※この作品はR-18です。

高律②   作:折戸岬

1 / 4
土曜の夜①

15時前に俺達は広場をあとにして、夕飯の買い物に近所まで戻ってきた。夕飯の買い物にしては早い時間だったので、スーパーはそれほど混んでなく、2〜30分で買い物は済んだ。

 「今日、晩飯どうする?」

 「えっ?」

 「いや、俺の部屋で食うのか、律は自分の部屋で食うのか」

 そう聞かれ、俺は何も考えなしに高野さんの家で食べるものだと思い込んで居たので、素直に答えて良いのか迷ってしまった。

 「何も無いなら、このまま俺の部屋で良いな! 今日は冷やし中華にしよう思ったんだが、他の物が良いか?」

 俺は素直に、冷やし中華が食べたいと答えた。何で俺が冷やし中華食べたいって判ったんだろう?

 「高野さんも冷やし中華食べたかったんですか?」

 俺は何気なく聞いてみた。すると、

 「帰り道で見た中華屋で、冷やし中華の”のぼり”見てただろ?だから、食いたいのかな~って思っただけ」

 そう言うと、高野さんはニタッと笑った。まんまと又俺は…。

ガクッと項垂れると、髪をくしゃくしゃっと撫でられた。

 高野さんは、すごく幸せそうな顔で笑ってた。

 別に、高野さんが幸せなら、俺はそれで充分なんですけどね…。恥ずかしいし、そんな事口にしたらどんな目に遭うか分かったもんじゃ無いから、絶対に口にはしないけど、高野さんが笑ってくれると、俺は無性に嬉しい。

 ”やっぱり、アナタが好き”

 何度この言葉を飲み込んだんだろう。好きな人を自分の手で幸せにしたいだけ、その人の幸せな笑顔をそばで見たいだけ。

 なのに、何度逆の行動をしているのだろう…。

 自分の事ばかり考えていると、マンションの前に着いていた。

 「このまま俺の部屋来るか?」

 「あ〜…、いや、一旦家に」

 「何で?家でシャワーも使えばいいし、昼あの程度じゃ晩飯前に腹減るだろう?つまみに成りそうなもの作るし、俺の部屋来れば良いじゃん。それに、あの話もしたいし…」

 そう言われて、それが本音だと分かった。確かに俺もできるだけ有耶無耶になる前に話したかった。なので、このまま高野さんの部屋に行くことにした。これは逃げちゃ行けないことだと思ったんだ。何よりも俺がこの状況・関係に答えを出したかった。高野さんの目を見て、高野さんが何を考えてるのか聞いてみたかった。俺が思ってること一つでも良いから伝えて見たかった。

 

 高野さんが先にシャワーを浴びて出て来たので、俺もシャワーを浴びることにした。

 「シャワーお借りします」

 「ああ、背中流してやろうか?」

 そのセリフで分かるからいいよ、その顔。

 ニタッ顔…、好きだね。俺は呆れ顔…。

 「結構です!」

 それだけ言って俺はとっとと風呂場に向かった。服を脱いでる間に、入ってこないように扉に目をやりながら、急いで服を脱ぎ風呂場に入った。浴室に入ったら、中から鍵をかけた。これで勝手に開けて入って来られないだろう!俺だって学習するんだよ!!

無駄なドヤ顔で風呂場のドアを見る。

 すると人影が見えた。

 恐る恐る声を掛けてみる。

 「…高野さん?…」

 「ん?何だ?どうかしたか?」

 「いや、人影が見えたんで、ただの確認です」

 いくつかの扉がパタパタと開いたり閉まったりする音が聞こえたら、高野さんは出ていってしまった。

 タオル類を仕舞いに来ただけ?

 俺は気にせずシャワーを浴びる事にした。

 さらっと汗を流したら、バスタブに浸かることはせずに風呂場を出た。脱衣場に出たら、下着やタオルが用意されていて、さっきはこれを用意するために脱衣場に居たんだと分かった。

 「…こういうところ…ハァ〜」

 俺はとにかく着替えを済ませリビングへ向う。

 ダイニング用のテーブルではなく、ローテーブルにビールと妻味が用意されていた。

 俺がリビングに入ってきたのが分かったらしく、高野さんがキッチンから顔を出した。

 「先に飲んでて、冷やし中華もうすぐ出来るから。タレは醤油ダレかゴマダレだけど、どっちがいい?後、冷凍のボイルエビだけど具に入れるか?」

 「はい、海老好きなんで。タレは高野さんと同じでお願いします」

 「分かった」

 グラスに缶ビールを注ぎ口につけると、冷えたビールはゴクゴクという音と共に喉を通り過ぎた。

 「…ッアーーー!旨っ」

 そう言った次の瞬間、俺はアーー!っと大きな奇声を上げた。

その声に驚いて高野さんがキッチンからリビングへやってきた。

 「何だ?!何が有ったんだ」

 「いや、大したことじゃ無いんですが、珈琲豆買ってくるの忘れました」

 俺のそのセリフに高野さんは呆れ返っていた。

 「は〜っ。あの店、閉店時間何時なんだ? 帰り道店の方向を見たが、やってそうになかったぞ!俺達が広場を出たときには、もう閉まってたんじゃ無いのか?」

 そう言われて俺は店の閉店時間を調べた。マップに出ていた時間には、土曜日は9時から14時とあった。

 「俺達が広場を出たの何時頃でしたっけ?」

 俺がそう尋ねると高野さんは少し思い出すように、“15時前後だろ?!”と答えてくれた。

 「じゃ、無理ですね。14時閉店だそうです」

 「何事かと思うだろ、大声出すなよ! 冷やし中華出来るから、テーブルちょっと整理しろ」

 そう言うと高野さんはまたキッチンへ戻っていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。