙草を押し付け、ケースから新しい煙草を抜いた。火を点けて横を向いてから煙を吐く。何本吸っても吸った気がしない。水輝は微かに眉を寄せて指に挟んだ細い煙草をぼんやりと見つめた。

 

「製作者は紫翠さん、ですか?」

 

 目を少し見開いて優一郎が言う。水輝はどうだろうな、と呟くように答えて煙草を唇に挟んだ。物問いたそうな優一郎の視線を横目で捉え、小さく笑う。

 

「かつて龍神は紫翠の手によって作られた。……大昔のやつらはな。全部、人形なんだ」

 

 勿論、おれもはっきりと真相を知るわけじゃないがな。そう付け足してから水輝はソファに再び寄りかかった。だからなのか……。そう呟いて優一郎が考え込む。水輝は黙ってしばし煙草を吸い続けた。




話の続きをしてるだけなんですけど、話自体があっち行ったりこっち行ったり忙しく……。すみません。
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