エンヴィが共に行動するようになってからどれくらい経っただろうか。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうねえ。助かるよお」
重そうな荷物を運んでいるお婆さんから、半ば奪うように荷物を取り上げ隣を歩いているエンヴィ。その後方をマスターとロンギヌスは歩いていた。
「あの子は、お嬢ちゃんの妹さんかい?」
「ただのイミテーションですよ」
「そうかいそうかい」
イミテーションという言葉の意味を知らないだろう、というかそもそもエンヴィとロンギヌスがキル姫であることにお婆さんは気がついていないのだろう。適当に相槌を打っているだけだろうが、明らかに子供扱いされていることにエンヴィは少し戸惑っていた。
「その、私にはよく分かりません」
「何が?」
「エンヴィさんは、どういう方なのか」
初めて彼女と遭遇した時の、敵意と殺意は本物だった。黒奏官に従い各地を襲撃しているブラックキラーズの一角、言ってしまえば悪人とも取れる様子だったものの、今こうしている限りそんな風には見えない。
少し暗い表情をしているものの、心やさしいロンギヌスの一人であるのだと、マスターは信じている。
「エンヴィだってロンギヌスだ」
エンヴィの足がピタリと止まる。それから振り返りマスターの顔を見る。少し不満そうな、でもそれ以上に戸惑っている様子だ。
「どうしたんだい?」
「いえ、虫が飛んでいたので」
「……もしかして、やきもちかい?かわいいねえ」
「は?……ああ、いえ、すみません」
お婆さんの言葉に、驚きと戸惑いからつい威圧するような勢いで返事してしまう。
やきもち?いやまさかと思いながらもう一度だけちらりと振り返る。マスターと並んで歩くロンギヌス。普通だ。マスターとキル姫なのだから、何もおかしくない。
……なのに、少しだけ胸がうるさかった。
その日も宿に泊まった。またロンギヌスと二人で同じ部屋。部屋の節約をするならマスターも一緒のほうがいいのではと聞いたが、男の俺が一緒なのもどうかなと断られる。
それ自体は別にいいのだが、ロンギヌスと二人きりなのはやはり少しだけ居心地は悪い。
本来イミテーション同士は淘汰される運命にある。しかしエンヴィはブラックキラーズになった影響で、淘汰の輪廻の輪から外れてしまっている。だからロンギヌスと共にいても何も起きないが、自分と二人きりというのはやはり気分がいいものではない。
下着と黒いキャミソールだけ着て身軽な恰好になりながら、窓の外をなんとなく眺める。……綺麗な月だなと、ぼんやりと考える。
「あの、エンヴィさん」
「なんですか?」
話しかけてきたり、こなかったり。エンヴィから話しかけたことは一度もない。
「もしかして、ですが。その……」
声をかけてきたのはロンギヌスの方なのだが、少しバツが悪そうにする。そんな彼女の様子に、エンヴィは露骨にイライラする。
気の弱い所を見ていると、かつての自分を思い出す。今は違う、こんな臆病者なんかじゃない。聖槍であることに怯え、武器として戦うことさえ恐れる臆病者なんかとは、違う。
「マスターのこと、好きですか?」
「ごっ!?」
そんなことを考えていたからか、突拍子も無い質問に盛大にむせた。何度か咳をして、胸を叩いて。
慌てた様子でロンギヌスが水を注いできて、それを一気に飲み込んだ。はーっ、はーっと息をしながら、ロンギヌスを睨む。
「ご、ごめんなさい!?」
別にロンギヌスも何か悪いことをしたわけではないのだが、エンヴィの迫力につい謝ってしまう。
「どういう意味ですか。私がマスターを、好き?」
「いえ、なんというか。私とマスターが二人きりの時、いつも恨めしそうな目で見てきますよね?」
「………?」
確かに、二人の様子を伺うことはある。そもそも二人を見て覚えた嫉妬の理由を探るために同行しているのだから。
しかし、恨めしそうにした覚えはない。
「いえ、違うならいいのですが。余計なこと聞いたみたいです……」
もぞもぞとロンギヌスはベッドに入っていく。聞いた本人が恥ずかしくなってきたようで、布団を頭まで被った。
エンヴィは一つ呼吸をして、窓際に座る。窓から差し込む月光を見ながら、考える。
私が、マスターのことが好き。そんなつもりはないのだが、もしそうだとすれば。納得がいってしまうことが幾つかある。いやまさか、そんなことあるだろうか。自分はキル姫で、あの人はマスター。武器が使い手に恋をするなんて馬鹿げたこと、あるのだろうか。
ぶつぶつと、あーじゃないそうでもないと言い訳をしながら、エンヴィもベッドに潜った。
ぽっかりと、二つの山がそこにあった。
マスターは、特段何か目的があって行動している訳ではない。ロンギヌスの淘汰を進めてあげたい気はあるが、そんな都合よく会えるものでもない。
なので、最近はブラックキラーズの襲撃があった地区を中心に救助活動をメインで行っている。その上で異族の襲撃があれば対応するという所。あまり戦いを好まないロンギヌスの為にも、積極的に奏官同士の争いに参加することはない。
翌日。移動している最中に異族の襲撃があったので、二人に対応してもらっていた。
「ロンギヌス!8時の方向に飛行型が逃げようとしてる!」
「逃がしません!」
マスターの声に応え、ロンギヌスは槍を投擲し的確に飛行型の異族を倒す。しかしその隙を狙おうと最後の1体が背後から斧を振りかぶろうとする。
「しまっ!?」
「ちっ」
しかしエンヴィが横から突進をし、黒奏槍で貫く。相性不利なのもお構いなしに、一撃で。
「……」
「?」
エンヴィが倒した異族を無視して、マスターを見つめる。何かを訴えかけるような、熱の籠もった視線を向けてくる。
「……ああ、ありがとうな、エンヴィ」
「いえ、この程度造作もないです」
いつも通りの平然とした表情で答える。しかし、僅かだが口角が上がっているのを見逃さなかった。
「……あの、エンヴィさん」
「どうかしました?」
「朝から少し様子が変じゃないですか?」
素朴な疑問をぶつけるロンギヌスだったが、エンヴィはあっけらかんとした様子で答える。
「一つだけ言うなら、貴女のお陰ですね」
「……もしかして、昨日のことですか?」
「ええ。ようやく謎が解けそうです」
エンヴィは久々に、小さいながら笑顔を浮かべていた。
数日後の夜。いつも通り部屋で一人のマスター。特段することもなく、読書をしていた。そこにノックの音が。
「ロンギヌスか?」
「はい。……入ってもいいですか?」
「いいよ」
マスターの許可が出るとすぐにドアが開く。ゆっくりと開いてから、一度顔だけ出して覗いて、それから入ってくる。
「夜分にすみません」
部屋が暗いせいでよく見えないが、顔が赤い気がする。ワンピース一枚と、だいぶ軽い恰好だ。
しかし、珍しいなとマスターは考える。ロンギヌスが夜分にマスターの部屋に訪れるのはそうそうない。
「少し話したくって。駄目ですか?」
「いや、構わないよ。でも珍しいな」
「……その、変なんです。最近、マスターのことを考えると身体が熱くなって」
ぎゅっと胸元を掴みながら、マスターを見つめていた。その目は間違いなく、キル姫としてではなく、少女として、女として興奮していた。
「急にこんなこと、お願いしても困るかもしれません。ですが、その……」
「………」
ロンギヌスが固唾を呑む。マスターはゆっくりと、ロンギヌスが再び口を開くのを待っている。
「抱いて、もらえませんか?」
「……ああ」
マスターはロンギヌスを押し倒す。ワンピースをたくし上げ、中へ手を這わせていく。程よい大きさの胸を優しく揉んでいく。
「んっ……んぅ」
興奮しているのか、感度がいいのか分からないが、愛らしい声を上げる。そんなロンギヌスを口を、マスターが塞ぐ。
「ん………」
それは何秒だっただろうか、何分だっただろうか。いや、実際には一秒かそこらだったのかもしれない。けれど、初めてのキスは間違いなく特別なものだった。
それから舌を絡め、深いキスをしていく。興奮しきって固くなった乳首を指で弄る。
「ますたっ……!ん……!」
二人の唾液が混じり合い、呼吸するために離れる度にいやらしく糸を引く。それからすぐに再び求めてキスをして。続けている間に、手は身体をなぞりながら太ももへと降りていき、それから秘部へと這わせていく。
「やっ」
「……もう、びしょ濡れだね」
「………!」
身体はもう既に出来上がっていた。愛液でぐちょぐちょに濡れたスジを優しく撫でていく。それから立っていてるクリトリスを弄っていく。
「だめっ!だめです!こんな……!?」
「やめたほうがいい?」
「ち、ちがっ!?んん!」
して欲しいのかして欲しくないのか。初めての快楽に混乱し始めたロンギヌスの口を、もう一度塞ぐ。どうすればいいのかぐちゃぐちゃになっている頭でも、身体は正直ですぐに舌を絡ませていく。
それからマスターは、クリトリスを触るのをやめて秘部の中へと指を二本挿していく。処女なだけあってかなりキツいが、それでも濡れきったそこは指を受け入れていく。
指を優しくゆっくりと動かしていく。膣内を開いていくように、しっかりと突いていく。
「あっ、ああっ……♡」
既にぐちょぐちょになっている膣内を更にかき混ぜていく。身を捩り快楽から逃げようとするが、身体をしっかり掴み快楽をねじ込んでいく。
もちろんロンギヌスが全力を出せばマスターの拘束なぞ簡単に振り解けるだろうが、そこまでの抵抗はしない。驚いているだけで、したくてしているのだから。
指を引き抜けば、ロンギヌスの愛液でびしょびしょになっている。それを彼女を見せると、既に赤面してる顔を更に赤くさせ手で目を覆いかぶせてしまう。しかし指は微妙に開いており、恥ずかしさ半分興味半分でマスターの指を見つめている。
「そろそろ挿れていいかな」
「……!」
マスターの、勃起しきったイチモツがロンギヌスの目線に入る。今からこんなに大きいモノが膣内に入れられてしまうのか、裂けてしまわないだろうかと胸をドキドキさせる。
生唾を飲み込んで、覚悟を決める。ここまで来て、やっぱ怖いからしないなんて情けないことは出来ない。
「お願いします、マスター……♡」
「ああ」
マスターのモノが挿入されていく。事前に指でほぐしていたとはいえ、それでもきつきつの膣内を押し広げていく。そうして、そのままの勢いで処女を破った。
「……!」
膣内の圧迫感と痛みに目を白黒させる。ぎゅっとマスターの手を強く握る。跡が出来てしまいそうなくらい強く握られていたが、マスターはしっかりと握り返す。破瓜の痛みはこの程度ではないはずだと、その痛みを受け入れる。
「大丈夫か?」
「はっ、はぁ……」
ロンギヌスは深呼吸してから、小さく微笑んだ。
「大丈夫、ですから。だから、いっぱいしてください♡」
「……言った、からな!」
マスターも、理性がだいぶ限界が近かったところでそんなことを言われたらもう我慢なんて出来なかった。
ロンギヌスの弱い所を探りながらも激しく腰を打ち付ける。パンッパンッパンッと、部屋の外にも聞こえそうな勢いで鳴る。
「ん"っ!?ま、ますたー!?あ"あっ♡そこすきです!そこっ!」
ロンギヌスの言った所を重点的にマスターは攻める。それからロンギヌスは口を開き舌を出す。キスのおねだりだと理解したマスターは彼女と激しくキスをしながらも腰を振り続ける。
キル姫は普通の人間であるマスターよりも絶対に強い。その筈なのに、今はマスターの思うままにされている。結局の所、女なのだ。
そのまま激しく絡み合っていると、マスターのモノがびくびくとし始めたことに気がつく。実際に経験するのは当然初めてなのだが、知識としては知っていた。
「しゃせー、ちかいですか……?」
「ああ!ロンギヌスももうイクんじゃないのか?」
ロンギヌスの膣内もひくひくとしていることにマスターも気がついていた。お互いにイク寸前になっている。それを確かめるや否や、ラストスパートをかけるようにより一層激しく腰を打ち付けていく。
「んっ!?ん"ん"っ!」
しかも再びのキスをされる。もう意識が半分くらい飛んでいきそうになっている。その初めての感覚からか、マスターへ力強く抱きつく。マスターもしっかりとロンギヌスを抱き返す。
そして、その時は来た。
「んんんんんんっ!」
頭の中で、弾けた。視界が明滅する。それと同時に、膣内へ精液が勢いよく放たれていた。入り切らなかった精が処女血と混じり薄い赤となって溢れていた。
お互いに落ち着いてから後片付けをする。それからぐったりとロンギヌスはマスターのベッドへと倒れた。
「好きな人とするのって、こんなに気持ちいいんですね」
「そうだな、
瞬間、空気が凍りついた。マスターもしまったと思ったが後の祭り。事後の緩やかな雰囲気に流されて、つい口を滑らせてしまった。
ロンギヌスは………いや、エンヴィは。完全に固まっていた。どれほど固まっていたのか、正気を取り戻したエンヴィは顔を真っ赤にしたまま慌てて問いかけた。
「ま、待ってください。いつから気がついていたんですか!?」
「部屋に入った時から、かな?」
「最初からじゃないですか!?」
そう、エンヴィはロンギヌスのふりをして近づいたのだ。知り合ってそこまで経ってない上に、最初は敵として会っている自分を受け入れてくれるか自身がなくて、こんな卑怯な手段を使ったのだ。
騙されたふりをしたまま愛してくれたマスターの方が上手だったのだが。
しかし、軽いパニックを起こしながらも、同時に喜んでいた。一目見ただけでエンヴィだと分かってくれる程度には、自分が認知されている。ロンギヌスのイミテーションの中の一人ではなく、エンヴィとして。
「………その、私のことが。ロンギヌスではなく私のことが好きなんですか?」
「ああ」
「何処が、ですか?」
「偏屈そうに見えて案外素直な所とか」
「むっ」
褒められているのか貶されているのか。凄く微妙な顔になりながらも、小さく笑う。
マスターの手を握り、目を閉じる。この人なら安心できる。
「愛していますよ、マスター」
エンヴィは、微睡みの中へと落ちていった。
……その時、マスターの部屋の外で、ロンギヌスは立ち尽くしていた。