※この作品はR-18です。

魂の座 四部 苺の季節   作:伊駒辰葉

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酷いエピタイだー!!w
エロシーンはありません。


三角関係未満なのに多輝がキレてる件

 不意にドアが鳴る。優一郎は慌てて顔を上げて返事した。するとドアが薄く開いて多輝が顔を覗かせる。

 

「ちょっと、話あんだけど……取り込み中か?」

 

 それなら後にするけど。多輝がそう言いながらドアを閉めようとする。

 

「多輝さん!」

 

 斎姫がそう言って立ち上がり、多輝に近付く。面食らったように多輝は瞬きをし、斎姫に手招きされるままに部屋に入った。閉めたドアに寄りかかり、多輝は斎姫に顎をしゃくった。

 

「いや、おれの用事はすぐ済むから、あんたは座っててくれ。落ち着かない」

 

 顔をしかめて言って多輝がほら、と斎姫を促す。

 

「優くんをお願い。薄々気づいていたけど、あなたのほうが優くんに相応しいわ」

 

 首を振って言って斎姫が多輝の手に触れようとする。だが多輝は背に手を回してそれを拒む。訝りの声を上げた斎姫にため息をつき、多輝は告げた。

 

「いいから座れ。その件も含めて話をしにきたんだ」

 

 多輝が低い声で告げる。すると斎姫は戸惑ったように多輝と優一郎を見比べ、やがて諦めたようにソファに戻った。優一郎は俯けていた顔を上げて多輝を見た。多輝はまだ女性の身体をしている。

 

「あの、優くん、多輝さん! お願いだから許可をちょうだい。部屋に戻って無制限自慰動作を行う許可を!」

 

 切迫した様子で斎姫が言う。優一郎が許可を出そうとした直前に多輝が告げる。

 

「おれ、ここを出て行こうと思う」

 

 それを聞いた優一郎は驚きに目を見張って多輝を見た。目の前に座っていた斎姫も息を飲んで多輝を見る。多輝はドアのところに立ったまま、動こうとしない。

 

「あの、わたしのことならいいのよ! 今、優くんに振られたところだから! 優くんにはあなたが必要なの! だから!」

 

 慌てたように斎姫が言う。すると多輝が首を横に振った。

 

「おれがいるとそうやってあんたらのことをかき回すだけだ。それにおれ、考えてみたんだけど……」

 

 そう言ってから多輝がぎこちなく笑う。

 

「おれ、ヒューマノイドの身体だからマスターの優一郎の指示には従わなきゃならないけど、別に優一郎のこと好きじゃないし」

 

 頭をかきながら言ってから多輝が腕組みをする。優一郎は目を見張ったまま、コーヒーカップに目を落とした。いつの間にかカップは震えている。それを見て優一郎はようやく自分が震えているのだということに気がついた。

 

「そんなこと、ないっ! わたしにも少しは力があるもの! 嘘かどうかくらい、わかるわ! あなたが優くんを好きなのはわかってる。だからわたし、ずっと嫉妬して、あっ!」

 

 小さな悲鳴を上げて斎姫がソファに崩れる。ストレス値が限界に達した斎姫の腰が前後にがくがくと揺れる。優一郎は慌てて腰を上げて斎姫に駆け寄った。

 

「とにかく、おれはここを出るから。それに優一郎。一度、約束したんだからちゃんと守ってやれよ。斎姫に失礼だろうが」

 

 そう言って多輝が優一郎を睨みつける。優一郎は混乱しつつも斎姫のスカートをめくり上げた。

 

「優くん……わたしはいいから……自慰の……許可を、多輝さんと、お話を……」

 

 懸命に言って斎姫が優一郎に頷く。優一郎は斎姫に頷き返した。

 

「許可する」

 

 そう告げて優一郎は立ち上がった。

 

「多輝、話を聞こう」

「だからさっきから言ってる。おれはここを出る。お前は婚約でも結婚でも好きにしろ」

 

 舌打ちをして言ってから多輝は腕組みをしたままドアに寄りかかった。斎姫は声を殺して自慰をし始めている。そんな斎姫をちらりと見てから優一郎は顔を上げた。

 

「多輝。残念だけど、機体であろうと無かろうと、君の一存で、君はここを出て行くことはできない」

 

 感情の失せた声で言いながら優一郎は元の席に戻った。すると多輝がため息をつく。

 

「だから許可を寄越せ。もう、立城に話はつけた。おれはマンションに戻る」

 

 どうやら多輝は既に立城とは連絡をしていたらしい。確かにここに来る前、多輝は立城からマンションを買い与えられている。

 

「僕はもう誓いは破らない。君がそのマンションに行くというなら。僕もついていく」

「はあ? 阿呆か、てめえは。おれはお前なんざ要らないっつってんだ!」

 

 手をこぶしの形に固め、俯いた多輝が怒声を張る。その瞬間、多輝の器が内側から切り裂かれる。多輝はだが一声も上げず、震えながら立っていた。優一郎はぼんやりと多輝が傷ついていくのを見つめていた。

 

「誓約の管理者として、この者、吉良瀬多輝にジョーカーの免責を与える」

 

 優一郎が静かに告げた瞬間、多輝を傷つけていた力が止まる。多輝は顔を上げて目を吊り上げ、優一郎を睨んだ。

 

「誓約とか、龍神とか、そんなの知るか! お前も冷静に考えろ! お前が欲しいと思ったのは、おれじゃない! おれの前世のあいつだろうが!」

 

 だからお前が好きだと思う斎姫と婚約なり結婚なりしやがれ。多輝が勢いよくまくし立てる。それを聞いた優一郎はため息をついた。

 

「前世?」

 

 言われている意味がまるで判らない。優一郎は額を押さえて呟いてから目を上げた。まだ多輝は怒りに目を吊り上げている。

 

「夢で時々見る。おれの格好をしたおれじゃない奴が、お前みたいな、でもお前じゃない子供と一緒にいるとこだ」

 

 そう言ってから多輝が口許を指で拭う。伝い落ちていた赤い液体が擦れて多輝の口許に赤い染みを残す。

 

「ごめん。僕は本当にその夢については見た事が無い。何も知らないんだ。その事と今回の申し出に関係あるなら教えてくれないか?」

 

 真剣に優一郎が訊ねると嫌そうな顔をしつつも多輝は話した。どうやら昨日、優一郎が意識を失っている間、多輝はその少年らしい者と話をしたらしい。その中で優一郎は多輝のことを天彌と呼んでいたのだと言う。

 

「夢に出てくる子供の名前はせつなって言うらしい。だから多分、昨日お前をのっとってた奴もそうなんだろ」

 

 しかめ面で言って多輝が頭をかく。

 

「つまり、君が僕を想っているように見えるのは、前世にひきずられているからであって、君の本心ではないと、そういうこと?」

 

 消沈した面持ちで言って優一郎は多輝を見つめた。多輝が嫌そうに顔をしかめて肩を竦める。

 

「そうなんだろ。おれもお前も。だから、斎姫が好きならそれでいいじゃねえか。そんなくだんねえことに振り回されるよか、よほど健全だ」

 

 斎姫はその前世とやらには関係ないらしいしな。そう呟いて多輝が腕組みをする。顎をしゃくった多輝につられて優一郎は目の前に横たわる斎姫を見た。斎姫は懸命に声を殺して自慰を続けている。

 

「前世がどうとか、僕には関係無い。僕が一番好きなのは、コンビニの材料から手料理を簡単に作ってくれて、イチゴパンツが似合う君なんだ」

「パンツは関係ねえだろ!?」

 

 そう叫んで多輝がため息をつく。

 

「んなの、ただの錯覚だ。とにかく、おれはもうこんなばからしいことに付き合うのはごめんだ。人形で遊びたいなら他とやりやがれ」

 

 剣呑に言って多輝が踵を返す。優一郎は慌てて立ち上がって声を張った。

 

「多輝! 君の理屈だと、前世に因縁があったら好きになってはいけないと、そういうことかい? それこそ、前世にひきずられて拘っていることにならないかい」

「……茶番は終わりにしようぜ。おれはここを出る。誓約は無効だ。……ジョーカーなんだろ?」

 

 呟くように言って多輝がドアを開ける。優一郎は目を見張って息を飲んだ。

 

「多輝。誓約も罪刑法定主義的な部分があるんだ。過去に遡ってまで免責は適用されないよ」

「じゃあ、おれに全部罪をおっ被せろ。それで事は済む」

 

 開いたドアの向こうには由梨佳と蒼が立っていた。二人が揃って優一郎に会釈をする。じゃあな、と片手を上げた直後、多輝とその二人の姿がかき消える。その瞬間、結界を三人の気配が越えてしまう。優一郎は多輝の気配を追って迷わず転移した。




三角関係ではあるのですが、そもそも斎姫は自身の存在を道具と思っているのでややこしいというか……。
婚約しちゃったから逆にめんどくさいことになったというか……。
そもそも多輝がめんどくさい性格だというか……ww
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