転生者・ガンプラビルダーとして世界とハーレムを掴む 作:ニシノニシ
06.新しい日々の始まり
「へい、いらっしゃい」
ある日、イオリ模型店に赴くと赤髪の見知らぬ少年が店番をしていた。
誰だ?
「ん? 客じゃないのか?」
入り口で固まる俺を見て赤髪の少年は訝しがる。
「あら〜、いらっしゃいレイくん♥」
カウンターの奥からリン子が顔を覗かせ、こちらにヒラヒラと手を振っていた。
「ど、どうも……お邪魔します」
赤髪の少年の横を通り過ぎ、リン子の元へと駆け寄る。
少年はすでに俺に興味はないのか、外を眺めて欠伸をしていた。
「リン子さん、バイトを雇ったんですか?」
お世辞にもバイトが必要なほど繁盛しているとは思えないが。
「バイトじゃないのよ。う〜ん、なんて言ったらいいか……セイのお友達でね。昨日、うちに来たの」
「なんだ、お前もセイの知り合いか?」
「わっ」
さっきまで外を眺めていたと思ったのに、いつの間にか赤髪の少年が俺の後ろに立っていた。
「俺はレイジ。お前は?」
レイジと名乗った少年が俺に右手を差し出す。
「……レイ。イズモ・レイです。よろしく」
差し出された手を握り返しながら自己紹介をする。
「レイ? ハハッ、俺と名前が似てるな。ま、よろしくな」
「そうですね」
レイジとレイ。似てるというかほとんど同じというか。
「なあ、ママさん。俺やっぱ店番とか性に合わないや。ちょっとセイの所に行こうと思うんだけど、いいかな?」
「セイの所へ? でもセイは今学校だから……」
「確か聖鳳学園とか言う所だよな。ちょっと行ってくる」
「あっ……ちょっとレイジくん? 学校は部外者の立ち入りは……って、もういないわ。大丈夫かしら?」
レイジは嵐のような勢いで店を出ていってしまった。
「師匠の友達って……同級生とかじゃないんですか?」
今の会話をきくかぎり、聖鳳学園の生徒という訳ではなさそうだ。
いや、そもそも生徒なら今ここにいたのがおかしい事になるが。
「それが、実は私も詳しい事は聞いてないのよね〜。行くところがないみたいだから、昨日はうちに泊まってたんだけど……」
おほほ、と笑うリン子。いいのか、そんな事で。
というか、泊めたって?
ふぅん……へぇ。
「あら、ひょっとしてヤキモチ焼いてくれてるの? ♥ 嬉しいわ♥ でも、大丈夫よ。レイくんとしてるような事は他の人にはしないから。レイくんだけ……よ♥」
不満そうな顔をしていたのか、カウンター越しに俺の頭をよしよしと撫でるリン子。
昨年の夏に初めてセックスをしてから、大会で勝っただとか、テストで良い点を取っただとか、他には体育祭で頑張ったからとか、とにかく事あるごとに“ご褒美セックス”を繰り返している俺とリン子。
だが、それでもまだ俺の彼女になってくれるという明確な了承は得られていなかった。
「それより、今日は学校はお休みなのよね?」
「はい。創立記念日ですから」
だから今日は昼前からむこうしてイオリ模型店を訪れていた。
「良いのかしら? ほら、フミナちゃんだっけ? せっかくの休日なのに、幼馴染の彼女とデートとかしなくていいの?」
「フミナちゃんならまだ俺のベッドで寝てますよ」
「あらま♥ 若いわねぇ♥」
リン子は何か勘違いしているように思う。
フミナは昨日、休日前という事でガンプラ制作の為にうちに来てそのまま泊まっただけだ。
……えっちな事をしなかったかというと嘘になるが。
一緒にお風呂に入り身体を使って洗い合い、ベッドでお互いの性器を舐めあった後、裸のまま抱き合いながら寝ただけだ。
別に勘違いじゃないか。
「もう、セックスはしたの?」
何故かウキウキした様子で聞いてくる。
「いや、フミナちゃんとはまだ……。一度しようとはしたんですけど、入れようとしたらフミナちゃんが痛がって。だから今は指で慣れさせてます」
「レイくんのおちんぽ、年齢の割に大きいものね……同級生じゃ確かに辛いのかも」
プラモ屋でする話ではないが、店内には他に客もいないため俺とリン子は開け透けな会話を繰り広げる。
ウイィィー……
と、そんな話をしていたらお客さんがやってきた。
俺もリン子も姿勢を正し、猥談を止める。
「いらっしゃいませ〜」
やって来たお客さんをリン子が営業スマイルで出迎え、俺は隠れるようにカウンターから離れた。
やって来たのは結構身体のラインが出ている上下一体の長いロングスカート姿。お尻まで届くロングヘアーをシュシュで纏め、キャスケット帽を目深に被ったお姉さんだった。
特筆すべきは肩から斜めにかけたバックの紐がパイスラッシュ状態になり、おっぱいに挟まれて一部見えなくなっている事だ。
大きい……!
「あの、すみません」
お姉さんは商品が並ぶ棚には行かず、真っ直ぐカウンターにいるリン子の元へとやってくる。
「はい、いらっしゃいませ〜。何かお探しですか?」
「えっと……突然で恐縮ですが、イズモ・レイくんをご存知でしょうか?」
「えっ? レイくん……ですか?」
リン子が驚く。俺も驚いた。
俺はお姉さんに見覚えはない。見覚えないお姉さんが何故俺の名前をイオリ模型店で口にするのか?
「はい、彼と連絡を取りたいんですが、ご存知なら仲介をお願い出来ないかと。よくここに来ると聞いていたので……」
お姉さんの説明を聞いたリン子が棚の影に隠れた俺の方をチラチラと見る。
本人がここにいるんだから、大丈夫なら出てこいと言いたいのだろう。
逆に俺が出ていかなければ上手くあしらってくれるつもりかもしれない。
見知らぬキレイなお姉さんが俺を探している理由はシンプルに気になる。
「あのー……イズモ・レイは俺ですけど……?」
「えっ?」
棚の影から出てお姉さんに話しかけると、振り返って俺の顔を見たお姉さんがビックリした顔をする。それはそうだろう。いきなり本人が出てきたのだから。
「キミ……が、イズモ・レイ、くん……!」
キャスケット帽のお姉さんは小走りに近寄ってくると、そのままガバッと俺を抱きしめた。
リン子とほぼ同じくらいの身長のお姉さんに抱きしめられると、丁度俺の顔面がおっぱいに埋もれる。やはりでかい。
「って、えっ……えぇっ?!」
キレイなお姉さんは大好きと言っても、流石に知らないお姉さんにいきなり抱きしめられたら俺でも驚く。
「始めまして……で、いいのかしら? 私は『キララ』よ。キミが推してくれてるアイドルの『キララ』」
お姉さんは少し屈み俺の耳元で囁く。
ゾクッとしたのは温かい吐息によるものか、はたまた捕食者に捉えられた獲物としての危険信号か。
……って、キララ?! あの?
「イズモくんにお願いがあって来たの。どこか落ち着いて話せる所へ行きましょ?」
アイドルのキララを名乗るお姉さんは俺の手を取り外へ連れ出そうとしたが、リン子が慌てて止める。
「えっ? ちょ、ちょっと待って。レイくん、大丈夫? 知り合いじゃ……ないのよね?」
大人の女性が小学2年生を連れて行こうとしているのだ。
知り合いでないなら誘拐案件である。
いや、しかし本当にお姉さんが『キララ』であるなら、知らない訳ではない。
髪型はおろか髪の色も違うが……言われて見ればどこか面影はある。
「大丈夫です、リン子さん。会うのは初めてだったけど、文通? 的な相手の方だったみたいなんで、心配しないで下さい〜……」
そう言い残し、俺は『キララ』によってイオリ模型店から連れ出された。
──────────
「改めまして、アキバ系ガンプラアイドルの『キララ』だよ! キラらんっ★」
近くの公園でキララに自己紹介を受けた。
「おぉ! 本当にキララちゃんだ!」
格好と髪型はオフモードだが、その若干痛い挨拶は間違いなく本物のキララだと俺は断定した。
「……あの、それでキララちゃんが俺に一体何の御用で……?」
「今はオフだからミホシって呼んで。本名よ」
「え、あっ、はい」
本名!
オフのアイドルに本名を告げられる。
これはなかなか貴重な体験ではないだろうか。
ミホシが買ってくれたジュースを手に2人でベンチに座る。
住宅街にある公園には平日の昼間という事もあって人気はない。
「それで……ミホシ、さん。どうしてわざわざイオリ模型店に俺を探しに……? 俺に用があるにしても、送ったファンレターに住所も書いてあったと思うんですけど」
「さっきのお店でも言ったけど、キミにお願いがあって来たの。直接伺わなかったのは、ご家族の方が出られたらなんて説明すればいいか分からなかったから、直接キミに連絡が取りたかったの。ほら、ファンレターであのお店によく行くって書いてあったから」
「なるほど」
「でもまさかお店ですぐに会えるとは思ってなかったから、ラッキーだったわ」
ミホシが微笑む。
まだ知名度は低くとも流石はアイドル。
その微笑みにドキッとしてしまう。
「それでね、本題なんだけど……レイくん! 私の為にキミの作ったガンプラを譲ってくれないかしら!」
ミホシが俺の手をぎゅっと握り身体を寄せてくる。
「お、俺のガンプラを?! ……なんで?」
「……私ね、今のままじゃガンプラアイドルとして活動を続けても限界を感じてるの。だから、今年の世界大会の選手権に出場して結果を出したいのよ。世界大会までいけなくても、予選に出て何回か勝ったっていう実績があれば、ガンプラ大会における注目度が上がる。そうなれば、もっとアイドルとして世間に認めてもらえる……!」
熱の入った展望をミホシが語る。
「キミは去年公式大会に初参加して何度か大会で優勝してる。小さな記事だけどネットニュースにも名前が乗ってたわ。『将来有望なビルドファイターだ』って」
ミホシは……いや、ガンプラアイドルとしてのキララは自分でもガンプラを作ったりしているが、あくまでアイドルとしての活動の域を超えておらず、とても世界大会の選手権に出場して勝利を収められるような出来のガンプラは作れないと自分でも理解しているのだ。
そこで目をつけたのが、選手権大会ではないにしろ公式大会で優勝するようなガンプラを作るファンの1人である俺に白羽の矢を立てた……という事か。
「なるほど……そういう事ですか」
ミホシのお願いについては理解した。
しかしだからと言って簡単に『わかりました、どうぞ』と俺のガーベラ・テトラ改を渡す訳にはいかない。
「……分かってるわ。そんな簡単に渡せるものじゃないって事は。だから、その……もしキミのガンプラを譲ってくれるなら……憧れのアイドルの、お、おっぱいを触らせてあげる!」
「えっ、おっぱいを……?」
ミホシは恥ずかしそうに、しかし引き換え条件にそう提案するのは決めてきていたのか、胸を強調するように両腕で挟み込み寄せて見せつけてくる。
「キスもつけちゃう! しかも私のファーストキスよ! 貴重よ!」
おっぱいと聞いて俺が目を輝かせたのを見て『押せばイケる』と判断したのか、追い打ちをかけてきた。
「ファーストキス……なんですか?」
聞き返すと、我に返ったのかミホシの顔が真っ赤に染まった。
「そ、そうよ」
詰め寄っていた身体を離し、普通に座り直したミホシが自身の事について独白するように語り始める。
「……私、高校を卒業するまで地味でね。彼氏も出来たことが無かったし、学校で人気のある女子や、テレビでキラキラ輝いてるアイドルに憧れてた。だから変わろうって一大決心をしてアイドルの世界に飛び込んだのよ。でも、憧れてたようなキラキラしたアイドルには全然なれなかった。キミがいつかくれたファンレターで、推測だけど私がガンダムに全然興味がないのに、アイドルとして生き残る為に努力してる姿に惹かれましたって書いてたでしょ? アレね、ほとんど正解。ビックリしちゃった。あそこまで私の事を理解して言い当てるファンがいるなんて、って」
そこまで語り、ミホシは改めて俺を見る。
「しかもその相手がキミみたいな子供なんだもの。でも、私が本当に頑張ってた部分を見つけて認めてくれたのはキミだけだった。嬉しかったよ」
にこりと笑うミホシは本当に可愛かった。
「……って、何の話してんだろ。ファーストキスの話だったわよね。卒業するまで彼氏もいなかったし、アイドル活動を始めてからはいっぱいいっぱいでそれどころじゃなかったのよ」
そうそう、その話だった。
確かにその話通りならファーストキスもまだな事も理解できる。
「ねえ、どうかしら? キミだからこんな交換条件を提示してるのよ?」
ミホシが再び俺の肩に触れるほど身体を寄せてくる。
「……正直、感動しました。アイドルとして大成する為に、俺みたいな子供にファーストキスすら差し出そうって決意に。流石は俺が推そうって思ったアイドルなだけあります」
「じゃあ……!」
俺の言葉に交渉が成立を見たミホシの目が輝く。
「でも、残念ながら俺のガーベラを差し上げる事は出来ません」
「えっ……」
続く言葉にミホシの表情が曇る。
「……待って、わかったわ」
しかしすぐに切り替えて強い決意の籠もった視線を俺に向ける。
俺に決定的な拒否の言葉を言わせないつもりらしい。
「キミのガンプラをただ譲ってもらうだけじゃなく、バトルで傷ついた時の修理やサポート面での全面協力もお願いするわ! その代わり、キ、キスだけじゃなくて、もっとえっちな事もしてあげるから!」
「えぇ!?」
驚きを通り越して度肝を抜かれた。
まさかそこまでの決意を見せられるとは思っていなかったから。
というか、そもそもさっき断ったのは、あくまで俺のガーベラは譲れないというだけのつもりであって、キスの交換条件だけでもガンプラを提供する気だったのだ。
それがほんのちょっとの行き違いでこんな展開になるなんて。
「どうかしら……! なんならお試しの前払いで……!」
えいっ! と、ミホシが俺の手を自身のおっぱいへ押し付ける。
柔らかっ!
リン子がふわふわふかふかのマシュマロおっぱいだとすれば、服越しとは言え触れたミホシのおっぱいは弾力あるゴムボールのようだ。
むにっ。
「んっ♥」
つい揉んでしまった。
「ど、どう……? 推しのアイドルのおっぱいは? 直接、触って見たくない……?」
ミホシは俺が条件を飲むまで逃がすつもりはないのか、掴んだ手を離さない。
「わ、わかりました! わかりましたから、ちょっと俺の話を聞いてください」
俺が了承の言葉を口にすると、ミホシがパッと破顔する。
「本当!? ありがとう! ……?」
ミホシは掴んでいた俺を離したが、逆に俺がおっぱいから手を離さない事に気づく。
「……えっち♥」
それはもう間違いなくそうです。
ただ、おっぱいを掴んだまま公園で話をするわけにも行かないので離す。
「焦らず聞いてくださいよ? ミホシさん協力するのはオッケーです。でも俺のガーベラを差し上げる訳にはいかないんです。アレは俺専用に調整してますから、俺以外の人じゃ扱いにくいんです」
「そ、そうなのね……」
「はい、そうです。だから、俺がミホシさんに提供するガンプラは、俺がミホシさん用に作ります。そっちの方が良いでしょう?」
「私……用に」
強いガンプラを譲って貰う事しか頭に無かったのか、ミホシはきょとんとした顔をする。
「そ、そうね。確かにその方が良いのかも! ありがとう! レイくん♥」
理解が追いついたミホシが感極まって俺に抱きつく。
「……って、あら? ひょっとして、さっき見返りにファーストキスを提案したときに断ったのって……」
「あっ、気づきました? あの時点でミホシさん用のガンプラを作るって言おうとしたんですけど……」
どうやら自分が先走ったであろう事にミホシが気づいた。
「あは、あはは……」
「今更条件の変更はない……ですよね?」
乾いた笑いをするミホシに確認する。
いずれにせよ協力しようと俺は決意したのだが、ファーストキスまでよりもっとえっちな事まで出来るなら妥協するつもりはない。
「うっ……わ、わかってるわ! 女に二言はないわ!」
明らかに虚勢を張っているのが見え見えだった。
「じゃあ、交渉成立……ですね。よろしくお願いします、ミホシさん」
「え、えぇ……こうなったら意地でもアイドルとしてビッグになってやるわ……!」
俺はミホシと握手を交わす。
「じゃあ、早速行きましょう。今日はまだ時間ありますよね?」
「えっ、こ、ここここれから? 今日は一日オフだけど、そんな、すぐに……?」
ミホシが何故か慌てふためく。
「? イオリ模型店に戻ってベース機体を選ばないと。それにミホシさんの操縦技術がどれくらいかとか、色々確認もしたいですし」
「あっ、ああ! そっちね! そうね、色々確認しないといけないものね! よし、早速行きましょう!」
……ひょっとしてこの人、俺に今すぐラブホにでも誘われたと勘違いしたのか?
「……」
「ほらほら! 行きましょうレイくん! 選手権の予選まで時間がないわ!」
ジト目で見る俺を、真っ赤な顔をしたミホシがイオリ模型店に向かって俺の手を引っ張って行くのだった。
こうして、ひょんな事からガンプラアイドルキララをファイターとし、俺がビルダーというコンビが結成され、世界大会選手権に挑む日々が始まったのである。