翌朝。
いつものルームウェアを着たあさひは自室のベッドで目を覚ました。
カラオケ屋の店員に発見された後から今しがたの目覚めまでの記憶は全く残っていなかった。ただ何事もなかったかのように目覚めたあさひは「は、はは……夢だよ、夢だよね」と乾いた笑いを部屋に響かせた。
しかし、無情にもあさひのスマホに溜まった通知が、昨日の出来事が現実であることを認識させる。
「…………しにたい」
それは知らない名前からの通知だった。
日時と場所を示し、来いと書かれた簡素なものと、警察に相談してもいいが俺が捕まる代わりに昨日の動画が世界中に流れることになるからな、という逃げられないことを意味する2つのメッセージが送られてきていた。
「なんで……こんなことに……」
あさひはただ呟き、涙を流すしかなかった。
それから数日後。
あさひの姿は駅前のカフェの中にあった。
男の指示通り、指定された場所に足を運んでいた。
一体何をされるのか、どんなことをさせられるのか。恐怖に怯えながらもあさひは従うしかない。ただ死ぬよりも酷い社会的な死から逃げるために。
しばらくして、男がやってきた。相変わらずの軽装に不敵な笑みを浮かべている。
「よお」
男は注文したアイスコーヒーをテーブルに置き、あさひの向かいの席に座った。
「今日はお前にプレゼントがあるんだ、受け取れ」
男はあるものをテーブルの上に置いた。
あさひはそれを一目見たあとすぐ手に取り、見えないようにテーブルの下に隠した。
今、あさひが必死に人目を避け隠しているそれは、男性器を模したいわゆる大人のおもちゃだ。
「こんなもの、ひと目につくように出さないでください……」
あさひは震えながら抗議の声を上げた。
そんな様子を面白そうに見ながら男は話を続ける。
「それを今すぐ中に入れろ、ここで」
そういって男は人差し指でテーブルの上をコツコツと叩いた。
このカフェはテーブル毎に大きめのソファが設置されており、パーテーションで区切られている。テーブルの広いため、余程意識していなければ足元の様子が見えることはない。
問題は、あさひが今日はパンツスタイルだということだ。スカートだと何をされるかわからない。無意識のうちに防衛本能が働いているのだろう。男はそこまで考えていたのかもしれないが、あさひの服装は完全に仇となった。
殺されるよりも辛い弱みを握られ脅されている。あさひに拒絶や懇願の選択肢は与えられない限り存在しない。
「……本当にここで?」
「もちろん」
「……わかりました」
全てを諦めたあさひはもぞもぞと動き出した。なるべく訝しまれることの無いように最低限の動きで、リアクションも抑えて、渡された玩具を中に入れる。
あさひは改めてそれを握りしめた。そしてとある問題に気づいた。
(え、これ……大きすぎる)
先日、あさひの口を、膣内を、好き放題に蹂躙した男のモノと変わらない太さ、長さがあった。その上、根本近くから触手のような短く柔らかい分岐が生えている。
触手部分はさておき、どうやって入れるのか。そのままこれを入れることは出来なくもないかもしれないが、少しの潤いもない今のままでは激痛を伴うことは間違いない。そのリアクションを堪え、何事もないように振る舞うのは難しいだろう。
「えっ、と……ローションとか、ないんですか?」
あさひは恐る恐る男に尋ねる。
「は?ローションをカフェで注文したいって?」
男はニマニマと嘲笑いながら、わざとらしく大きな声であさひに聞き返した。
「……っ!」
この男は全ての状況において、あさひを貶めることを優先し、その反応から快感を得ている。それこそ店員を呼び止め、あさひを指差しローションを注文しても不思議ではない。
「な、なんでもないです!」
ローションは不要だという意思を見せたあと、あさひは覚悟を決めた。
自分でなんとか濡らすしかない、と。
玩具を太腿で挟んで見えないように隠したあと、パンツのボタンを外す。チャックを少し緩めウエストに余裕を作ったあさひは、右手をその中に忍び込ませた。
「へぇ、右手でオナニーするんだな。左手のスマホでオカズを探しながら右手でクリトリスをカリカリシコるわけだ」
男は言葉であさひを辱め凌辱する。身体の芯が恥ずかしさで熱くなり、あさひは思わず周囲を確認してしまう。
「ククク……挙動が怪しすぎるぞ」
周りには誰もいないはずだが、あさひはそれでも羞恥心を捨てきれない。
そんなあさひを見て男はさらに追い討ちをかける。男は両足をあさひの両脛の間に差し込み、強引に開かせた。
太腿に挟んでいた玩具が床におち、通路の方に跳ねた。あさひは急いで拾おうとするが右手をパンツの中に入れていたせいで反応が遅れてしまった。
「向かいのにーちゃんにバレちまったな?」
あさひはハッと顔を上げ、通路を挟んだ向こう側の席を見た。
そこには大学生くらいの男がいた。こちらを見ており、目が合うと気まずそうに視線を逸らされた。
あさひは全身に火がついたように熱くなるのを感じると同時に、どうしようもなく泣きそうになった。自分の痴態が見知らぬ人に見られていたという事実に耐えられなかった。
おそらく彼は店にいる間、私のことを意識し続けるだろう。向かいの席に座っている彼の友人だと思われる男の人にこのことをこっそり伝え、二人揃ってちらちらと私のことをこっそり見てくるかもしれない。
あさひは今すぐこの場から逃げ出したくなった。もし、彼らが同じ大学に通う学生だったら、顔を覚えられるだけで学内での立場が最低なものになってしまう。
「続けろ」
しかし、あさひの正面から発せられた低い声はそれを許さない。
「っく、ぅぅ」
短い嗚咽を漏らし、あさひは再びジーンズの中に右手を滑り込ませた。
真横からの視線をチクチクと感じながらも、指先を動かし自慰行為を始める。ローションなしで玩具を膣内に入れるにはクリトリスを刺激して濡らすしかない。
ショーツの上から陰核を探り当てると、あさひは自分の爪先でなぞるようにカリカリと優しく引搔く。
敏感な箇所へいきなり直接触れると強すぎる刺激に身体が反応しすぎて声が漏れるかもしれない。
手首を上を動かさないようにしながら、何度も爪で擦る。無意識に肩が跳ねてしまうが、抑えようがないので、何でもないフリをするしかなかった。
爪先で突かれ、何度も刺激を受けた陰核は少しずつ充血に腫れていく。徐々にショーツを押し上げ、小さな突起サイズにまで勃起するクリトリス。皮も剥けて敏感な部分が全て曝け出されたところで、あさひの爪先が強めに引っかかった。
「っっっ!」
あさひは無言で身体をふるふると震わせる。膝が反射的にキュッと閉じた。
予想以上に早く感度が上がっていた。それに気づかず、いつものペースで剥けた陰核を強めに刺激してしまっていた。
「……は、ふ……」
軽く達していた。
いわゆる甘イキ。
一瞬、目の前がぱちっと弾けて頭の中が緩く溶ける。
快楽の波が腰の奥を揺らし、甘く鈍い、ふわふわとした刺激が脳を満たしていく。
「見られてたぞ」
目の前の男が下品な笑みを浮かべ、顎で向こう側を指した。大学生男子二人が座るテーブルの方向だ。
あさひは一瞬顔をその先に向けそうになったが、直ぐに戻した。甘イキ直後の表情を見られていたかもしれない、と考えたあさひは、心臓がバクバクと高鳴るのを感じた。
それと同時に、悔しさがこみ上げてくるのを感じていた。脅されて仕方なく命令に従ったはずなのに、性感に呑まれ痴態を晒している情けない自分の身体。
(なんで……感じてるの……)
見ず知らずの男性二人に、見られてるとわかっているはずなのに。
ただ、淡々と言われたことを何も考えずに行うだけでいい。無心で刺激しても濡れはするし玩具は入る。感じたり、イクこともないはずなのに。どうしてこんなに興奮しているんだろう。
「早く続けろよ」
悶々と巡らせていた思考を止め、あさひはショーツの中に指を這わせた。
「隣のにーちゃんたちは今どんな気分だろうな?」
徐々にショーツの中に沈んでいくあさひの右手を隣の大学生たちがジッと見つめている。男はその様子を見ながらニヤリと唇を歪めた。
隣の大学生二人の様子を考えるだけで羞恥に肩が震え、動きが止まりそうになる。
手元が隠れるように羽織ったアウターの位置だけ調節したあさひは、余計なことを考えずにショーツの中に忍ばせた指先の感覚に集中した。
あさひは秘裂をかき分けるように指を這わせる。真っ赤に腫れ上がったクリトリスを避け、膣口に触れた。
ぬち、と粘り気を含んだ水っぽい感触が指先に絡まった。
甘イキしたあさひの恥部は、とろとろと愛液を滴らせ始めていた。
ただ、あのサイズを中に入れるには未だ湿り気が足りなかった。
(もっと濡れてないと、入らない……)
指先を浅く膣内に埋め、入り口付近をほぐすように動かす。
手早く濡らすにはGスポットを小刻みに刺激するのが一番早い。その分、性感も強くなってしまうので、あさひは歯を食いしばり何でもないフリをして耐えるしかない。
指先で入口付近を掻き回し、膣内から漏れ出た粘液を指全体に纏わせた。
指先を曲げながら第一関節までゆっくりと沈める。纏った愛液が潤滑剤となって、スムーズに膣壁を押し広げあさひの指は挿入されていく。
すぐにザラザラとした感触に触れた。指の腹がGスポットを撫でていた。
(ぐ、ぁ、ぁ……)
あさひは声が漏れないように奥歯を強く噛み締める。
しかし、あさひは無意識のうちに最も気持ちの良いポイントを避けて動いていた。
いつものように激しくはせず、じっくりと、ゆっくり時間をかけ焦らして慣らしていく。
男の命令に従うために、快感に屈服しないために、あさひは慎重にならざるを得なかった。
あさひの細い指先がGスポットを優しく押し込む。
「は、ふ……」
身体の中心から広がる甘い痺れに、あさひは思わず息を漏らしてしまう。
膣内を指で擦りあげるたびに、快感が迸る。
気づかれないように、あさひは意識を逸そうとするが、言うことを性感に浸り言うことを聞かなくなってきた身体が小さく跳ねる。
右手の人差し指から水っぽい粘液が滴り、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音があさひの耳に届く。
第二関節から手のひらに愛液がぽとり、垂れ落ちた。
もう少し、と膣内の天井をトン、トンとリズミカルに押し上げる。
腰が勝手に動き、脚がカクカクと震える。
やがてGスポットが盛り上がり、ザラザラした感触が逆に指を圧迫しはじめた。
絶頂の予感。
(ァ……イきそう……)
子宮がきゅんと収縮し膣内が熱く潤う気配を感じた。このまま続ければ、Gスポットの裏側に溜まった潮が漏れるかもしれない。
ショーツの中で密かに蠢くあさひの右手は、手の甲まで滴り落ちた愛液で濡れそぼっていた。ショーツには大きな染みが広がっているだろう。
これなら、たぶん……と、あさひは空いた左手でファッションバックから玩具を探るだした。そのまま手早くショーツの中に入れようとする。
しかし、チャックを緩めただけのスペースは玩具を挿入するには狭かった。玩具を入れるためには、一度ショーツとジーンズをある程度脱がないといけない。
向こう側から、男子大学生たちの熱い視線を感じた。
さっ、と周囲を見回したが、目線が合ったのはその二人だけ。店内で過ごす他の客や店員には気づかれていなかった。
目があった一瞬だけで、二人がジッとあさひの様子を見つめているのがわかった。
間違いなく、あの二人は興奮している。
あさひは迷ったが、他に方法はない。
目立たないように腰を少しだけ浮かせ、ショーツごとジーンズを太腿までじわじわとずらす。
両手を使わないとずらせ無いため、アウターがズレてチラチラとあさひの鼠径部が見え隠れした。でも気にすればするほど見えてしまう。
極力見えないように、最低限の動きでなんとかチラリズムを抑えた。
あさひの秘部は蜜壺になっており、愛液を溢れさせている。
溢れでた粘液は糸を引きながら、露出した臀部を伝って合皮製のソファに張り付き広がっていく。
あさひのおしりが動く度にぐちゅ、ぐちゅ、と小さく音を立てながら。
ショーツを膝上あたりまで下ろしたところで、再び玩具を手に取る。
緩やかに湾曲した男根を模る玩具。それに滴る愛液を十分になじませ、一気に突き入れた。
湾曲した太い玩具が一気に膣壁を割り挿り、先端にごつ、と鈍い音が響いた瞬間、
「あっ……」
あさひは軽く達していた。
びくん、と背筋が伸び、視界がチカつく。
ジーンズを戻す前に、股間を露出したままイってしまった。
甘イキではなく、はっきりとした快楽。
(こんな……)
あさひは唇を噛んだ。
恥ずかしくて死にたくなる。
だからといってこのまま固まっているわけにはいかない。玩具が深く突き刺さった恥部が人の目に触れる前に、ジーンズを戻さないと。
軽い絶頂の余韻に顔を歪めながら、ジーンズに手をかけずりあげようとする。
あさひが快感に耐え、羞恥に悶える様子を眺めながら、男は満足げに笑い、スマホの画面を軽く叩いた。
あさひはこの玩具にケーブルが繋がっていないことを深く考えていなかった。
無線で動くタイプだろうと思っていたが、男は両手顎の下で組んでずっとニヤついていたから、すぐに動くことはないだろうと油断していた。
それは、スマホで遠隔操作するタイプだった。
あさひは、膣内で激しく振動し、じっくり焦らされた膣内と真っ赤に勃起した陰核をこれでもかと刺激した。
急な衝撃にあさひが膣内を締め付けると、潮を溜め込んだGスポットが強く圧迫され、
「ひぐぅ!?」
(だめ!ダメぇえ!!ムリぃぃっ!!!)
あさひは声を抑えることができず、呆気なく絶頂を迎えた。
あさひは慌てて口を塞ぐがもう遅い。
目の前でニタニタしている男の後ろに座った女子大生が、怪しげな表情でこちらを見ていた。
(みない、で……)
絶頂の余韻で全身が敏感になったあさひは、中途半端に履けていないジーンズずりあげる衣擦れでさえ声をあげてしまいそうになる。
絶頂したばかりの身体は言うことを聞いてくれない。
はぁ、はぁ、と荒い呼吸をしながら必死に快感を抑え込もうと耐え凌ぐあさひは誰がどう見ても挙動不審だった。
一瞬、膣内を揺する振動が止まる。その隙にあさひは出口めがけて駆け出した。これ以上店内で嬌声を我慢できるとは到底思えなかった。
「は、逃げたか」
そういう男の表情に怒りは色はなく、寧ろこれからが本番だと言わんばかりの愉悦に浸った笑みを零した。
「さて」
あさひが座っていた場所に目を向ける。そこはあさひの体重で少し凹み、濁った本気汁がべっとりとこびりついていた。
男は紙ナプキンを手に取り、無言でソファを清掃した。そして、向かいの席であさひを視姦し、股間を張り詰めさせていた男子大学生たちに声をかけた。
「なぁ、君たち……」
酷く歪んだ笑みを浮かべながら。