※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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話し合い中なのですが。
話の内容があれこれあるので分けてます。
当時の自分を恨みたいw

エロシーンはありません。


奈月の正体って何なんだろ?

 キッチンから立城が戻ってくる。いつの間にか立城の目は真っ赤になっていた。どうやらキッチンにこもって泣いていたらしい。ティポットから静かにカップに紅茶を注ぎ、立城は元の席についた。

 

「水輝さん。金の龍宝珠は、いくつ集まっていますか?」

 

 決心したように顔を上げ、優一郎が訊ねる。のんびりとカップを取り上げた水輝は優一郎を上目遣いに見て口許に笑みを浮かべた。

 

「五つだな」

 

 そう答えて水輝は紅茶に息を吹きかけた。慎重にカップに口をつけてから水輝は熱さに唸った。これは当分は無理だ。諦めてカップをテーブルに置く。立城は無言で紅茶を啜っている。

 

「残り三つですね。では集めましょう。ある程度時間はかかると思いますけど全面的に協力します。それまで、彼女には眠っていただこうと思います。構いませんか?」

「集めてどうするつもりだ? 言っとくが、奈月を世界の礎にするつもりはさらさらないぞ?」

 

 試すように水輝はそう告げた。ぴくりと立城が眉を上げて上目遣いに水輝を見る。だが水輝はあえて立城の視線を無視した。

 

「奈月さんは、預かっているだけのはずです。渡すべき相手がいると思います」

「根拠は?」

 

 優一郎の隣に座る立城が冷ややかな声で言う。水輝は肩を竦めて優一郎を促した。優一郎が立城と水輝とを見比べて告げる。

 

「亮さんと奈月さんの間で結ばれた誓約の内容です」

 

 それを聞いた立城が顔をしかめる。水輝は苦笑して首を傾げた。

 

「良かったらその内容とやらを聞いてもいいか? おれも何の保証もなく集めるつもりはない」

 

 亮はかつて水輝を嵌めるため、奈月をさらったことがある。が、その折、亮は奈月には結局手を出さなかった。最後には水輝の手で龍神の部分は殺された訳だが、その時にはもう、亮の金宝珠は奈月に預けられていたのだ。

 

「水輝さんを強く想い龍宝珠全てを受け入れ、龍として立つことが可能なものに自分の龍宝珠を全て託したい。とりあえず今は貴女に金宝珠を預かってほしい」

「……まあ、妥当なせんだな」

 

 静かに優一郎が語った後、水輝はぽつりと呟いた。金龍神の本質は主龍神を守るところにある。が、それは言葉通りに天の主龍を護るという意味ではない。

 

「奈月さんは自分で立つことも考えていたようですけど、宝珠を全て受け入れることは、彼女には無理なのではないかと、僕は予想しています」

 

 強く想いという基準は問題無くクリアしてますけどね。そう続けた優一郎に水輝は肩を竦めて告げた。

 

「魂の差だな。優劣ではなく、座位の差だ」

「……僕は奈月さんこそが相応しいと思うけど」

 

 水輝の言葉に立城が小声で返す。水輝はやれやれと呟いて立城を指差した。

 

「いいかげんに頭を冷やせ。くだらない感情に拘って本質を見失うな」

 

 厳しく告げた水輝を立城が冷たい眼差しで見る。水輝は煙草の先で立城を指して眉を寄せた。

 

「お前もどのみち先で選択を迫られる。他人事じゃないんだぞ?」

 

 そう水輝が言ったことに対し、立城が何事かを言いかける。だがそれより早く優一郎が口を開いた。

 

「奈月さんは、渚さんに対して名を呼び捨てにするようにお願いしたんですよね? そして、それを渚さんは受け入れた」

「そうだ」

 

 通常では有り得ない。水輝は優一郎の言葉に付け足した。立城が僅かに目を見張って息を飲む。

 

「さらに、一応は龍神である僕に対して、嫌味言いまくってます。本来なら絶対不可能なはずなのに。僕だけならともかく。水輝さん相手にもそうでしょう?」

「しかもおれのことは呼び捨てだ」

 

 小さく笑って言った水輝を立城が顔をしかめて睨む。

 

「水輝の場合は渚さんと前に姉弟を演じていたから」

「阿呆か。いいかげんに目を覚ませ。おれが誰とでも姉弟ごっこをやれると思うのか?」

 

 立城の言い分に水輝はすかさずそう切り返した。すると立城が黙り込む。

 

「暁の明星、宵の明星。もともとは別々の星だと思われていたこともありました。本当はひとつの星だったわけですけど」

 

 正解の糸口をつかんだからなのか、優一郎の声には張りが戻っている。水輝は苦笑して煙草を吸った。

 

 本当はどちらでも良かった。生と死は隣り合わせだ。どちらを選択しても、水輝にとっての意味は違わない。死んで冥界に旅立つもいい。生きて新しい時を生きるのもいい。どちらにしても先に進むことには変わりない。

 

 水輝と渚は力や器は違っていても強い繋がりを持っている。渚を例えば水輝が殺したとしたら、水輝もただでは済まない。だがそれを渚はよく知っている。それでも渚は自分の置かれた状況に耐え切れなかったのだろう。だからずっと殺してくれと叫んでいるのだ。

 

「本来の座に付いてない状況に苦痛を感じるのは当然ですよね」

 

 優一郎が納得したような顔で言う。ほっとしたのか優一郎の喋り方にも余裕が戻っている。それに対して立城はじっと黙って唇を噛んでいるだけだ。立城にしてみれば渚の魂が本来の座に戻ることは好ましくない筈だ。

 

「ただ、そこで問題が一つある。……言ったろ? あいつはおれで、おれはあいつだ。ところが本来の座に就くとなると、あいつは一人で立つことになる。そうなると本質が変わってしまう可能性があってな」

 

 流れるように告げてから水輝は唐突に立城を煙草でさし示した。それまで黙り込んでいた立城がえ、と目を見張る。

 

「お前、どちらの誓約を選択した?」

 

 冷ややかな声で水輝は立城に問い掛けた。立城が微かに眉を寄せてからため息をつく。

 

「……そういうこと」

 

 感情の失せた声で言ってから立城は静かに立ち上がった。

 

「こんな話、僕が付き合う謂れはないよね。席を外していいかな」

「逃げるなっつったろ? 自分が逃げてどうするよ」

 

 厳しい声で言ってから水輝は煙草を唇に挟んだ。立城が舌打ちをして座りなおす。その顔には深い怒りが刻まれていた。

 

「あの、渚さんを眠らせてきていいですか? すぐ戻りますから」

 

 焦ったように言って優一郎が腰を浮かせかける。水輝はにやりと笑って駄目、と言った。すると困った顔で優一郎が水輝と立城とを見比べる。

 

「話にはまだ続きがあるんだ。……さて、ここで問題です。お前ら……渚に何をした?」

 

 肘杖をついて水輝は目の前に座る二人に問い掛けた。

 

「渚さんが預かっていた宝珠を、立城さんに渡しました。宝珠は矛盾した誓約を孕んでいたので、立城さんにどちらかの誓約を選択するように告げました」

「あれは真也の宝珠か。……となると……」

 

 水輝は立城をじっと見つめてなるほどね、と呟いた。道理で立城がいつまでも力を回復しないわけだ。水輝はふん、と息をついてから優一郎に顎をしゃくった。

 

「おい。渚を眠らせてきていいぞ」

 

 そう言った水輝に優一郎が慌てたように頷いて立ち上がる。




奈月という存在の立場とかそういうの、けっこー難しいんですよね(汗)
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