転生者・ガンプラビルダーとして世界とハーレムを掴む 作:ニシノニシ
「おーほっほっほっほ! 遂にこの時が来ましたわね、チナさん!」
ミホシの当面の目標としていた女の子限定ガンプラバトル大会の当日、ひょんな事からチナも参戦する事になった原因である金髪縦ロールのヤジマ・キャロラインが、いつぞやのようにチナの前に立ちふさがった。
大会が行われる商店街中央の広場で、大会の参加者、応援、買い物に来ているお客さんたちが「なんだ?」と、高笑いをするキャロラインに注目している。
このお嬢様に恥ずかしいという概念はないのだろうか?
流石はお嬢様と褒めておこう。大物だ。
『よろしくね、キャロちゃん♥』
チナも負けじと(?)ベアッガイ
チナの天然返し。キャロラインは果たしてどう出る?
「あら、可愛い〜♥ 本日はよろしく願いしますわ〜♥ ……って、違あぁう!」
なんてキレイなノリツッコミだ。
これは甲乙つけがたし。引き分けとする。
「……まあ、いいですわ。そうやって勝ち誇っていられるのも今のうち。今日、わたくしが勝てばその『キャロちゃん』呼びはやめてもらいますからね」
「えぇ? でもキャロちゃんは……」
「や・め・て、もらいますわ!」
よほどキャロちゃん呼びが気に入らないらしい。
「それと……イズモ・レイくん? 貴方の事も少し調べましたわ」
「えっ?」
キャロラインが俺の前に立つ。
「こちらの界隈ではなかなか有望株だそうで。我がヤジマ商事でも、ガンプラバトルにはこれから積極的に関わっていこうと言う話になってますわ。……ですから、わたくしの恋人になった暁には、たっぷりと可愛がって差し上げますわ♥」
キャロラインのしなやかな指の先が俺の顎を撫でる。
「キャロラインさんみたいなキレイなお姉さんにそう言ってもらえて嬉しいです。でも、今日はチナちゃんが勝ちますよ。それで、俺の彼女になった暁にはチナちゃんと一緒に、たっぷり可愛がってあげますから」
俺の顎に触れていたキャロラインの手を取り、甲に口づけをした。
現代日本で男が肉体関係にもない女にすれば即通報されてもおかしくない行為であるが、キャロラインのお嬢様気質、根の真面目さ、チナに対する反応、俺が小2であるという点などから“イケる”と判断した。
「ッ!?」
案の定、キャロラインは分かりやすく顔を真っ赤にしたが振払おうとはしなかった。
チナとキャロラインの勝負は“チナが勝ったらキャロラインが俺の彼女になる”と“キャロラインが勝ったらチナと別れて俺が彼氏になる”という、どっちに転んでもキャロラインと恋人になるという我ながら意味不明な条件が設定されている。
もちろん、万が一にチナが負けても別れるつもりは毛頭ないが、俺が彼氏になるかキャロラインが彼女になるかは重要な要素だ。
真っ当な男女交際の結果による恋愛関係でない以上、これはどちらが恋人関係の主導権を握るか、どちらがどちらに下るのか、という勝負なのだ。
「……チ、チナさんの彼氏にしては、な、ななな、なかなかの色男っぷりですのね? ……いいでしょう。勝負を楽しみにしていますわ。おーっほっほっほ!」
面白いくらい動揺してくれたキャロラインが、半ば逃げるように離れる。
キャロラインが、俺と彼氏彼女の関係になるという事がどういう事だと考えているのかは知らないが、実に可愛がり甲斐がありそうな反応だ。
「あれが例の……。私が言うのも何だけど、ちょろそうな子ねぇ」
参加者として一緒に来ているミホシがキャロラインを評する。
自分で言うのも……って、ちょろいと自覚してたんだ。
からかってみたくなるが、大会前だしやぶ蛇な事は自重しておこう。
「じゃあ、参加受付してしてくるね、レイくん。いきましょう、ミホシさん」
「うん、行ってらっしゃい」
チナとミホシが受付へ向かうのを見送る。
さて、後は2人のくじ運を天命に託すのみ。
もし一回戦で2人が当たるような事があると、今日という日は台無し感があるが……果たして。
会場となる商店街の広場をザッと見回す。
えぇと……参加者っぽい女の子は、大体……20人強ってところか。
まだ受付時間はあるから増えるとしても、30人前後は集まるかな?
おや?
奥の壁際に見えるあのおかっぱ頭は、確かサザキとかってヤツじゃないか。
選手権大会に参加する為に師匠のガンプラを譲ってほしいと頼み込んでいたヤツだ。
今日の大会の参加者である女の子が集まっている側にいるので、一瞬“実は女の子”だったのかと思ったが、よく見ればすぐ横に俺と同い年くらいの小さなツインテールの女の子がいる。
少し肉付きの良いさそうな大きめのガタイをした女の子はサザキと親しげに話をしていた。
普通に考えれば妹といった所だが、自分の事を考えるとワンチャン彼女の可能性もある。いや、まあどちらでもいいのだが。
……ん、んん?
別の場所では、先程チナに絡んできたキャロラインが、黒い肌でドレッドヘアーの男と一緒にいる。
何だ、あいつは?
まさか、彼氏とか?
いや、どうかな。
誰に対しても物怖じしなさそうなキャロラインはともかく、相手の男はどこかよそよそしい感じがする。
というか、何かどこか見覚えがあるような……?
はて?
などと考えていると、受付を済ませた2人が戻ってきた。
「お帰り。受付は問題なかった?」
「うん、大丈夫だったよ」
となると、後はトーナメント表がどうなるか。
そのまましばらく待ち、いよいよトーナメント表が張り出されたので、確認する。
えぇと……チナ、ミホシ、キャロラインが全員勝ち進む前提で考えるとして……チナとキャロラインがAブロック3回戦、ミホシはBブロックなので決勝までどちらとも当たらない。
凄い。理想的な組み合わせだ。
あくまで全員が勝ち進む前提だが、チナとキャロラインの勝負の約束も果たせるし、ミホシの優勝という目的も果たせる。
全ての事が上手く運べば、キャロラインという新しい彼女が出来るし、ミホシの優勝で俺たちの関係もフェラ解禁という次のステップへ進む。
「2人とも、頑張って!」
「うん! 頑張る……!」
「なんだか、レイくんの私欲が透けて見えるけど……ま、特訓の成果、見せちゃいますか!」
そして、女の子限定ガンプラバトル大会の火蓋が切って落とされた。
一回戦──。
チナの対戦相手はメインカラーを緑色に変更したノーベルガンダム・デコを操るイマイ・アリスという女の子だ。年齢まではわからないが、恐らく高校生。かなり可愛い。
そのノーベルガンダム・デコが、ベアッガイ
この距離で!?
とも思ったが、ノーベルガンダムと言えばGガンダムに登場する近接戦闘に特化したモビルファイターだ。
見た所、遠距離戦に対応した武装も無さそうで、得意距離に持っていくためにバーサーカーモードで素早く撹乱しながら肉薄するという戦術は“有り”かもしれない。
だが、俺やミホシの高機動を売りにしたガーベラ・テトラ&改を相手にしていたチナなら、この程度のスピードは……!
落ち着いて、相手の動きをよく見て。
と、言いたくなるが、ステージ全体を俯瞰して見れる観客からのアドバイスはガンプラバトルではご法度だ。
しかし、俺の心配をよそにチナは冷静だった。
ステージの中を移動しながら牽制のビームを放ち、ノーベルガンダム・デコに容易く近づけさせない立ち回りをしている。
中距離で相手から放たれるビームリボンの攻撃も危なげなく避け、その攻撃の隙をつき、見事本命のビームを叩き込む。
──BATTLE END.
「おぉ! 一回戦突破だ」
非公式大会とは言え、ガンプラバトルの練習を始めて一ヶ月弱でここまで成長した事が感慨深い。
「やったよ、レイくん!」
「おめでとう、チナちゃん!」
嬉しそうにこっちを見るチナに親指を立てて返す。
その他も2つあるバトルシステムで、AB各ブロック毎のバトルが展開されていく。
ミホシも順調に勝ち上がり、チナも2回戦を突破。
そしてキャロラインも2回戦を突破した。
つまり、チナとキャロラインのバトルが成立した訳だ。
「レイくん、キャロちゃんのガンプラ可愛いね。あんなのもあるんだ」
「アレはSDガンダムって言って、デフォルメされて可愛らしさを全面に出したシリーズだね。でも、あの完成度は……」
異常である。
キャロラインが使用しているガンプラはLEGENDシリーズのナイトガンダム。通常のSDガンダムより手足が少し長く、デフォルメ体型でありながらアクションもこなせる新世代のSDガンダムシリーズだ。
しかしそのナイトガンダムの装甲は本物の鎧のような鈍い光沢を放つメッキ仕上げ。製品版ではプラで構成されているマントパーツも本物の布が使用され、全体の完成度を引き上げている。
あの展覧会でキャロラインと出会った時、彼女はガンプラそのものを知らなかった。
あれから一ヶ月弱で、あの完成度を誇るガンプラを作り上げてくるとは考えにくい。
彼女もミホシのように他にビルダーを用意した……?
そうか、あの褐色ドレッドヘアーだ。
思い出した。
あいつは確か今年の世界大会選手権のアメリカ代表じゃないか!
ニルス・ニールセン。
飛び級で大学に進学し、博士号まで取得している『
今年のアメリカ選手権大会決勝で、前回の世界大会で『イタリアの伊達男』リカルド・フェリーニと激闘を演じたアメリカ代表グレコ・ローガンを破って世界大会進出を決めたダークホース。
そのニルス・ニールセンが作ったとなれば、あの完成度にも納得だ。
なぜ、そんなヤツがキャロラインと一緒にいて、彼女のガンプラビルダーをしているのかは謎だが、これは想像より遥かに厳しい戦いになるかもしれない。
俺も手伝ったとは言え、ベアッガイ
単純にガンプラバトルをするガンプラとしてのクオリティはナイトガンダムに劣る。
後はファイターとしての技量だが……1〜2回戦を見る限り、キャロラインの技量は平均以上だと認めざるを得ない。
こんな事なら、今日は先にどちらかがミホシと当たり、決着は後日という事で、その間に対策を練りたかった。
「ねぇ、チナちゃん勝てるの?」
Bブロックを順調に勝ち進み、他のバトルを見ても決勝まで問題なく行けそうなミホシに聞かれる。
「う〜ん……正直厳しい、かも」
「そうよね。……で、どうするの?」
「どうするって言われても、今からどうしようもないです」
「どうしようもないって……」
だって、今さらどうしようもないのはどうしようもない。
もうチナとキャロラインの対戦はもう始まってしまう。時間がない。
「でもまあ、そうよねぇ……」
実際どうしようもない事はミホシも分かっているのだ。
「まあ、ガンプラバトルに絶対はありませんから。今はもうチナちゃんを信じて応援するだけです」
などと気休めを言っている間に、チナとミホシのバトルが始まってしまう。
「遂にこの時が来ましたわ、チナさん。今日こそ貴方に勝たせて頂きますわ!」
ナイトガンダムが岩山地帯の空を駆ける。
「ま、負けない!」
チナもベアッガイ
結局距離を詰められた上にフィールドの端まで追い詰められ、ベアッガイ
「おーっほっほっほっほ! 他愛ない事!」
キャロラインが高笑いしながら追い詰めたベアッガイ
重装甲のベアッガイ
「これでっ、終わりですわ!」
ナイトガンダムがランスを射出する。トドメの一撃だ。
ガッ! と、ランスの先端がベアッガイ
やはり、ダメか?
これで決着──恐らく、このバトルを見ていた誰もがそう思ったハズだ。
しかし、そのままベアッガイ
「っ!?」
最も勝利を確信していたであろうキャロラインが驚く。
俺も驚いた。
だが、ベアッガイ
「チナちゃん! 頑張って! まだ戦える!」
「レイくん……!」
アドバイスはご法度だが、エールは問題ない。
でもチナちゃん、思いっきりこっちに視線を向けるのはやめよう。バトル中ですよ。
「よそ見なんて……!!」
その隙をキャロラインが見逃すハズもなく、製品版では差し替え再現だったケンタウロスモードへの変形を行いベアッガイ
そのままシールドに収納していたソードを取り出し、流麗な動きですれ違うようにベアッガイ
先程の攻撃で崩された体勢をまだ整えきれていないベアッガイ
今度は先のランスの時とは違い斬撃を跳ね返すような事はなく、完全に攻撃が通った。
「ふっ……!」
攻撃が通ったことでキャロラインが息を吐いて笑う。
警戒していたのか一度取った距離を再び詰めようとする──が、ぽふんっ、と切り飛ばされたベアッガイ
「な、なんですの、それは!?」
キャロラインが思わず叫ぶ。
それは、綿である。
さっき、胸部装甲を貫いたランスを弾いたのも、胴体内に仕込まれた大量の綿によるものだ。
「ベアッガイ
「な、なんなのですか、設定って……!」
チナの説明にキャロラインの理解が追いついていかない。
─ぬいぐるみがガンプラになったから、中に綿が詰まっている─
チナのベアッガイ
『ガンプラは自由』
まさにこの言葉を体現するかのようなガンプラ。それがベアッガイ
「あれがガンプラ……?」
世界大会進出を決めている、かのニルス・ニールセンも驚いている。
それだけ面白い発想だったのだ。
この発想の飛翔については今度師匠にも話してみよう。
俺も、ガンダムの設定に囚われ過ぎない改造をガーベラ・テトラ改に施したいものだ。
「で、でも、だからって勝敗には関係ありませんわぁ!」
言葉とは裏腹に、予想外の機体設定に焦ったのか、ナイトガンダムがソードを構えてベアッガイ
ここに来て遂にキャロラインの実戦経験不足が足を出した。
このまま引きつけて残った右手のビーム砲を叩きこめば一気に逆転……! と思ったが、チナのベアッガイ
しまった、こっちも実戦経験不足だった!
ナイトガンダムがベアッガイ
やられる!
が、その攻撃が届くかと思われた刹那、パカッとベアッガイ
「きゃあぁっ!? わ、綿が、絡まって、動けない……っ!?」
ナイトガンダムがもがけばもがく程、綿がパーツと絡み合い可動範囲を狭めていく。そしてもごもごと動く丸い塊が出来上がる。
「す、凄い。まさかこれを狙って……?」
「綿を詰め過ぎちゃったみたい」
俺の呟きに答えた訳ではないが、チナが照れ笑いをする。
狙ってた訳じゃないらしい。俺、恥ずかしい。
「こんなの認めませんわあぁぁぁ〜っ!」
キャロラインの絶叫をBGMに、綿に絡め取られたナイトガンダムがベアッガイ
──BATTLE END.
か、勝った。
チナが勝った。
「やったぁ! レイくん、私、勝てたよ♥」
きゃっきゃと喜ぶチナ。
「あれ? レイくんなんかぐったりしてる?」
「展開が二転三転して、見てるだけなのに凄い体力を使ったよ。……でも、おめでとうチナちゃん」
「ありがとう♥ ……でも、ずっと私が劣勢だったと思うけど……二転三転なんてしてたかな?」
チナに自覚はないようだ。
何度か負けていてもおかしくない場面はあったし、逆に勝てる決定的チャンスを見逃していた事に。
「また、負けましたわ……」
キャロラインがバトルシステムに両手をついて俯き、呆然としている。
最後の直前まで圧倒的に優勢で、このまま勝てると思ってたのに大逆転されたのがショックなようだ。
俺は場外に放り出された綿まみれのナイトガンダムを拾い、キャロラインの所へ向かう。
「お疲れ様。良いバトルだったと思うよ。はい、これ」
「あっ……。ありがとう、ございます……」
キャロラインはバツが悪そうに、俺からナイトガンダムを受け取る。
「じゃあ、また」
「あっ……」
ナイトガンダムを渡した俺はクールに去るぜ。
ここで『これでキミは俺の彼女だね』とかは言わない。
負けた直後に言う事ではないだろうし、キャロラインはきっとこういう口約束でも反故にしたりしない性格だろう。多分。
その後、大会は進み、最終的に当初の目論見通りミホシの優勝で幕を閉じた。チナは準優勝だ。
「いける……いけるわ、私。これなら選手権大会でも……!」
ガンダムの胸像を模した優勝トロフィーを手に、ミホシは確かな手応えを感じている。実際、最終的にミホシのガーベラ・テトラは全くの無傷で優勝を果たしている。
見知らぬファイターとの実戦経験、非公式ながらも大会優勝という成功体験はミホシに自信を持たせるには十分な成果だったハズだ。
「おめでとうございます、ミホシさん」
「おめでとうございます」
「ありがとう、レイくん、チナちゃん。チナちゃんも準優勝おめでとう。その機体でよく戦えてたわよ」
「ありがとうございます」
チナの準優勝も破格の成果だろう。
キャロラインとの戦いの後、左手を失ったままチナはブロック決勝戦を見事勝利し、ミホシとの大会決勝まで漕ぎつけたのだから。
終わってみれば、トーナメントの組み合わさから最終成績に至るまで、完璧な大会だった。
後は……この結果に尽力した俺へのご褒美だ。
ミホシが大会に優勝した。つまり、ミホシのフェラ解禁だ!
「あ、あのぅ……」
おずおずと声をかけてきた人物の方へ顔を向けると、もちろんその人物はキャロラインである。
いつもの高飛車な様子は鳴りを潜め、どうしたものかと困惑している様相だ。
彼女のビルダーであろうニルス・ニールセンの姿はない。
彼女が敗北した後、もう用は済んだからとキャロラインに言われ帰っていくのを見た。
カモネギ……ではないが、俺へのもう一つのご褒美がやって来たのだ。
スマホぶっ壊れたんですが近日新しいのになるので更新再開できると思います