※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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とにかく騒動を起こさないと気が済まない連中です!w
エロシーンはありません。


大広間で多輝がコンパニオン 2

「いいかげんにしとけ。この女たらし」

 

 烏龍茶を渡す際に多輝はごく小さな声で水輝に言った。すると水輝がにやりと笑って多輝の肩を唐突に抱く。多輝はぎょっとして水輝を見上げた。

 

「あら。お知り合いですの?」

 

 年配の女性が口許に手をあてて楚々と笑いながら言う。すると水輝は営業用の爽やかな笑みを浮かべて言った。

 

「実は娘でして」

 

 そう水輝が告げた瞬間、その場が静まり返った。水輝を囲んでいた女性たちが息を飲む。多輝も仰天して水輝の腕の中で硬直した。

 

「あ、あの?」

 

 いち早く正気に戻ったらしい女性の一人が戸惑いと驚きの声を上げる。すると水輝は笑みをたたえたまま続けた。

 

「嫌だなあ。友達の、ですよ」

 

 そう言ってから水輝は失礼、と女性たちに頭を下げて多輝の肩を抱いたまま歩き出した。フロアの隅まで退避したところで水輝が多輝から手を離す。

 

「あー、うぜー」

「いきなりなに言い出すんだ!」

 

 出来るだけ潜めた声で言って多輝は水輝を睨みつけた。すると水輝が烏龍茶を啜りながら横目に多輝を見る。

 

「嘘は言ってないだろ?」

「いや、だから、あの」

 

 どもりながら多輝は目を白黒させた。確かに自分は立城と水輝から作られたとは聞いている。だが、その事実をわざわざ目の前に突きつけられたことはない。強いて言えば要が面白がっていた程度か。混乱する頭を押さえて多輝は必死で考えを巡らせた。

 

「あ、やばい」

 

 急に水輝が焦った声を上げて多輝に烏龍茶のグラスを押し付ける。直後、フロアの中央で歓声とも悲鳴とも言いがたい女性達の声が上がった。水輝が慌てて先ほどの女性の輪に駆ける。すると水輝はあっという間に女性達に取り囲まれてしまった。女性達で出来た輪の隙間から見え隠れしていた水輝が多輝に手を振る。どうやら逃げろという意味らしい。多輝は訝りに眉を寄せて首を傾げた。

 

「ちょっと。何をしてるの」

 

 急に背後から声をかけられて多輝は驚きに身を竦めた。振り返った多輝の目の先には立城が腕組みをして立っていた。どうやら取り巻きからは一時的に解放されたらしい。

 

「いや、あいつがおれのこと、娘とか言ってて」

「なっ」

 

 立城が慌てたように女性達の輪を見る。その直後、水輝を取り囲んでいた女性たちが一斉に多輝と立城を見た。

 

「……最悪」

 

 立城が呻くように言う。女性達がそれぞれに嬉しそうな顔をして二人の元に動いてくる。多輝は戸惑いの声を上げて立城と女性達とを見比べた。まずい。このままだと今度はこっちが囲まれる。多輝が慌てて逃げようとした時、立城が耳打ちした。

 

「君はとにかく水輝のところに」

 

 そう言って立城が強く多輝の背を押す。雪崩れのように迫ってきた女性達の輪の外に多輝は一人、押し出された。黄色い声で女性達が立城を質問責めにする。多輝は床にへたり込んで呆然と女性達で出来た人垣を見た。

 

「何してる! 来い!」

 

 呆然としていた多輝の手を何かが強く引く。多輝は慌てて立ち上がった。水輝が片腕に桜を抱え、奈月を従えて多輝の腕をつかんで人垣から離れていく。

 

「水輝さん。多輝はこちらへ」

 

 足をもつれさせた多輝の傍に優一郎が駆け寄る。水輝はおう、と頷いて多輝の手を放した。よろけた多輝の手を今度は優一郎が引く。多輝はそのまま優一郎に関係者の控え室に連れて行かれた。広い室内にはメイク用の台が設えられている。

 

「なっ、何だってんだ、一体」

 

 そう多輝が呟いたところで控え室のドアが再び開き、水輝が桜と奈月を連れて入ってくる。

 

「テレビ局が録画放映を前提にこのパーティも取材していたんですが、記者会見の視聴率が予想外に高かったらしく、ニュースの中で生中継されてしまいました」

「げ!」

 

 優一郎の言葉に水輝が引きつる。その直後、水輝は低く呻いて額を押さえた。その腕に抱えられていた桜が暴れる。

 

「何故、わたくしがこのような目に合わなければならないのですか!」

 

 喚きながら桜が水輝の腕から飛び降りる。

 

「今は、要さんがレポーターに応対してくれています」

 

 優一郎が言いながら水輝と同じように額を押さえて呻く。そっぽを向いて拗ねる桜の横では奈月がおろおろしている。多輝はそれぞれの反応を見てから肩を怒らせた。

 

「だから何なんだよ、一体!」

 

 ヘアバンドを床にかなぐり捨てて多輝は喚いた。するとそんな多輝を横目に水輝が睨む。

 

「だから苺がおれと紫の娘ってことが、全国ネットで放映されちまったんだよ!」

「は!?」

 

 素っ頓狂な声を上げて多輝は硬直した。迂闊だった、と呻きながら水輝が頭を抱える。ざまあみろです、と桜がこっそりと呟く。その横では奈月が涙目になっていた。

 

「こちらが把握していた以外に、テレビ局のレポーターとカメラマンが一般の参列者のふりをして紛れ込んでいました。水輝さんが仰った台詞と、その後の奈月さんへのインタビューがちょうど、ニューズトゥデイで全国放映されてしまったんです」

「入場者のチェックはしてた筈なのに……筈なのに」

 

 がっくりとうなだれて水輝がぼやくように言う。それから水輝はがば、と身を起こして多輝を指差した。




大体、水輝が原因。
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