その後、出来上がった冷やし中華を食べ、残ってた妻味でビールを少しだけ飲んだ。
高野さんの隣で皿洗いを手伝い、終わると二人分の珈琲を持って俺だけソファに座った。
高野さんは、皿や鍋を拭き棚に仕舞ったらリビングへやって来て、俺に向かい合うようにテーブル越しに座った。
「え? いや、だったら高野さんがソファ座ってください」
「そんな事、どうでも良い。それより昼間の話の続きがしたい」
ソファを譲ろうとしていた俺に座るように促して、話し合いの意思表示をしてきた。俺は、その場に腰を下ろし、それに従った。互いに珈琲を少しだけ飲み、しばしの沈黙の後声を出したのは高野さんだった。
「律、お前はどうしたいとか希望はないのか?」
そう問われた俺はどう答えたら良いか迷った。まったくなかったわけでもないけど、それがいうほどの内容なのか全く分からなかった。迷って口ごもっていると、高野さんはまた質問してきた。
「いつからいつまでとか、おおよそどのくらいの期間とかも無いのか?」
「はい、この事自体は思いつきに近いので・・・。ただ、今の関係では話して良いのか迷うようなことも話せたりして、俺が今後どうしていきたいのか、言い表せるくらいには、はっきりした気持ちや考えが高野さんに伝えられるくらいになればなっと思っただけなので、付き合い自体に関しては、全く・・・」
その言葉を聞いた高野さんは少しため息を吐き、俺に言った。
「それって、関係が変われば言えるようなことなの? 関係が変わらなければ相談できないほど、俺はお前と無関係とは思ってないけど」
その言葉に俺は声が詰まり、胸が締め付けられるような感覚がした。言われたことはもっともだった。
決して俺自身が高野さんと無関係と思いたかったとか、そう思っていたとかでは無いんだけど・・・。確かに俺の考えはそういう風に取られても何もおかしくなかった。
こんなところなんだろうな。高野さんを苛つかせたり、傷つけたりしてるのは・・・。
そんな事を考えていて、俺が何も言わなかったから、高野さんは俺に近づき、手を強く握ってきた。そして俺の顔を見つめ・・・
「律、俺はお前が好き。お前は? こんな提案をしてくれたんだ。嫌われているとは思えない。でも、お前から好かれている自信はない。だから不安になる。なにか言って。なんでも良い。・・・、もう、不安になりたくない。ただ、お前を好きでいたい」
「・・・・・・、俺もです。でも、・・・俺は・・・」
「俺なりにお前の立場は理解しているつもり。でも、お前の境遇は律、お前自信が話してくれなきゃわからない。勝手に理解したつもりでは、何も解決しないし、力にもなってやれない」
「・・・・・・、俺は多分10年前からあなたへの気持ちは何も変わっていないんだと思います。・・・いや、大人になった分自分でも判っていない変化は有るのかもしれない。でも、基本的な気持ちは変わってない。留学して離れても、どれだけ時が経っても無くならないし、変えられなかった。出来たのは忘れた振りだけでした。どれほど辛くても、あなたを好きなことを無かったことには出来なかった。でも、それを意地で通せば悲しんだり、辛い立場に立たせてしまう人が出ることは、子供だったあの頃よりはっきりと解ります。・・・それを今の俺の力でどうにかすることは出来ません」
話している内にかなり感情的になってしまったと思う。
ずっと高野さんは俺の手を握ったままで離してくれなくて、でも、離してほしくもなくて・・・・感情と考えがごちゃ混ぜになってしまって。
「・・・あなたにもっと近づきたい・・・」
小さな呟きは高野さんにも聞こえた見たいで、
「それはどういう意味? 精神的に? 仕事のこと? それとも・・・」
そういうと高野さんは徐ろに俺を抱きしめた。
「こういう事?」
「・・・全部・・・」
ようやく絞り出したような声も届き、高野さんは笑って『了解』と答えてくれた。しばらく抱きしめられたままの俺は、安心したのか。高野さんにしがみついたままウトウトしてしまった。
「律・・・・ベッド行こう・・・」
その言葉に思わず赤面した俺だったけど、離したくもなかったから静かに頷いた。
ベッドに大事そうに俺を降ろした高野さんは、俺に覆いかぶさるように抱きしめて、そっとキスをしてくれた。
俺はそれだけでは我慢できなくて、高野さんの背中に腕を回し、ギュッと抱きしめて、「してほしい・・・」と微かに口にした。
高野さんはそれに応えてくれて、また俺にキスをした。