※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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エピタイ通りですw
エロシーンはありません。


みぞおちに一発入れてさらっていく

 やがて家々の並びが見えてくる。まともな道に飛び降りたところで水輝は急ブレーキをかけた。けたたましい音を立てて車が急停止する。そこで初めて水輝は奈月に声をかけた。

 

「……舌、噛まなかったか?」

「大丈夫です。ぎゅっと歯を噛み締めてましたから」

 

 笑顔で答えた奈月によし、と頷いて水輝は車を降りた。奈月が差し出した薄い衣装ケースを抱える。

 

「じゃあ、行ってくる。何かあったら逃げろよ。この辺、壊滅するかもだし」

 

 窓から顔を覗かせて水輝は真面目な顔で奈月に言った。

 

「はい! 水輝さん、ご武運を!」

「おう!」

 

 力強く頷いて水輝は家々の並ぶ方へ向き直った。広い間隔で建つ家々は静まり返っている。水輝は衣装箱を抱えて慎重に周囲を伺いながら歩き出した。もしかしたら罠の一つや二つ、仕掛けられているかも知れない。警戒しつつ水輝は家の一軒一軒を注意深く観察しながら歩いた。

 

 湖畔に建つ家々はそれぞれに創意工夫がなされている。基本的に背の低い家ばかりだが、中には周囲に立つ木々に混ざって判らない家もある。何かのカモフラージュか? そう訝りながら水輝はその家を横目に見ながら歩いた。

 

 木々の間に湖が見える。それを見て水輝は少し緊張を解いて苦笑した。かつてこの湖は一度、燃え尽きて消えた。だがその後、再び湖は出来ていたらしい。あれからずっとこの地に近付かなかったからな。そう呟いて水輝は足を止めた。

 

 ここはかつて紫翠と水輝が誓約を結んだ地だ。恐らく立城は意図的にこの地に別邸を建築したのだろう。水輝は口許に笑みを浮かべて再び歩き出した。

 

「いや、油断は禁物だ。もしかしたら術でもかけられているかもだし」

 

 頭を強く振り、水輝はそう自身に言い聞かせた。それからじっと正面を睨む。並んでいる家の中にごく薄い煙を吐き出している家がある。伸びた煙突から吐き出されている煙を見止め、水輝はよし、とこぶしを固めた。

 

 その家は周囲の家々からは少し離れた場所に建っていた。水輝は木の陰に隠れてしばしその家の様子を伺った。幸い、術の類はかけられていないらしい。よし、と頷いて水輝は身を低くしてじりじりとその家に近付いた。窓から見えないよう、注意深く角度を選んで前に進む。匍匐全身でもしてやろうかとも思ったが、それはタキシードが汚れるから止めておいた。

 

 数分後、家の前に到着した水輝は深々と息を吸った。ドアノブに手をかけて力任せにドアを開く。

 

「たのもう!」

 

 大音声で言いながら水輝はドアから手を離した。破壊されたドアが水輝が手を振ったのに合わせて後ろへと飛んでいく。玄関に仁王立ちになった水輝を部屋にいた二人の子供が呆然と見る。水輝は鋭く舌打ちをして断りもなく家に上がりこんだ。

 

「な、なに?」

 

 いち早く、正気に戻ったのか少年の格好をした立城の方が先に声を上げる。水輝は身構えながら立城に近付いた。立城は眉をめいっぱい寄せてうろんな目で水輝を見ている。その横に座っているのは桜だ。桜は広げた本を膝に乗せ、首を傾げている。水輝はそれを確認してから通信機のスイッチを入れた。

 

「こちらコードワイバーン! 目標を捕捉した! 各自、第一種戦闘配置につけ!」

「……は?」

 

 立城がしかめっ面のままで間の抜けた声を上げる。水輝は手にしていた衣装ケースをその場に投げ、立城の肩を無造作につかんだ。

 

「……何でそんな格好してるの? ていうか、なに? 戦闘配置って」

 

 棒読みの立城のせりふを無視して水輝はさらに告げた。

 

「とりあえず女になれ!」

「ええと」

 

 立城が顔をしかめて言ってから目を閉じて眉間を押さえる。それから立城はため息をついて目を開けた。

 

「よく判らないんだけど、人違いじゃない? 僕、ショーを引き受けたつもりは」

「むう。割と素直じゃないな、お前。じゃあ、強引に女にするがいいか?」

 

 立城の言葉を遮って水輝は低い声で言った。何で、と呟いた立城を水輝は引き起こした。立城の膝に乗っていた本が音を立てて床に落ちる。桜はどうやら自分には関係ないと判断したらしい。のんびりと横で本を読み始めている。

 

「おれはノーマルだが致し方がない!」

 

 そう大声で宣言してから水輝は立城を抱き上げ、いきなり口づけた。驚いたように目を見張り、立城が全身を硬直させる。口づけを介して力を送り、水輝は立城を抱きしめた。すると腕の中で立城の身体が変質する。小さな子供から成人した女性へと立城の身体は変貌した。解放された立城が裸のままで呆然と佇む。よし、と頷いて水輝はポケットに手を突っ込んだ。宝石箱を取り上げて中から指輪を出す。紫色の美しい宝石の施された指輪を立城に突きつけ、水輝は大声で喚いた。

 

「好きだ! 結婚してくれ!」

「へ!?」

 

 目を丸くした立城が裏返った声を上げる。その直後、水輝は素早く動いて立城の鳩尾にこぶしを叩き込んだ。ぐらりと揺れた立城の身体を肩に担ぎ上げる。焦ったように立ち上がった桜を足で制しながら水輝は叫んだ。

 

「任務完了! 奈月! 車を回せ! ずらかるぞ!」

 

 水輝は脱力した立城を肩に担ぎ上げ、指輪をポケットに戻した。床に放り出していた衣装ケースを取り上げる。しまった、先に着せた方がよかったか。舌打ちをして呟きながら水輝は桜を足であしらった。

 

 不意に弦楽器の柔らかなメロディが聴こえて来る。水輝は眉を寄せてから音源を探した。どうやらこのクラシック音楽は立城の股間から流れているらしい。ふむ、と呟いて水輝は立城の股間に手を突っ込み、クリトリスを軽くつまんで回した。

 

『水輝さん、おめでとうございます』

 

 笑い混じりの優一郎の声が聞こえてくる。おう、と水輝は頷いてみせた。ヒューマノイドの機体を構成した立城の股間から声は聞こえてきている。

 

『それでは、誓約の間でお待ちしています。記者会見は夕方七時に設定しました。生放送だそうですので』

「七時……」

 

 そう言いながら水輝は腕時計を見下ろした。何とか間に合うだろう。そう呟いてから水輝は家を駆け出した。水輝の後を桜が泣きながら追う。そこに傷だらけのロールスロイスが飛び込んでくる。水輝は後部座席に立城と桜を放り込んでから運転席にいた奈月と交替した。奈月が衣装ケースを持って後部席に乗り込む。それを確認してから水輝は車を発進させた。

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