※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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エピタイがどんどん酷く……(汗)
エロシーンはありません。


苺の始まりはこのへんから 1

 肩越しに自分の背中を見やって多輝はため息をついた。目覚めたあの時の驚きはまだ続いている。どういう訳か、目を覚ました多輝の背中には大きな翼が生えていた。それはまだ今もある。多輝はまじまじと翼を見て、次に少しだけそれを動かしてみた。

 

 ゆらりと銀色の翼が空気をかく。なのに不思議と翼が空気を揺らすことはない。多輝は何度か同じことを試してからため息をついた。背中に生えた翼は多輝の着ている服や机や椅子といった家具等も透過してしまう。目には見えるのに触ることが出来ないのだ。それらのことを優一郎は多輝が眠っている間に色々と調べたらしい。

 

 多輝の記憶は由梨佳と梨恵と白銀の四人で交わったところで途切れている。その間に何かあったのだろうとは思うが、多輝は優一郎にはそのことは訊ねなかった。優一郎はとても忙しくしているし、訊ねたところで意味がよく判らないような気がしたからだ。

 

 ため息をついて多輝はベッドに腰を下ろした。いつの間にか身体は女のものへと変わっている。多輝はしばしぼんやりと自分の部屋の中を見つめた。部屋の様子はすっかり元通りになっており、あの時の気配はどこにもない。白銀は自分の部屋にいるらしいし、梨恵もいない。由梨佳は部屋の隅に設えられたソファで横になっている。きっと誰かが電源を落としたか、由梨佳が自分でそこに納まって電源を切ったのだろう。多輝はソファに横になっている由梨佳をじっと見つめた。

 

 こうして女性になっている間、多輝はいつも由梨佳に申し訳ないと思っていた。今も罪悪感はある。命令には一切逆らわない由梨佳を見ていると、自分は本当は間違っていたのではないかと思うのだ。

 

 由梨佳を好きだとは思う。だが男性の時のように迷いなく接することも出来ない。多輝は眠る由梨佳を見つめてため息をついた。最近では罪悪感が強くなりすぎて、由梨佳の電源を入れるのもためらってしまう。話をするのは楽しいし、一緒に居ることも楽しいと思うのに、どうしても由梨佳を見ていると辛くなるのだ。

 

 何でだろ。多輝はぼんやりと由梨佳を見つめながら考えを巡らせた。男として由梨佳と接している間のことを思うと、申し訳ない気分になる。だがそのことを詫びても由梨佳は特に気にしていないようで、多輝を責めたりもしない。

 

「やっぱりおれ、間違ってるのかな」

 

 多輝はそう呟いて深いため息をついた。ソファに歩み寄って由梨佳をそっと抱き上げる。両腕に由梨佳を抱えたまま、多輝はベッドに戻った。何となく狭いソファに由梨佳を横たえておくのが申し訳ない気がしたのだ。広いベッドに由梨佳をそっと下ろし、毛布をかける。そこで多輝は静かにその場に膝をついた。ベッドに腕を置いて手の上に顎を乗せる。その体勢のまま、多輝はしばし由梨佳を間近に見つめた。

 

 こうして見ても由梨佳はとても魅力的に思える。きっと多輝に縛られなければ新しい恋人の一人や二人、望むままに作ることが出来ただろう。だが結局、多輝は由梨佳に自分にだけ傅くように命令をしてしまった。他の男と交わることがないようにしてしまったのだ。

 

 やっぱ、今からでもちゃんと他の男を見つけた方がいいんじゃないかな。多輝はそう胸中で呟いてみた。だがきっと男になればそんなことは思わないのだろう。きっと由梨佳に乱暴なことを命令してしまうに違いない。何でだろう、と呟いて多輝は腕の上に顔を伏せた。

 

「あ、やばい」

 

 微かに眉を寄せて呟いてから多輝は顔を上げた。焦れたものが下腹部に生まれている。どうやら少し考えすぎたらしい。多輝は情けない気分に陥りながらスカートをそっとめくった。多輝の感じるストレスのままに下着には染みがついている。指でそれを確かめてから多輝は泣きそうな顔でベッドに突っ伏した。

 

 優一郎の周囲にはいま、何人もの女性がいる。そして新しくもう一人、この地下で暮らすヒューマノイドは増えた。鈴という名の少女を優一郎はいたく気に入ったらしい。鈴は多輝や要と同様にこの地下二階に部屋を与えられた。

 

 そして客室には白銀と立城がいる。多輝は強く額を腕に押し付けて薄く目を開けた。真っ白なシーツは多輝の影で灰色に見える。

 

 おれなんて要らないんじゃないのかな。だって他にも強い奴ならいっぱいいるし。それにおれは結局、役に立ってないみたいだし。そう考える多輝の性的欲求は次第に増し始めた。その内に焦れたものを我慢できず、多輝は内腿を擦り合わせた。

 

 やっぱり我慢できない。多輝は悲しい気分でスカートの中に手を入れた。そっと下着を指先で撫でる。もうすっかり下着は濡れそぼっている。多輝はベッドに顔を乗せたまま下着越しに股間に触れた。

 

 不意に小さな電子音のメロディが鳴る。多輝は慌ててスカートの中から手を出した。驚きに脈打つ胸を押さえて息をつく。それから慌てて多輝はもう一度スカートに手を入れた。下着の中を探ってクリトリスを軽くつまんで回す。

 

『多輝、調子はどうだい?』

 

 穏やかな優一郎の声が聞こえてくる。多輝はそっとスカートから手を出してそっぽを向いた。

 

「べ、別に」

 

 普通だけど。そう言いながら多輝は少しだけ俯いた。自然に顔が赤くなる。

 

『もう少ししたら、そちらの部屋に向かおうと思ってるんだけどいいかな?』

 

 あくまでも優一郎の声は穏やかだ。が、多輝はそれを聞いた瞬間、ぱっと顔を上げた。無意識のうちに表情が緩む。慌てて立ち上がって多輝はうん、と頷いた。急いでバスルームに駆け込んで濡れた下着を取る。それを洗濯用のかごに放り込んでから多輝は忙しく部屋に戻った。小さなチェストの引出しから真新しい下着を出す。多輝は慎重にショーツの縫製に歪みがないかチェックしてからそれを身につけた。

 

 タイミングよくドアが鳴る。多輝は急いで内側からドアを開けた。何食わぬ顔でよう、と挨拶する。すると優一郎はにっこりと笑って静かに多輝の部屋に入ってきた。

 

「多輝、調子はどうだい? やっぱり記憶は戻らないかい?」

 

 多輝の勧めたソファに腰を下ろしながら優一郎が心配そうな面持ちで告げる。多輝は慌てて詫びた。

 

「ご、ごめん! その、まだ思い出せなくて」

 

 どもりながら言う多輝の声は緊張に裏返っていた。優一郎の傍に佇んで視線を彷徨わせる。




前の話『魂の座 暁の姉妹』で出した翼が引っ込められなくなってる多輝です。
中身が多輝じゃなかったので覚えていないのは仕方ないのですが……。
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